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第2章3.格付け会社の情報生産 ○ 債券の利回りとその計算. 証券(株式・債券等)の発行市場と流通市場 発行市場: 流通市場: 利回り 投資家側から見た金利 流通利回り:既発行の債券を流通市場で購入した場合の利回り 利回りの計算方法:単利と複利 単利:利子が利子を生むこと(孫利子)を計算に入れない 複利:利子が再投資され、利子を生むとして計算. 例: 残存期間 5 年、表面金利クーポン C=4 円(債券発行時に約束されている毎年の支払い利子)、満期時に額面 100 円償還(表面金利 4% ) 、債券の現在時点での市場価格 P=96 円
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第2章3.格付け会社の情報生産○債券の利回りとその計算第2章3.格付け会社の情報生産○債券の利回りとその計算 • 証券(株式・債券等)の発行市場と流通市場 • 発行市場: • 流通市場: • 利回り • 投資家側から見た金利 • 流通利回り:既発行の債券を流通市場で購入した場合の利回り • 利回りの計算方法:単利と複利 • 単利:利子が利子を生むこと(孫利子)を計算に入れない • 複利:利子が再投資され、利子を生むとして計算
例: 残存期間5年、表面金利クーポンC=4円(債券発行時に約束されている毎年の支払い利子)、満期時に額面100円償還(表面金利4% ) 、債券の現在時点での市場価格P=96円 • 投資家がこの債券に新規に投資した場合の利回りは? • 単利の(最終)利回りrs • =1年当りの受取収入/投資金額 • =(利子+年当り償還差益) /投資金額 • = • ={4+(100-96)/5}/96=0.05(5%) • 一般式rs= {C+(100-P)/5}/P
・ ・ 複利の利回りrc 96=4/(1+rc)+ 4/(1+rc)2 + 4/(1+rc)3 + 4/(1+rc)4+104/(1+rc)5 : ①式 から求められる rc が複利利回り。 rc≒0.049 、4.9% ・複利利回り: 満期までに債券から生じるすべてのキャッシュ・フローの現在価値(①式の右辺)が、その債券の市場価格P(①式の左辺)と等しくなる割引率rcのこと
・日本の社債の流通利回り:複利 2014年6月2日時点 • 債券の発行金利と流通利回りとの関係 格付けはR&I 日本証券業協会
○格付けの手法 • デフォルトリスク: • 事業リスク: • 事業リスクの規定要因:(1)産業特性、(2)対象企業の収益力の水準と安定性
(1)産業特性 • ①市場規模・トレンド・変動性 • ②競争状態 • ③需要者・供給者との関係 • ④規制・保護の存在 • (2)対象企業の収益力の水準と安定性 • ①売上規模・シェア・成長性 • ②販売力・ブランド力・技術力・製品開発力・コスト競争力 • ③売上構成 • ④コスト構造 • ⑤事業戦略・経営陣・経営組織
財務リスク: • 財務リスクの規定要因 • 資本負債構成 • 借入金・社債の返済時期・契約内容 • 巨額の投資やM&A • サントリー・ホールディングスの格付け(ムーディーズ)は、米ビーム社の買収(1兆6000億円)による負債増大のため格下げ:A3→Baa3(2014.05.01) • 金融機関との関係
格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001格付投資情報センター『格付けQ&A』日本経済新聞社 2001
・自動車・電機会社の格付け:2014年5月現在 格付投資情報センターR&I2014年5月30日現在 General Motors: BB+ トヨタ:AA- Ford : BBB- 本田:A+ Chrysler : BB- 日産:BBB+ Volkswagen : A- S&P (スタンダード・アンド・プアーズ) 2014年6月4日
○ソブリン格付け(国債の格付け)の手法 Cf. 格付投資情報センターR&I「ソブリンの格付の考え方」 10 • 根本はデフォルト・リスクの評価 • デフォルト・リスク:債務の元利返済が契約通り実行できなくなるリスク • 国の債務履行能力に影響する様々な要因を総合的に考慮して、デフォルト・リスクを評価 • ①財政状況・資金調達構造 • ②経済・政治社会基盤 • ③政策運営力
①財政状況・資金調達構造 ・財政状況:当該国政府の財政状況から債務履行能力を判定 ・資金調達構造:短期的な資金繰り悪化のリスクがないか、円滑に リファイナンスする能力を判定
②経済・政治社会基盤 ・経済基盤:税収を確保するための経済基盤を評価 ・政治・社会基盤:政府が適切な政策を運営していくのに必要な 政治・社会の安定性を評価
③政策運営力 ・政策運営力:適切な政策を遂行し、財政・経済状況を改善する能力を評価
日本国債の格下げ(Fitch)12.05.22:AA- → A+(14.06.05現在も) • 理由:政府債務残高(GDP比)が高水準で上昇し続けているにもかかわらず、財政再建の動きはゆっくりしており、政治的リスクに直面している。(上記③の政策運営力に関する問題) • 日本国債の格下げ(Moody’s)11.08.24: Aa2→Aa3(14.06.05現在も) • 理由:政府債務残高上昇の抑制が困難 • 経済成長見通しの弱さ(東日本大震災の影響、原発事故による電力供給能力の弱さ)と赤字削減に向けての政治力の欠如 • 上記の②の経済基盤、③の政策運営力に関する問題
・ユーロ圏各国の格付けと国債利回り 格付けが高いほど、国債利回りは低い 通貨はユーロで共通 OECD, ECB, S&P
○ストラクチャード・ファイナンスSF格付 • 従来の格付対象:事業会社、金融機関、公的機関 • 1980年代の証券化の発展に伴い証券化を対象とする格付(SF格付)が始まる • 2008年の世界金融危機直前、世界の主要格付会社の収益の5割以上がSF格付によるもの • SF格付の特徴 • 証券化の対象資産のキャッシュフローの分析 • 公社債格付に比べて数理モデル・計量分析に大きく依存 • 特別目的会社SPC・サービサー等の証券化の仕組の安定性の分析 • 超過スプレッド:投資家への利払いが滞らないように、証券化対象資産からの金利収入の一部を証券化SPCに蓄えておくこと
・米国の証券化商品発行額は、金融危機(2008年)以降急落・米国の証券化商品発行額は、金融危機(2008年)以降急落 SIFMA
○証券化の仕組 サービサー 債権譲渡 ローン元利金 の回収・管理 (不足主体) 債務者 住宅ローン 負債・資本 住宅ローン A B S (余剰主体) 投資家 (資産担保証券) 証券市場 住宅 ローン 借入証書 銀行・ノン バンク オリジ ネーター SPC(特別 目的会社) ・Special Purpose Company ・Asset Backed Security
○格付会社の収入 ・格付会社:純粋民間会社 • 19世紀中頃米国で格付け始まる~1960年代: • 投資家からの情報提供料の受け取り(投資家側のニーズから格付会社が登場) • 米国:1960年代末~: • 投資家への情報提供料プラス • 背景:格付けの普及 • →格付けを取得しないと投資家が債券を買ってくれない。高い格付けを取得すれば低金利で債券の発行が可能。 • →発行体にとって格付け取得が必要 • 格付会社における格付料のウェイト増大 • Cf. ソブリン格付けにおいて先進国は格付会社に格付けを依頼しておらず(勝手格付け、非依頼格付)、格付料も払っていない。
・ ・Deb, P. & Murphy, G. ‘Credit Rating Agency : An Alternative Model’ p.3