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食育セミナー: おいしさの心理学~現代に望まれる日常食の復活~. 演者:広島修道大学人文学部 教授 今田純雄. 日時:平成18年9月18日(祝) 10:30 ~ 12:00 会場:ホテルグランコート名古屋5F「ローズルーム」 主催:社団法人愛知県栄養士会、社団法人日本栄養士会 後援:社団法人岐阜県栄養士会、社団法人三重県栄養士会、 健康日本21推進フォーラム ( 予定 ) 協賛:みそ健康づくり委員会. 自己紹介をかねて:著書(分担執筆含む). 「食べることの心理学:食べる,食べない,好き,嫌い」 2005 今田純雄編著 有斐閣
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食育セミナー:おいしさの心理学~現代に望まれる日常食の復活~食育セミナー:おいしさの心理学~現代に望まれる日常食の復活~ 演者:広島修道大学人文学部 教授 今田純雄 日時:平成18年9月18日(祝)10:30~12:00 会場:ホテルグランコート名古屋5F「ローズルーム」 主催:社団法人愛知県栄養士会、社団法人日本栄養士会 後援:社団法人岐阜県栄養士会、社団法人三重県栄養士会、 健康日本21推進フォーラム(予定) 協賛:みそ健康づくり委員会
自己紹介をかねて:著書(分担執筆含む) 「食べることの心理学:食べる,食べない,好き,嫌い」 2005 今田純雄編著有斐閣 「文化行動の社会心理学」 (21世紀の社会心理学第3巻) 2005金児暁嗣編北大路書房 (文化と食行動の章を執筆) 「新・心理学の基礎知識」2005 中島義明編 有斐閣 (学習・行動の章を編集執筆) 「栄養教育論」2004 香西みどりら編東京化学同人 (食行動の社会心理学を執筆) 「食品と味」(光琳選書1) 2003 伏木亨編光琳 (味の心理の章を執筆) 「フードデザイン21」2002 荒井綜一ら編サイエンスフォーラム社 (心理学による消費者の食行動予測の章を執筆) 「美味学」(21世紀の調理学第3巻)1997 増成隆士・川端昌子編 (食心理学の章を執筆) 「食行動の心理学」1997今田純雄編著 培風館 「たべる:食行動の心理学」1996中島義明・今田純雄編著 朝倉書店 など
食行動は生物行動? 食物 咀嚼 嚥下 消化 吸収 排泄 便 肝臓 心臓 エネルギーの貯蔵 腎臓 尿 脂肪細胞 生命活動(エネルギー消費) エネルギーの供給 (血液) (血液) 摂食の開始と停止 脳 エネルギー供給・消費状況の監視
はたして, 食行動は生物行動だろうか?
食行動は生物行動? 食物 咀嚼 嚥下 消化 吸収 排泄 便 肝臓 心臓 エネルギーの貯蔵 腎臓 尿 脂肪細胞 生命活動(エネルギー消費) エネルギーの供給 (血液) (血液) 摂食の開始と停止 エネルギー供給・消費状況の監視 脳 “食物”情報の感受,認知(認識) 感覚刺激の受容(見え,味,ニオイなど) 経験(学習)・思考(観念)・判断(予期)
はたして, 地域の特色は残っているのだろうか?
