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三菱商事のCSRについて 13-MC004 元賢喜
三菱商事はどんな会社? • 三菱商事は、国内および海外約90カ国に200超の拠点を持ち、500社を超える連結対象会社と共にビジネスを展開する最大の総合商社です。地球環境・インフラ事業、新産業金融事業、エネルギー事業、金属、機械、化学品、生活産業の7グループにビジネスサービス部門を加えた体制で、幅広い産業を事業領域としており、貿易のみならず、パートナーと共に、世界中の現場で開発や生産・製造などの役割も自ら担っています。これからも私たちは、常に公明正大で品格のある行動を信条に、豊かな社会の実現に貢献することを目指し、さらなる成長に向けて全力で取り組んでいきます。 • 三菱商事の業務は、貿易取引や事業投資など多岐にわたりますが、その本質は、お客様や社会が抱えるニーズやシーズに着目し、ビジネスの仕組みを構想して、その実現と推進に必要な機能やサービスを安定的に提供することにあります。例えば、歴史的に主要業務のひとつである貿易取引では、ビジネスの最前線で得る豊富な情報を活かして、物流・金融・マーケティングなどの機能を融合させながら付加価値の高いサービスを提供しています。パートナーとして事業に参画する際には、自らもリスクをとりながら、三菱商事の組織力やグローバルなネットワークを活かして必要な経営資源を調達することを通じ、事業価値の向上を図っています。また、開発から調達、生産、流通・販売にわたる事業経営全般について最善の解決策を提案し、その実行をサポートすることや、異なる事業を組み合わせ、お客様同士の結びつきをコーディネートすることも重要な役割です。さらに、社会や市場の将来の動きをいち早くとらえ、自らが主体となって事業を開発することも、活発に行っています。 • 三菱商事は、常に自らを変革し、ビジネスに必要とされる最先端の機能を追い求めてきました。そのため、健全な財務力と高いリスク管理能力を備えることはもちろん、人材を最も重要な資産と位置づけ、先見性と行動力、創意工夫を働かせる知恵を重んじてきました。三菱商事は、常に誠実な対応で、今後もお客様の信頼を高めてまいります。 (出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/mc/)
事業戦略と市場戦略について • 資源分野 =>原料炭、銅、LNGなど既存コア事業の更新・拡張投資を中心に、今後収益化を図るステージに移行しますが、同時に操業コスト・開発コストの改善に一層注力しながら事業を推進し、経営資源の効率的な活用を実現します。 • 非資源分野 =>複数の規模感ある強い事業を創るという長期目標のイメージに向けて、『より強い事業』『強くなる事業』への経営資源のシフトを加速させます。自動車、食糧、食品流通、電力、ライフサイエンス等の事業を更に伸ばすとともに、北米シェールガスの川下展開、金融事業のアセットマネジメントへのシフト等、事業モデルの変革も推進します。 • 市場戦略 =>資源国・工業国にとどまらず消費市場としても存在感を増すアジアを機軸とするグローバル展開を加速化させ、アジアの成長を取り込むことで、持続的な成長を図ります。そのために、増大するアジアの需要に対応したグローバルベースの供給ソース確保や、M&Aや戦略提携も含めたアジア圏におけるインサイダー化を進めます。 (出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/)
市場戦略 (出所:http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/)
ステークホルダーとのかかわり • 三菱商事はさまざまなステークホルダーとかかわりながら、グローバルに事業を展開しています。 • 「お客様・パートナー」「株主・債権者」「従業員」の3者を 中心とした「ステークホルダー・トライアングル」のバランスをとりながら経営の舵取りを行っています。 • 世界各地のステークホルダーとより良い関係を築き、 サステナブルな社会の実現に向けて努力しています。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/stakeholder/)
