1 / 23

難治てんかん患者の精神症状 に対する治療経験

難治てんかん患者の精神症状 に対する治療経験. 前川敏彦 九州大学病院 精神科神経科 九州大学大学院 医学研究院 臨床神経生理学分野. てんかん患者数の 推移( 2005 年調査). イントロダクション. 九州大学病院精神科には,約 400 人のてんかん患者通院している。. 調査期間: 2011 年 1 月~ 2011 年 12 月 保険 病名が“てんかん”は 1011 人でそのうち 491 人がてんかん症候群分類が可能であった。 上記 の 491 人 の うち、約 400 人 が外来患者であった。 男女比 はほぼ 1 : 1. (n=1011).

dyanne
Download Presentation

難治てんかん患者の精神症状 に対する治療経験

An Image/Link below is provided (as is) to download presentation Download Policy: Content on the Website is provided to you AS IS for your information and personal use and may not be sold / licensed / shared on other websites without getting consent from its author. Content is provided to you AS IS for your information and personal use only. Download presentation by click this link. While downloading, if for some reason you are not able to download a presentation, the publisher may have deleted the file from their server. During download, if you can't get a presentation, the file might be deleted by the publisher.

E N D

Presentation Transcript


  1. 難治てんかん患者の精神症状に対する治療経験難治てんかん患者の精神症状に対する治療経験 前川敏彦 九州大学病院 精神科神経科 九州大学大学院 医学研究院 臨床神経生理学分野 福岡てんかん医療連携講演会

  2. てんかん患者数の推移(2005年調査)

  3. イントロダクション 九州大学病院精神科には,約400人のてんかん患者通院している。 • 調査期間:2011年1月~2011年12月 • 保険病名が“てんかん”は1011人でそのうち491人がてんかん症候群分類が可能であった。 • 上記の491人のうち、約400人が外来患者であった。 • 男女比はほぼ1:1 (n=1011) (n=491; F:M=244:247) 福岡Epilesy研究会2012 Jun 14

  4. イントロダクション2 • 年齢分布は10代から70代以上まで幅広いが、30代にピークがあった。 • 受診年数では1年以内が約100人、5年以内が約100人、5年以上が約200人。 福岡Epilesy研究会2012 Jun 14

  5. 治療状況 • 典型的なAEDを使用していない患者が約140人、単剤治療が約140人、2剤が約100人、3剤以上が約100人。 • VPA、CBZ、PHTが多く、新規抗てんかん薬の処方数は多くない。 • 副作用のない患者が100人、肝機能異常と造血器障害が多い。 種類別AED処方数 福岡Epilesy研究会2012 Jun 14

  6. イントロダクション3 発作型 • 発作型・発作頻度は不明が多いが、恐らく部分てんかんで2年以上発作がない人が最多と考えられる。 • 70%は精神障害を併発しており、気分障害(16%)、不安障害(13%)、精神遅滞(14%)などが多い。 福岡Epilesy研究会2012 Jun 14

  7. はじめに てんかん患者の精神疾患有病率 Schmitz B:Epilepsia 46(Suppl 4):45-49, 2005 ※:Ettinger AB et al:Neurology 65(4):535-540, 2005 福岡てんかん医療連携講演会

  8. 難治てんかん患者のQOL BDI; Beck Depression Inventory QOLIE; Quality of Life in Epilepsy

  9. 症例 • 39歳,男性,同胞3人の2番目。現在は両親・妹と4人暮らし。 • 診断名:外傷後てんかん(右側頭葉と右小脳に脳挫傷) • 家族歴・生育歴:特記事項なし • 病前性格:明るく,開放的,友人も多かった。 福岡てんかん医療連携講演会

