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不況は人災です!. 松尾 匡 ( 立命館大学経済学部 ). 宣伝. 拙著 『 不況は人災です!──みんなで元気になる経済学・入門 』 筑摩書房 , 1600 円 + 税. 戦後憲法のせいだ!. 戦後教育のせいだ!. 男女平等のせいだ!. 外国人増加のせいだ!. 景気は大事. 親の道徳観が崩壊してきている!. 性道徳が崩壊している!. 犯罪が増えた!. 家族の崩壊が進んでいる!. 少年犯罪が増えた!. ちがいます!. おおかたのところは不況が原因です。. 失業率が減ると同時に犯罪率も減る.
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不況は人災です! 松尾 匡 (立命館大学経済学部)
宣伝 • 拙著『不況は人災です!──みんなで元気になる経済学・入門』 筑摩書房, 1600円+税
戦後憲法のせいだ! 戦後教育のせいだ! 男女平等のせいだ! 外国人増加のせいだ! 景気は大事 親の道徳観が崩壊してきている! 性道徳が崩壊している! 犯罪が増えた! 家族の崩壊が進んでいる! 少年犯罪が増えた!
ちがいます! おおかたのところは不況が原因です。
失業率が減ると同時に犯罪率も減る 平成不況期は、失業率が増えると間もなく犯罪率も増え 景気は大事 • 失業が増えると犯罪が増える要因 間をおいて犯罪率が下がる 間をおいて犯罪率も上がる 失業率が下がると 失業率が上がると
景気は大事 • 殺人は大きく見て減っているが… 殺人認知件数は年平均30件減少している!
景気は大事 • トレンドを除くと、失業が増えると増える
景気は大事 • 求人が多いと少年犯罪は減る
ちなみに • 少年凶悪犯罪は長期的に激減している 1960年がピーク(少年人口は90年より62万人少なかった) 『反社会学講座』第2回「キレやすいのは誰だ」よりhttp://pmazzarino.web.fc2.com/lesson2.html
景気は大事 • 景気が悪くなると女は身体を売る人が増える リーマンショック後の失業率急増にはついていっていない
景気は大事 • 景気が悪くなると男は自殺する人が増える
景気は大事 • 特に中高年男性は失業率にも倒産数にも合う 2012年版『自殺対策白書』より
景気は大事 • 近年は学生の自殺が増加していた 2012年版『自殺対策白書』より
景気は大事 • 中でも「就活自殺」が急増していた
景気は大事 • 近年の大学卒業生の四割は就職できなかった
← 景気拡大時06年11月5日の日経記事 景気は大事 景気のせいだった! • ニート・フリーターがバッシングされたが・・・ ここにフリーターの推移のグラフ 前回就職氷河期卒業のフリーターの高年齢化が深刻な問題
景気は大事 • エネルギー、タンパク質の平均摂取量は低下し続けている。 • 現在のエネルギー摂取量は敗戦後すぐの値以下。タンパク質は1950年代初頭のレベル。
景気は大事 • 20代を見るとやはり失業率に連動 • 今世紀に入って以来、厚生労働省基準の摂取量に満たない。
景気は大事 • 20代を見るとやはり失業率に連動
景気は大事 • エネルギー節約率(実質GDP当たりのエネルギー消費量の年減少率)は、1年前の民間企業の設備投資の増加率に連動する。
景気は大事 • 景気が悪いと、エネルギー節約技術導入のための設備投資が興らない。
横浜市の人口:約370万人 茨城県の人口:約295万人 広島県の人口:約284万人 景気は大事 • 近年まで全国の完全失業者は約300万人いました。(この3月は280万人) • 約300万人というのは、 画像はウィキペディアより
景気は大事 • 景気が悪くなると労働運動は停滞する 明らかな逆相関 自由度修正済R2=0.7473係数のp値9×10-17 (ただし、ダービンワトソン値が低い問題あり。労働者の戦闘性には慣性がある?) 1953-2004(52年分)
景気は大事 • 景気が悪くなると政治は右傾化する 参議院全国区(比例区)の左派政党得票率と失業率の相関1953-2010(20回分)ただし2010年の失業率は1月から11月までの月次速報値の平均 1989年「土井ブーム」異常値なのでダミー 「左派政党」=社会党(右社、左社)、共産党、労農党、社会市民連合、革新自由連合、社民連、平和・市民。(他は詳細データなし) 明らかな逆相関 自由度修正済R2=0.6827失業率係数のp値0.00079 (ダービンワトソン値は良好)
景気は大事 公務員だ • 景気が悪くなると政治は右傾化する 在日外国人だ。 俺達を犠牲にしていい目を見ているヤツらがいる。 正社員組合だ。 生活保護受給者だ ここに新大久保反韓デモの写真 外国だ
景気は大事 • 景気が悪くなると 犯罪が増える 少年犯罪が増える 給食費未納が増える 身売りが増える 親父の自殺が増える 離婚が増える 労働運動が停滞する ここにナチスドイツ軍と大日本帝国軍の写真 政治は右傾化する
なぜ景気が悪くなったのか 人災です! 明らかに意図的なケースも・・・
