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格子 QCD シミュレーションによる 有限温度下における 閉じ込め・カイラル相転移の研究. 前沢 祐 (理化学研究所) for WHOT-QCD Collaboration. クォーク間ポテンシャルから見た非閉じ込め相転移と クォーク・グルーオン・プラズマの内部性質. WHOT-QCD Coll. Phys. Rev. D82 (2010) 014508 WHOT-QCD Coll. PoS LAT2007 (2007) 207 WHOT-QCD Coll. Phys. Rev. D75 (2007) 074501. 日本物理学会 2010 年秋季大会
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格子QCDシミュレーションによる 有限温度下における 閉じ込め・カイラル相転移の研究 前沢 祐 (理化学研究所) for WHOT-QCD Collaboration クォーク間ポテンシャルから見た非閉じ込め相転移と クォーク・グルーオン・プラズマの内部性質 WHOT-QCD Coll. Phys. Rev. D82 (2010) 014508 WHOT-QCD Coll. PoS LAT2007 (2007) 207 WHOT-QCD Coll. Phys. Rev. D75 (2007) 074501 日本物理学会 2010年秋季大会 「クォーク閉じ込めとカイラル対称性: QCDの難問と多彩なアプローチの検討」
格子QCDシミュレーションによる第一原理計算からの検証格子QCDシミュレーションによる第一原理計算からの検証 様々な技術革新により有限温度・低密度領域の詳細な計算の進展 有限温度・密度下におけるQCDの特性 熱媒質中のクォークやグルーオンによる多彩な物理現象の予言 格子QCDによる計算可能領域
研究題目 • 有限温度下の状態方程式 • メソンスペクトル • QCD相図とカイラル相転移のスケーリング則 • QGP中のクォーク間ポテンシャル V (r,T ) • QGP中のクォーク力学を反映(閉じ込め項の消失、遮蔽効果) WHOT-QCD Collaboration (2005~) 青木, 金谷, 大野, 斎藤(筑波大), 江尻 (新潟大), 初田 (東大), 前沢 (理研), 梅田 (広島大) ウィルソン型作用の格子シミュレーションにより、QCD熱力学の解明を目指す c.f.) 13日 SC会場 13aSC9:00~12:45 梅田氏、大野氏、斎藤氏、江尻氏による講演 1.T =0と T > 0のクォーク間ポテンシャルの関係 2.様々なカラーチャンネルの温度依存性 3.テーラー展開法による有限密度下(mq)におけるクォーク間ポテンシャル • によりシミュレーション結果を再現 : クォーク間自由エネルギー 近距離: 媒質の影響をうけない 中距離: 遮蔽効果をうける(温度に依存したデバイ長) 遠距離: 閉じ込め項の消失、相互作用のないクォーク2体系に • 1つのグルーオン交換描像に基づいたカシミアスケーリングによる再現 • mD(T ) は非摂動的な寄与が支配的 • クォーク・反クォーク間相互作用 弱まる • クォーク・クォーク間相互作用 強まる クォーク間ポテンシャル における非自明な密度効果
クォーク間ポテンシャル QCD媒質中の静的なクォーク (Q)・反クォーク(Q) 間相互作用 有限温度下におけるクォーク間ポテンシャル 予想されるポテンシャルの振舞い • T = 0, • T > 0, 温度揺らぎにより弱くなる, • クォーク対生成による弦消失 • T > TC , QGP中で遮蔽効果が現れる 格子QCDシミュレーションによる研究アプローチ • T= 0におけるクーロン + 線形の検証 • V(r,T = 0)V(r,T )の関係 • 遮蔽効果の解析 • さまざまなカラーチャンネル(QQ間やQQ間) • の相互作用 • テーラー展開法による有限密度への発展
ポリヤコフ線 : 位置x にある静的なクォーク 有限温度下でウィルソン・ループと類似の演算子 クォーク間自由エネルギー 静的なクォーク間相互作用を特徴付けるためには・・・ T = 0 静的なクォーク間ポテンシャルBrown and Weisberger (1979) ウィルソン・ループ演算子 T > 0 静的なクォーク間自由エネルギーNadkarni (1986) 有限温度下でのクォーク間ポテンシャルの候補 クーロンゲージにおけるカラー1重項に射影されたポリヤコフ線間の相関関数 期待されるクォーク間自由エネルギーの振舞い: • 短距離r : F1(r,T)~V(r)(媒質の影響をうけないため) ウィルソンループとの整合性 • 中距離r : プラズマによる遮蔽効果 • 遠距離r : 相互作用のないクォーク単一の自由エネルギー
