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遺族厚生年金の課税化による 税・社会保険料収入増の試算 -非課税所得と租税・社会保険料負担の公正性-

遺族厚生年金の課税化による 税・社会保険料収入増の試算 -非課税所得と租税・社会保険料負担の公正性-. 大阪大学社会経済研究所 下野恵子 電波学園教育センター 竹内滋子. 研究の背景. 「税と社会保障制度の一体改革」が言われるが、なぜ両者を一体的に改革しなくてはならないのか、必ずしも明らかにされていない。  両者の関係を明らかにする。 遺族年金が非課税であることが不合理を招いている。例えば、非課税で所得 0 なので、特別養護老人ホームなどの利用料が低く、社会保険料も収入に比して安くなる。     *日本では、 遺族年金は非課税 (老齢年金は課税対象) 。しかし、

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遺族厚生年金の課税化による 税・社会保険料収入増の試算 -非課税所得と租税・社会保険料負担の公正性-

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  1. 遺族厚生年金の課税化による税・社会保険料収入増の試算-非課税所得と租税・社会保険料負担の公正性-遺族厚生年金の課税化による税・社会保険料収入増の試算-非課税所得と租税・社会保険料負担の公正性- 大阪大学社会経済研究所 下野恵子 電波学園教育センター 竹内滋子

  2. 研究の背景 • 「税と社会保障制度の一体改革」が言われるが、なぜ両者を一体的に改革しなくてはならないのか、必ずしも明らかにされていない。 両者の関係を明らかにする。 • 遺族年金が非課税であることが不合理を招いている。例えば、非課税で所得0なので、特別養護老人ホームなどの利用料が低く、社会保険料も収入に比して安くなる。     *日本では、遺族年金は非課税(老齢年金は課税対象)。しかし、    他の先進国では、他の所得と同様に、課税対象所得。   *日本の障害者年金、失業保険給付金なども非課税扱い。

  3. 論文の目的 • 遺族厚生年金制度(遺族共済年金制度)の再考     老齢厚生年金との負担の公正性     遺族基礎年金との比較     非課税所得扱いの合理的根拠はあるのか? • 非課税所得である「遺族厚生年金」を、現行税制下のもとで課税化した場合の試算を行う。     新たな税収になるだけでなく、社会保険料収入が大幅に増加することが明らかになる。

  4. 報告の構成 1.遺族厚生年金制度の説明 2.非課税化の試算の前提 3.試算方法 4.試算結果 5.まとめ

  5. [I]遺族厚生年金制度とその現状

  6. 遺族厚生年金制度 • 1942年に創設。目的は、寡婦や残された家族の生活を守ること。一貫して拡充されてきた(1954年、1976年、さらに、1986年の公的年金の大改正時でも拡充)。2007年改正で、はじめて縮小方向へ。 • 被保険者もしくは被保険者であった者が、被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に死亡した場合、または、障害厚生年金・老齢厚生年金の受給権者、受給資格を満たした者が死亡したときに、遺族厚生年金が支給される。

  7. 遺族厚生年金の支給範囲 支給範囲: 配偶者、子、父母、孫、祖父母 ただし、 *妻は年齢や子の有無に関わらず支給される     (2007年から、30歳未満の場合のみ、子がない場     合には5年間)    *子、孫は18歳未満    *夫、父母、祖父母は、本人死亡時に55歳以上で、 60歳から支給 (注)遺族基礎年金の支給は、子が18歳未満の場合のみ

  8. 遺族厚生年金の給付額  給付額: 被保険者期間が1ヶ月であったとしても25年間加入していたと見なし、その老齢厚生年金の4分の3が遺族厚生年金となる。     さらに、  *妻が40歳から65歳までの間、年額59万4200円(遺族基礎年金の4分の3相当)が加算される。  *子が18歳未満の場合、遺族厚生年金に、遺族基礎年金79万2100円と子の加算(一人の場合22万7900円)が併給される。

