310 likes | 543 Views
日本航海学会 GPS/GNSS 研究会 May 26, 2006. MSAS 試験信号の測位精度評価. 坂井 丈泰 (電子航法研究所). Introduction. 航空局による広域補強システム MSAS は、現在試験中。 2機の静止衛星が打ち上げられた(ひまわり6・7号)。 ICAO SBAS 標準に基づく GPS 広域補強システム:ディファレンシャル補正、インテグリティ補強、測距信号追加。 米国 WAAS /欧州 EGNOS と互換の測距信号を放送する。 MSAS 試験信号を受信し、補強メッセージの評価を試みた: 試験信号で放送された補強メッセージを収集。
E N D
日本航海学会 GPS/GNSS研究会 May 26, 2006 MSAS試験信号の測位精度評価 坂井 丈泰 (電子航法研究所)
Introduction • 航空局による広域補強システムMSASは、現在試験中。 • 2機の静止衛星が打ち上げられた(ひまわり6・7号)。 • ICAO SBAS標準に基づくGPS広域補強システム:ディファレンシャル補正、インテグリティ補強、測距信号追加。 • 米国WAAS/欧州EGNOSと互換の測距信号を放送する。 • MSAS試験信号を受信し、補強メッセージの評価を試みた: • 試験信号で放送された補強メッセージを収集。 • 測位精度とプロテクションレベルの評価。 • IGS精密暦やTECデータベースとの比較。 • 評価の結果、良好な測位精度を確認した。安全上の問題も特にみられなかった。
MSASの状況 • 航空局が整備中の静止衛星による広域補強システム(ICAO SBAS)。 • 昨年2月に運輸多目的衛星(MTSAT-1R=ひまわり6号;PRN129)をH-IIAロケットで打上げ。 • 現在、東経140度の静止軌道上で試験中。気象ミッションはすでに運用中。 • 試験信号を随時放送しており、対応受信機があればSBAS補強メッセージを受信可能(放送予定は神戸航空衛星センタHPに掲載; http://www.kasc.go.jp/MSAS/index.html)。 • 2月18日に2号機(MTSAT-2=ひまわり7号;PRN134)を打ち上げた。2機体制による正式運用を来春に予定。
MSAS/SBASとは • ICAO(国際民間航空機関)が規格化した広域ディファレンシャルGPS方式による補強システム: • 補正(補強)情報は静止衛星から放送。 • 大陸規模の広い地域で有効な補正情報。 • GPSと同一のアンテナ・受信回路でディファレンシャル補正情報やインテグリティ情報が得られる。 • 開発/運用中のSBAS: • 米国WAAS 2003年7月より運用中。 • 欧州EGNOS 2005年7月より試験運用中。 • 日本MSAS MTSAT-1R/2を使用して試験中。 • 2007年春頃より運用開始予定。 • カナダCWAAS WAASをカナダにも拡張中。 • インドGAGAN 開発中。
SBASの仕組み 静止衛星 GPS衛星 ユーザ アップリンク局 モニタ局ネットワーク
MSASの全体構成 GPS Constellation MTSAT • 2 GEO • 2 MCS • 2 MRS • 4 GMS Sapporo GMS NTT 64Kbps User Kobe MCS L-band 1Mbps Hitachiota MCS Fukuoka GMS Tokyo GMS K-band Ground Link KDD 64Kbps MCS Master Control Station Hawaii MRS Monitor and Ranging Station MRS Naha GMS Australia MRS GMS Ground Monitor Station
SBASの機能 • 航法出力のインテグリティ(完全性)を確保する機能。 • プロテクションレベル(測位誤差の上限;危険率10-7)を計算するための情報。実際の測位誤差がプロテクションレベルを超える確率は 10-7以下。 • 航法モードにより、プロテクションレベルの上限が決まる。 インテグリティ・チャネル • 航法出力の位置情報精度を向上させる機能。 • 広域ディファレンシャル方式:GPS衛星の軌道・クロック誤差や電離層遅延量を補正するための情報を放送する。 ディファレンシャル補正 (いわゆるDGPSはこれのみ) • 航法システムのアベイラビリティ(有効性)を改善する機能。 • SBAS衛星からGPSと同様の測距信号を放送することで、利用可能な航法衛星を増加させる。 測距信号
MSAS評価活動(その1) 初期評価 • 測位精度 • 補正情報の妥当性 • インテグリティ機能
MSAS補強情報の収集(その1) • MSAS試験信号により放送された補強メッセージを収集: • 収集時期: 2005年11月14~16日(PRN129) • Kp指数 = 0+ ~ 3+ • 電子航法研究所(東京都調布市)屋上アンテナ • NovAtel MiLLennium-STD受信機を使用 • ユーザ受信機シミュレータを使用して、ユーザ測位誤差を評価する: • 国土地理院GEONETをユーザ局として利用(30秒サンプル) • 男鹿、御前崎、高山、高知、佐多、父島の6地点で評価 • メッセージタイプ0(SBASが試験中であることを意味する)は、メッセージタイプ2に読み替えて利用 • 衛星軌道補正情報および電離層補正情報についても、IGS精密軌道暦などをもとに評価する。
