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日本語の格助詞と動詞の自他. 名古屋大学 杉村 泰. 0. 大学院紹介. 日本語教育学講座. ・日本語の研究者養成 ・「日本語の先生」 の先生 の養成. 玉岡賀津雄教授 (心理言語学). 稲垣俊史准教授 (第二言語習得). 鷲見幸美准教授 (日本語意味論). 杉村泰准教授 (日本語文法論). 授業風景. 構想発表会・中間発表会. 構想発表会・中間発表会. 個人指導. 院生セミナー (他大学との交流). 院生セミナー (他大学との交流). 合宿 ( 2014 年 1 月・東尋坊).
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日本語の格助詞と動詞の自他 名古屋大学 杉村 泰
日本語教育学講座 ・日本語の研究者養成 ・「日本語の先生」の先生の養成
① 「に」と「で」 • 私は庭で洗濯物を干す。 • 私は庭に洗濯物を干す。 • 私は庭で物干し竿に洗濯物を干す。
① 「に」と「で」 • 私は庭{で/に}ゴミを捨てた。 • 私は庭でゴミ箱にゴミを捨てた。 • 私は山{で/に}登った。 • 私は山で木に登った。
① 「に」と「で」 • 私は毎日電車( )座って通学する。 • 私は毎日電車で優先席に座って通学する。 • で(範囲) □ • に(着点) → ・
① 「に」と「で」 • で(範囲) □ に(着点) → ・ • 私はベッド{で/に}寝る。 • 私は10時{で/に}寝る。 • 私は来年3月{で/に}国に帰る。
② 「に」と「と」 • 私は彼{に/と}似ている。 • 私は彼{に/と}会った。 • 私は彼{に/と}話した。 • 私は彼{に/と}相談した。 • 私は彼{に/と}恋をした。 • 私は彼{に/と}キスをした。
② 「に」と「と」 • 私は車{に/と}ぶつかった。 • に(着点) → ・ • と(相手) →←
③ 「に」と「へ」 • 東京に行く。(着点) • 東京へ行く。(方向)
③ 「に」と「へ」 「に」と「へ」のうち適当な方を入れよ。 • 彼が待ってる新宿( )、5,100円で連れてって! (名鉄高速バスの広告コピー ) • 彼女が待ってる新宿( )、恋する切符、5,100円。 (名鉄高速バスの広告コピー )
彼が待ってる新宿へ、5,100円で連れてって! 彼女が待ってる新宿へ、恋する切符、5,100円。
に(収束) ↓ → ・ ← ↑ へ(発散) ↑ ← ・ → ↓ 「に」と「へ」のイメージ
に(収束) 2つのカードが1枚に!! (UFJカード、2003年)
に(収束) サティ・ビブレは、イオンとひとつのグループに。 (イオン、マイカル、2003年)
に(収束) ぜ~んぶをお隣さんに。 (KDDI、2003年)
へ(発散) 日本へ世界へ大空へ。 (名古屋空港ビルディング、2003年)
へ(発散) その油断 火から炎へ災いへ。 (日本防火研究普及協会、2003年)
へ(発散) 世界は □ から○へ。 (松下電器「DVDレコーダー ディーガ」 、2003年)
へ(発散) 呼出し音は、「プルルル…」から「♪♪♪♪…」へ。 (NTT DoCoMo 、2003年)
へ(発散) シキシマは、Pascoへ。 (敷島製パン、2003年)
④ 「を」と「が」 夢をカタチに。 (電波学園、2004年) 夢がカタチに。 (電波学園、2004年) ~を~に (する) 他動詞文 [行為] ~が~に (なる) 自動詞文 [結果] 彼のことを気にするから気になるのだ。(する→なる) *彼のことが気になるから気にするのだ。(*なる→する)
「を」と「が」のイメージ (電波学園、2004年)
はじめに このたび私は結婚することになりました。 ?しました。 ↓ 日本語では自動詞が好まれる。
自動詞・他動詞・受身の選択 (1) さあ,肉{が焼けた/?を焼いた/*が焼かれた}から食べよう。 (2) さあ,ケーキ{?が切れた/を切った/?が切られた}から食べよう。 (3) 冷蔵庫によく{冷えた/?冷やした/?冷やされた}ビールがある。 (4) ビール{が5℃に冷え/を5℃に冷やし/が5℃に冷やされ}ている。 → 「5℃にする」という動作主の意図性
守屋(1994) 動詞の自他の選択の難しさは、程度の差はあれ、自動詞選択のむずかしさにある(1から4へと次第に習得が難しくなっていく) ┌非人為的 条件-1 │ (風でドアが閉まった) │ │ ┌主体不特定条件-2 │ │ (さっき電話がかかってきた) │ │ └人為的 ┤ ┌行為の実現や意図に無関心、結果に視点 条件-3 │ │ (焼けた肉からめしあがって) └主体特定┤ ├行為の実現に関心、意図に無関心、結果視点 条件-4 │ (テーマがやっと決まった) 自動詞選択 │ │ │ 他動詞選択 ├行為の実現に関心、反意図的、責任範囲内 条件-5 │ (うっかりさいふを落とした) │ └結果よりも行為の実現、意図に関心 上記条件以外 (みそ汁を温めているの)
本研究における事態の分類 ┌①対象の内発的変化 │ (電池が切れて時計が止まった) ┌非人為的事態┼②無情物の非意図的な作用による対象の変化 │ │ (風でドアがバタンと開いた) │ ├③被害や迷惑の意味 │ │ (地震で家が壊れた) │ └⑫状態変化主体の他動詞文 他動詞選択 │ (火災で家を焼いた) │ │ ┌④動作主不特定(不特定多数、社会一般) │ ┌対象の状態描写┤ (もう授業が始まっている) │ │ └⑤動作主特定 │ │ (冷蔵庫に冷えたビールがある) └人為的事態┬行為の結果┼⑥対象の変化 │に焦点 │ (さあ、肉が焼けたよ) │ ├⑦動作主の変化 自動詞選択 │ │ (去年より体重が減った) │ │ │ │ │ ├⑧対象の状態描写(動作主の直接的介在が感じられる) (自動詞) │ │ (弁当箱に野菜が残っている/ 残されている) 受身選択 │ └⑨被害や迷惑の意味 │ (近所にマンションが建った/ 建てられた) │ │ (自動詞) │ ┌⑩不注意による対象の変化 他動詞選択 └動作主の行為┤ (転んで骨が折れた/ を折った) に焦点 └⑪意図的行為による対象の変化 (コーヒーにミルクを入れて飲む)
アンケート 格助詞と動詞の同時選択 (例) 風でドア(が/を)バタンと(開いた/開けた/開けられた)。
被験者 日本語母語話者 名古屋大学学部生(114人)(2012年5月) 上級日本語学習者 中国語母語話者:湖南大学3年生(58人)(2012年5月) 韓国語母語話者:韓国国際大学、釜山外国語大学、ソウル女子大学の学生(N1合格者38人)(2012年9月,2013年4月) ウズベク語母語話者:タシケント国立法科大学の学生、ウズベキスタンの先生(N1合格者6人)(2012年7月)