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ワーク・ライフ・バランスの社会的意義 ~地方都市から男性の働き方を考える~. 日本総合研究所主任研究員 池本美香 E-mail:ikemoto.mika@jri.co.jp 2008年3月21日 広島大学地域経済システム研究センター. 目次. 1.ワーク・ライフ・バランスが注目される背景 2.日本の子育ての現状 3.なぜライフではなくワークに向かうのか 4.ワーク・ライフ・バランスの社会的意義 5.諸外国におけるワーク・ライフ・バランス施策 6.地方都市におけるワーク・ライフ・バランスの可能性 参考文献:
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ワーク・ライフ・バランスの社会的意義~地方都市から男性の働き方を考える~ワーク・ライフ・バランスの社会的意義~地方都市から男性の働き方を考える~ 日本総合研究所主任研究員 池本美香 E-mail:ikemoto.mika@jri.co.jp 2008年3月21日 広島大学地域経済システム研究センター
目次 1.ワーク・ライフ・バランスが注目される背景 2.日本の子育ての現状 3.なぜライフではなくワークに向かうのか 4.ワーク・ライフ・バランスの社会的意義 5.諸外国におけるワーク・ライフ・バランス施策 6.地方都市におけるワーク・ライフ・バランスの可能性 参考文献: 池本美香『失われる子育ての時間』勁草書房、2003年 池本美香「乳幼児期の子どもにかかわる制度を再構築する」日本総研『Business & Economic Review』 2007年12月
1.ワーク・ライフ・バランスが注目される背景1.ワーク・ライフ・バランスが注目される背景 • ワーク・ライフ・バランスとは 仕事と生活(家事・育児・介護・地域活動・趣味・学習等)の調和 仕事時間の長さ+配分の問題(日・週・年・生涯、男女、社会) • 出生率の低下・労働力人口の減少 出生率の回復+女性の就業促進+労働生産性向上 が課題に • 諸外国と比べた男性の労働時間の長さ 女性の育児休業取得率の低さ、出産退職の多さ • 保育サービス整備中心の少子化対策に対する反省 長時間労働のストレス、育児不安の高まり 男性の働き方の見直し、地域の子育て支援の必要性
人口構造の変化(出所:平成18年版少子化社会白書)人口構造の変化(出所:平成18年版少子化社会白書)
少子化対策の流れ 1986年 男女雇用機会均等法 →1989年 合計特殊出生率1.57ショック 1992年 育児休業法(95年より育児休業給付金) 1994年 緊急保育対策(時間延長保育、低年齢児保育など) 2001年 保育所の待機児童ゼロ作戦(認証保育所、預かり保育、定員弾力化、公設民営化等) →「女性の働く権利」を重視した保育サービスの整備が中心 2002年 少子化対策プラスワン(働き方の見直し等) 2003年 次世代育成支援対策推進法(自治体・企業による行動計画策定) 2007年 次世代育成支援対策推進法による企業の認定 2008年 内閣府「仕事と生活の調和」推進室 →ワーク・ライフ・バランスと地域の子育て支援へ
第1子出産前後の女性の就業状況の変化 (資料)厚生労働省「第1回21世紀出生児縦断調査」(2002年)
子どもの出生年別にみた第1子出産前後の妻の就業経歴子どもの出生年別にみた第1子出産前後の妻の就業経歴
2.日本の子育ての現状 • 家庭環境 未婚率の高まり、母子家庭の増加、母親のストレス(理想と現実のギャップ) • 子どもの保育環境 認可外保育所の増加、保育所の定員弾力化、長時間保育、学童保育の大規模化など、保育の質の低下 • 地域環境 近所づきあいの減少、治安の悪化、情報化・ネット社会、環境汚染など
夫(パートナー)が1週間に料理する回数(ニュージーランド・日本)夫(パートナー)が1週間に料理する回数(ニュージーランド・日本)
保育所の定員弾力化を実施している市町村割合保育所の定員弾力化を実施している市町村割合