ユーザ受信機シミュレータ • SBASユーザ受信機シミュレータ: • PC/UNIX上で動作する計算機プログラム。 • 任意のユーザ局における観測データを処理する: • RINEXファイルを入力とする。 • 測位結果のほか、プロテクションレベルも計算。 • 一周波の擬似距離を使用。キャリアスムージングあり。 • SBASメッセージの適用: • SARPs(あるいはMOPS)に従ってSBASメッセージを解読・適用する。 • 補強メッセージは、NovAtelフォーマット($FRMAレコード)で入力する。 • SBAS衛星の擬似距離は使用しない。
モニタ局とユーザ局の位置関係 MSASモニタ局 評価用ユーザ局
ユーザ測位誤差の例(高山) GPS単独 GPS単独 MSAS MSAS
ユーザ測位精度 システム 男鹿 水平 垂直 御前崎 水平 垂直 高山 水平 垂直 GPS単独測位 RMS 最大 1.300 3.579 3.708 8.450 1.372 3.631 5.129 8.761 1.394 3.627 4.702 10.93 MSAS RMS 最大 0.381 0.631 1.659 2.405 0.433 0.671 2.039 3.596 0.502 0.728 4.873 3.700 システム 高知 水平 垂直 佐多 水平 垂直 父島 水平 垂直 GPS単独測位 RMS 最大 1.504 3.716 5.635 11.84 1.772 3.404 8.596 9.531 2.444 3.094 7.949 9.312 MSAS RMS 最大 0.637 0.881 8.517 9.396 0.640 0.730 3.012 2.680 0.982 1.014 6.267 6.614 単位 [m] (一周波、30秒サンプル、キャリアスムージングあり)
衛星軌道補正後の残差 • 衛星軌道補正後のIGS精密軌道暦との差の、東京から見た視線方向成分。 • 収束すれば航法メッセージより若干良い程度になる。
衛星軌道補正後の残差(+クロック) • 衛星クロックも含めた正味の視線方向成分。 • 航法メッセージよりばらつきが小さい:一日周期の変動は電離層?
電離層垂直遅延量の放送値 • 各IGPにおける電離層垂直遅延量を重ねて表示。 • 背景はIGSによる電離層TECデータベース(IONEXファイル)による推定値。
電離層垂直遅延量(対IONEX) • 各IGPにおける電離層垂直遅延量の、IONEXとの差。 • 若干の負のバイアスがあるが、RMSでは半減。
補正情報の精度評価 RMS値、単位 [m] システム 衛星軌道・クロック補正(視線方向) 電離層 補正 軌道 クロック 軌道+クロック GPS単独測位 1.150 1.353 1.716 1.149 MSAS 1.385 1.564 1.563 0.655 • 衛星軌道・クロックは 1.5m、電離層遅延については 0.7m 程度の範囲で精密軌道暦やTECデータベースに一致。 • 衛星軌道推定が良好でなくても、クロック補正で補われている。
GIVE値の分布 GIVEI sGIVE 0 0.092 m 1 0.182 m : : 10 1.094 m 11 1.368 m 12 1.824 m 13 4.559 m 14 13.68 m 15 Not Monitored 割合 GIVEI GIVEI = 15 Not Monitored • MSASが放送している全IGPにおけるGIVE値の分布。 • GIVE:電離層遅延量の不確実性を表すインテグリティ情報。
プロテクションレベルの例 プロテクションレベル 電離層による成分 ユーザ測位誤差 • 佐多(950491)におけるユーザ測位誤差とプロテクションレベル。 • 大きなマージンをもってユーザ測位誤差をバウンド。 • プロテクションレベルの大部分は電離層による成分。
プロテクションレベルの評価 Site プロテクションレベル LNAV/VNAV Availability AL=556m/50m APV-I (LPV) Availability AL=40m/50m HPL VPL 940030 男鹿 25.82 40.48 82.1 % 81.1 % 93101 御前崎 26.14 38.92 83.2 % 78.0 % 940058 高山 32.83 46.29 70.1 % 65.6 % 940083 高知 37.67 50.08 73.6 % 67.1 % 950491 佐多 44.34 56.24 51.1 % 35.8 % 92003 父島 85.79 123.0 0.00 % 0.00 %
MSAS補強情報の特性 • MSAS試験信号で放送された補正情報の評価: • 測位精度は良好:父島でも測位誤差は1m前後で、最大でも9.4m。 • 電離層遅延量についてもIGSデータベース(IONEX)との比較ではおおむね良好:ただし、電離層活動が活発な時期ではない。 • インテグリティ情報: • プロテクションレベルは大きなマージンをもってユーザ測位誤差をバウンドしている。 • 電離層遅延量の不確実性を表すGIVE値も、大きなマージンがある。 • プロテクションレベルのマージン: • 測位誤差の最大値は 10m 以下:プロテクションレベル(100m以上になる)は現実の性能よりかなり悲観的。 • 磁気嵐に備えている?