環境への適応行動としての食行動 生物行動 適応行動 社会行動 文化行動 食行動 環境 不安定 不安定
本日の内容 • 現代社会における食の変貌 食環境はいかに変化してきたか • 心理学からみた食育 食の問題行動と食育 • 食育への提言 おいしく,楽しく,おもしろく 日常の食卓の復活 味噌のおもしろさ
食環境の変化 ここよりしばらく, スライドを急ぎます。 ご関心の強い方は,配付資料ならびに「食べることの心理学」(有斐閣,2005)の序章・第7章をごらん下さい。
食環境の変化 1955-1973(昭和30年-昭和48年): 高度経済成長期 豊かな生活を求め続けた時代 “豊”食へ
出典:http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/c_revol.html:堀 啓造(香川大学経済学部)出典:http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/yomimono/c_revol.html:堀 啓造(香川大学経済学部)
昭和30年代 撮影:豊後高田市(大分県)昭和の町,昭和ロマン蔵・駄菓子屋の夢博物館
食環境の変化 1970年代: 飽食社会の枠組みの成立 “豊”食から“飽”食
食環境の変化 1970年前後 経済高度成長期の末期 1969年 安田講堂事件 1970年 日本万国博覧会(大阪) 1973年 電通広告CMディレクター自殺 「リッチでないのに,リッチな世界などわかりません。。。。」 食糧供給という観点からみると, ・“おいしいものを,安く,たっぷりと食べたい” という目標が,ほぼ達成された時代 「モーレツからビューティフルへ」 (富士ゼロックスCM) 画像出典:60年代通信 http://www31.ocn.ne.jp/~goodold60net/
食の外部化率 食環境の変化 消費熱量の減少と油脂分摂取量の増加+食の外部化の進行 (Kcal) ( g) (%) 国民栄養調査(厚生省,厚生労働省)ならびに 食の外部化率:外食産業総合調査研究センターweb pageより http://www.gaishokusoken.jp/3622003tokeishiryoshu/3629005.pdf
食環境の変化 砂糖の年間一人あたりの消費量 1970年 戻る
食環境の変化 1970年
外食産業の発展 食環境の変化 1970年代:外食産業の勃興と発展 調理技術の革新 • レトルトカレー発売(1969) • カップ麺発売(1971) • 電子レンジ大衆化へ向かう(1971) ファストフード • ミスタードーナッツ1号店(1970) • 日本KFC1号店(1970) • 吉野家チェーン化(1970) • 日本マクドナルド1号店(1971) ファミリーレストラン • すかいらーく1号店(1970) • ロイヤルホスト1号店(1971)
食環境の変化 日本マクドナルドの店舗数,売上高の推移 1980年 1990年 2000年 5000 売上高 単位:億円 4500 店舗数 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0
中食産業の発展 食環境の変化 1970年代:中食文化の勃興と発展 調理技術の革新 ファストフード ファミリーレストラン コンビニエンスストアー 持ち帰り弁当 家庭環境・食卓環境の変化 • セブンイレブン日本1号店(1974) • ローソン1号店(1975) • FamilyMart実験第1号店(1973) • ほっかほっか亭店舗開業(1974→1976)
食環境の変化 コンビニエンスストアーの発展-1- 2000 1990 1980 ローソン(LAWSON)
食環境の変化 コンビニエンスストアーの発展-2- 1980 1990 2000 店舗数の推移 セブンーイレブン・ジャパン 売上高の推移
食環境の変化 コンビニエンスストアー13社の2003年度実績 売り上げ:6兆9624億円 店舗数:37,713店 客数:月平均10億人ほど 客単価:570-80円 「日配食品(弁当やパンなど)」の構成比: 35.7% 「加工食品」の構成比: 33.5% (菓子,ソフトドリンク,インスタント食品,レトルト食品など) 69.2%! 社団法人日本フランチャイズチェーン協会 web 資料より
食文化の伝承困難 食環境の変化 1970年代:食卓の変化(チャブ台からテーブルへ) 調理技術の革新 ファストフード ファミリーレストラン 家庭環境・食卓環境の変化 • 核家族化(1971, 56.5%)→“食は三代”の崩壊 • チャブ台からテーブルへ(1971, 逆転)
食環境の変化 1970年代:まとめ 調理技術の革新 外食・中食のスタート 流通・小売りの形態変化 食卓環境の変化 1974: シャープ電子レンジ100万台超1978:冷蔵庫普及率90%超 1979:サランラップ販売(株) 飽食社会の枠組み成立 日本では1964年に日米合弁の山陽スコットが「スコッティ」を、十條キンバリーが「クリネックス」を相次いで発売した。 使い捨て文化の誕生
食環境の変化 1980年代: 飽食社会の発展 “飽”食から“呆”食
食環境の変化 1980年代:飽食文化の爛熟期 食環境の変化拡大:食の混乱 食品の多種・多様化(少種大量→多種少量) 外食,中食の一般化 はやりすたりの早さ イタメシ,タイメシ,もつ鍋,スープバー,ワインバー,MWカフェ,キムチ..... 食とはこれほどに腰の据わらない,おちつきのないものなのか.. バブル経済,バブル社会へ
“清潔”への過剰な意識と行動 食物属性としての“毒”性排除 食物属性としての“カロリー”偏重 1980年代:飽食文化の爛熟期 密かに進行。。。 • “清潔”志向 • MRSA登場 • 抗菌グッズ登場 • 朝シャン • 若年女子の痩身化 • ボディコン(1986) • 食障害(AN,BN) • 個食
現代社会は,若年女子の痩身化に向けて,目には見えない”圧力”をかける.現代社会は,若年女子の痩身化に向けて,目には見えない”圧力”をかける.