  9. 遺族厚生年金に対する課税  遺族厚生年金のみであれば、受給額にかかわらず、全額が非課税 = 所得は“自動的に”0と見なされる。 ただし、  *65歳から老齢基礎年金を受給すると、その分だけ課税される。  *本人の老齢厚生年金がある場合には、       {本人の老齢厚生年金}(課税対象)+       {遺族厚生年金ー本人の老齢厚生年金}(非課税)    となり、一部が課税対象となる。

  10. “結果的に非課税”と“自動的に非課税”の違い“結果的に非課税”と“自動的に非課税”の違い • 課税対象であっても低所得の場合には、各種の所得控除によって、“結果的に非課税”になる。 • 非課税所得の場合には、受給額にかかわらず“自動的に非課税”になるので、高所得であっても、所得0とみなされる。 • 非課税所得は、税務署に把握されない。

  11. 遺族厚生年金受給者と受給額 • 受給人数: 441万人(2007年) *1995年250万人、2004年400万人で、10年間に1.6倍となる。   *遺族厚生年金受給者の99%が女性   *厚生年金受給者の27%を占める。   *60歳未満の受給者が12%、60歳から64歳が9% • 給付額: 4.5兆円 *厚生年金給付総額の18%   *一人あたりの受給額は、102万円            (老齢基礎年金は79万2100円)

  12. [II] 試算の主な仮定と試算に関係する租税・社会保険制度[II] 試算の主な仮定と試算に関係する租税・社会保険制度

  13. 試算の仮定(1)試算の対象者 • 全員が女性と仮定する • 遺族厚生年金以外の収入がない単身者 *遺族厚生年金は平均102万円   *単身者世帯の増加(65歳以上高齢者の20%)   *65歳未満の場合も就業していないと仮定   *65歳以上の老齢基礎年金部分は考慮していない=老齢基礎年金という形で受給していないケースもあり、受給額の想定が困難なため。

  14. 試算の仮定(2)対象者の年齢・受給額 • 2007年度の受給者441万人が「遺族厚生年金受給者調査」(2001年)と同じ分布をすると仮定する。 • 適応される租税・社会保険制度が、年齢グループで異なるために、60歳未満(54万人、12%)、60歳以上65歳未満(41万人、9%)、65歳以上(347万人、79%)の3つに分割する。 *65歳以上で、「公的年金等控除」が大きくなる。70万円から120万円。   *住民税には「寡婦・寡夫に関する特例」が存在する(合計所得125万円以下の寡婦・寡夫には課税しない)

  15. 試算で用いた給付額と年齢のクロス表:『遺族厚生年金受給者調査』2001年を利用試算で用いた給付額と年齢のクロス表:『遺族厚生年金受給者調査』2001年を利用

  16. 試算の仮定(3)健康保険 • 健康保険に関する大きな仮定: 2008年度に導入された後期高齢者医療制度は試算に反映させなかった。   *民主党政権で見直し対象となっていたため。   *そのため、75歳以上でも、国民健康保険に継続して加入していると仮定。

  17. 試算に関わる租税・社会保険制度のまとめ

  18. 国民健康保険料と第2号加入者の介護保険料の決まり方国民健康保険料と第2号加入者の介護保険料の決まり方

  19. 第1号加入者の介護保険料の決まり方

  20. 遺族厚生年金受給者の社会保険料負担(2008年、名古屋市)遺族厚生年金受給者の社会保険料負担(2008年、名古屋市) • 国民健康保険料=「均等割」+「所得割」 *住民税額が0なので、均等割47,801円のさらに7割減額で、年額14,340円。 • 介護保険料 *65歳未満=「均等割」+「所得割」     住民税額が0なので、均等割11,638円のさらに7割減額で、     年額3,491円。   *65歳以上でも、最も低い負担となっており、基準額52,780円     の半分の年額26,390円。

  21. [III] 試算方法

  22. 試算の方法 • 表計算ソフトのEXCELを用いて計算している。 • 3つのグループに分割して計算。 • 配付資料(付表2、3,5,7)を参照。

  23. 試算過程で明らかになったこと • 現行の租税制度下で、遺族厚生年金を課税化した場合、所得税に比較して、住民税では課税対象となる割合が小さい。その理由は?  寡婦・寡夫に関する「住民税の特例」(所得125万円以下の場合、住民税は課さない)の影響が大きい。 • 新規の税収以上に、社会保険料収入の増加が大きいことが明らかになった。  所得が0でなくなり、少しでも住民税が課されると、均等割の減額割合が小さくなる。さらに、所得割が加わる効果が大きい。

