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慣習化された表現からの日常概念分析 ~事例研究:日本人の自然観~. 慶応義塾大学 政策メディア研究科 修士課程2年 桝田晶子. 研究概要. 曖昧な日常概念の一つである「自然」という語が用いられる係り受けのうち、登場頻度の高いものを、 TextImi を用いて新聞の投書から抽出・助詞別に整理し「自然」の言語使用からその概念を明らかにする. 日常的概念. 慣習的思考や常識化された思考・概念などは、私たちの日々のコミュニケーションなどをはじめとする社会的相互作用を通して形成され継承・再編成されていく 分析対象となる概念が どう語られているか から推測.
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慣習化された表現からの日常概念分析 ~事例研究:日本人の自然観~慣習化された表現からの日常概念分析 ~事例研究:日本人の自然観~ 慶応義塾大学 政策メディア研究科 修士課程2年 桝田晶子
研究概要 • 曖昧な日常概念の一つである「自然」という語が用いられる係り受けのうち、登場頻度の高いものを、TextImiを用いて新聞の投書から抽出・助詞別に整理し「自然」の言語使用からその概念を明らかにする
日常的概念 • 慣習的思考や常識化された思考・概念などは、私たちの日々のコミュニケーションなどをはじめとする社会的相互作用を通して形成され継承・再編成されていく 分析対象となる概念が どう語られているかから推測
従来の社会研究 • データアベイラビリティの問題 • 調査対象が少数・特定の場合が多い • 大量のテクストデータを処理する方法・理論の問題 • 必要に応じて調査対象を不特定多数に拡大 • TextImiの支援により大量のテクストデータを「人々にとっての意味」を重要視しつつ処理が可能
データソース • トピックが指定されていたり時事性に左右されすぎているデータは不適切 • 新聞の投書から「自然」を含むセンテンスを機械的に抽出
分析手法 • TextImiを用い基礎意味チャンクを抽出・集計 • 複数回登場する基礎意味チャンクを人々に共有されている可能性が強い慣用的表現(スクリプト)とみなす • スクリプトを助詞別に集計し考察
従来言われてきた「日本人の自然観」 • 西洋的な「自然」概念 physisを語源としキリスト教の影響から自然は人間と対峙するものという概念が生まれる • 東洋的・日本の「自然」概念 日本語の自然は、中国の「自然」を移入。道家思想の影響もあり自然と人間は合わせて一つの有機体という考え。もともとは状態を示す言葉だが明治期に名詞としての用法が普及。
分析結果1:助詞「は・が」 計156件
助詞「が・は」スクリプト グループ集計グラフ助詞「が・は」スクリプト グループ集計グラフ
分析結果2:助詞「を」 計259件
分析結果3:助詞「に」 計190件
補足 「自然」を修飾する語の集計(一部) 状態を示す「自然に」 スクリプト集計(一部)
考察 「自然」は自律的存在である 人に脅威をもたらすような恐ろしい存在ではなく 身近で親しみのある肯定的存在 しかし一方では対象化・客体視する スクリプトも多数ある 自然を自律性を持つべきものと捉え また一体感を感じている一方で 我々は自然を対象化・客体視している
まとめ • 分析結果はこれまでの日本人の自然観に関し言われてきたものと一致するところはあるものの、そうとは言い切れない「自然」を破壊対象ともみなす現代的意味が抽出された • 人々にとっての意味に直結したデータに基づいて論じることが可能 • TextImiを使用したスクリプト分析は日常的文化研究にもつながる
展望・課題 • 分析手法及びデータ・解釈の妥当性の検討 • 複数のターゲット語の分析、「自然」概念の拡張・深化 • 他分野との連携を図り、文化研究に手法的新展開をもたらし包括的な日常的文化研究に向けた学際的研究を目指す
主な参考文献 • 『近代における日本人の自然観-西洋との比較において-』 (「日本人の自然観」伊東俊太郎編収録) 渡辺正雄 河出書房新社1995年 • 『日本人の自然観』(寺田寅彦随筆集 第五巻収録) 寺田寅彦岩波文庫1948年 • 『自然・一語の辞典』伊東俊太郎 三省堂 1999年 • 『翻訳の思想~自然とnature~』柳父章 平凡社 1977年 • 『中国思想における自然と人間』栗田直躬 1996年 • 『日本人の心』相良亨 東京大学出版 1984年 • 『広辞苑第五版』岩波書店 2002年 • 『意味づけ論の展開』深谷昌弘・田中茂範 紀伊国屋書店 1998年 • 『コトバの意味づけ論』深谷昌弘・田中茂範 紀伊国屋書店 1996年