MSAS評価活動(その2) インテグリティ評価 • 連続観測 • プロテクションレベルの検証
MSAS補強情報の収集(その2) • 2006年4月より、MSAS試験信号を連続観測中: • 補強メッセージを常時収集(PRN129のみ)。試験信号が放送されてさえいれば、メッセージを記録する。 • 電子航法研究所(東京都調布市)屋上アンテナで、NovAtel MiLLennium-STD受信機を使用。 • 停電やメンテナンスによる欠測あり。 • 5月20日現在、266時間分以上を収集済み。 • 初期評価と同様にユーザ測位誤差を評価する: • 国土地理院GEONETから40地点を選択(30秒サンプル)。 • プロテクションレベルを超える測位誤差の有無を調査。 • 4衛星以上のすべての組合せを評価する(ユーザはどんな衛星の組合せを使うかわからないから)。 • 「測位誤差/プロテクションレベル」の最大値をチェックする。
試験信号の放送状況 日付 放送時間帯 時間(h) 日付 放送時間帯 時間(h) 06/4/12 00:00 – 24:00 24.0 06/5/3 00:00 – 24:00 23:56 06/4/13 00:00 – 03:00 3:09 06/5/4 00:00 – 24:00 23:57 06/4/21 07:22 – 24:00 16:36 06/5/5 00:00 – 24:00 23:58 06/4/22 00:00 – 08:07 8:07 06/5/6 00:00 – 02:15 2:15 06/4/23 04:31 – 07:02 2:31 06/5/8 07:34 – 24:00 16:24 06/4/27 12:00 – 24:00 11:56 06/5/9 00:00 – 01:00 01:00 06/4/28 00:00 – 24:00 23:58 06/5/19 06:04 – 06:20 01:26 06/4/29 00:00 – 24:00 23:54 07:04 – 08:15 06/4/30 00:00 – 24:00 23:58 06/5/20 00:41 – 08:06 7:25 06/5/1 00:00 – 24:00 23:58 合計 266:25 06/5/2 00:00 – 01:00 4:00 21:01 – 24:00 ※試験信号の放送停止と停電等による欠測は区別していない
評価対象局の位置 MSASモニタ局 評価用ユーザ局
通常の評価 GEONET 3011(川越) 06/5/20 00:41-08:06 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal APV-I mode HAL = 40m VAL = 50m • すべての可視衛星を利用する(all-in-view)測位を想定した通常の評価。 • インテグリティの検証には不十分。アベイラビリティは現実的。
すべての組合せを評価 GEONET 3011(川越) 06/5/20 00:41-08:06 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal APV-I mode HAL = 40m VAL = 50m All combinations • 4衛星以上のすべての組合せを評価。 • インテグリティの検証に利用。アベイラビリティは現実的ではない。
誤差/プロテクションレベル 06/5/19 Error / Protection Level
インテグリティ評価の結果 • 測位精度: • 測位精度はおおむね0.5~1m程度で安定している(全衛星を利用した場合)。 • インテグリティ情報: • 4衛星以上のすべての組合せを検証。 • 今までのところ、プロテクションレベルを超えるユーザ測位誤差は観測されていない。 • 水平・垂直とも、ユーザ測位誤差の最大値はプロテクションレベルの5~10%程度が一般的。
Conclusion • MSAS補強メッセージの評価(全衛星を利用): • 衛星軌道・クロックは 1.5m、電離層遅延については 0.7m 程度の範囲で精密軌道暦やIONEXに一致。 • 測位精度は良好:父島でも測位誤差は1m前後で、最大でも6.6m。 • プロテクションレベルには大きなマージンがある。 • 連続観測データによる評価: • プロテクションレベルの検証(4衛星以上のすべての組合せ)。 • プロテクションレベルを超える測位誤差は今のところ観測されていない。 • 今後の方針: • 連続観測によるMSASの評価を継続する。 • モニタ局を各地に設置し、MTSAT衛星の軌道情報の評価を試みる。