  24. [IV] 試算結果

  25. 遺族厚生年金の課税化:2008年度の制度下

  26. 現行制度下での課税化:まとめ(1) • 新たに所得税が課される受給者:30万人(7%) • 新たに住民税が課される受給者:3万人(0.7%)!  所得税と住民税の課税対象者の違いは、「住民税の特例」の効果が大きいためである。 • 国民健康保険料が増加する受給者:136万人(31%) • 介護保険料が増加する受給者:255万人(58%)  社会保険料の増加する受給者数が非常に多い。非課税世帯の優遇がなくなるためである。

  27. 現行制度下での課税化:まとめ(2) • 新規の所得税:37億円 • 新規の住民税:20億円 • 国民健康保険料の増額分:373億円 (2007年度の健康保険分総額は3兆5000億円で、1%の収入増) • 介護保険料の増額分:298億円 (2007年度の第1号保険者の保険料収入総額は1兆3000億円。課税化した場合の第1号保険者増額分は253億円で、約2%の収入増)

  28. 遺族厚生年金の課税化:「地方税の特例」と「寡婦・寡夫控除」を廃止した場合遺族厚生年金の課税化:「地方税の特例」と「寡婦・寡夫控除」を廃止した場合

  29. 寡婦・寡夫優遇の廃止:まとめ(1) • 所得税:30万人  91万人 (21%) *「寡婦・寡夫控除(年27万円)」廃止の効果。小額であっても、所得控除の影響は大きい。 • 住民税:3万人  107万人 (24%) *「寡婦・寡夫控除(年26万円)」と「地方税の特例」の廃止による。 • 国民健康保険料が増加した受給者数: 136万人  136万人 (31%) • 介護保険料が増加した受給者数 255万人  255万人 (58%)

  30. 寡婦・寡夫優遇の廃止:まとめ(2) • 所得税:37億円  77億円 • 住民税:20億円  272億円!! • 国民健康保険料の増加分:  373億円  692億円 • 介護保険料の増加分: 298億円  502億円 (注) 社会保険料の所得割は住民税額によって決定されるので、住民税の減税は社会保険料減につながる。

  31. [V] まとめ

  32. 1.遺族厚生年金の課税化の必要性 • 遺族厚生年金の非課税措置は、税の不公正をもたらすだけでなく、それ以上に社会保険料負担を不公正にしている。  非課税措置により、遺族厚生年の受給金額に関わらず、社会保険料負担は最小となる(次の2つの図を参照)  高齢社会における社会保険の維持可能性を考えても、遺族厚生年金の課税化が必要

  33. 国民健康保険料の負担額の比較

  34. 介護保険料の負担額の比較

  35. 2.控除や特例の廃止=税制の簡素化 • 所得税だけでも控除項目は20以上ある。控除項目の整理が必要     各種控除により、税収が大幅に減少している可能性が高い。 • 特定のグループの優遇や特例の廃止も考えるべき = お金に色はない! (日本の税制は特定グループの優遇措置が多い)  現行税制下では、老齢厚生年金と遺族厚生年金の扱いが異なるが、寡婦・寡夫を優遇する合理的理由があるのか?

  36. 3.遺族厚生年金制度は必要か? • 現在、年齢や子の有無に関わらず、遺族厚生年金(遺族共済年金)は、終身年金として受給できる。 • 一方、基礎遺族年金は子が18歳未満の場合のみであり、受給期間が限られる。 *遺族厚生年金受給者は、厚生年金受給者の27%   *遺族基礎年金受給者は、基礎年金受給者の1%!    遺族厚生年金制度は、寡婦が働けない(働く場がない)ことを前提として設計された。男女雇用均等法の存在する現状にふさわしい制度ではない。 

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