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I :線吸収 2006年12月11日 . 単位名 学部 : 天体輻射論 I 大学院:恒星物理学特論 IV 教官名 中田 好一. 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつけます。 レポート出題は今日が最終回です。. 授業の内容は下の HP に掲載されます。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html. 休講:1月15日、1月29日.
E N D
I:線吸収 2006年12月11日 単位名 学部 :天体輻射論I 大学院:恒星物理学特論IV 教官名中田 好一 授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。 成績は「レポート+出欠」でつけます。 レポート出題は今日が最終回です。 授業の内容は下のHPに掲載されます。 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html 休講:1月15日、1月29日
I.1.古典的双極子による吸収 p p p 固有振動数νoの双極子モーメント p=‐qz が密度Nで散らばる媒質を考える。 この媒質の誘電率をεとすると、 εE=E + 4πNp=(1 + 4πNα)E である。 この媒質を振動数νの電磁波Eが伝わる時、電磁波に起こる変化を求めよう。 入射電磁は真空中 (屈折率m=1)で E=Eo exp[ 2πi(νt – kx)] 媒質(屈折率 m=n-iκ)中で E=Eo exp[ 2πi(νt – mkx)] = Eo exp[2πi(νt – nkx+iκkx)] 電荷qの運動は、 γ=g/m, (2πνo)2=K/m, と置き、
-q z q z=A exp(i2πνt)とおいて、(-(2πν)2+i2πγν+(2πν0)2 ) A= -(qEo/m) ν=νoで共振がおき、振幅が大きくなる。 双極子モーメントp=-qzは 従って、p=αE, (α=感受率 susceptibility) とおくと、
次に、双極子モーメントpが密度Nで存在する媒質の誘電率εを求める。次に、双極子モーメントpが密度Nで存在する媒質の誘電率εを求める。 εE=E + 4πNp=(1 + 4πNα)E ε=誘電率(dielectric constant) 複素屈折率 m=n-iκ複素誘電率 ε=m2=(n-iκ)2 ( refractivity) (dielectric constant) 星間空間では、誘電率ε=1+Δεとすると、Δε<<1である。 したがって、m=1+(Δε/2)と近似できる。 mを実部と虚部に分けて、
上ではν=ν0付近のみを考えて、(νo 2 –ν2)=2ν0(νo –ν)と近似している。 真空中(m=1)で E=E0exp[ 2πi(νt – kx)] の電磁波が 屈折率 m=nー iκ の空間に入ると、 E=E0exp[ 2πi(νt –mkx)]= E0exp[ -2πκkx)]exp[ 2πi(νt –nkx)] となる。これは減衰する電磁波を表している
X -2(γ/4π) 0 2(γ/4π) (νo –ν) (Nq2/mνoγ) 媒体の 複素屈折率 m=n-iκ κ 0 n-1 E=Eo・exp(-2πκkx)・ exp[ 2πi(νt – nkx)] E=Eo exp[ 2πi(νt – ikx)] |E|2=Eo2 |E|2=Eo2exp( -4πκkx)
D σ(ν)=双極子1個の吸収断面積 、 N=双極子の数密度とすると、 |E|2=Eo2 exp( -Nσ x) である。 前ページの|E|2=Eo2exp( -4πκkx) と比べると、 4πκ(ν)k(ν)=4πκ(ν)(ν/c)=Nσ(ν) [復習]κとσの関係 σ=吸収断面積( m2 )n=粒子数密度 (m-3) N=nSD= S×Dの筒内粒子数 透かして見ると、Sの内不透明部分の面積X=Nσ = nSDσ 入射光線F=ISが距離Dを通過する間にX/Sが失われるから、 dI=-I(X/S)=-I(nSDσ) /S= -I nσD=-IκD S