数値シミュレーションの結果 1.T = 0とT > 0のクォーク間ポテンシャルの関係 2.様々なカラーチャンネルにおけるクォーク間ポテンシャル 3.テーラー展開法による有限密度下(mq)におけるクォーク間ポテンシャル Nf = 2+1 full-QCD シミュレーション 動的なクォークの寄与を取り入れた計算 • 格子サイズ: Ns3 x Nt = 323 x 12, 10, 8, 6, 4 • 温度:T ~ 200-700 MeV(非閉じ込め相) • 格子間隔:a = 0.07 fm • 動的クォーク質量*: mp/mr = 0.6337(38), • mK/mK* = 0.7377(28) *CP-PACS & JLQCD Coll., PRD78 (2008) 011502. 6
T = 0でのクォーク間ポテンシャル 格子サイズ283 x 58上の CP-PACS & JLQCD Coll. による計算 現象論的ポテンシャルによる再現 フィットの結果 =近距離でのクーロン項 +遠距離での線形項 +定数項 7
近距離領域 F1(r,T) は温度によらず V(r) = F1(r,T = 0) に収束する 近距離の物理は温度に依らない 自由エネルギーのT = 0との整合性 T > 0でのクォーク間ポテンシャル(自由エネルギー) T ~ 200 MeV: 0.3 fm でF1がVから離れる T ~ 700 MeV: 0.1 fm で F1が V から離れる WHOT-QCD Coll. Nucl. Phys. A830 (2009) 247C WHOT-QCD Coll. Phys. Rev. D75 (2007) 074501 F1(r,T ) が V(r,T = 0)から離れる距離 デバイ遮蔽質量(長) (熱媒質の寄与を受ける距離) により特徴づけられる によりフィットした結果 矢印
T > 0でのクォーク間ポテンシャル(自由エネルギー) 2FQ(T ) = 2 x (クォーク単一の自由エネルギー) 遠距離領域 F1(r,T)は平らになり、線形項は現れない熱媒質の効果により閉じ込めが消失 遠距離でポリヤコフ線間の相関が消失する場合 遠距離でF1は 2 x(クォーク単一の自由エネルギー)に収束する
数値シミュレーションの結果 1.T = 0とT > 0のクォーク間ポテンシャルの関係 2.様々なカラーチャンネルにおけるクォーク間ポテンシャル 3.テーラー展開法による有限密度下(mq)におけるクォーク間ポテンシャル 10
QQ相関: • QQ 相関: 様々なカラーチャンネルにおけるクォーク間ポテンシャル QGP中では様々なカラーチャンネル間の相互作用が誘起される カラーチャンネルの分割 ポリヤコフ線相関の射影Nadkarni (1986) それぞれのカラーチャンネル相関の定義が可能 クォーク間ポテンシャルの規格化 カラーチャンネル間の相互作用の大きさを比較
QQポテンシャル QQポテンシャル 様々なカラーチャンネルにおけるクォーク間ポテンシャル ・温度の増加が弱くなる ・1C, 3*C: 引力, 8C, 6C: 斥力 1つのグルーオン交換描像 カシミアスケールと一致 c.f.) カシミア係数 デバイ遮蔽質量は 非摂動的寄与が支配
数値シミュレーションの結果 1.T = 0とT > 0のクォーク間ポテンシャルの関係 2.様々なカラーチャンネルにおけるクォーク間ポテンシャル 3.テーラー展開法による有限密度下(mq)におけるクォーク間ポテンシャル 13 13
有限密度下 (mq) におけるクォーク間ポテンシャル • ビッグバン後の初期宇宙 • 相対論的重イオン衝突実験 低密度 低密度領域にはテーラー展開法が有効 0 < mq/T << 1 におけるQGPの性質の解明 クォーク間ポテンシャルの2次展開 QQポテンシャル (1c, 8c)QQポテンシャル (3*c, 6c) QQポテンシャルはmq→ -mqで不変なため、 奇数次は現れない
0 < mq /T << 1において は弱まる QQポテンシャル カラー 1c重項: 引力 カラー8c重項: 斥力
0 < mq /T << 1において は強まる QQポテンシャル カラー3*c重項:引力 カラー6c重項: 斥力
有限密度下 (mq) におけるクォーク間ポテンシャル QQポテンシャル(1c, 8c) QQポテンシャル (3*c, 6c) クォーク間ポテンシャルの引力チャンネルに注目すると・・・ メソン内のクォーク相関 (1c) 弱まる @0 < mq /T << 1 ダイクォーク相関(3*c) 強まる • 密度効果でポテンシャルが弱まるのは自然? • ダイクォーク強相関のメカニズムとは?? • 高密度ダイクォーク相関によるカラー超伝導相の解明に関係???
Summary クォーク・グルーオン・プラズマの内部の性質クォーク間ポテンシャル 1.T =0と T > 0のクォーク間ポテンシャルの関係 2.様々なカラーチャンネルの温度依存性 3.テーラー展開法による有限密度下(mq)におけるクォーク間ポテンシャル • によりシミュレーション結果を再現 : クォーク間自由エネルギー 近距離: 媒質の影響をうけない 中距離: 遮蔽効果をうける(温度に依存したデバイ長) 遠距離: 閉じ込め項の消失、相互作用のないクォーク2体系に • 1つのグルーオン交換描像に基づいたカシミアスケーリングによる再現 • mD(T ) は非摂動的な寄与が支配的 • 今後の展望 • クォーク3体力(バリオン) 強まるか? • 相転移前後のポテンシャルの振舞い 閉じ込め-非閉じ込め物理現象の解明 • クォーク・反クォーク間相互作用 弱まる • クォーク・クォーク間相互作用 強まる クォーク間ポテンシャル における非自明な密度効果