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バイオバンクによる患者の治療および研究プログラムの支援. 国立がん研究センター 日本、東京 2012 年 10 月 25 日 Mark E. Sobel (医学博士) 米国実験病理学会役員 mesobel@asip.org http://www.asip.org/about/executive_officer.cfm. 分子医学の時代. 医療 行為 の変革とそれに伴う人々の不安や期待 分子技術 ヒトゲノムプロジェクト 情報技術. いつの時代にも変革はあった. モルガーニ ( Giovanni Battista Morgagni ) (1682—1771).
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バイオバンクによる患者の治療および研究プログラムの支援バイオバンクによる患者の治療および研究プログラムの支援 国立がん研究センター 日本、東京 2012年10月25日 Mark E. Sobel(医学博士) 米国実験病理学会役員 mesobel@asip.org http://www.asip.org/about/executive_officer.cfm
分子医学の時代 医療行為の変革とそれに伴う人々の不安や期待 分子技術 ヒトゲノムプロジェクト 情報技術
いつの時代にも変革はあった モルガーニ (Giovanni BattistaMorgagni) (1682—1771) 写真: ブリタニカ百科事典, 出典 Dr. Bruce McManus, University of British Columbia
生存不可能であった患者の死因を究明し、臓器の状態を注意深く観察し、そこから得た知識を疾患の予防や治療に生かすことは、医師の究極の目的である。生存不可能であった患者の死因を究明し、臓器の状態を注意深く観察し、そこから得た知識を疾患の予防や治療に生かすことは、医師の究極の目的である。 —オスラー卿(Sir William Osler)(1849–1919)卒業論文 “Pathologic Anatomy”より抜粋
臨床診断のためのゲノムシーケンシング DNAシーケンシングの歴史において、2005年に登場したハイスループット次世代シーケンシング(NGS )の導入は大きな変革をもたらした。
定義 ヒトゲノム ー3ギガバイトの情報からなるヒトの「全ゲノム」 30億のDNA塩基対 46染色体(二倍体ゲノム) 約98%が「遺伝子間」領域(intergenic) 「遺伝子と遺伝子の間」 ジャンクDNA? タンパク質をコードしない ヒトエキソーム ゲノムの2% 22,000遺伝子対 平均で、1遺伝子につき8エクソン(タンパク質コード領域) = 176,000エクソン ヒトトランスクリプトーム( DNA> RNA> タンパク質) 遺伝子発現してRNA転写物になる 細胞に特定の時間に特定の行動をとらせる
定義 遺伝子型 –細胞が持つ能力 ゲノム解析 表現型- 細胞が行っているもの プロテオーム解析 (タンパク質) 生殖細胞か体細胞か? 生殖細胞- 遺伝継承性 肉親や親族への影響 人種への影響 「正常」組織 体細胞- 後天性の突然変異 「病変」組織の使用 近親者への遺伝的影響なし
臨床診断のためのゲノムシーケンシング WGS: 全ゲノムシーケンシング WGA: 全ゲノム解析 生物検体が必要!
