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意味分析の方法. 「意味」とは何か. 「意味」「意味表象」とは何を指すか 正確に定義するのは非常に難しい しかし我々の多くは言葉の「意味」を知っているという感覚を持っている. 意味とは何か. 「意味」はどこにあるのか 例えば「りんご」の意味を考えた時何を思い浮かべる? 赤くて丸い果物,甘酸っぱい味,秋のりんご畑,フルーツバスケット … 意味は運用の中にあるという一つの立場 コーパス言語学,認知言語学,機能言語学. 意味分析の方法. ある言葉の運用を観察する ある言葉は他のどの様な言葉と共に用いられるか 名詞⇔動詞,形容詞,名詞 … 動詞⇔名詞,副詞,動詞 …
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「意味」とは何か • 「意味」「意味表象」とは何を指すか • 正確に定義するのは非常に難しい • しかし我々の多くは言葉の「意味」を知っているという感覚を持っている
意味とは何か • 「意味」はどこにあるのか • 例えば「りんご」の意味を考えた時何を思い浮かべる? • 赤くて丸い果物,甘酸っぱい味,秋のりんご畑,フルーツバスケット… • 意味は運用の中にあるという一つの立場 • コーパス言語学,認知言語学,機能言語学
意味分析の方法 • ある言葉の運用を観察する • ある言葉は他のどの様な言葉と共に用いられるか • 名詞⇔動詞,形容詞,名詞… • 動詞⇔名詞,副詞,動詞… • コーパスは運用を観察するための格好のデータ • 語と語の共起(一緒に出現する)関係を調べる • 普段用いている言葉の運用を客観的に見る
「触る(さわる)」と「触れる(ふれる)」 • どちらも対象への接触を表した動詞であるように思えるけれども・・・・
微妙な違い? • 彼はそっと手を伸ばして彼女の肩に触れた • ちょっとだけ接触する感じ? • 彼はそっと手を伸ばして彼女の肩に触った • 持続して接触する感じ? • しかし一方で・・・ • ×ベッドの端が壁に触っている • ベッドの端が壁に触れている • 持続して接触しているけれども・・・
どうやって調べる? • 辞書,文献(意味論系の論文)等,先行研究にあたるものを調べてみる • 自分の直感に働きかけ,どの様な時にその言語表現が使え,どの様な時に使えないか考えてみる(思いつくのが難しければコーパスや小説などを当たってみる) • コーパスにおける運用の分布を確認してみる
辞書的意味によると • 触る・・・ • 接触する,人が手などで物体や人体に意図的に接触する,触れる.物体が人の体に触れる。 • 触れる・・・ • 物と物とが軽く接する.触る.接触する.固形物だけでなく液体や気体についても言う 三省堂『大辞林』より
確かに・・・ • 「触る」は主体,客体のどちらかが人間でないとダメ? • ?冷たい谷川の水にサワル • 冷たい谷川の水にフレル • ×金属は空気にサワルと酸化する • 金属は空気にフレルと酸化する • しかし「意図的な」接触とは?
文例・状況を探してみる • 「しかし,その日はまた長くなりはしないかという不安があった.そこで子どもは誦経する時にも,食事をする時にも,暇さえあれば手を出して,そっと鼻の先にさわってみた.が,鼻は行儀よく唇の上に納まっているだけで,格別それより下へぶら下がってくる気色もない.」(芥川龍之介『鼻』より) • 「さわってみた」の代わりに「ふれてみた」と言えないことも無いが・・・「ふれた」だけで鼻の形がどうなったかを調べることができるか? • テレビのバラエティによく出てくる,目隠し箱の中身当てゲーム
長島(1974)の分析 • 触る・・・ • 主体と客体の両方が人間(人体)であるか,或いはそのどちらかが人間(人体)でなくてはならない • 接触が<強く>,<接触面が広く><持続的>であり,さらに<感触に対する主体の意識>が含まれる • 触れる・・・ • 「触る」の使える文脈でも用いることができ,更に人間以外のものが主体,客体になっても用いることが出来る • <主体の意識とは無関係に><客観的・物理的に>捉え,かつ,その接触の度合は触るよりも<弱く><瞬間的>である
「触る」と「触れる」はどの様に異なる意味を担うか実際の運用(コーパス)から探ってみる「触る」と「触れる」はどの様に異なる意味を担うか実際の運用(コーパス)から探ってみる
接触する主体は? • 「触れる」の主体 • 人間に関わるものも多い • 但し,「体の一部」が多い • 「触る」の主体 • 主体は体の部分ではなく,行為者そのものであることが多い
接触する対象は? • 「触れる」の客体 • 対象は抽象的で,直接的な接触行為でないものも多い(経験等) • 「触る」の客体 • 対象は具体的で、直接的な接触行為であることが多い
どの様な項を取るか? • 「触れる」の項 • 「触れる」対象は「二」 • 「触れる」道具は「ヲ」「デ」 • 「触る」の項 • 「触る」対象は「ヲ」「二」 • 「触る」道具は「デ」
まとめると・・・ • 触れる • <体の部分>や<モノ>が主格になることが多い • <抽象的な対象>が客体となることが多い • <接触の動作>を必ずしも必要としないことが多い • 客体は<二格>で表される • 触る • 行為者である主体そのものが主格になることが多い • <具体的な対象>が客体となることが多い • 接触の動作が想定されることが多い • 客体は<二格>の他<ヲ格>で表されることも多い
触る 触れる 運用から見る「触れる」「触る」の違い • 「触れる」->意図を持った主体の接触行為そのものよりも,接触状況そのものにフォーカスが当たる • 「触る」->意図を持った主体の接触行為そのものにフォーカスが当たる
再び最初の例文に戻って・・・ • ×ベッドの端が壁に触っている • ベッドの端が壁に触れている • 接触状況にフォーカスが当たる場合は「触れる」がしっくりくる(強さや,範囲はそれ程重要でないのでは?) • ?彼はベタベタ彼女の肩に触れた • 彼はベタベタ彼女の肩に触った • 特定のオノマトペの様に動作の様態をマルチモーダルに表現する副詞を合わせた場合は「触る」がしっくりくる
コーパスを用いた分析のメリット • 母語話者の直感とは異なる運用を発見し,意味分析にデータから新たな知見を持ち込むことが出来る • 頻度の分布を観察することで,直感では得られにくい,表現の定着度を分析することが出来る
コーパスを用いた分析の方法論的限界 • コーパスは例文探し&運用の分布の確認には非常に強力なツールであるけれども(そして運用の分布は言語の意味にとって非常に重要なものであるけれども),逆に言うとそれ以上のことは保障しない • コーパス分析から得られた解釈,モデルの心理的妥当性の確保および評価をするためには,合わせて心理実験等の方法を用いた別途分析が必要
練習してみよう • Japanese • 「縁」と「絆」 • 似たような意味を持っていそうだけれど,運用のされかたはどの様に異なるか? • 「世間」と「社会」 • 述語表現や,共に現れる項等に注目? • English • Keepとhold • 時間があったらhaveやtakeも調べてみよう • Speakとtalk • Modifierに注目?