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精神科作業療法の基礎知識. 日本作業療法士協会 現職者研修 加世田病院 堀木周作. Ⅰ 臨床家の「知識」. 臨床での「知識」とはなにか 1) 二つの知識論 2) 知識体験の流れと組織化 3) 精神科作業療法に必要な知識. 1). 二つの知識論. 宣言的知識 :「そもそもそれは何であるのか」ということを明確に宣言する知覚的な知識 操作的知識 : 「どうすればよいのか」に関する行動的な知識 ※ 学究の目的は宣言的知識の正確性を検証し、 新たなる宣言的知識を打ち立てること 。
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精神科作業療法の基礎知識 日本作業療法士協会 現職者研修 加世田病院 堀木周作
Ⅰ 臨床家の「知識」 • 臨床での「知識」とはなにか 1) 二つの知識論 2) 知識体験の流れと組織化 3) 精神科作業療法に必要な知識
1). 二つの知識論 • 宣言的知識:「そもそもそれは何であるのか」ということを明確に宣言する知覚的な知識 • 操作的知識: 「どうすればよいのか」に関する行動的な知識 ※ 学究の目的は宣言的知識の正確性を検証し、 新たなる宣言的知識を打ち立てること 。 ※ 一方、「臨床で役立つのは操作的知識」と言わ れている。
宣言的知識=「わかるため」の知識 • 「患者が抱える問題は~である」「問題の原因は~である」「今後の目標は~である」といった知識のこと。 ※自分は優秀だと思い込んでいる臨床家の多くは、実は宣言的知識だけしかもっていないことが多いと言われている。
宣言的知識の功罪 • 宣言的知識は、前向きで創造的なものであれば、まだましである。→他者の意欲や発想を駆り立てる。 しかし・・・ 「~という制約があるので、それはできない」 「アプローチ上の問題点は人的資源の不足にある」など、行動化しないような方向性の発言や否定的なことばかり宣言する人は、チームの思考を停止させ、リハ・サービス全体の発展を完全に阻害する。
思考の材料としての知識をあやつる操作的知識=「できるため」の知識思考の材料としての知識をあやつる操作的知識=「できるため」の知識 • 課題や目標を「どうやったら実現できるのか」についての知識。 • ケースバイケースに柔軟な切り替えをする。 • 宣言的知識を基に、直感と発想によって発揮される。 • 因果律(~の原因は~)に繋がらない思考。 • 論理的誤謬に陥らない思考。 • 目的に対する「効果的手段を考える」もの。
宣言的知識 VS 操作的知識 • 臨床で求められている知識は操作的知識。 • 宣言的知識を振りかざす「うん蓄」家はウザイ。 • でも、操作的知識を成り立たせている材料は宣言的知識と「ひらめき」。即ち、文献や情報、経験に基づいて知り得た知識と直感や感性。 • 操作的知識は、「対処のためにはどうすればよいのか」を具体的行動に移すための知識。
あなたの知識はどっち優勢? 症例) • 統合失調症、24歳、男性、職歴なし、22歳で入院、時に被害妄想あり、日中は病室に閉じこもったまま過ごす、食事と服薬はNs監視下でOK、毎日10分程度の散歩、会話可能。 • 「2ヶ月後の退院就労」を目標に設定できるだろうか?