リポジトリ それとも バイオバンク? リポジトリは試料を系統的に収集したもの バイオバンクは生物試料のリポジトリー
ヒトバイオバンクの生物検体 組織試料 生検 組織切除(手術) 組織解剖(部検) 血液、唾液、尿、骨髄 関連データ 病歴 環境歴 家族歴 人口統計学的データ(性別、年齢) 試料の入手方法
ヒトバイオバンクの生物検体 新鮮試料 凍結 固定 ホルマリン固定パラフィン包埋( FFPE ) アルコール固定 その他の固定剤
バイオバンクの種類 冷凍室または冷蔵室 スライドグラス標本 組織ブロック( FFPE ) 液体検体(血液、尿…) 口腔(頬)粘膜検体採取 抽出検体(DNA、RNA、タンパク質、他)
誰が関わるか? 提供者 患者 家族 人種 医師 看護師 管理スタッフ 検査技師 倫理的監視
バイオバンクの必要条件 記録管理 関連データ インフォームド・コンセント 検体の使用に関する許可または制限 温度 湿度 明暗条件 アクセス制限 登録者のみ検体取扱いが可能
秘密保持とプライバシー 秘密保持- 患者が医療従事者に提供する情報は非公開であり、第三者への情報の公開に関する方法や時期は制約されるという医学倫理の原則 プライバシー - 自身の情報開示の範囲、時期及び詳細さを決める文化的特徴のある概念 身体的 行動的 医学的
検体の身元特定 • 匿名(Anonymous )- 試料の収集は提供者の身元を明かさずに実施 • 匿名化(Anonymized) –試料の収集は身元のわかる提供者より行ったが、身元の情報は削除 • コード化( Linked ) –試料に簡単には解読できない固有の識別コードがついている • 特定( Identified )–試料に一般的に識別できるコード(名前、病院番号)がついている
オーダーメイドな(精密な)分子医学 • 人々の期待 • 医療の向上 • オーダーメイドな医療 • 人々の不安 • プライバシーの喪失 • 失業 • 保険の損失 • 社会的非難
騒がれる理由 • 被験者及び患者の悪用が知られている • ナシ族の事例 • 放射線実験(米国) • タスキギー梅毒研究 • 囚人及び精神障害者の利用
生物医学研究とバイオバンク:トランスレーショナル・リサーチにより実験室から患者のベッドへ生物医学研究とバイオバンク:トランスレーショナル・リサーチにより実験室から患者のベッドへ 知識の高まり 生物学的プロセスの理解 公衆衛生の向上 新たな診断検査 新たな予後検査 新たなまたは改善された治療
バイオバンクと臨床研究 トランスレーショナル・ リサーチ 医療効果研究 健康政策研究 公衆衛生 患者研究 コスト削減 健康改善 医療機器の臨床試験 診断の臨床試験 ケアモデルの臨床試験 医薬品の臨床試験
トランスレーショナル・リサーチ・サイクル問題解決にバイオバンクは不可欠トランスレーショナル・リサーチ・サイクル問題解決にバイオバンクは不可欠 バイオバンク組織、細胞、体液、 製品、解析データ 手段遺伝学、ゲノミクス、プロテオミクス、画像、生理学、生物物理学、生化学、ナノ技術、インフォマティックス、社会学、疫学、統計学 研究モデルパートナーとしての患者 ヒトの疾患モデル トランスレーショナル・リサーチ・ サイクル 病理生理学および 社会生物学的プロセス 研究における問題 新規指標と標的の同定 テクノロジー・トランスファー バイオマーカーまたは ターゲットバリデーション多重母集団評価、 ハイスループットスクリーニング臨床試験
医学標本の収集と保存が標準化されていないため(写真)、後続の研究が遅れる医学標本の収集と保存が標準化されていないため(写真)、後続の研究が遅れる バイオマーカーへの影響 疾患の断片的な研究の単なる寄せ集め―関連するバイオマーカーは組織的な「ビッグ・サイエンス」のアプローチに取って代わられるだろう(George Poste)
トランスレーショナル・リサーチから臨床実施までの道のりトランスレーショナル・リサーチから臨床実施までの道のり 解析的妥当性– 技術的な実現可能性と最適化 - 試験結果は我々の意図を汲んだものになっているか? 臨床的妥当性- 診断精度 - 試験結果は臨床症状を反映したものになっているか? 感度(検出漏れ) 特異度(誤検出) 臨床的有用性 試験結果は医療上の決断の改善に役立つか? 試験は費用効果が高いか?