家族関係社会支出の対GDP比(2003年)家族関係社会支出の対GDP比(2003年)
3.なぜライフではなくワークに向かうのか • 労働・所得環境 雇用不安、正社員と非正社員の格差が長時間労働を促進、教育費のための長時間労働 • ライフの大切さについて議論することへの抵抗 女性の社会進出に逆行 • 「家庭より仕事優先」の上司の影響? 再チャレンジの難しさ、新しい父親・母親像が実現しにくい • 1960年代生まれ以降の世代の特徴 競争的価値観、「社会力」不足、育った家庭環境が父親不在・近所づきあいなし、豊かなライフの体験がない、女性の高学歴化 • ビジネスチャンスとして広がる保育・教育サービス 少子化で乳幼児期に企業が進出、雇用創出への期待 • ライフの環境の貧困さ 住環境、地域社会の厚み
4.ワーク・ライフ・バランスの社会的意義 • 企業・経済力の視点 企業の生産性、人材確保、国際競争力、出生率回復 • 子どもの権利の視点 子どもにとって親子一緒の時間+親の精神的余裕が必要。 虐待等のリスク軽減など、子どもの福祉向上につながる。 教育の充実は将来の人材育成にもプラス。 • 大人の権利の視点 働く権利(特に女性)、子育てをする権利(特に男性)、学習の権利、ボランティア活動の権利など。 人付き合いの豊かさ(ソーシャル・キャピタル<社会関係資本>)、自己実現が精神的な健康につながる。医療費削減にもプラス。
5.諸外国のワーク・ライフ・バランス施策 • 諸外国の労働政策の動向 育児休業の父親割当(ノルウェー6週間、スウェーデン60日、ドイツ2ヶ月)、父親の出産時休暇、短時間勤務、学期勤務、在宅勤務、フレックスタイム、看護休暇、在宅育児手当(ノルウェー、フィンランド)など • ワーク・ライフ・バランスを支える保育・教育環境 親の参加+親の学習の促進、保育・教育施設における就労支援、幼児教育の無償化(ニュージーランド、フランス、スウェーデン、イギリス) • ワーク・ライフ・バランスを支える都市環境 緑地の充実(ドイツ)、ボランティアの活性化(イタリア) • ワーク・ライフ・バランスを支える思想 1989年国連「児童の権利条約」、権利擁護の独立機関の設置(ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、フランス等)
ニュージーランド プレイセンター(協働保育施設)ニュージーランド プレイセンター(協働保育施設) 活動理念 “Families growing together” を表すロゴマーク 絵本の読み聞かせをする親↑ ■保育所、幼稚園に次ぐ第三の 幼児教育施設 ■全国に約530ヶ所 ■50年以上前から政府が補助 幼児教育や運営に関する知識を身に付ける親の学習会 →
フランス 親保育園crèche parentale • 親も保育活動に参加する形態 • ある園では、親が少なくとも週に半日は保育に参加し、二週間に一回食事当番や子どもの外出の手伝いをする。 • 親が子どもの生活をよく知ることができる、保育士のやり方から親が学ぶことができる、親同士、親と保育士の協力関係によい影響がある。 スウェーデン 親組合保育所 • 親が組合を作って保育士を雇う方式の保育所 • 待機児童対策として始まったが、親が運営に深くかかわり、 親の意見が保育に反映しやすいことから、現在も支持され ている。
イギリス 子どもセンターChildren’s Centre • 保育所・幼稚園の施設に、親や地域住民を対象としたサービスや学習の場を設けることで、親や地域住民のネットワーク作りや生活の質向上を図り、幼児教育の質向上につなげようという試み。 • 精神的・経済的に不安定になる乳幼児期の親が立ち寄る場所に、就職支援、就職のための学習の場、女性の健康づくり(ヨガなど)の場を作ることで、乳幼児期の家庭を安定させる効果。 • こうした総合施設への1ポンドの投資は、他のサービスへの8ポンドの効果に匹敵するという財政面での効果も指摘されている。
