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-環境支払いによる有機農業・環境保全型農業への影響-. EU( 欧州連合)の農業環境政策. 郡山昌也 らでぃっしゅぼーや株式会社( Radix の会) IFOAM (国際有機農業運動連盟)世界理事. 国際有機農業運動連盟 : IFOAM (アイフォーム) ( International Federation of Organic Agriculture Movements ) 1972 年に「デメター」(ドイツ)や「ソイルアソシエーション」(英国土壌協会)など世界の有機認証団体が、 有機農業 を推進 するために IFOAM を設立
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-環境支払いによる有機農業・環境保全型農業への影響--環境支払いによる有機農業・環境保全型農業への影響- EU(欧州連合)の農業環境政策 郡山昌也 らでぃっしゅぼーや株式会社(Radixの会) IFOAM(国際有機農業運動連盟)世界理事
国際有機農業運動連盟:IFOAM(アイフォーム)国際有機農業運動連盟:IFOAM(アイフォーム) • (International Federation of Organic Agriculture Movements ) • 1972年に「デメター」(ドイツ)や「ソイルアソシエーション」(英国土壌協会)など世界の有機認証団体が、 有機農業を推進するためにIFOAMを設立 • 会員:世界108カ国以上の約750団体(2008年) • 構成:小規模農家、有機農業団体、有機認証団体、研究者、国際流通企業 • 活動:国際基準となる「IFOAMオーガニック基礎基準」を初めて策定(1980) • ⇒EUの有機認証制度(EEC/2092/91)の導入に大きな役割を果たす • ★EUのオーガニック基準(1991)/東アフリカのオーガニック基準(2007) • コーデックス委員会「有機農業ガイドライン」(1999:グローバルスタンダード) • アジア地域共通のオーガニック基準と検査・認証制度の構築(2008) • 有機認証団体の国際標準認定、有機農業に関する国際会議の開催 • 各国政府への有機農業に関する政策提案活動 • 世界最大のオーガニック食品等の国際展示会(BioFach)の開催支援等 • ⇒世界のオーガニック基準が同等性を持つことでオーガニック市場は順調な成長 • ただしフードマイル(CO2排出)や大手資本の有機市場参入には注意! • ※IFOAMは2005年に「有機農業の原則(エコロジー・健康・公正・配慮)」を策定。エコロジーの原則では「有機農産物の生産・加工・流通・消費に関わる人々は、景観・気候・生息地・生物多様性・空気・水を含む共有の環境を保護しつつ、それを享受してゆくべきである。」 国際オーガニックNGO・IFOAM ★EUでは農薬と化学肥料などによる環境問題から有機農業の発展へ
・直接支払い:①1992年共通農業政策による「支持価格引下げ」に伴う所得補償の直接支払い・直接支払い:①1992年共通農業政策による「支持価格引下げ」に伴う所得補償の直接支払い ②中山間地など条件不利地域対策の所得補償金(1975年~) (※アジェンダ2000以降は適正農業規範の遵守が直接支払いの条件に) ・農業環境政策:農業起源の硝酸窒素による汚染に対する水質保全対策に関する指令(767/91) 環境保全と景観維持の要求と両立する農業生産手法に関する規則( 2078/92 ) ・環境支払い:③農薬や化学肥料の削減、集約型から粗放的生産へ転換、家畜飼育密度の低減 有機農業の導入など ⇒有機農業への転換を大きく後押し(1992年~) EUの直接支払いと農業環境政策 (適正農業規範) 農林金融2005年10月号(蔦谷論文)より
1964年 共通農業政策(CAP):価格支持政策⇒食料増産と「自給率向上」を目指して1964年 共通農業政策(CAP):価格支持政策⇒食料増産と「自給率向上」を目指して 1970年 農薬・化学肥料の大量使用による集約的農業⇒土壌・地下水の汚染⇒環境問題・健康問題 1975年 中山間地等の条件不利地域に対する直接支払いの導入 (持続的な農業システムの維持) 1985年 「農業構造の効率改善に関する理事会規則(797/85)」第19条⇒環境面で慎重を要する地域 (Environmentally Sensitive Area:ESA)等における特別助成(環境支払いの開始) 1987年 「農業構造の効率の改善に関する理事会規則(1760/87)」⇒生産調整と環境対策として農業の 粗放化政策を導入 (生産過剰:GATTウルグアイ・ラウンドでアメリカとの農産物貿易摩擦) 1991年 「農業起源の硝酸窒素による汚染に対する水質保全対策のEU指令(767/91)」⇒化学肥料 や集約的畜産(糞尿の流入)による硝酸塩汚染から沿岸、海水の水質を保全 1992年 CAP改革(マクシャリー改革)⇒国内支持価格を引き下げ生産者の所得損失に対する支払い を生産から切り離し(デカップリング)直接所得補償する政策を導入(農業環境政策の導入) 