  10. 現病歴 • 高2(17歳)の時にバイク事故(右側頭葉と右小脳に脳挫傷)で脳外科に8か月入院し,体幹と左上下肢に痙性マヒを残した。 • 退院前からPHT200㎎内服していたが,痙性マヒを増強し,反応が鈍くぼんやりすることが多かった。自宅の階段から転落し,頭頂部付近を10針縫合するというエピソードを契機にAEDは中止となった。 • また,退院直後から手を几帳面に洗うクセに気づかれていた。 • 21歳,GTCSが出現し,PHT再開したが,その後も年数回GTCSが出現した。 • 24歳,GTCSが生じた数日後に,突然カッと怒って,洋服のかけてあるラックを倒したりすることがあった。ZNS 300mg(TDM 16.8)に変更された。その後より,反応が鈍くなり,母親によると「無気力・無反応状態」に見えるようになった。趣味の読書や手伝いもしなくなり,「ごめん,ごめん」とよく謝るようになった。また,洗面やトイレ,入浴に極端に時間がかかるようになったため,当科に紹介受診となった。 福岡てんかん医療連携講演会

  11. 初診時現症と評価・方針 • 動きやすい身なりの若い男性。外見上,顔色が悪く表情は暗く平坦にみえる。動きはゆっくりで,少しおどおどした感じで動く。協力的で,質問にはゆっくり答えるが話す量,声は小さい。思路の乱れはなく,疎通はよい。抑うつ気分は少ないが,すみませんと頭をさげることが多い • 軽い抑うつ状態と判断し,またZNSに変更後より精神症状・動作緩慢が目立つようになったことからVPA, CBZに置換する。 福岡てんかん医療連携講演会

  12. 現病歴概略図 抑うつ気分 精神症状 爆発性 強迫洗浄行為 身体症状(動作緩慢など) てんかん発作(GTCS) 薬歴 PHT PHT ZNS バイク事故・入院 当科初診 17歳 21歳 24歳 19歳 福岡てんかん医療連携講演会

  13. 初診後経過1 • ZNSと中止してVPA800㎎,CBZ400㎎(TDM 45.5, 7.6)に変更したところ,年1~2回のGTCS,数か月に1回程度のCPS(一点凝視,動作停止,口部自動症)が残ったが,作業所に通所するようになり,手洗いの時間や回数も改善傾向となった。 • 25歳,散歩中に犬の糞を踏んでしまったことがあり,母親に「お前が散歩に連れ出すから!」と激怒し,興奮が収まらず近くいた子供らにも襲い掛かり,携帯電話を壊して弁償するということがあった。 • 31歳,作業所で軽作業から印刷部に配置換えがあり不眠・疲労がたまっていた。けいれん重積入院。 • 33歳,けいれん重積入院。その頃には退院後もVPAやCBZを調整しても月1回GTCS, 週1~2回CPSを認めていため,GPNを追加した。 • 35歳,けいれん重積入院。 • 36歳,けいれん重積入院。入院中にGPNを中止,TPMを追加した。 • VPA 1000mg, CBZ 500mg, TPM 150mg (TDM VPA 62.3, CBZ 7.77) 福岡てんかん医療連携講演会

  14. 初診後経過概略図1 精神症状 爆発性 強迫洗浄行為 身体症状(動作緩慢など) てんかん発作(GTCS, CPS) 薬歴 TPM 150 mg GPN 1800 mg VPA 800~1000mg CBZ 400~500mg てんかん重積入院 25歳 33歳 35歳 31歳 36歳 福岡てんかん医療連携講演会

  15. 初診後経過2 • TPMは動作緩慢,物忘れ,食欲低下,下痢を認めたため漸減中止(半年後) • TPM中止し,CLB追加。夜間中途覚醒が出現し,自宅階段で転落,夜間に大声をあげたり,近所の人をやくざと言ったり,不穏な言動がみられた。 • セロクエル・マイスリーを一時的に追加。ふらつきはさらに著明となった。 • 37歳,強迫症状・発作頻度は変わらないが,動作緩慢の改善を目指してVPAを減量。VPA 1000→400mg, CBZ 500mg, CLB 20mg (TDM VPA 81.21→45.37, CBZ 8.77) • 38歳 LEV追加,1000㎎で聴覚過敏,朝から不穏状態となり1か月で中止。1か月でイライラ感は改善。職場変更。 • LTG25㎎追加後,1週間で腹部帯状疱疹,陰嚢の表皮剥奪潰瘍を認め中止。 • 皮膚科で処方されたクラリスにより,CBZ11.72,CLB 195, DMCLB 1721 失調症状増悪,二重視,一時的にCBZ, CLB中止。 福岡てんかん医療連携講演会