食環境の変化 女子 男子 70s 80s 90s 若年女子の痩身化
食環境の変化 1980年代: 個食は食だけの問題ではない。
1979年発売 → 80年代 大流行 → 現在,一般的。 1989年発売。90年代 に大流行。現在,一般的。
個食の背景: ・1979年7月1日、ウォークマン1号機 PS-L2発売(ソニー)。 → 1980年代に大流行。音楽の個人化は,現在に続く。 → 共有空間の中の異空間。 ・1989年4月1日,ゲームボーイ(GAMEBOY)発売(任天堂)。 → 1990年代に大流行。ゲームの個人化は,現在に続く。 ・1990年代後半より,携帯電話が普及。 → 2000年代から現在にかけて一般化。 → コミュニケーション形態の変化。 → 私的空間が公的空間に進入。 → 話し言葉の延長としての文字通信(メールの普及)。 :指示語の氾濫(コレ,ソノ,アノ。。。) :第三者の視線の欠如。 ・現在:インターネット利用の一般化,携帯電話の必需品化 → メール交信の常態化 → 公的場面での会話の必要性低下(コンビニ言葉の氾濫) → 私的空間の延長としての公的空間
個食は“私”食? ・音楽もゲームも,集団で楽しむものであった,はず。。。。 ・公的空間の衰退(機能の低下) 無数の私的空間から構成されるものが公的空間ではない,はず。。。 ・社会規範・文化規範:公空間の構造と機能を規定する 規範(社会ルール・道徳・倫理)の脆弱化 ・携帯電話(特にメール),インターネットが拍車をかける 私空間の”投げ売り”状態,PC画面(display)の怖さ ・独立した自律的存在としての“個(人の)”食ではなく,単なる“私”食では? ・相互依存的,相互協調的な日本人にとって,“私”はやっかいなもの → 結果として,皆と同じものを食べる方向へ → 広い選択肢のなかでの狭い選択結果(定番メニュー)
1980年代:飽食文化の爛熟期 密かに進行。。。 • “清潔”志向 • MRSA登場 • 抗菌グッズ登場 • 朝シャン • 若年女子の痩身化 • ボディコン(1986) • 食障害(AN,BN) • 個食 “清潔”への過剰な意識と行動 食物属性としての“毒”性排除 食物属性としての“カロリー”偏重 食物=“感覚属性”+カロリー? 食の社会規範・文化規範の喪失 公空間の衰退 無数の私空間の蔓延 食の“無機質”化
食環境の変化 1980年代:まとめ 大事なものが失われていくことに気づかなかった“阿呆”な時代 そして1990年代へ
食環境の変化 1990年代: 飽食社会のかげり,崩壊? “呆”食から“崩”食へ
食環境の変化 1990年代:食の危機 事故と事件の連続 • 1993年 冷害、259万トン米の緊急輸入 • 1995年 阪神大震災 (地下鉄サリン事件) • 1996年O-157汚染カイワレ事件、狂牛病(英) • 1997年 豚コレラ(蘭)(神戸小学生殺傷事件) • 1998年 和歌山青酸入りカレー事件 • 新潟「アジ化ナトリウム」混入事件 • インフルエンザA感染鶏(香港) • ダイオキシン汚染鶏肉鶏卵(ベルギー) • 「環境ホルモン」「キレる」 • 1999年 埼玉ダイオキシン汚染野菜騒動 • 「買ってはいけない」
食環境の変化 • 2000年 雪印乳業食中毒事件 (食品の回収、お詫び相次ぐ ) • 2001年 BSE感染牛発生 • 2002年 牛肉偽装事件(雪印食品,日本ハム) マクドナルドチキンナゲット販売停止(ニューカッスル病?) 未認可食品添加物使用事件(ダスキン,協和香料) 輸入冷凍ネギ,冷凍ホウレン草の残留農薬問題 • 2003年 未認可食品添加物使用食品回収(マクドナルド) • 2004年 鶏インフルエンザ ミスタードーナッツ,肉まん:酸化防止剤、TBHQ (t- ブチルハイドロキノン) 協和香料:香料(アセトアルデヒド・プロピオンアルデヒド・ひまし油) ネギ,ホウレン草:農薬(フエンバレレート,クロルピリホス) MacD. ホットアップルパイ:着色料(アゾルビン)
1991 清潔シンドローム 1993 コギャル 1996 ジベタリアン・援助交際 1998 キレる 1992- 「第1回大食い選手権」 1993- 「料理の鉄人」スタート 食環境の変化 1990年代:まとめ 食不信と食不安の時代 ・事件・事故 → 食への不信・不安の増大(food anxiety) 食関連の諸問題 ・肥満と痩身(ダイエットの低年齢化) ・食態度と食行動の2方向化(二層化) “4無主義”(無知,無関心,無感動,無気力) 極端な“安全”“自然”“健康”志向 ・食の社会文化規範(エチケット,ルール,マナー) 暴食! 遊食!