オーダーメイド医療の目標 一次治療の50%は効果がない 患者一人ひとりに合った最適の治療 有害事象を最小限に抑える 薬効を最大限に高める より多くの標的薬の開発 適切な薬剤を適切な分量で
腫瘍学への適用 腫瘍ごとに適した治療薬の決定 特定の治療法から最もベネフィットを得ると思われる患者の特定
同じ診断を受けた患者 Howard L. McLeod Institute for Pharmacogenomics and Individualized Therapy UNC – Chapel Hill, NCによるスライド提供
同じ診断を受けたすべての患者 毒性反応者:低用量または代替薬
同じ診断を受けたすべての患者 無反応者: 高用量または代替薬
薬理遺伝学: 薬物応答性に影響する遺伝子変異の研究 • 悪性腫瘍細胞内で特異的に起こる遺伝子変化 • 薬物応答性に影響する標的遺伝子または機能的に関連した遺伝子グループにおける遺伝的変異性
薬理遺伝学: 薬物応答性に影響する遺伝子変異の研究 • 悪性腫瘍細胞内で特異的に起こる遺伝子変化 • エストロゲン受容体の状態 • SERM(選択的ERモジュレーター)による治療 • タモキシフェン • ラロキシフェン • 多遺伝子解析: • OncoType DX 検査 (21遺伝子) • MammaPrint 検査 (70遺伝子) • 上皮成長因子受容体( EGFR )の状態 • HER2/neu(ハーセプチン療法)
薬理遺伝学: 薬物応答性に影響する遺伝子変異の研究 • 悪性腫瘍細胞内で特異的に起こる遺伝子変化 • 薬物応答性に影響する標的遺伝子または機能的に関連した遺伝子グループにおける遺伝的変異性
薬物動態: 薬物に対する体内の反応 • 吸収 –薬物が体内に入ること • 分布 –薬物が体液や組織に分散すること • 代謝 –未変化体から代謝物への変化 • 排泄 –未変化体と代謝物が体外に出ること
薬物動態における代謝:未変化体を代謝物に変化させる薬物動態における代謝:未変化体を代謝物に変化させる • 未変化体の水溶性を高め、排泄をしやすくするため代謝物に変化させる • 生体内活性化: プロドラッグを治療活性を有する化合物に変化させる
チトクロームP450酵素 • スーパー遺伝子ファミリー • 肝臓と小腸で活性化 • タンパク質の吸収スペクトルの特徴( 450 nm )により命名 • ヒトゲノム: 57個のCYP遺伝子 • 15個の遺伝子が薬物動態の代謝に関連 • 薬物代謝全体の75% • 14個の遺伝子がステロールの代謝に関連 • 4個の遺伝子が脂溶性ビタミンを酸化 • 9個の遺伝子が脂肪酸とエイコサノイドの代謝に関連 • 15個の遺伝子の機能は不明
スーパー 遺伝子ファミリー ファミリー サブファミリー アイソザイム 対立遺伝子多型 CYPの命名法 CYP2D6*1 *1 は通常野生型
タモキシフェン 乳がんの治療および予防薬として米国食品医薬品局( FDA )で承認 抗エストロゲン剤 SERM: 選択的エストロゲン受容体モジュレーター
タモキシフェン: 広範な代謝を必要とするプロドラッグ 4-ヒドロキシ タモキシフェン タモキシフェン CYP2D6 微量代謝物 - 効力100倍 CYP3A4/5 CYP3A4/5 CYP2D6 N-デスメチル タモキシフェン エンドキシフェン 主要代謝物- 効力同等 中程度の代謝物- 効力100倍 CYP2D6の遺伝的変異とこの酵素をモジュレートする薬剤は、タモキシフェン療法を受けている患者の治療効果に大きな影響を及ぼす 出典 Goetz, M. P. et al. J ClinOncol; 23:9312-9318 2005
CYP2D6とタモキシフェン • CYP2D6には少なくとも70個の対立遺伝子多型がある • CYP2D6の活性低下 • → タモキシフェンの代謝能低下 • → タモキシフェンへの反応低下 • 対立遺伝子の分類 • 低代謝能 • 中間型代謝能 • 高代謝能 • 超高速代謝能 • 人種差 – • CYP2D6*4 – 低代謝能 • 12% - 21% 北欧人 • 1% - 2% アジア人とアフリカ黒人 • CYP2D6*10 – 中間型代謝能 • アジア人で最もよくみられる対立遺伝子
タモキシフェン副作用 ほてり 子宮内膜がん 血栓塞栓事象