  16. 初診後経過概略図2 不穏 聴覚過敏・易刺激性 精神症状 強迫洗浄行為 身体症状(動作緩慢など) てんかん発作(GTCS, CPS) LEV 1000mg 向精神薬 LTG 25mg 薬歴 CLB 20mg TPM 150 mg 400mg VPA 1000mg 600mg CBZ 400~500mg 36歳 38歳 37歳 39歳 福岡てんかん医療連携講演会

  17. 現処方 • CBZ 500㎎(7.95 μg/ml) • VPA 600㎎(44.42μg/ml ) • CLB 20㎎(CLB 99 μg/ml, DMCLB 1163 μg/ml) • 葉酸 5㎎ 福岡てんかん医療連携講演会

  18. 症例の要約 • 17歳発症の器質性精神障害と身体障害後遺症を合併した外傷後てんかん症例 • ほとんどの抗てんかん薬でも発作コントロールは困難で,処方変更のたびに身体症状あるいは精神症状の悪化を認めた。 • QOLを低下させる主な要因はてんかん発作の頻度よりも抗てんかん薬の副作用による動作緩慢・反応性の低下などの身体症状か,あるいは時折挿話的に出現する精神症状(爆発性・不穏など)であった。 福岡てんかん医療連携講演会

  19. 成人てんかんの精神医学的合併症に関する診断・治療ガイドライン(日本てんかん学会)成人てんかんの精神医学的合併症に関する診断・治療ガイドライン(日本てんかん学会) • 1.発作周辺期精神症状 • 1)発作前駆症状 • 2)精神発作 • 3)非けいれん性てんかん重積状態 • 4)発作後もうろう状態 • 5)発作後精神病状態 • 2.発作間欠期精神症状 • 1)精神病性障害 • 2)気分障害 • 3)パーソナリティー障害 • 4)解離性(転換性)障害 • 3.抗てんかん薬による精神症状 福岡てんかん医療連携講演会

  20. 精神医学的合併症のリスクファクター • 処方変更 • 罹病期間10年以上の側頭葉てんかん • 難治てんかん • 精神障害の既往あるいは現在の罹患 • 脳外科手術後 • 知的障害(精神遅滞,器質性知的障害,認知症) 福岡てんかん医療連携講演会

  21. 成人てんかんに合併する精神症状に対する治療の注意点成人てんかんに合併する精神症状に対する治療の注意点 • 発作周辺期,処方変更時に生じやすい。 • 診察時には症状がなく,本人にも病識がないことが多い(同伴者からの情報が重要)。 • 精神症状は迅速かつ強力に生活を破壊(失職・家庭崩壊)するので入院も含めて緊急的な対応が必要なことがある(大抵は数日以内)。 • 抗精神病薬に対する反応は予測しにくい(耐性が低い場合もあれば抵抗性のこともある)。 • GTCSが生じると精神症状は改善する場合がある。 福岡てんかん医療連携講演会

  22. 難治てんかんの精神症状への対応 福岡てんかん医療連携講演会

  23. 結語 • 九州大学病院精神科での難治てんかん患者の精神症状に対する治療経験を紹介した。 • てんかんは神経疾患に分類されるが,精神症状は合併率が高く(一般の約 5~10倍),QOLに大きく影響するので,治療者は精神症状にも注意する必要がある。 福岡てんかん医療連携講演会

More Related