専門職にとっての知識と技術 1.臨床家にとって中核となる知識 ①既存の知識・技術 (学校や教科書で学んだ基礎知識) ②文献や情報、経験による知識や技術の組織化 (臨床で得た知識:関係する分野・領域) ③コレクション形成(脈絡的知識の形成) (関連資料・論文、資料選択のセンス、コレクション構築と取捨選択、主題とコンテンツの形成)
専門職にとっての知識と技術 2.現場環境からの知識と技術情報の管理 職場の知識・技術情報の基準や水準、そのネットワーク(勉強会・研修会の実施や参加、情報ネットワークの利用、他職との協力、プライバシーや知的権利の保護etc.)などを知る。 3.情報や知識の流通と管理 知的自由と責任、文化差や価値観差の存在、教育・学習事情、知識格差などに留意して行う。
専門職にとっての知識と技術 4.汎用的・移転可能な知識や技術向上のために ①伝達機能(コミュニケーション:相互、交互、片側)を持つ。 ②情報処理技術(データ処理、統計手法、ネットワーク利用)を得る。 ③知識や技術の管理(管理の理論・手法)を知る。 ④社会的・文化的生活観や価値観の差違を尊重。 (普遍的なものと個人的な見方の存在を知る)
3).精神科作業療法に必要な基礎知識 OT協会が皆さんに求めている知識
基礎知識アウトライン-1/3 評価 • 他部門からの情報:(検査、治療歴、現病歴と日常生活活動、治療方針や看護方針など) • 面接:(主訴、生活機能の履歴や将来への思い、OT参加の意思や意欲、インテークなど) • 観察:状況や場面を限定した観察 • 検査・尺度:→量的指標(量的研究) • 作業を用いた評価:(行動特徴、作業能力、症状との関連、表現されたものなど)→質的指標(質的研究)
基礎知識アウトライン-2/3 • 介入前 全体像の把握:(患者・家族・関係者のニーズ、援助対象となる生活機能、患者の環境・個人因子を考慮) OT計画立案(リハゴール、長・短期目標、作業活動選択、実施方法計画、関与・介入計画) • 介入期 疾患別、時期(相)、クリティカルパスに合わせて
基礎知識アウトライン-3/3 • 関連する制度 診療報酬(厚労省、中央社会医療協議会) 精神障害者保健福祉関連の制度(手帳ほか) 障害者自立支援法(自立支援医療ほか) ※自立支援法はH18年10月から新サービスへの移行期間中:障害福祉計画と医療計画の両面から理解することが必要。 これらは、基本的留意事項として作業療法士に必要な知識。
Ⅱ 臨床での普遍的な知識 1) 契約としての診療報酬とその基準 2) 共通概念と共通言語 3) チームアプローチ 4) 専門職の倫理
臨床家に必要な知識 1.契約としての診療報酬とその基準 2.共通概念と共通言語 「健康」:WHO、 ICF 3.チームアプローチ 4.専門職の倫理
1.診療報酬診療契約と準委任契約 診療契約の流れ • 患者→医療機関に受診を申し込む。 • 医療機関→医療サービスを提供する。 • 患者→反対給付として診療費を支払う。 準委任契約とは・・・ 法的に「~しなければならない」と定められた契約でないが、相手を信頼して仕事を依頼するような場合の契約のこと。
OTの診療報酬と基準 医療機関での作業療法の場合 1)施設基準と人員(入院基本料に係る基準) 2)取り扱い件数と時間 診療報酬請求の常識 専門職への準委任契約(OTを信頼しての契約)であるが、 給付基準は、OTRの個人的善意に基づく価値観ではなく中医協や保険者にある。
個別出来高とDRG、PPS • 現在、OTの診療報酬支払い方式は、各診療行為について評価を行い、個別に行った診療行為の合計額を、診療報酬として支払う個別出来高払い方式。 • 将来:DRG(Diagnostic Related Groups診断関連群)PPS(Prospective Payment System予定定額払い)が導入されるか? →医療保険での作業療法への期待は、明?暗?
OTもサービス契約とすれば・・・ • 成熟社会、情報化社会においては、供給者から需要者への説明・説得性(アカウンタビリティ)や透明な情報提供(トランスペアレンシー)が要求される。その上で、依頼者(患者)が契約を依頼し、或いは選択する。 いわゆるインフォームド・コンセント ↓ 最近では、インフォームド・チョイス
2).共通概念と共通言語共通概念:健康とは2).共通概念と共通言語共通概念:健康とは 1998年~;WHO執行理事会 「健康とは、完全な肉体的、精神的、Spiritual及び社会的福祉のDynamicな状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」とすることを採択し提案。現在も調整中。
共通言語としてのICF • ICF(国際生活機能分類):上田(2001)による
ICFは・・・ • クライエントの生活と人生については、「本人が専門家である」という本人の主観も尊重するスタンス 。 • 専門家の権威主義、パターナリズムからの脱却をめざし、クライエントの自己決定を専門職チームが支える。→専門家は客観的に何が必要かを考える。 → ケースマネージメントの重要性。 • 医療・福祉・介護など各領域連携と共通認識を持つ。 • 病歴ばかりでなく、生活機能の履歴 も捉えることが大切。