「環境保全と景観維持の要求と両立する農業生産手法に関する理事会規則(2078/92)」 ⇒環境保全型農業への移行や農業環境プログラムへの参加を条件に環境支払い※ ⇒有機農業への転換を後押し 1999年 新CAP改革による「アジェンダ2000」※(EU拡大への対応) ⇒さらなる支持価格の引下げ 「農村振興に対する欧州農業指導保証基金の助成に関する理事会規則(1257/1999)」で 農業環境政策は条件不利地域対策等と一本化されて農村振興政策に(CAPの第2の柱) 2003年 CAP改革の中間見直し (財政負担削減) 適正農業規範※「クロス・コンプライアンス」義務化 環境対策に品質、食品安全、動物福祉が追加 ⇒「WTO体制下のEU農業生き残り戦略」 EUの農業環境政策の歴史
■環境支払い(EU50%、加盟国50%共同負担による直接所得保障:EU共通規定と各国規定)■環境支払い(EU50%、加盟国50%共同負担による直接所得保障:EU共通規定と各国規定) 「環境保全と景観維持の要求と両立する農業生産手法に関する理事会規則(2078/92)」 契約期間は最低5年間。農業者が環境に対する負荷を軽減、あるいは環境便益を促進する行為を選択することにより負担せざるを得ない費用の一部を補助金として補う。環境支払いの基礎項目は①農薬・化学肥料の使用を減少したことに伴う単収減による所得損失分は補償する。②牧草地造成のための追加費用は支給する。③環境保全事業に参加するために必要なインセンティブは与える。( ⇒農業環境政策) ⇒農薬や化学肥料の削減、集約型から粗放型生産への転換、家畜飼育密度の低減、有機農業の導入 「農村振興に対する欧州農業指導保証基金の助成に関する理事会規則(1257/1999)」※アジェンダ2000 ①環境・景観・自然資源・土壌・生物多様性の保護や向上と両立するような農地の利用方法 ②環境に好ましい粗放的農業及び集約度の低い牧草経営システム ③高度な自然的価値をもちながら,その存在が脅かされている農業環境の保全 ④農地の景観および歴史的特徴の維持(⇒農村振興政策に条件不利地域対策と農業環境政策を統合) ⑤環境保全的農業(環境計画)の利用 ⑥動物福祉(アニマルウェルフェア)の改善(2003年~) ■適正農業規範(Code of Good Agricultural Practice)のクロスコンプライアンス 農業生産活動が、水質、空気、土壌、生物多様性に与える影響を抑制する最低限の基準 ・ひとつは環境保護。公衆衛生、家畜衛生、植物防疫、動物福祉の分野に関する「19のEU法令」の遵守 ・もうひとつ営農条件。土壌保全、土壌構造、有機物含有量の維持、適正な輪作体系、野生動植物の生息 域や景観の保全、永年草地の保全などの遵守 ⇒ 2005年より遵守を義務化(直接支払いの条件) EUの農業環境政策と環境支払い
農業環境政策による支払いは、農村振興政策の約50%になり、環境支払いは約30%が充てられる中核的な施策に成長(2000‐2006)農業環境政策による支払いは、農村振興政策の約50%になり、環境支払いは約30%が充てられる中核的な施策に成長(2000‐2006) ⇒検査体制の脆弱性が問題 助成や単価の妥当性の証明、現地検査による履行確認などの多大な行政費用が、課題 農業環境政策による支出の推移
EUの農業環境政策による対応実績 2003年EU委員会 欧州連合の統計と経済情報における農業 EU理事会規則(1257/1999)、面積当たり給付は2001年)
環境支払いの対象面積(2002年) 有機農業/農薬・化学肥料の削減/輪作/粗放化/景観保全/侵食防止/その他
成長を続けるEUの有機農業 『本来農業への道/持続可能な農業に関する調査プロジェクト』2007年
EUの有機農業と農業環境政策 環境保全と景観維持の要求と両立する農業生産手法に関する規則(EEC/2078/92 ) ・有機農業の各国の農地に占める割合 オーストリア13%、スイス12%、イタリア9%、 ギリシア8%、ポルトガル7%、スウェーデン7%、 ドイツ5% ⇒日本0.17%(約5千ha) ★2006年で740 万ha(ヨーロッパ全農地の4%) ※ドイツや英国、スウェーデンなどは2010年までに10~20%を目標に掲げている
・2006年で約4兆円(2000年の2倍) ・オーガニック食品市場の占める割合 オーストリア5.4%、デンマーク5%、 スイス4.5%、スウェーデン2.5%、 ドイツ2.7%、英国2.5% (米国2.8%) ※約2010年で約7兆円に達するという予測も 欧米のオーガニック市場と有機認証制度 農産物の有機的生産並びに農産物及び食品の表示規則(EEC/2029/91)
