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クォーク・グルーオン・プラズマ. 小沢 恭一郎 ( 東大・理 ). 素粒子・原子核物理学とは?. 2000年以上も前から人類の探究心を駆り立ててやまないこれらの問いに答えること、これが素粒子原子核物理学の究極の目標である。. 日本学術会議 物理学委員会 素粒子・原子核物理学分科会報告 基礎物理学の展望 ~素粒子・原子核研究の立場から~ 及び 初田氏スライドより引用. 原子核反応による発光. 安定な物質を作るための核力コア. クォークの閉じ込めによるハドロンの形成. 超新星爆発を起こす核反応. 太陽. Big Bang. W. Z. ν. 超新星爆発.
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クォーク・グルーオン・プラズマ 小沢 恭一郎(東大・理)
素粒子・原子核物理学とは? 2000年以上も前から人類の探究心を駆り立ててやまないこれらの問いに答えること、これが素粒子原子核物理学の究極の目標である。 日本学術会議 物理学委員会 素粒子・原子核物理学分科会報告 基礎物理学の展望 ~素粒子・原子核研究の立場から~ 及び 初田氏スライドより引用
原子核反応による発光 安定な物質を作るための核力コア クォークの閉じ込めによるハドロンの形成 超新星爆発を起こす核反応 太陽 Big Bang W Z ν 超新星爆発 Higgs相転移 ハドロンの世界 中性子星の構造を支えるクォーク 原子核の世界 クォーク・グルオンの世界 原子核物理学の挑戦 中性子星 反クォーク・クォーク対凝縮によるカイラル対称性の自発的破れと質量の獲得 時間
現在の原子核研究の最前線 この辺の研究 • クォーク閉じ込め • クォーク・グルーオン・プラズマ • 物質質量の起源 • 対称性の自発的破れ
クォークの閉じ込め 元は、ばらばらの状態 閉じ込められた状態 どのように閉じ込めは、起こっているのか? 現在では、閉じ込められた状態しか無いが、閉じ込めが破れた状態の性質は? ちなみに、クォーク・グルーオン・プラズマと呼びます。
物質の質量起源(陽子の質量起源) ヒッグス機構による裸の質量の生成 強い相互作用(QCD)による動的な質量生成 クォークの閉じ込めと同時に発生 物質の95%の質量は、強い相互作用によりダイナミックに生成される。ヒッグス機構で生成される質量は、5%程度でしかない。 南部先生による対称性の自発的破れのアイデア
現在の原子核研究の最前線 この辺の研究 • クォーク閉じ込め • クォーク・グルーオン・プラズマ • 物質質量の起源 • 対称性の自発的破れ 今日は、これらの強い相互作用の研究の最前線で行われている実験の話
究極の小さな世界に働く力 強い相互作用には、クォークとグルーオンの2種類の粒子が関係している。 もっとも小さい粒子 クォーク 糊のようにくっつける粒子 グルーオン 強い相互作用の支配する世界 陽子の中 • グルーオンがクォークの間を飛ぶことで、強い力が働く • 電磁気の場合は、光が飛ぶ。 強い相互作用は、Quantum Color Dynamics (QCD)で記述される。
強い相互作用の「電荷」 3種類も電荷がある!!(色電荷と呼ぶ) 電磁力 → 電荷 (+ -) 強い力 → 色電荷 (赤青緑) 陽子: u クォーク 二つと d クォーク 一つ 本当は、 赤色荷を持つ u クォーク 青色荷を持つ u クォーク 緑色荷を持つ d クォーク から成る 電磁相互作用との最大の違いは、 力を伝える粒子・グルーオンも色電荷を持つ 電磁力を伝える光子は、電荷を持たない。
力を伝える粒子が色電荷を持つって? 青クォーク 赤クォーク 反赤-青混合色 グルーオン 青クォーク 赤クォーク グルーオンを交換するFeynman図 クォークは、グルーオンを出したり吸ったりして、色を変えながら相互作用している。 そのため、途中に交換されるグルーオンは、必然的に色をもってしまう。
+ - 何が起きるか? 強い力 電磁力の場合 力が紐のように絞られて、広がらないので距離によらず一定の力が働く グルーオン同士も相互作用する!! どんなに遠くに二つの粒子がいても引きあってしまうので、すべての安定状態は、外から見て色荷が見えないような状態となる。 これを、クォークの閉じ込め、と呼ぶ。
別の見方:閉じ込めと「真空」 閉じ込めは、僕らが「真空」と呼ぶ粒子の周りの空間の性質によって起こっているという考え方もできる。 実際の中間子 周りには何も無い s s s s 周りには何も無いので自由に手足を伸ばせる。 真空が“詰っている”ため、閉じ込められる。 この真空中に詰ってしまう(凝縮)が、自発的に起こって、相互作用が本来持っていた対称性を見えなくして、「真空」(基底状態)を変えてしまうというのが、対称性の自発的破れ
対称性の自発的破れ High Temperature High Density Quark is not confined. Mass ~ 0 When T and r is going down, q Vacuum Vacuum q Quark – antiquark pairs make a condensate and give additional potential Quark is confined. Vacuum contains quark antiquark condensates.