I.2.振動子強度 (Oscillator Strength、f-value) σ(ν)=(q2/mc) (4π/γ) / {1+[(νo –ν)/(γ/4π)] 2} の双極子が数密度nで 分布する媒質を考える。厚みLの媒質を通過した光は、 I´(λ)=I(λ)exp(-nLσ(ν)) I´(λ) L I(λ) I(λ)-I´(λ)=I(λ)[1-exp(-nLσ(ν))] 弱吸収では、 [I(λ)-I´(λ)] / I(λ) = nLσ(ν) Fc 等値巾 (Equivalent Width) W=∫ [I(λ)-I´(λ)] / I(λ) dλ 弱い吸収では上式より、 W= ∫nLσ(ν)dλ =nL∫σ(ν)dλ Fλ Wλ F=0 λ
吸収断面積の積分からはγが消える σ(ν) a π ( )d = ( ) ∫σ ν ν σ ν f[2mc /(h /4 ) ] 3 2 γ π a 2 fc/ c 2 3 π α π λ =( q /mc)f 2 π o-2 /4 o- /4 o o+ /4 o+2 /4 ν γ π ν γ π ν ν γ π ν γ π 2 /4 γ π νo-2γ/4π νo-γ/4π νo νo+γ/4π νo+2γ/4π 吸収断面積σ(ν) (q2/mc)(4π/γ) 積分値= (πq2/mc) はγに依らない。 γ/2π
結局、等値巾Wは吸収が弱い近似で計算すると、結局、等値巾Wは吸収が弱い近似で計算すると、 で、どの吸収線も強度は一定となる。しかし、実際には吸収線毎にその強度は様々な値を取る。古典的電気双極子モデルではこの違いを説明できなかった。 量子力学によって電気双極子の吸収を計算すると、古典電磁気学が与えた吸収断面積に f という係数をかければよいことが分かる。 したがって、量子力学的双極子による吸収断面積は f=oscillator strength またはf-値( f-value) 。 また、等値巾Wは
概算の場合は、吸収線ピークの吸収断面積は線幅Dを使って、概算の場合は、吸収線ピークの吸収断面積は線幅Dを使って、 σp=(πq2/mc) (λ2/c) f/D=2.654・10-2(cm2sec-1)f・(λ2/Dc) Hα: λ=0.65μ=0.6563・10-4cm D=0.0001μ=10-8cm c=2.998・1010cm/secf=0.6407 を代入すると、 Hβ: λ=0.4861μ=0.4861・10-4cm D=0.0001μ=10-8cm c=2.998・1010cm/secf=0.1193 を代入すると、
振動子強度の例 n=2 l=1 S=1/2 L=1 g=4 n=2 l=0 S=1/2 L=0 2P3/2 g=2 g=2 2P1/2 2S1/2 n=1 l=0 S=1/2 L=0 2S1/2 g=2 例1:Lα線 g (1s2S1/2) f(1s2S1/22p2P1/2)=0.2774, f(1s2S1/22p2P1/2) =0.1387 g (1s2S1/2) f(1s2S1/22p2P3/2)=0.5547, f(1s2S1/22p2P3/2) =0.2774 g (n=1) f(n=1n=2)=0.2774+0.5547=0.8321, f(n=1n=2) =0.4161 selection rules Δl=±1 ΔS=0、ΔL=0、±1、 ΔJ=0、±1 (J=0J=0、 L=0L=0を除く)
g=6 g=4 g=4 3d2D5/2 g=2 3d2D3/2 3p2P3/2 g=2 3p2P1/2 3s2S1/2 2p2P3/2 2p2P1/2 2s2S1/2 g=4 g=2 g=2 例2:Hα レベル間遷移(ライン)のf-値 ターム間遷移(マルチプレット)のf-値 transition gLfLU gL fLU 2s2S1/23p2P1/2 0.5796 2 0.2898 2s2S1/23p2P3/2 1.1592 2 0.5796 2p2P1/23s2S1/2 0.05434 2 0.02717 2p2P3/23s2S1/2 0.10468 4 0.02717 2p2P1/23d2D3/2 2.782 2 1.391 2p2P3/23d2D3/2 0.5564 4 0.1392 2p2P3/23d2D5/2 5.008 4 1.252 transition gLfLU gL fLU 2s3p 0.8694 2 0.4347 2p3s 0.08151 6 0.01358 2p3d 4.6732 6 0.6955 Hα線のf-値 23 5.1241 8 0.6405