タモキシフェンの副作用と抗うつ剤による治療タモキシフェンの副作用と抗うつ剤による治療 • ほてりはもっともよくみられる副作用 • 抗うつ剤による治療: • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) • CYP2D6活性を阻害 • 強力阻害剤(パロキセチン、フルオキセチン)によるエンドキシフェンレベルの抑制 • 作用の弱い阻害剤(ベンラファキシン)の効果はほとんどなし • 代謝能が低下した患者 • 再発までの時間短縮 • 無再発生存率低下 • 特定のSSRIなどのCYP2D6の強力阻害剤はタモキシフェン療法中の患者には禁忌である
CYP2D6低代謝能患者 • 乳がんと診断された患者はタモキシフェンの代替薬(アロマターゼ阻害薬など)による治療を実施する必要がある • 乳がんの予防には、タモキシフェンの代替薬としてラロキシフェンが有効である 推奨図書: Snozek CLH, O’Kane DJ, and Algeciras-Schimnich A.: Pharmacogenetics of Solid Tumors: Directed Therapy in reat, Lung, and Colorectal Cancer. J Mol Diagn 2009, 11:381-389, DOI: 10.2353/jmoldx.2009.090003
臨床診断のためのゲノムシーケンシング DVAシーケンシングの歴史において、2005年に登場したハイスループット次世代シーケンシング( NGS )の導入は大きな変革をもたらした。
近くの病院で… 治療関連AML患者の全ゲノムシーケンシングにおける新規のTP53がん感受性遺伝子の同定 標的キナーゼ阻害剤に選択的に反応した 腺がんの進展 全エキソームキャプチャーおよび超並列シーケンシングによる遺伝子診断 隠れた融合発がん遺伝子の診断のための 全ゲノムシーケンシング 確定診断の実施:難治性炎症性腸疾患罹患小児における全エキソームシーケンシングの臨床的応用の成功 パーソナルゲノムを組み込んだ臨床的評価 シャルコー・マリー・ツース病患者における全ゲノムシーケンシング
NGS技術 NGS技術は、数千から数百万の比較的短い核酸配列の同時シーケンシングを可能にした。ゲノムの広範な領域のシーケンシングにおいて、桁違いの量の情報を低価格で提供できる。
特別論文 臨床診断のためのゲノムシーケンシングに関する機会と課題 分子病理学会の報告 分子病理学会の全ゲノム解析グループによる本報告は、臨床診断のためのゲノムシーケンシングに関する機会と課題を明らかにする。次世代シーケンシングの臨床適用の現状に即して、分子診断は技術面においてより速くより多くの診断、より多くの情報入手を可能とした。この診断は分子病理学研究における次の論理的段階ではあるが、診断プロセスおよび臨床相関への潜在的効果は莫大であり、臨床的解釈は取り組みがいのある課題である。ここでは急速に進化している技術の概説、適用例の紹介、臨床的有用性、倫理、承諾に関する検討、解析、ポスト解析、職業的意義への取り組みについて報告する。(J Mol Diagn 2012, 14:525540; http://dx.doi.org/10.1016/j.jmoldx.2012.04.006)
組織利用解析の可能性 乳房腫瘍2,000症例のゲノムおよびトランスクリプトームの構造から明らかになった複数の新規サブグループ
基本倫理原則 • 人権尊重の理念 • 公共の恩恵 • 責任ある管理 • 知的自由と責任 • 民主的な審議 • 正義と公平さ
生命倫理研究に関する 大統領諮問委員会 ワシントンDC 2012年10月 http://www.bioethics.gov
ISBER (生物環境リポジトリのための国際協会) International Society for Biological and Environmental Repositories 全世界にわたるリポジトリ間の情報交換 www.isber.org 米国実験病理学会所属
ISBERのミッションISBERは、国際的にアイデアを共有し、バイオバンクとリポジトリ事業により変容する課題に調和のとれたアプローチで対処します。ISBERのミッションISBERは、国際的にアイデアを共有し、バイオバンクとリポジトリ事業により変容する課題に調和のとれたアプローチで対処します。