この時、破れる対称性がカイラル対称性 Dividewith chirality • 右巻き粒子を右巻きに、左巻き粒子を左巻きにする変換の上で成り立つ対称性 • 質量0なら成り立つ • 有限質量では、成り立たない Neglect (if m ~0) • 強い相互作用では、近似的に成り立つ。
クォーク閉じ込めの研究 高温・高密度状態を加速器で再現し、クォークの閉じ込めを破る。 • クォーク・グルーオン・プラズマの生成・発見 • 高エネルギー重イオン衝突実験(米国ブルックヘブン研究所) • QCD Lattice計算予想より十分大きなエネルギー密度を達成可能 • e > 5 GeV/fm3を達成!(cf. 計算では、1 GeV/fm3以上でQGP)
どんな加速器が必要か? • 十分な高温度を達成するため • 高いエネルギーが必要 • 核子あたり200GeV • 十分大きな領域を熱するため • 大きな原子核の衝突が必要 • 金原子同士の衝突 200GeV 達成されるエネルギー密度 理論計算では、 ここより上なら 閉じ込めが破れる 衝突の重なり具合 実際に温度3兆度程度を達成
マンハッタン ブルックヘブン国立研究所 • どこにあるの? 宇宙からも見える! ブルックヘブン研究所 RHIC加速器を中心とした加速器群と 医療、宇宙関係の研究施設を併せ持つ総合研究所
原子核を加速する RHIC加速器 • 長さ 3.83 km • 2つのリング 金原子核同士を核子あたりの重心系エネルギー100GeVで衝突
閉じ込めの破れの測定~中間子観測量の減少 カラー遮蔽効果によってQGP中での収量減少 閉じ込めの破れを示す直接証拠 この粒子の収量(観測される数)を真空中での場合と比較 真空中の中間子 高温状態 高温高密度状態 閉じ込められている 閉じ込めが破れる 周囲のカラー荷で遮蔽
MJ/ψ2 = (E電子+E陽電子)2 + (P電子+P陽電子)2 中間子を捉える検出器 • 中間子は、初期の衝突により勝手に出来る。 • その後、電子対へ崩壊する 崩壊して出来た電子対を捉えることで、媒質中での中間子の数を数えることができる 中間子 • 必要なこと: • 崩壊で出来た電子と陽電子の運動量 • 磁場中での軌跡の測定を行う • 飛んできた粒子が電子である識別 • 電子だけを捉える検出器を設置する 崩壊 電子 陽電子 媒質
粒子測定のためのPHENIX実験装置 加速器中に置かれた実験装置です。
運動量の測定 • 運動量の測定は、磁場中での粒子の軌跡を用いる。 • P = 0.3 eBR • P: 運動量[GeV/c] • B: 磁束密度[T] • R: 曲率半径[m] • 粒子の軌跡の測定には、位置検出器が用いられる。 • PHENIX実験では、Drift Chamber 電子 陽電子 磁場
ガス検出器/Drift Chamber • ガス増幅を用いた位置検出器 • ガス中の細いワイヤに高電圧をかけることで、放射線による電離電子の増幅を行い、信号として検出する。 ガイガー検出器 時間情報を使用 比例計数管 Drift Chamber ワイヤ本数を増やす 多芯式比例計数管
電子だけを捉える検出器(電子を識別) • 炭酸ガス中を電子が通過することによって放出されるチェレンコフ光を利用 チェレンコフ光のリング
たくさんの光電子増倍管 • Photon detection device • Hamamatsu H3171S • Cathode Diameter: 25 mm • Tube Diameter: 29 mm • Cathode: Bialkali • Gain: > 107 • Operation Voltage: -1400 ~ -1800V • Rise Time: < 2.5ns • Transit Time Spread: < 750ps • A Winstone cone • shaped conical mirror is attached to each PMT • Entrance: 50 mm, Cut off: 30 • Supermodule (2x16 PMTs grouped) • 40 super-modules per one side • 4 sides * 40 * 2* 16 = 5120 PMTs • 8 PMTs share the same HV channel The arrays are fabricated at SUNY • pixel size • 1 degree x 1 degree
MJ/ψ2 = (E電子+E陽電子)2 + (P電子+P陽電子)2 測定の結果 電子の運動量から不変質量分布を導き出し、J/ψ粒子を探し出す。 J/ψのピーク 電子の不変質量分布 質量分布中のピークを捉えることで、中間子の数を数えることが出来る!
中間子の数は? • 縦軸は、陽子陽子衝突からの予想と実際の数の比を取ったもの • 減っている! • しかし、他にも考えないといけない効果が…
単純なモデルとの比較 • 単純に原子核に吸収されてしまうモデル モデルによる計算の線
高温・高密度の効果が見えている! • いろいろな効果を取り入れて比較してみる この線より下なら、確実に、クォークがばらばらになったせいで、J/ψ粒子の数が減っていると言えそう。 今までに無い高温・高密度状態が生成された証拠!!