例) 社会福祉が考える自立 1.労働的・経済的自立 2.精神的・文化的自立 3.身体的・健康的自立 4.活技術的・家政管理的自立 5.社会関係・人間関係的自立 6.政治的・契約的自立
3).チームアプローチ • チーム医療 医療環境のモデルのひとつ。医療従事者がお互い対等に連携すること患者中心の医療を実現しようというもの 。円環型。 • チームアプローチ(広義) 医療・福祉などの専門家集団の連携に加えて、ボランティア、地域の人々(近所の人)、家族、友人、宗教家などを含む。
チームアプローチは • 保健・医療・福祉分野で活躍する異なる専門職が互いに尊重しあい実践する。 • 医療領域における連携、地域の保健医療福祉計画、保健福祉領域の連携を目指す。 • クライエントの要望や必要により、ボランティア、地域の人々(近所の人)、家族、友人 などにもチームの一員として入ってもらう。
4).専門職の倫理 • 専門職とは高い知識や技術と大きな自由裁量権を持つ「集団」であり、個人というより集団に対して高い信頼が与えられている。これにより、専門職には高い道徳性と公益性が求められる。
専門職の倫理について • 専門職の倫理は専門職として働く人たちの倫理によって支えられている。 • 専門職の仕事は社会に対する影響も大きく、「内」より「外」に開かれた意識を持つべきである。 • また、目的を達成する方法や態度も問題になる。どのような仕方で達成するのか、という部分を「倫理的価値」という。
日本作業療法士協会 倫理綱領 • 作業療法士は、人々の健康を守るため、知識と良心を捧げる。 • 作業療法士は、知識と技術に関して、つねに最高の水準を保つ • 作業療法士は、個人の人権を尊重し、思想、信条、社会的地位等によって個人を差別することをしない。 • 作業療法士は、職務上知り得た個人の秘密を守る。 • 作業療法士は、必要な報告と記録の義務を守る。 • 作業療法士は、他の職種の人々を尊敬し、協力しあう。 • 作業療法士は、先人の功績を尊び、よき伝統を守る。 • 作業療法士は、後輩の育成と教育水準の高揚に努める。 • 作業療法士は、学術的研鑚及び人格の陶冶をめざして相互に律しあう。 • 作業療法士は、公共の福祉に寄与する。 • 作業療法士は、不当な報酬を求めない。 • 作業療法士は、法と人道にそむく行為をしない。
Ⅲ 操作的知識のために・・・ 附1.精神症状と経過 附2.薬物療法 附3.セルフヘルプグループ 附4.就労支援 附5.障害福祉計画 附6.医療計画
附1.精神症状と経過 :精神症状:意識、知能、思考、知覚、感情、意欲、行動、記憶、身体症状として出現する症状(転換、自律神経、心気症状など) Dr:精神機能の異常としてとらえる OT:機能異常を持った生活者としてとらえる Dr:症状→状態像→疾患(診断) OT:活動と参加→生活機能→具体的対策
附2.薬物療法 • 処方された薬から 主作用:医師の見立てを知る。 副作用:身体機能への影響を知る。 • コンプライアンスからアドヒアランスへ。 • 服薬管理指導業務と心理教育との連携。
附3.SHG(セルフヘルプグループ) • SHGにはいろいろなグループがある(障害・難病・不登校・アルコール依存症など) • 患者の思いから出発するものである • かしこい患者にならなくてはいけないことを学習する場である • 当事者にとって専門職は煩わしくもあり、頼りになる存在である • 専門職とSHGは援助特性が違う(専門知識⇔自らの体験) • 専門職の知識、当事者の体験経験の両方の力が必要である • 難病の場合、医療への関心が高い(医者への対峙と依存) • 当事者のQOLを上げるためには様々な面での対応が必要だが、視野が医療にのみ向きがちである • エンパワーメントの土壌としてSHGが必要 • みんなの意見を引き出し、集約していくファシリテーターが必要(一人一人の思いを引き出す必要がある) • 参加者は、セルフヘルプグループ抜きではやっていけない • 当事者参加は当事者が望んでいなければQOL向上に結びつかない • SHG組織は運動体であり、行動することそのものに存在意義がある。
附4.就労支援 • ACT-JとIPSモデルを合体した発想の展開 包括型地域生活支援(ACT-J)プログラム 個別職業紹介とサポートモデル(IPSモデル) →リカバリーモデルに依拠した考え方 意志決定への利用者(当事者)の参加
附5.障害福祉計画 • 地域の受け入れ条件を整える→退院促進 • 入所施設・入院から地域生活への移行促進 サービス量の数値目標を設定し計画的に整備してゆく。 (訪問系・日中活動系・住居系サービス);県・市町村 精神障害者支援体制作り (退院促進事業、住居サポート事業など・・・)
附6.医療計画 • 平均残存率の低下、退院率の向上を目指す。 →精神病床数約7万床の減少促進 精神病床の機能分化強化 入院形態別の退院促進 地域における体制作り