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メディア言説の批判的分析

メディア言説の批判的分析. 「改憲」関連社説を事例に 金 光成 (京都大学大学院) letitbe621@yahoo.co.jp. 1 .本研究の背景と目的. 【 背景 】   湾岸戦争以降,読売新聞は改憲問題に強力にコミットしてきた。   世論調査の結果もその推進する方向へと変化してきている。   改憲に賛成する人たちは,現憲法が時代遅れで,現実との間でズレが存在しているという点を一番の理由として挙げている。 → (社会)言語学の観点からの検討がなされていない。 【 目的 】

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メディア言説の批判的分析

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Presentation Transcript


  1. メディア言説の批判的分析 「改憲」関連社説を事例に 金 光成 (京都大学大学院) letitbe621@yahoo.co.jp

  2. 1.本研究の背景と目的 【背景】   湾岸戦争以降,読売新聞は改憲問題に強力にコミットしてきた。   世論調査の結果もその推進する方向へと変化してきている。   改憲に賛成する人たちは,現憲法が時代遅れで,現実との間でズレが存在しているという点を一番の理由として挙げている。 → (社会)言語学の観点からの検討がなされていない。 【目的】   フレーム意味論の観点から読売新聞と朝日新聞の言説を比較分析することによって,読売新聞の言説が効果的である理由を分析する。

  3. 2.分析の対象 1990年~2008年までの読売新聞と朝日新聞の社説の中で‘憲法・憲法改正’を中心トピックとする社説(読売新聞120件,朝日新聞61件) [改憲賛成率の変化]

  4. 3.分析の枠組み   フレーム意味論(cf.Fillmore(1982, 1985), Goffman(1986)) →Lakoff(1996,2004, 2006ab, etc.) ■言説と関わっているフレーム (a)深層フレーム(deep frames) (b)論点定義フレーム(issue-defining frames) (c)常識フレーム(commonplace frames) (d)表層フレーム(surface frames) (e)メッセージフレーム(messaging frames)

  5. 4.本研究の前提 (ⅰ) 大部分の思考は無意識中に行われている。 (ⅱ) 人間のすべての思考は概念的フレームに依存している。 (ⅲ) フレームは境界線を有している。 (ⅳ) 言語は状況を(再)フレーム化する際,用いられることができる。 (ⅴ) 大部分の思考は概念メタファーを用いる。 (ⅵ) 理性的な思考には感情が要る。 ■フレーム:“現実”を理解するために用いられる精神構造 ■フレーミング: 護憲原理主義(護憲+原理主義)

  6. 5.分析の枠組み   フレーム意味論(cf.Fillmore(1982, 1985), Goffman(1986)) →Lakoff(1996,2004, 2006ab, etc.) ■言説と関わっているフレーム (a)深層フレーム(deep frames) (b)論点定義フレーム(issue-defining frames) (c)常識フレーム(commonplace frames) (d)表層フレーム(surface frames) (e)メッセージフレーム(messaging frames)

  7. 6.深層フレーム 「言説を支える根本的な思考の枠(fundamental frame)」

  8. 「論点(issue)になるべき対象を性格づけるフレーム」「論点(issue)になるべき対象を性格づけるフレーム」 (ⅰ) 何が論点(問題の焦点)になるべきかを決める。 (ⅱ) 非難の矛先がどこに向かうべきかを決める。 (ⅲ) 可能な解決策を限定する。 (ⅳ) そのフレームの外側にある考慮対象を排除する。 (ⅴ) 深層フレームと密接に関わっている。 例:「不法労働者」 vs. 「不法雇用主」 7.論点定義フレーム

  9. 8.常識フレーム ► 常識フレームは世界(世の中)がどのようにまわっているのかを理解するために用いられる。 ► 常識フレームは,特定のグループや共同体が共有している知識(Members’ Resources)と関わっている。 • Majority-is-right frame • Adaptation frame • Discussion-leads-to-solution frame

  10. 9.表層フレーム[1/2]   「特定の語彙や句が喚起するフレーム」   時代遅れ,押し付け(GHQ),一国平和主義,不磨の大典,普通の国,平和ぼけ(読売)   歯止め,平和ブランド,不戦の証し(朝日) • 要するに,“護憲原理主義”的な主張を唱え続けている勢力には未来はない,ということである。 (2000年4月15日) • 冷戦と一国平和主義の下の“護憲原理主義”によって,憲法改正は長くタブー視された。 (2004年1月15日)   読売新聞の社説では2000年4月15日の社説から今まで“護憲原理主義”という表現が13回使われている。