■「農地・水・環境保全向上対策」:日本型の環境支払い(約300億円)■「農地・水・環境保全向上対策」:日本型の環境支払い(約300億円) ⇒集落の共同活動(農地や水路の整備)への参加⇒基礎支援 +地域で共同で環境保全型農業を実践⇒先進的営農支援(二階建て) ↓↓↓ □戸別(個別)の環境保全型農業に取り組む生産者(小規模農家)に対する 環境支払いの実施 ⇒先駆的事例:滋賀県の環境直接支払い制度では両方に支援して参加者 は増加して効果をあげている(個別の参加者の集積) □リスクとコストの高い有機農業に対する環境支払いの実施 ⇒農業環境規範、エコファーマー(堆肥、減農薬、減化学肥料) の条件を大幅に満たして尚かつ第三者認証済み ★CAP(共通農業政策)はEU総歳出額の49%(2002年) CAPの16%が農村振興政策、その17% (CAPの3%) 農業環境政策。有機農業支援に16%を支出 ⇒約2億ユーロ(300億円:150円=1ユーロ) EUの農業環境政策はリスクが高いほど 補償が多い設計(環境負荷の減小を誘導) 日本型の農業環境政策への提案 有機農業 (有機農業推進法) 環境保全型農業(特別栽培:減減50) エコファーマー (持続農業法) 慣行農業 (農業環境規範)
持続農業法に有機農業を位置づける 特別栽培 ← 直接支払い → ←環境支払い より支援を厚く! ⇒
有機農業(オーガニック)とは • 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業(有機農業推進法:農水省 2006) • 有機農業は、土壌と生態系そして人びとの健康を持続させる生産システムである。有機農業は、地域の条件に適合した生態的なプロセス、生物多様性や循環を活用し、悪い影響を与える投入物を使用しない。有機農業は、関わるすべての物のために、伝統と革新と科学を組み合わせ、共有する環境に利益をもたらし、公正な関係性とよい生活の質を促進する。(IFOAMの有機農業の新定義:2008) ⇒3年以上、無農薬、無化学肥料で有機肥料を使って栽培する農業 • 1990年代有機食品のブームで偽物の登場、「箱だけ有機」野菜の氾濫 ⇒消費者を保護する。真面目に有機農業に取り組む農家を保護する必要 • 2000年に有機JAS規格により有機野菜やオーガニック食品の規格が制定。 • 農水省が認定した有機認証機関による検査を受けた商品のみ「有機」「オーガニック」等の表示ができる法律(有機JAS法)が施行 • EU(ヨーロッパ)では、農薬と化学肥料による環境問題から有機農業へ
1964年 共通農業政策(CAP)⇒食料増産と自給率向上を目指して集約的農業1964年 共通農業政策(CAP)⇒食料増産と自給率向上を目指して集約的農業 1970年 農薬・化学肥料の大量使用により土壌・地下水の汚染⇒環境問題・健康問題 1986年 ソ連で「チェルノブイリ原発事故」/北海でアザラシの大量死、ライン川の汚染、酸性雨の深刻化 1990年 アメリカ農務省による「連邦オーガニック食品生産法」の制定 1991年 EU有機食品の表示規則「(2092/91)」を制定。有機認証制度の導入(⇒1993年に施行) ⇒生産過程がオーガニックであることを検査し認証されたものだけ有機農産物と表示可能 1991年 1992年 「イギリスで狂牛病が大流行(そのピークを迎える)」 ⇒畜産の飼料、加工原料、流通までトレースできるオーガニック食品に消費者の注目が集まる 1992年 EU農業環境政策「(2078/92)」を制定。※環境直接支払い制度が始まる(⇒1994年に施行) ⇒休耕や環境保全プログラムへの参加を条件に生産者に環境財を生産する為の費用として。 1994年 イギリスで発生したBSE(狂牛病)がヨーロッパ各国へ波及 1995年 グリーンピース欧州で「GM 食品にNO !キャンペーン」がスタート(環境問題と健康問題のリンク) 1996年 遺伝子組み換え生物(GMO)の本格栽培開始 1998年 GM食品の表示を義務化するEU規則(1139/98/EC)を制定 (GMO5年間凍結キャンペーン) 食の安全・環境問題と有機農業
EUオーガニック食品市場の歴史 ・1940年代:民間の有機認証団体「デメター」(ドイツ)や「ソイルアソシエーション」 (英国土壌協会)が先駆けとして有機認証活動を開始。 ・1970年代:有機農業は農薬や化学肥料による環境汚染の解決策。 ・1980年代にオーガニック食品ブーム → オーガニック偽装問題の発生。 →各国の有機農業団体が農業省と協力して、各国の有機認証制度 (オーガニック食品の表示規則)を法律として制定。 [Michelsen 2001] ・1990年代: イギリスで発生したBSE(狂牛病)がヨーロッパへ波及。鳥インフルエンザも。 遺伝子組み換え生物(GMO)の栽培がEUで始まる。 →安全で環境にも優しいオーガニック食品への注目、評価が高まる。 →EUレベルの有機認証制度「有機食品の表示規則(EEC 2092/91)」導入。 生産過程がオーガニックであることを検査・認証された生産物 だけが有機農産物と表示できる。→ 消費者の信頼を獲得。
□Graph.1 親環境農業による生産の割合, 2000-2007. Source: MAF, major Government Agricultural Statistics, 2000-2007, and pesticides-free note: 1)The share of organic agricultural products is about 9% and 28% of total EFA production respectively 韓国「親環境農業」による生産の割合