I.3. Voigt Profile 速度Vで動いている原子に、静止系で振動数νの光が当たる。原子は光の振動をνDと見る。 v=V ν (νD-ν)/ν= V/cドップラーシフト νD=ν+(V/c)ν=ν+D 静止している原子の吸収断面積は、 速度分布 f(V) で動く原子の 平均吸収断面積σT(ν)は ? 1.速度Vの原子の吸収断面積 σV(ν)=σ(νD) ここで、Vは光と同じ方向の速度成分であることに注意。
2.速度分布 f(V)、∫f(V)dV=1で規格化、 の原子の平均吸収断面積は σT(ν)=∫σV(ν)f(V)dV=∫σ(νD)f(V)dV で与えられる。 D=(V/c)ν なので、 ただし、
3.σT(ν)=∫σ(νD)f(V)dV をDの積分で表示すると、3.σT(ν)=∫σ(νD)f(V)dV をDの積分で表示すると、 4.νDで規格化する。
νD=熱運動に よるドップラー巾 = Voigt function ∫V(u,a)du=1 =中心周波数との差 =吸収線自然巾 =ドップラーシフト 熱運動をする気体原子の平均吸収断面積σT(ν) σT(ν) ドップラー 核 ローレンツ ウィング a=0 a=0.03 ν
Voigt関数の性質 (1)a<<1の場合 (自然巾<<熱運動の巾、大抵の吸収線では成立) H or G (2) 1/(aπ) 2a x ‐u
(3) H(u=0) << G(x=-u) 、 大体 u<≒1、 の領域では 原子の熱運動によるドップラーシフトが支配的でガウス型のプロファイルとなる。吸収線の中央部分なので、ドップラーコアとも呼ばれる。 (4) H(u=0) >> G(x=-u) 、大体 1<<u、の領域では 吸収線中心から離れるとドップラーシフトの影響が弱くなり、静止原子のローレンツ型プロファイルが再び出現する。
I.4. 線形大気での吸収線形成 吸収線形成を簡単なモデルで考えるために、次のような沢山の仮定をする。 (1) 局所平衡(LTE) Sλ(τR)=Bλ[T(τR)] (τR=ロスランド光学深さ) (2) エディントンモデル T(τR)4=(3/4)Te4 ( τR+2/3) (3) 線形大気 Sλ(τR)=Aλ+ Bλ・τλ 生憎、(1)と(3)は厳密には両立しない。そこで、(1)をτR=0のまわりで一次式で展開して近似的に(3)と考える。
したがって、(3)において、 と見なせば、(3)を(1)と両立させうる。 線形大気S(τ)=A+Bτの大気表面からのフラックスは F=π[A+B・(2/3)]=πS(τ=2/3)である。したがって、 または、 この式から分かるように、Fλ=α+(β/τλ)の形をしていて、 τλが大きい所ではFλが小さくなる。これが、吸収係数が大きい波長で吸収線が現れる原因である。
もう少し物理的に考えると。 吸収係数が次の図のように、λ=λLで盛り上がっているとする。 λLでは吸収が強いので、浅いところでτL=2/3に達する。浅いためにそこの温度は低い。 κλ 浅いので温度が低く、フラックスが小さい。 深いので温度が高く、フラックスが大きい。 λL τR= 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 大気表面 τλ=2/3 λ
吸収係数と吸収スペクトルの関係をもう少し調べてみよう。吸収係数と吸収スペクトルの関係をもう少し調べてみよう。 λ= λLの付近で、κ= κC+κLとする。 κ(λ) κC λ λL に注意して、前々頁のFの式を書き直すと、