小泉改革不況とその後の「回復」 • 2001年ジェノバサミットでの記者会見発言 「景気が回復したら、改革する意欲がなくなってしまう。……ある程度の低成長は覚悟して、『改革なくして成長なし』という方針通り選挙後もやっていこうと思っている。」 ここに小泉首相の写真
その結果・・・ • 大失業時代の到来 2002年完全失業率5.4%完全失業者数359万人
天井の成長 ※ このグラフはイメージです。 現実の成長 時間 「長期」の成長と「短期」の成長 • 両者の成長政策は違う 短期の成長 商品を買う側(需要側)で決まる。 需要が少なければ、人手や設備が余る。→ 不況、失業→ 需要を拡大する政策
天井の成長 ※ このグラフはイメージです。 現実の成長 時間 「長期」の成長と「短期」の成長 • 両者の成長政策は違う 長期の成長 商品を売る側(供給側)で決まる。 人手を雇いつくした、経済の「天井」の成長 小泉改革の目指したのは、こちらの成長の引き上げ
「短期」の成長を高めるのがケインズ政策──総需要を拡大しよう「短期」の成長を高めるのがケインズ政策──総需要を拡大しよう • ジョン・メイナード・ケインズ(英)『一般理論』(1936年) • 資本主義経済では放置すると大量失業が出たままになって、市場の自動調整では解消されない。 • 不況の時には、政府が財政支出を行って景気を回復させ、失業を解消しなければならない。 ケインズの写真 → ニューディール政策(米ルーズベルト政権)で採用
「天井」の成長率を上げる政策 ──「供給力を高めよう」 「天井」の成長率を上げる政策 ──「供給力を高めよう」 • 「新しい古典派」経済学の見立てによれば • 自由な市場経済はいつも「天井」付近にいる。 ∴ 失業者は、ワザと働かない人かミスマッチ。 • 1990年代の日本経済の停滞は生産性が上昇しなかったのが原因。 • ここから導きだされる政策は 供給能力を高める政策!
「天井」の成長率を上げる政策 ──「供給力を高めよう」 「天井」の成長率を上げる政策 ──「供給力を高めよう」 • 小泉「構造改革」 • 規制緩和(雇用規制の自由化など) • 財政削減(「三位一体改革」など) • 民営化(郵政事業、道路公団) 小泉首相の写真 「小さな政府」へ
この結果、需要側で起こること • もともと不況だった • これらの政策はさしあたり需要を冷え込ませる • その上労働生産性が上がると… 失業の増大
就職氷河期がやってきた フリーター急増 大卒内定率と大卒求人率の推移グラフの画像 フリーターの推移グラフの画像
でも、そのあと、景気回復したよね 戦後最長の景気拡大だったって。 小泉改革の成果じゃん。 ちがいます!
前回の景気回復をもたらしたのは • 2003年3月日本銀行福井俊彦総裁就任→「量的緩和」(金融緩和のすごいやつ)本格化 オイルショック頃以来の高い伸び率 日銀が出したおカネの伸び率
量的緩和の効果はあったか? • 世の中に出回るおカネの量はあまり増えなかった。 • 実際の物価もデフレのままだった。 じゃあ、効果なかったんじゃん しかし • 人々の予想に影響した。
デフレ デフレが平成不況の元凶 • 物価が下がり続けた。=「デフレ」
デフレが平成不況の元凶 • 支出に影響する利子率は、実質利子率。 実質利子率= 名目利子率 − 予想インフレ率 デフレが予想されているときは 実質利子率= 名目利子率 + 予想デフレ率
何年かしたら我が社の製品も値上りするから借金返すのは楽になるわ。何年かしたら我が社の製品も値上りするから借金返すのは楽になるわ。 よし、今設備投資しよう! なぜなら、インフレが予想されるときには、 利子率が下がったのと同じ効果 でも、ぼやぼやしてると値上りで工場建設費が高くなるわ 今ならまだ鋼材の値段も高くない。 住宅や耐久消費財なども同様
もう少し待ったらいろいろ値下がりして工場建設費は安くなる。もう少し待ったらいろいろ値下がりして工場建設費は安くなる。 今借金したら、将来我が社の製品も値下がりするから借金返すのは大変になるわ。 設備投資は先送りしよう。 デフレが予想されるときには、 利子率が上がったのと同じ効果 住宅や耐久消費財なども同様
平成不況で起こったことはこれ 貨幣価値がどんどん上がる もっともっと貨幣で持とう 実質利子率高止まり デフレ予想 支出先送り 予想通りデフレ 総需要不足 貨幣のバブルだ! 札束の写真
好景気になるには、こうなればよい 実質利子率下落 マイルドなインフレ予想 支出前倒し 予想通りマイルドなインフレ 総需要増大
日銀の「約束」 • 消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する。(2001年) • “安定的にゼロ%以上”という意味。(2003年) • 数ヶ月平均してデフレになっていないこと • 政策委員の多くが先行きデフレにならないと予想すること • 経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる
04年3月でプラスで開始 人々のインフレ予想プラスに 04年夏1%に迫る 0.8〜0.9%で推移
それで設備投資が増加した 03年頃から設備投資需要の拡大によって景気回復