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実現可能性を考慮した法人税制・ 個人資本所得税制の改革

実現可能性を考慮した法人税制・ 個人資本所得税制の改革. 早稲田大学政治経済学術院助手 井上智弘 tomo-ino@suou.waseda.jp. 概要. 問題意識 消費課税は現実には適用されていない 消費課税だけでなく,代替案についても検討する 税制の評価基準 中立性・税制の実現可能性 税制改革案 消費課税 → 代替案( CBIT, ACE ) → 代替案( BEIT ) 結論. 問題意識. 所得課税から消費課税への移行は古くから検討されてきたが,現在,消費課税を採用する国はない なぜ,採用されないのか? 現行税制からの乖離,未経験の税制

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実現可能性を考慮した法人税制・ 個人資本所得税制の改革

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  1. 実現可能性を考慮した法人税制・個人資本所得税制の改革実現可能性を考慮した法人税制・個人資本所得税制の改革 早稲田大学政治経済学術院助手 井上智弘 tomo-ino@suou.waseda.jp 日本財政学会第65回大会 京都大学

  2. 概要 • 問題意識 • 消費課税は現実には適用されていない • 消費課税だけでなく,代替案についても検討する • 税制の評価基準 • 中立性・税制の実現可能性 • 税制改革案 • 消費課税 → 代替案(CBIT, ACE) → 代替案(BEIT) • 結論 日本財政学会第65回大会 京都大学

  3. 問題意識 • 所得課税から消費課税への移行は古くから検討されてきたが,現在,消費課税を採用する国はない • なぜ,採用されないのか? • 現行税制からの乖離,未経験の税制 • 税収への影響や税制移行についての議論を詰めきれていない • 現実への適用(税制の実現可能性)に関する問題を踏まえて,消費課税の代替案も含め,各税制案の検討を行う 日本財政学会第65回大会 京都大学

  4. 前提 • 主に,企業課税に注目する • 小国開放経済を仮定する(グローバル経済の想定) • 個人課税が企業投資にもたらす影響は考慮しない • 個人課税と企業課税の分離 • 現行の資本所得課税(企業段階+個人段階)と税収中立的な税制移行を仮定する • 国際課税に関する問題については検討しない • 企業課税だけを用いて解決できる問題には限りがある • 国際課税制度とのかかわりについては考慮しない 日本財政学会第65回大会 京都大学

  5. 企業課税の問題 • 税制の非対称性 • 負債と自己資本の扱いの違い → 資本構成の選択を歪める • 支払利子控除/自己資本コストの非控除 • 法人・非法人ごとに異なる課税 → 企業形態の選択を歪める • 投資決定に与える歪み • 個別資産について減価償却控除と経済的減価償却が異なる • 損失の繰越期間制限など,損失の繰り越しが不完全 → 投資資産の選択と投資水準の選択を歪める • 課税が企業行動に対して非中立的 日本財政学会第65回大会 京都大学

  6. 税制の評価基準 • 中立性(A) → 税制改革案の基礎的条件 • 資本構成の選択(A-1),企業形態の選択(A-2), • 投資資産の選択(A-3),投資水準の選択(A-4) • 実現可能性(B) → 現実への適用を考慮した条件 • 中立的な税制の執行可能性(B-1) • 税収の安定性(B-2) ― ただし,税率は一定 • 税制移行に伴う措置(B-3) 日本財政学会第65回大会 京都大学

  7. 税制改革案【消費課税】(1/2) • 税制移行後は投資支出は即時償却されるため,税制移行前の未償却資産に対する措置が必要となる • 課税は企業形態に依存しない • 正常収益に課税しないため,課税ベースは狭くなる ・・・ 消費課税 日本財政学会第65回大会 京都大学

  8. 税制改革案【消費課税】(2/2) • 中立的な税制の執行可能性(B-1) • 負のキャッシュ・フローの繰り越しにはリスクフリーの利子率の設定が必要 • 税収の安定性(B-2) • 投資支出に影響され,不安定である • 投資の一部を借入で賄う場合, R+Fベースではある程度安定的になる • 税制移行に伴う措置(B-3) • 未償却資産の控除や金融取引の扱い(Rベース)が問題になる 日本財政学会第65回大会 京都大学

  9. 税制改革案【代替案】(1/2) • 企業課税で負債と自己資本の扱いを等しくする • 課税は実質的には企業形態に依存しない • ACEの控除は税制上で自己資本として計算された「株主基金」に基づく • 各期の減価償却控除≠経済的減価償却でも中立的になる • ACEでは個人課税を別に設定する必要がある 日本財政学会第65回大会 京都大学

  10. 税制改革案【代替案】(2/2) • CBITは中立性を満たさない • 中立的な税制の執行可能性(B-1) • ACEは株主基金や控除額の計算にリスクフリーの利子率の設定が必要 • 税収は相対的には安定(B-2) • 税制移行に伴う措置(B-3) • 未償却資産に対する特別な措置を必要としない • ACEは税制移行時の株主基金を設定することで一度に移行可能 日本財政学会第65回大会 京都大学

  11. 税制改革案【BEIT】(1/3) • ACEは基準を満たすが,個人課税をどうするか • 国際的租税競争による企業課税の税率引き下げ傾向 • 小国開放経済 → 個人課税は企業の投資に影響しない • 個人段階で正常収益に課税(課税ベースの拡大) • 投資家の資産選択を歪めない課税 • BEIT(Business Enterprise Income Tax) ― Kleinbard (2005) • COCA (Cost of Capital Allowance)システム • 企業段階:資本構成(負債・自己資本)に関係なく一律の控除 • 個人段階:資産額に応じた正常収益課税 • 課税は企業形態に依存しない 日本財政学会第65回大会 京都大学

  12. 税制改革案【BEIT】(2/3) • 企業段階 • 控除する正常収益=企業の総資本額×利子率(COCA率) • 負債・自己資本の区別をしない • ACEと同じシステム(Boadway & Bruce, 1984)に基づく控除 • 各期の減価償却控除≠経済的減価償却でも課税は中立的 • 個人段階 • 課税する正常収益=企業に投資した資産額×COCA率 • 分配の有無に関係なく課税する • 資産選択を歪めずに正常収益に課税する 日本財政学会第65回大会 京都大学

  13. 税制改革案【BEIT】(3/3) • 中立的な税制の執行可能性(B-1) • ACEと同様にリスクフリーの利子率の設定が必要 • 税収は相対的には安定(B-2) • 税制移行に伴う措置(B-3) • 未償却資産に対する特別な措置を必要としない • COCAシステムは段階的に,他のシステムは一度に移行する 日本財政学会第65回大会 京都大学

  14. 結論 • 消費課税の代替案(ACE, BEIT)は中立性を満たしつつ,消費課税よりも高い実現可能性をもつ • 利子率の問題は残るが,BEITは企業課税だけでなく,個人課税についても望ましい性質をもつ 【今後の課題】 • 個人課税についての詳細な検討 • 国際課税についての検討 • 税務行政上の問題の具体的な検討 日本財政学会第65回大会 京都大学

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