お客様・パートナー =>三菱商事のお客様は世界のあらゆる地域・産業に及びます。さまざまな機能を駆使してお客様の多種多様なニーズに応えていきます。また、グローバルなレベルでサプライチェーンを管理し、取引先とともにCSRを推進します。 • 株主・投資家・債権者 =>国内外の機関投資家・個人投資家を合計して255,771名の株主が資本を提供しています。三菱商事は、収益力強化、企業価値向上、配当により、これに応えていきます。 • 従業員 =>三菱商事には、国内外を合わせて単体では5,832名、連結子会社を合わせると60,039名が働いています。一人ひとりのナレッジやスキルが、三菱商事の成長を支えています。 • 地域社会 =>ビジネスを行う地域でのコミュニケーションを重視すると共に、企業活動を通じて生じる有形・無形の社会的なコストを負担しつつ、よりよい社会づくりに貢献します。 • NGO・NPO =>環境や人権をテーマとするNPO・NGO の皆さまと対話を行っています。また、寄付やボランティア活動などを通じて、支援や共働の体制を築いています。 • 政府・行政 =>納税の義務を果たすことはもちろん、国家プロジェクトや経済団体への参画を通じ、経済・環境・社会といった幅広い分野で提言などを行っています。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/stakeholder)
三菱商事の社会貢献活動 • 基本理念 =>グッド・コーポレート・シチズンとしての自覚を持ち、地球的視野から社会に対し幅広い貢献活動を行う。 • 社会貢献活動に関する 基本的な考え方 =>三菱商事の社会貢献活動は、「地球環境」「福祉」「教育」「文化・芸術」「国際交流」の分野を中心に、世界各地の社員が自発的に参加して汗を流すとともに、継続して活動に取り組むことを重視しています。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/)
出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/)出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/)
事業活動とサステナビリティ 三菱商事はグローバルな総合事業会社として、本業を通じた社会の持続的発展への貢献を目指し、事業活動のあらゆる側面において積極的な取り組みを推進しています。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/sustainability/)
サプライチェーンにおけるCSR 世界中で多様な商品・サービスを取り扱う三菱商事にとって、サプライチェーンにおけるCSRは重要な課題のひとつとなっています。三菱商事では、人権・労働問題・地球環境等への取り組みの方針となる「サプライチェーンにおけるCSR行動方針」を制定し、当社の基本的な考え方をサプライヤーの皆様と共有しています。 • 基本原則 三菱商事は、「三綱領」を創業以来の企業理念とし、企業の社会的責任を履行する上での拠り所としています。「企業行動指針」においても、企業活動の展開に当っては、諸法規や国際的な取決めを遵守し、社会規範に沿った責任ある行動を取ること、また企業活動のあらゆる面において地球環境の保全に努め、持続可能な発展を目指すことを定めています。 • サプライチェーンにおけるCSR行動方針 • 方針 三菱商事は、サプライチェーンを通じたCSRの取組を推進するため、「サプライチェーンにおけるCSR行動方針」を定め、サプライヤーに対して三菱商事の基本的な考え方をお伝えするとともに、以下に定める項目への賛同と理解、実践を期待します。 • (1)強制労働の禁止 • すべての従業員をその自由意思において雇用し、また従業員に強制的な労働を行わせない。 • (2)児童労働の禁止 • 最低就業年齢に満たない児童対象者を雇用せず、また児童の発達を損なうような就労をさせてはならない。 • (3)安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供 • 従業員に対して、安全で衛生的かつ健康的な労働環境の提供に努める。 • (4)従業員の団結権の尊重 • 労働環境や賃金水準等の労使間協議を実現する手段としての従業員の団結権を尊重する。 • (5)差別の禁止 • 雇用における差別をなくし、職場における機会均等と処遇における公平の実現に努める。 • (6)非人道的な扱いの禁止 • 従業員の人権を尊重し、虐待や各種のハラスメント(嫌がらせ)をはじめとする過酷で非人道的な扱いを禁止する。 • (7)適切な労働時間の管理 • 従業員の労働時間・休日・休暇を適切に管理する。 • (8)適切な賃金の確保 • 従業員には少なくとも法定最低賃金を支払い、また賃金の不当な減額を行わない。 • (9)公正な取引と腐敗防止の徹底 • 国内外の関係法令を遵守し、公正な取引及び腐敗防止を徹底する。 • (10)地球環境への配慮 • 事業の遂行に際しては、地球環境の保全に努め地域社会及び生態系への影響に配慮する。 • (11)情報開示 • 上記に関する適時・適切な情報開示を行う。 • モニタリング 本方針の遵守状況を把握するため、サプライヤーに対する定期的な調査を実施します。また、活動地域や事業内容から、必要と判断される場合には、サプライヤーを訪問し活動状況の確認を行います。 • 遵守違反への対応 本方針に違反する事例が確認された場合には、対象となるサプライヤーに是正措置を求めるとともに、必要に応じて、指導・支援を行います。継続的な指導・支援を行っても、是正が困難と判断された場合には、当該サプライヤーとの取引を見直します。 • アンケート調査と現場モニタリングの実施 当社は、農作物やアパレルなどCSR配慮が強く求められている商品を取り扱うサプライヤーに対して、アンケート調査を実施しています。 質問項目は「規範の有無、法令遵守」「従業員に対する強制労働、児童労働、差別の禁止」「環境保全」「情報開示」などで、2008年度は28カ国・地域、193社より回答をいただきました。 今回の結果からは特に問題は見られませんでしたが、2009年7月には、中国の2社を訪問し、製造現場の視察や責任者との面談を行い、各社のCSRへの取り組み状況のモニタリングを行いました。 • 今後の対応 このアンケート調査と実態調査を通じた各サプライヤーとのコミュニケーションは、当社の環境・CSRに関する考え方を伝えるきっかけとなっており、今後も継続的に取り組んでいきます。 当社は全世界で膨大な数のサプライヤーと取引を行っています。したがって今後は、本行動方針を本店部局のみならず、海外拠点や三菱商事グループ会社へも浸透を図ることとしています。海外拠点やグループ会社のそれぞれの取引先に対しても、本行動方針への理解と協力を呼びかけていきます。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html)
サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例1サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例1 • Saigon 3 Garment Joint-Stock Company (ベトナム ホーチミン市) 2010年9月、ベトナムの大手縫製メーカーであるSaigon 3 Garment Joint-Stock Company(SG3社)のMinako工場を訪問し、同社のCSR責任者との面談および工場内の視察を行いました。 SG3社は、1986年に設立された縫製会社であり、従業員は2,700名(2010年7月現在)、同社と三菱商事は10年以上にわたって継続的な取引を行っています。訪問した工場では、主にジーンズの縫製加工が行われています。 同工場では、有害物質を含む排水や温室効果ガスを多量に発生するような作業工程はなく、環境負荷に関して懸念事項は確認されませんでした。また、同工場では、雇い入れ時に身分証明書による年齢確認を行っており、18歳以上の従業員が就労しています。複数の販売先から、環境および社会性(主に労働・人権)に関する詳細な監査を定期的に受けており、マネジメントの意識も高いことが確認されました。工場内には、複数箇所に労働安全衛生関連の方針や注意事項が掲示され、マスクや手袋などの保護用品も適切に使用されていました。 出所:( http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html )
サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例2サプライチェーンにおけるCSR現地モニタリング実施例2 • 山東魯菱果汁有限公司(山東省・乳山市) 2010年10月、中国・山東省に所在する山東魯菱果汁有限公司(当社30%出資先)を訪問し、同社のCSR責任者との面談および工場内の視察を行いました。 同社は1982年に設立され、従業員数330名、年間約3万トンを生産するリンゴ濃縮果汁工場です。同社では、契約農家で栽培されたリンゴを原料として、リンゴ果汁の搾汁、濃縮、充填、出荷までが行われています。 同社は、取引先メーカーからCSR関連の監査を受ける機会も多く、欧米系の大手飲料メーカーの認証工場にもなっています。訪問時に工場内の踏査を行い、作業に応じた保護具(手袋、マスク、耳栓等)が着用されていること、労働安全衛生関連の注意事項や避難経路が複数箇所に掲示されていることを確認しました。同工場から排出される搾汁後の残渣については、外部業者に引き渡され、家畜用の飼料として利用されています。 また、工場からの排水は敷地内の処理施設を経由して排出されています。なお、排水処理施設からの放流ポイントには行政が設置した連続監視モニターが設置されており、水質の確認が行われています。訪問時のインタビューでは、これまでに基準を超過したことがないことが確認されました。 出所:(http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/management/supplychain.html)
サプライチェーンにおけるCSR戦略と特徴とは?サプライチェーンにおけるCSR戦略と特徴とは? • サプライチェーンにおけるCSR戦略とは =>CSRの展開をサプライヤーに対しても求めるCSR調達のこと • 日本企業のCSRサプライチェーンの特徴 ー サプライチェーンのCSRに取り組むにあたって、日本企業の強みは長期継続的かつ親密な取引関係とグリーン調達で培った品質管理ノウハウである。一方、欧米先行企業に対する取り組みの出遅れや、多様なステークホルダーとのコミュニケーション能力が弱みである。 ー 日本企業がグローバル市場における企業競争力を高めるためには、CSRの国際的な議論の潮流や先行取り組みを勘案しながら、サプライチェーンのリスクアセスメントの実施、継続的な改善を担保するマネジメントの構築、コミュニケーション能力の強化を考慮したサプライチェーンのCSR戦略の構築を検討すべきである。 出所:「グローバル市場における日本企業のCSRサプライチェーン」2008年1月 富士通研究(FRI)経済研究所より引用
戦略に問題はないのか? • 日本企業の弱み ― 欧米先行企業に比べてサプライチェーンのCSRに関する取り組みが出遅れたことから、経験の蓄積という点で遅れをとっていることが挙げられる。日本と比べて、欧米の多国籍企業は、グローバルなサプライチェーンにおける人権・労働・環境問題等に関して、いち早くステークホルダーからプレッシャーを受けていたことから、サプライチェーン管理手法や、ステークホルダーとのコミュニケーションなどについて、試行錯誤をしてきた。この結果、個々の企業の経験蓄積に加えて、例えば電機業界のEICCのような業界標準策定等において主導権を握っており、日本企業の対応が後手に回るという傾向がある。日本企業は、欧米企業と比べて、自社の取り組みを多様なステークホルダーに対して明確に伝えることを苦手とする傾向がある。そもそもCSRの取り組み自体が、ステークホルダーからの要請と企業の対応・提案とをマッチングさせるということであり、ステークホルダーとのコミュニケーションはその根本にあると言ってよい。さらに、サプライチェーン対応ということになれば、サプライヤーとの相互理解を求めるためのコミュニケーション能力の強化は当然のことながら、これらの取り組みをいかに戦略的に情報発信しながら、有機的なコミュニケーションにつなげていけるかが問われることとなろう。 • 日本企業の脅威 ― 海外におけるCSR関連の規制環境や枠組みが急速に変化しつつあることであり、これらの変化に適切に対応するためには、海外市場の状況に絶えず留意しておく必要がある。さらに、途上国の工場では、労働者の人材流動性(離職率)が高く、サプライチェーンのCSR活動のカギを握る普及啓発活動の効果を損なうばかりか、新規雇用者に対する教育研修コストの増大につながることが懸念される。 出所:「グローバル市場における日本企業のCSRサプライチェーン」2008年1月 富士通研究(FRI)経済研究所より引用