  11. 「原理主義」はあるグループの成員が特定の思想なりイデオロギーを絶対視し,盲目的に追従する(その思想を守り抜くためには手段を選ばない)というフレームを喚起させる。「原理主義」はあるグループの成員が特定の思想なりイデオロギーを絶対視し,盲目的に追従する(その思想を守り抜くためには手段を選ばない)というフレームを喚起させる。 その他に,朝日新聞では,読売新聞によってフレーミングされた用語(一国平和主義,不磨の大典,自主憲法,普通の国,押し付け,神学論争等)を否定することによって,結果的に相手に有利なフレームを喚起させている(cf. Lakoff 2004)。 10.表層フレーム[2/2]

  12. 11.論点定義フレーム[1/3]   「論点(issue)になるべき対象を性格づけるフレーム」 • “湾岸貢献策づくりで「憲法の制約」の見直し論議を求める” (『読売新聞』1990年8月29日)   読売新聞は論点定義フレームとして「憲法の制約・限界」を定着させながら,憲法に関する議論の必要性を訴えている。   しかし,論点が「憲法の限界」になってしまうと,そこから考えられる対策は限られてくる。

  13. 12.論点定義フレーム[2/3] • 憲法論争に何が欠けているか。(1993年5月3日) : 9条の精神 •集団的自衛権の迷走 憲法49歳の記念日に(1996年5月3日) : 集団的自衛権論(の危うさ) •個が尊重される明日を(1999年5月3日) : 将来像(をどう描くべきか) •憲法論議を国民の手に(2002年5月3日) : 国民による憲法論議の必要性 •憲法論議を考える 世直し気分と歴史の重さ(2005年5月3日) : 世直しムード(の問題点)

  14. 13.論点定義フレーム[3/3] • 朝日新聞の社説で扱われている論点はまちまちで,推進されているまとまった一つの論点定義フレームは見当たらない。 →主張が効果的に伝わらない。 • 読売新聞など改憲勢力の主張に反応している傾向が強かった。 →受動的姿勢; 相手のフレームを強化してしまう。 • 論点定義フレームは,一貫性(consistency)を持って語らないと人々の頭の中には残らない。

  15. 14.常識フレーム[1/2]  「常識として共有されている知識」 • 読売新聞の社説120件のうち,82の社説の中で常識フレームの一つである適応フレーム(adaptation frame)が用いられている。 • 社会,経済の急速な変化を背景に,憲法の規定と政治や社会の実態との間の矛盾は,ますます広がっている。               (2001年11月3日) • 憲法と現実との乖離(かいり)が最もはなはだしい九条の改正問題が,差し迫った現実的な課題となっているのは,歴史の必然といってよい。           (2004年8月27日)

  16. 15.常識フレーム[2/2] • その他に,目だった常識フレームとしては,majority-is-right frame(43回),DLS(discussion-leads-to-solution) frameがあった。 • 「適応フレーム」は朝日新聞の社説でも用いられている。このように,常識フレームは深層フレームや論点定義フレームと密接に関わっているわけではない。 • 朝日新聞では,論点定義フレームの場合と同様,読売新聞のように一貫して用いている常識フレームはなかった。

  17. 16.深層フレーム • Lakoffの仮定に従うのであれば,読売新聞の立場はSFモデル内の論理に,朝日新聞の立場はNPモデル内の論理にそった形で語られていることになるだろう。 • 読売新聞では,‘改憲論議を避けるのは無責任な行為だ’,‘日本が国際社会の中で責任を果たしていくためには改憲が必要である’など,「責任」という語彙が多く用いられている。 • 読売新聞での「責任」の概念と朝日新聞で用いられている「責任」の概念は同じ意味を持つのだろうか。

  18. 17.比較

  19. 18.まとめと課題 (Ⅰ) 読売新聞は「改憲」という論点に対して①イニシアティブを取って②持続的に,③一貫性を持ってフレーミングを行ってきた。 (Ⅱ)Lakoff(1996, 2006ab, etc.)の枠組みを用いることによって,言説的実践(discursive practices)やメンタルモデルで起きているとされる認知プロセスの内実に貢献できる。 (Ⅲ) 表層・論点定義・常識フレームの道具立てを用いて分析することによって間テキスト的な言説の流れをより効果的に捉えられる。 (ⅳ) 社会-認知的な観点から‘必然的に争われる概念(essentially contested concepts)’を検討していく必要がある。 (ⅴ) Lakoffの枠組みを精緻化していく。

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