前頁の式を検討すると、まず、下から2行目に出てくる前頁の式を検討すると、まず、下から2行目に出てくる はλL付近での連続スペクトルとなっていることがわかる。 連続スペクトルの強さは、 κCとκRの強さの比で決まる。 κR< κC Fo<Fe=πB(Te) κR> κC Fo>Fe=πB(Te) 次に下から2行目の最後の項 は、吸収線を表す。吸収が弱い(κL<κC)場合、吸収の深さがκLに比例することがわかる。 最後の行の
は吸収が強い場合には、大気の表面(T=To)しか見通せないことを示している。は吸収が強い場合には、大気の表面(T=To)しか見通せないことを示している。 図示すると以下のようである。 弱いライン 大気表面T=To ライン波長で見通せる深さ 連続光波長で見通せる深さ 有効温度T=Teの深さ
強いライン 大気表面(T=To) ≒ ライン波長で見通せる深さ 連続光波長で見通せる深さ 有効温度T=Teの深さ ピュアな吸収の場合、強い吸収の極限はT=Toの大気表面からの輻射がスペクトルの底になる。
吸収線の強度につれての形の変化 Fc(λ) κLと共に深くなる F(λ) ) ) κLが非常に強いと吸収線の底が飽和する Fo(λ) λ
I.5.等値巾 W (Equivalent Width) 吸収線の近くのみを考え、連続吸収の強度κC=一定、吸収線では κλ=κC+κLとする。 Fλ=πBλ[T(τλ=2/3)] であるが、 τλ=(2/3)の深さは連続光ではτC=(2/3)(κC/κλ) < 2/3 に対応する。 弱い吸収ではκL<<κC なので、 展開して、
線輪郭(line profile) Fλ 等値巾 Wλ=∫Rλdλ Rλ Wλ Rλ 1 1 0 0 λ λ
弱いライン: =光球(τC=2/3)までの原子数 ドップラーコア: マクスウェル速度分布: dN=(N/ Vo π1/2)・exp[-(V/Vo)2]・dV ここに、Vo= (2kT/μmH)1/2 V ーー> λ=λo (1+V/c) = λo +D ドップラーシフト分布: dN= (N/λDπ1/2)・exp[- (λ-λo)2/ λD2]・dD ここに、λD= λo・Vo /c
R(λ1) =Dとなるλ1より内側ではR=Dで飽和する。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) 0 λ λo λ1
R(λ1) =Dとなるλ1より内側ではR=Dで飽和する。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) この時期はドプラーコアの吸収のみ で、吸収量Wの増加は小さい。 0 λ λo λ1
ローレンツウィング (Ro>>1) 非常に強いラインでは、ドップラーコアは完全につぶれてしまい、ウイング 部分が飽和するようになる。ウィングの形はローレンツ型。 Fλ /FC 1 D Bλ(τC=0) ――――― Bλ(τC=2/3) 0 λ λo λ1
I.6.成長曲線(Curve of Growth)I.6.成長曲線(Curve of Growth) 弱いライン
ドップラーコア ローレンツウィング
弱ライン、ドップラーコア飽和、ウィング飽和に対するlog(W/DλD )の近似値 (δ/λD=0.1、0.01 )
成長曲線(Λ/λD=0.1 ) 2 Log(W/DλD) 1 0 -1 -2 -2 -1 0 1 2 3 4 5 log X0/D
レポート問題 I 出題12月11日 提出12月18日 レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。 星間ガスは低温なので、可視域ではその放射を無視できる。したがって、星間ガスによる恒星の光の吸収に対する吸収は、I=Io exp(-τ)で表される。 吸収原子のコラム数密度=Nとすると、τ (λ)=Nσ(λ)である。 また、Λ/λD=0.1とする。 授業では温度勾配のある恒星大気での吸収線の成長曲線を扱った。星間空間での 吸収に対する成長曲線を以下の順で考えよ。 1) 吸収が弱いときの等値巾Wを求めよ。 2) Nが増加して、吸収が強くなったときのWの近似式を授業にならって求めよ。 3) この吸収の成長曲線を求め、グラフにせよ。Xoとしてはどんな式が適当か?