CSRに対する認識の変化 • マイケル・E・ポーターは、最近、現在の経済システムや企業活動のあり方に危機感を抱き、企業はもっと社会に対して価値を生み出せるはずと考え、企業価値と社会価値を両立する経営フレームワークである”Creating Shared Value(CSV)”を提唱している。 • 本業を通じて社会に貢献することは、CSRの世界で、攻めのCSR、戦略的CSRなどとして言われてきたことですが、ポーターのCSVが優れているのは、バリューチェーン、クラスターといった従来提唱してきた理論を応用して、具体的に使える戦略コンセプトに落とし込んでいるところである。
さらなる社会貢献へのアクセス • キーストーン戦略とCSVの融合 • 自然界の生態系には、比較的少ない生物量でありながら、生態系に大きな影響を及ぼすキーストーン種という生物種がいる。 • キーストーン種の例としては、北太平洋沿岸のラッコが挙げられます。ラッコは、旺盛な食欲を持ち、大量のウニを食べることで生態系を維持している。ウニは、放っておくと、様々な無脊椎動物や、沿岸部の営みの基礎となるケルプを含む海藻を食い荒らす。19世紀から20世紀にかけて、毛皮を求めてラッコ猟が行われ、頭数が減った時、魚類をはじめ、様々な沿岸の海洋生物が深刻な影響を受けた。 • キーストーン企業は、顧客やビジネス生態系の構成企業にとってなくてはならない存在になることによって、大きな利益を獲得しているが、なくてはならない存在になることは、社会やステークホルダーとの関係においても重要である。 • 社会にとって価値を生み出し、なくてはならない存在になることで、政策的なサポートを得られやすくなるし、場合によっては、NPO/NGOなどからの支援も得られる。 • 顧客や取引先にとってなくてはならない存在となることは、利益を生み出すという意味でも重要だが、企業の持続可能性という意味でも重要である。市場環境が大きく変化したとしても、顧客や取引先との強い関係があれば、それを乗り切ることができる。 • また、最近は、人材の流動性が高まっているが、社員、特に優秀な社員にとってなくてはならない存在となることは、企業の競争力にとって非常に重要である。 出所:http://www.cre-en.jp/mizukami-blog/?p=493#.UfXgtWyCiUkより引用
新たなKSV戦略への提案 • 三菱商事はグローバル企業であり、社会のために貢献していることは間違いない。しかし、長期的なパートナージップを強化するために既存のサプライチェーンCSR戦略か抱えている問題を解決しないといけない。つまり、SWOT分析の結果のように指摘される弱みと脅威を乗り越えるためのコミュニケーション能力の強化と人材の確保、およびネットワーク強化のためにキーストーン戦略を活かす必要性がある。キーストーン企業の役割としてのビジネス生態系全体の健全性の向上に継続的に取り組むことはキーストーン企業にとって自らの存続と繁栄を確保することが必要である。 • 一方、新たな社会貢献戦略として、既存に存在する戦略概念を融合し私はKSV戦略が必要であると提案する。企業が社会貢献の主体として必要な戦略はK(Keystone)、S(Social and Shared)、V(Value)で、つまり、キーストーン的な存在として、社会共有価値を追求する企業を目指さなければならない。 • それは、ビジネス生態系におけるキーストーン企業、社会やステークホルダーにとってなくてはならないCSV企業、これからの時代に持続的に繁栄する企業は、そうした周りとの関係性をうまく創り上げることができる企業であるからである。 • しかし、KSV戦略を追求することで一番必要なことは、ビジネスあるいはマネジメントの健全性である。この健全性を確保するために必要な役割を三菱商事は力を注ぐ必要がある。サプライヤーのための行動規範を測定―監査(モニタリング)―改善にむけた活動というサイクルを構築しなければならないのである。三菱商事がキーストーンの中心的な役割を果たし、社会共有価値を追求することは最終的に消費者の利益になると考える。この結果として三菱商事が構築した生態系全体が栄え、競合する生態系に競争優位を発揮するようになると考える。 • 長期的な視野を広げ、既存の活動以外も、潜在的に現地のパートナーとして担い手になる人材育成のプログラム強化や、現地のアントレプレナーを養成しネットワーク強化のように、現地とのコミュニケーション強化のための活動が必要である。このことは長期継続的かつ密接な取引関係をもっと高めることで三菱商事と現地の人々との存続と繁栄が確保できる。このようなことが進むことこそ、三菱商事の経営理念の三綱領(所期奉公、処事光明、立業貿易)であるのではないかと考える。