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6 ・原始人 イメージとヤノマミ

6 ・原始人 イメージとヤノマミ. 2011.05.31. 青山 ・文化人類学. 原始人の姿はどこからきたのか?. 原始人は、 かつて地球上に存在したが、現在は絶滅した動物 である Cf. 日清カップヌードル CM 「 Hungry? 」シリーズ なぜ見た ことも ないはず の原始人の姿形 が描ける のか?  あるいはカップヌードルの CM が作れるのか?. 化石人類学. 「原始人」つまり現在のヒトに先立ってサルから進化してきた動物群の研究は、広義の人類学のひとつである 化石人類学 ないし生物人類学が担ってきた 

dani
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6 ・原始人 イメージとヤノマミ

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Presentation Transcript


  1. 6・原始人イメージとヤノマミ 2011.05.31.青山・文化人類学

  2. 6・原始人イメージとヤノマミ 原始人の姿はどこからきたのか? • 原始人は、かつて地球上に存在したが、現在は絶滅した動物である • Cf. 日清カップヌードルCM「Hungry?」シリーズ • なぜ見たこともないはずの原始人の姿形が描けるのか? あるいはカップヌードルのCMが作れるのか?

  3. 6・原始人イメージとヤノマミ 化石人類学 • 「原始人」つまり現在のヒトに先立ってサルから進化してきた動物群の研究は、広義の人類学のひとつである化石人類学ないし生物人類学が担ってきた  • 化石人類学は、ダーウィンの進化論(1859年)と密接に関わり合いながら発達してきた=19世紀中葉以降の科学主義的人間観に基づく(←→キリスト教的人間観) • 類人猿(チンパンジー・ゴリラ・オランウータン・ボノボ)とヒトの違いとは? • つまるところ、〈ひと〉とはなにか? • ここでは「ヒト」を動物の一種としての人間、「ひと」を動物とは一線を画す特異な生物としての人間、をあらわすこととする

  4. 6・原始人イメージとヤノマミ 化石人類学史(1) 旧人骨の〈発見〉 • 1856年:ネアンデルタール人骨の発見(独デュッセルドルフ) • ノアの方舟以前の人物説、コサック兵説、病気に冒された人間説など • 1868年:クロマニョン人骨の発見(仏南西部) • われわれと同じHomo sapiens(新人)の仲間としての化石人骨 • ネアンデルタール人骨は、それに先立つHomo neanderthalensis(旧人)と比定される

  5. 6・原始人イメージとヤノマミ 化石人類学史(2) 「頭」か「足」か • 1891年:ジャワ原人化石の発見 • 旧人よりはるかに古い、進化史上サルとヒトの間に位置づけられるものとして比定。Pithecanthropus erectus(直立原人):現在はHomo erectusに分類 • 脳は小さく、二足歩行を行なう • しばらくは学界に認められず • 1912年:ピルトダウン人骨の発見(英サセックス) • 頭蓋骨は現代人的、下顎骨は類人猿的 • 当時の人類進化観に合致:ヒトは脳からひとになった • 一時は、ジャワ原人よりも注目される • 1955年、現生ヒト頭蓋骨と現生オランウータン下顎骨の合成による捏造と断定:ピルトダウン事件

  6. 6・原始人イメージとヤノマミ 化石人類学史(3) 始まりの地は? • 1924年:南アフリカ猿人化石の発見 • Australopithecus africanusと命名 • 歯や大後頭孔の特徴が類人猿的でないが脳は極端に小さい • やはりしばらくは学界に認められず、1930-40年代は細々とアフリカで発見が進められたに過ぎない • 1927年:北京原人化石の発見 • Sinanthropuspekinensisと命名 • 人類のアジア起源説 • 1960年代に、ジャワ原人とともに、Homo erectusに分類を統一

  7. 6・原始人イメージとヤノマミ 化石人類学史(4)現在の通説の成立 • 1959年:東アフリカ大地溝帯で、約200万年前の(当時)最古の人類化石発見 • 大柄でより祖型的なZinjanthropusboiseiと、小柄でかなり脳の大きいHomo habilis(しゃべるヒト) • 1960年代の属名見直しで、前者はAustralopithecus boiseiに • 人類のアフリカ起源説の確定 • 1970年代以降のポイントは次の2つ • ヒトはどこまで遡れるか……現在は450~900万年前あたりで議論が行なわれており、新発見も相次いでいる • 現生人類Homo sapiens sapiensはどのようにして生まれたか……多系進化説と単一進化説cf.イブ仮説