ドイツ クラインガルテン(小さい庭)運動ー子どもの健康には土と緑が必要―ドイツ クラインガルテン(小さい庭)運動ー子どもの健康には土と緑が必要― ■1919年に法整備 ■一区画100坪、100~200 区画で一地区を形成 ■25年以上の長期利用 ■自主運営(クラブハウス)■自然保護、余暇の充実、 家族の会話など 高齢者の生きがいとして 「病院よりクラインガルテンを」 ドイツでは園舎を持たない「森の幼稚園」活動も盛ん。 参考文献:今泉みね子、アンネッテ・マイザー著『森の幼稚園』
イタリア 時間銀行 ■近隣の助け合いの復活・学び合いの促進 ■国内約300ヶ所 ←ローマの時間銀行で 使われている小切手 時間銀行の仕組みで 行われている英会話教室 → 参加には保証人が必要。 信頼できる人間関係を築くきっかけに。
6.地方都市におけるワーク・ライフ・バランスの可能性6.地方都市におけるワーク・ライフ・バランスの可能性 • 中国地方の父親の帰宅時間が早い。平均労働時間が長いのは、多くの人が働いているから? • ワーク・ライフ・バランスはコミュニティ、保育・教育環境、雇用機会、自然環境等のバランスのとれた地方都市がリードできる可能性大。実現にむけての課題は・・・ • 良質な雇用機会 格差の縮小 • ライフを楽しめる都市空間づくり 放課後子ども教室「広島オリジナル」の親の学習プログラム、学校の森(新潟県長岡市)、プレイセンター(北海道恵庭市)など • 新しいライフスタイルの発信 新しい父親像で、子どもの福祉・。教育の質向上、出生率向上、生産性向上の好循環を目指す。 • 子どもの権利など人権の視点からの議論 ワーク・ライフ・バランスを経済効果だけでなく権利保障として議論すべき。
平日の帰宅時間が23時以降翌朝3時未満の父親の割合(就学前児童のいる父親)平日の帰宅時間が23時以降翌朝3時未満の父親の割合(就学前児童のいる父親)
地域別にみた男性の仕事時間(週全体・一日当たりの平均)地域別にみた男性の仕事時間(週全体・一日当たりの平均)
地域別にみた仕事をしている人の割合(男性・15歳以上)地域別にみた仕事をしている人の割合(男性・15歳以上)
学校の森 • 1986年から学校に森をつくる活動がスタート(写真:新潟県長岡市川崎小学校)。2004年よりNPO学校の森が、学校での森づくりを支援。 • 子どもたちのストレスを解消。 • 自然、地域社会から閉ざされていた学校を開く効果。幼稚園児なども散歩で訪れ、幼小連携にも効果。 • 子どもたちが木を植え、地域の後援会とともに森を維持していくことで、いのちとのつながり、地域とのつながり、未来へのつながりを実感できる場となる。 • 幼稚園の事例としては、四日市市まきば幼稚園(2000年)がある。 • 韓国でも、1999年より「学校の森」づくり国民運動がスタート。自治体や企業などの援助も得て広がっている。 (今井重孝・佐川通編『学校に森をつくろう!』より)
プレイセンター・ピカソ(東京都国分寺市) • 日本プレイセンター協会(http://www8.plala.or.jp/playcentre)の講座を受講した元幼稚園教諭らが中心になってスタート。 • 北海道恵庭市では、マニフェストにプレイセンター活動の導入を取り上げている。
スウェーデンの父親 • 1歳までに父親の50%が育児休業を取得 育児休業の取得はプラス評価。育児休業を取得したことのある上司は、より人間的で信頼がおける。オープンに話し合って仕事を調整する関係を築くことは、仕事の生産性を高めるという考え方。 • 看護休暇の43%は父親が取得 • 80%の父親が出産休暇を取得 • 保育所の利用時間(週平均)は31.9時間 内閣府「少子化社会に関する国際意識調査」(2006年3月) • 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方: 賛成 日本57.1% スウェーデン 8.7% 反対 日本37.7% スウェーデン90.7% • 子どもを生み育てやすい国かどうか: そう思う 日本47.7% スウェーデン97.8%
末子3歳以下のカップルの帰宅時間(スウェーデン・日本)末子3歳以下のカップルの帰宅時間(スウェーデン・日本) 1週間に家族全員で夕食を取った回数 2回以下 スウェーデン15% 日本52% 7回 スウェーデン48% 日本21%