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7 ・文化の 文脈化

7 ・文化の 文脈化. 2012.10.31.  成蹊・文化人類学 Ⅱ. [ 前回 ] 変化する文化を「守る」 (2). 1950-60 年代の映像を見ながら確認したのは「 文化は変化する 」ということ おそらく日本全国に広がっていたであろう「水窪のような暮らし(自給自足生活)」は、大量消費生活への移行が雪崩をうって起こった 1950-60 年代以降、変化し消えゆこうとしていることは確かである この事実をまえにして、少なからぬひとびとは「 それは惜しいことだ、なんとかして守らなくては 」という気分にさせられる

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7 ・文化の 文脈化

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Presentation Transcript


  1. 7・文化の文脈化 2012.10.31. 成蹊・文化人類学Ⅱ

  2. 7・文化の文脈化 [前回]変化する文化を「守る」(2) • 1950-60年代の映像を見ながら確認したのは「文化は変化する」ということ • おそらく日本全国に広がっていたであろう「水窪のような暮らし(自給自足生活)」は、大量消費生活への移行が雪崩をうって起こった1950-60年代以降、変化し消えゆこうとしていることは確かである • この事実をまえにして、少なからぬひとびとは「それは惜しいことだ、なんとかして守らなくては」という気分にさせられる • 伝統的な暮らしが消え去ることは、ちょうどトキが絶滅するようなもので、かけがえのないものをなくしてしまうことになるのではないか?

  3. 7・文化の文脈化 [前回]変化する文化を「守る」(3) • では、いったい「だれが」守る役をするのだろうか? • 現状を冷静に分析すれば、従事者比率が激減し、かつ、急激に高齢化がすすむ「農業従事者」がそれを守らざるを得ない • そもそもキツイうえにもうからない農業に従事するひとびとに、さらに「文化を守る役割まで負わせる」ことは問題ではないだろうか? • なんのために「守る」のだろうか? どんな犠牲を払わなければならないのだろうか?

  4. 7・文化の文脈化 [前回]映像資料「姨捨の棚田」 • 棚田の「美しい風景」とその背後にある「ひとびとの地道な営み」は、単純にすばらしいし、できれば残したい、と考えるのもおかしなことではない • しかし同時に、単純な経済原理から言えば、生産性が低い棚田は淘汰されてもおかしくない • 放っておけばなくなりそうなものを、敢えて残そうとするための手段として、そのものに「別な価値」を付与するやり方がある • たとえば「観光資源」にして観光客を呼び込もうとする • あるいは「大事な文化財」として選び上げ、「守るべきもの」としての意味づけを明確にする……姨捨の棚田は1999年に国指定の文化財のひとつである「名勝」に選ばれた

  5. 7・文化の文脈化 [前回]映像資料「桜紀行」(後半) • 先祖の代から受け継いできたさくらの大樹を持つ地域のひとびとが、観光客に振り回されている、というだけの話ではない • さくらを「祭り」や「伝統文化」に置き換えてみると、現在の地域社会が置かれている深刻な状況を理解することができる • もともと自分たちの先祖が自分たちのものとして守り、受け継いできた、日々の生活に密着した存在であったはず • ところがそこに、観光客や役場のひとなどの外部からの働きかけ・干渉が加えられ始めている……地域のひとびとを無視した勝手な・容赦ないふるまい • しかし過疎化・産業の停滞に悩む地域のひとびとは、その外部を事実上拒めず、受け身の立場に立たされつつある

  6. 7・文化の文脈化 [前回]伝統を守るための犠牲 • 外部からの観光客は、伝統を守るために手を貸そうとして訪れているのではなく、純粋な消費・余暇活動としてそこに来て帰っていくだけ • だからごみはそのへんに捨てて顧みないし、畑を踏み荒らしても自分の写真が撮れさえすればいいし、駐車場がないと文句は言うし、気に入らなければ二度と来なくなる • しかし、地元はそれから逃げるわけにはいかない • わがままで移り気な観光客に対応していたらキリはないし、対応しなければジリ貧になる • もはや有効な産業を失っている地域は、伝統を守るためにどんなに大きな犠牲を伴うとしても、どんなに気が進まなくても・先にあるものがなにかわかっていても、観光に頼るしかない

  7. 7・文化の文脈化 なにげない文化・意識される文化 • ごく自然に、それと意識もされず、ひとびとが共有する文化というものもある • 「なにげない」文化 • たとえば、水窪で最年長の夫婦が、玄関先でわらじを編んだりしていた光景など • 一方で、「これが《文化》なのだ」と、明確に意識される文化というものもある • 「その意味について意識される」文化 • たとえば、「棚田は日本人の心のふるさと・原風景である」という考え方など

  8. 7・文化の文脈化 文脈化 contextualization • con(一緒にする)+text(テクスト≒意味・考え) • 「あるもの」を、別の「意味・考え」と結びつけることを「文脈化contextualization」と呼ぶ • たとえば「棚田」を、単純に耕し稲を作る対象としてみるのではなく、「日本人の原風景」という意味・考えと結びつけることが「棚田という文化の《文脈化》」 • ほんとうは、「棚田」=「先祖から代々受け継いできたもの」という意味づけ、つまり文脈化はずっと行なわれてきたので、「棚田」=「日本人の原風景」というのは再文脈化ということになる

  9. 7・文化の文脈化 文化と(再)文脈化 • 文化が観光資源化する現象は、文化の再文脈化現象ととらえることができる • 注目すべきは、そこで文化にどんなtextが結びつけられているのか、という点である • 日本人の心のふるさと • 国指定の名勝 • 代々受け継がれてきた大切な文化 • なんとかして残していきたい遺産   などなど。

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