  8. 6・原始人イメージとヤノマミ 多系進化説 vs 単一進化説(1) • 多系進化説……各地域の人類は、遙か以前に共通の祖先から分かれて以来、それぞれの地域で独自に進化してきた、とする説 • 単一進化説……われわれに直接つながる祖先は、どの地域の人類も、比較的近い過去の同じ祖先から分かれたもので、各地域のさらに古い化石とは直接つながらない、とする説

  9. 6・原始人イメージとヤノマミ 多系進化説 vs 単一進化説(2)

  10. 6・原始人イメージとヤノマミ 多系進化説 vs 単一進化説(3) • 多系進化説は、アフリカに現在住むひとびとの祖先は、ずっと以前からアフリカのなかで進化してきた、またヨーロッパに現在住むひとびとの祖先は、やはりずっと以前からヨーロッパのなかで進化してきた、とする考え方 • アフリカとヨーロッパの親戚関係は非常に遠いものだ、とする考え方につながる • 人種差別主義との親和性が高くなる • 逆に、単一進化説は、アフリカのひとびとの祖先とヨーロッパのひとびとの祖先は、ずっと近しい親戚関係だ、とする考え方になる

  11. 6・原始人イメージとヤノマミ 進化主義的人間観(1) 1889年パリ博で「展示」された植民地住民と観客

  12. 6・原始人イメージとヤノマミ 進化主義と博覧会 • 1851年のロンドン万国博覧会をはじめとする博覧会は、植民地帝国の威信を示す場であった……帝国内植民地から運ばれてきた工業製品や原料、めずらしい物品などを本国民に「見せる」場 • その「めずらしい」物品の一つとして、帝国内植民地から連れてきた「原住民」が、生活つきで「展示」された • 野蛮→未開→文明という発展図式を見せる装置としての博覧会 • 背景にあるのは、ダーウィン『種の起源』(1859年)に基づく進化主義……人間も「進化」する • 1883年アムステルダム万博で、植民地の原住民が実際に居住する「植民地展示」が注目を集める • 1889年パリ万博(エッフェル塔で有名)でもやはり植民地館で「原住民展示」

  13. 6・原始人イメージとヤノマミ 進化主義的人間観(2) 1904年セントルイス博で「フィリピン村」に「展示」されたイロンゴット

  14. 6・原始人イメージとヤノマミ 日本における「原住民」展示 • 1903年第五回内国勧業博覧会(大阪)に便乗して設置された「学術人類館」 • 内地に近き異人種を集め、其風俗、器具、生活の模様等を実地に示さんとの趣向にて、北海道のアイヌ五名、台湾生蕃四名、琉球二名、朝鮮二名、支那三名、印度三名、同キリン人種七名、ジャワ三名、バルガリー一名、トルコ一名、アフリカ一名、都合三十二名の男女が、各其国の住居に模したる一定の区域内に団欒しつつ、日常の起居動作を見する……沖縄人から猛烈な抗議を受ける • 1912年拓殖博覧会 • 1914年東京大正博覧会 • 北海道・樺太・朝鮮・小笠原・伊豆諸島・満州・蒙古・南洋などの特設館が設置された……「ジャワ、シンガポール、クンタン、ワイルドサカイ、ベンガリー、キリンの六人種にて男一八人、女七人」(南洋館)

  15. 6・原始人イメージとヤノマミ 拓殖博覧会展示の北海道アイヌの住居

  16. 6・原始人イメージとヤノマミ 拓殖博覧会展示の樺太アイヌの住居

  17. 6・原始人イメージとヤノマミ 進化主義的人間観(3) • とりわけ19世紀以降の「西洋」と「非西洋」の接触は、進化主義的人間観に基づいて、さまざまな問題を生み出しながら、現在に至っている • 進んだわれわれ西洋人 vs遅れたあの原住民たち • 日本は、はじめ後者の側に立ちかけたが、明治維新後の富国強兵化政策の下で、前者の側に立つことをめざした

  18. 6・原始人イメージとヤノマミ なぜ「原始人」が描けるのか? • 科学主義的=進化主義的人間観に基づけば、 • ヤノマモ(未開人)……文明人であるヨーロッパ人から、キリスト教信仰や合理性などの「叡智」を引き算した存在ヤノマモ(未開人)=「ヨーロッパ人」-「叡智」 • 原始人……現代に生きるヒトから、進化の過程で身につけてきた「知識・技術・能力」を引き算した存在原始人=「現代人」-「知識・技術・能力」 • 「叡智」と「知識・技術・能力」を等価に、「ヨーロッパ人」と「現代人」を等価にみなせば、目前の未開人は、原始人と等しいものとなる • 未開人をモチーフとして、もはやこの世に存在しない原始人の図を描くことになる

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