新しい状態の発見!! RHIC加速器で新たに作られた状態が、予想外の状態であったことを伝える新聞記事 宇宙初期の状態の解明に向けて、一歩進んだ。
質量獲得機構の研究~中間子の質量変化 真空中のφ中間子 高温状態 反クォーク・クォーク凝縮が解けることによる質量変化 s s “真空中”の反クォーク・クォーク凝縮が解けてカイラル対称性が回復質量変化 真空中に反クォーク・クォークが凝縮し カイラル対称性が自発的に破れている s s 中間子の質量変化が直接的な観測量 カイラル対称性の自発的破れは、 超伝導の相転移と同じ(普遍法則の存在)
Dalitz Conversion g J/y ω φ Raw spectrum (Combinatorial BG included) ●Au+Au ●p+p 0 1 2 3 [GeV/c2] これは、難しい… 高エネルギー原子核衝突での結果 バックグランド差引後 Invariant mass spectrum of e+e- in PHENIX 高エネルギー原子核衝突では、非常に多くのバックグランドがあり、質量変化を捉えにくい。 現在、検出器のアップグレードを行い、再挑戦中
原子核を用いた質量起源の研究 同様の研究は、原子核を用いても可能 原子核 φ中間子 埋め込む s s 密度効果により反クォーク・クォーク凝縮が“一部”解けて 原子核中でカイラル対称性が“部分的”に回復質量減少 超伝導において、温度ではなく磁場をかけてもクーパー対が破れるのと同様の現象 原子核中に中間子を生成し、その質量変化を測定
KEKにおける過去の実験結果(原子核中) r/w f Excess Cu Excess 電子・陽電子対不変質量分布 このエネルギー領域でω/f中間子電子崩壊のピークを捉えた初めての実験 大立体角のスペクトロメータとしては、世界最高の分解能を達成 bg<1.25 (Slow) 既存の粒子の寄与からだけでは説明できない質量分布の変化 但し、統計量が少なく、カイラル対称性が起源とは特定できず。
新たな加速器~J-PARCへ • さらに、大強度のビームを求めて、J-PARCへ Hadron Experimental Hall
NP-HALL 56m(L)×60m(W) Hadron Hall
J-PARCでの系統的研究 • 明確な原子核内質量スペクトラムの測定が必要 • 例えば、Tailではなく、Double Peak • 分散関係の測定によるモデルへの強いコンストレイン • QCD的には、スペクトラムの平均が凝縮と関係づけられる Cu Excess 陽子標的 bg<1.25 (Slow)
高統計・精密測定(E16) • 分解能の向上 • 5 MeV/c2を目標(2倍) • 分散関係の測定(統計100倍) • 10倍のビーム量(1010 per spill) • 5倍のアクセプタンス、2倍の断面積 [GeV/c2] 今までに無い検出器の開発が必須!
Ar(90%)-CH4(10%) Gain 3-GEM 104 2-GEM ・CERN-GEM Ar(70%)-CO2(30%) Gain 104 2-GEM 3-GEM 300 [V] 400 増幅率 新検出器(Gas Electron Multiplier) • プラズマエッチング法を用いて、企業との協力で製作 • CERN製と同様の性能 国産GEM 50μm カプトン 50μm M.Inuzuka et.al. NIM A525,529 現在、開発を継続中
CsI cathodeを用いた光検出器 • 紫外域に感度を持つ光検出器 • 読み出しにStripやPadを用いることで位置情報も得られる • 実験では、Window lessのCherenkov検出器の光検出部分として用いられる。 • 具体的には、 • GEM3層を増幅部に使用 • 1層あたりの増幅率は低く安定な動作 • GEM上面にCsIを蒸着 • Radiator ガスと増幅用のガスにCF4を用いた場合、50cmのRadiatorの長さで約40個のp.e. • References • 1. NIM A523, 345, 2004 • 2. NIM A546, 466, 2005 今、開発を始めたところ
他にも、いろいろな新しい環境 CERN(スイス) LHC加速器 ALICE実験 RHIC II 電子によるCoolingでLuminosity10倍 全周27km • 50000個のJ/ψが得られる。 • (現在、500個) eRHIC エネルギー 約30倍 より長い寿命のQGP よりハードなプローブの可能性 カラー凝縮の物理
まとめ • 強い相互作用には、閉じ込めという奇妙な性質がある。 • クォークがばらばらになった状態を見つけるために加速器、検出器を作って実験した。 • ばらばらの状態を示す信号として、J/ψ粒子の減少効果を考え、その測定をした。 • さらに、質量起源にせまる実験を原子核衝突を用いて行っている。
もっと興味があれば、いつでもどうぞ 連絡先: 東大 理 小沢恭一郎 ozawa@phys.s.u-tokyo.ac.jp