食環境の変化 さて,飽食時代を振り返ってみると
食環境の変化 飽食の時代:1970年以降〜 “豊”食→ “飽”食→ “呆”食→ “崩”食→ 1960s1970s 1980s 1990s
食環境の変化 2000年代:新しい時代へ 飽食社会の後始末 “崩”食から“法”食
“法”食の時代 食教育の現場における混乱(現場は大変!) • 栄養“素”教育の限界 • 栄養“素”教育で,食行動は変わらない • 栄養“素”教育は,しつけ,モラルをカバーしていない • 行動変容のしくみ(mechanism),技法は栄養学の範囲外 • 食環境の急激な変化・拡大 • “飽”食から“法”食へ(1970年代以降の変化) • 消費者行動の変化 • 食情報の洪水,カオス • グルメ・健康番組の氾濫,食の暴力化,食の遊戯化 • マスコミ・インターネット情報の玉石混合 • “飽”食世代との世代間ギャップ • “飽”食文化の世代間伝達の時期 • マクド世代,ミスド世代のお母さんが相手
“法”食の時代 ・“食”物,“食”行動(行為),“食”関連行動 ・物質(食物・料理)と行動(行為)はまったく異質・異次元のもの 食育基本法を読む ・「『食』」とは? ・「食育」は「知育、徳育及び体育の基礎」!? ・「こどもたち」のためのもの? ・「健全」とは? 「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける」(附則) 子どもたちが健全な心と身体を培い 健全な食生活を実践することができる人間 生涯にわたって健全な心と身体を培い 健全な食生活を実現する 心身の健康を増進する健全な食生活を実践する (以上,附則) 父母その他の保護者及び子どもの食に対する関心及び理解を深め、健全な食習慣の確立に資する (19条) 子どもの健全な食生活の実現及び健全な心身の成長 (20条) 親世代が飽食世代なのに,どうするのだろう? 何が健全?
“法”食の時代 “健全”とは:食の問題行動と心身の健康 • 栄養摂取上の問題 • 食の問題行動 ? ? 問題行動 社会的逸脱,“知育・体育・徳育”上の問題行動(諸問題) • 健康障害 • 肥満 • メタボリックシンドローム • 幼児肥満 • やせ • 痩身願望・ダイエット行動の習慣化 • 食障害(拒食症:AN, 過食症:BN) • 栄養障害 • 栄養失調 • 臨床栄養障害 • その他 • アレルギー • 毒性反応 ? ? ・すぐにキレル ・集中力がない ・がまんができない ・モラルが欠如 ・体力がない などなど
“法”食の時代 食の問題行動の発生機序に関する行動発達的研究今田・長谷川・坂井(2007):文部科学省科学研究費助成研究 偏食(者)の心理的特徴 心理的特徴 ・自己統制力が弱い ・依存性が強い ・想像力が欠如 ・神経質 ・自尊感情が低い 偏食傾向 ・好き嫌いがつよい ・外食傾向がつよい ・選択幅がせまい ・栄養摂取の偏り懸念
“法”食の時代 食の問題行動と健康 • 栄養摂取上の問題 • 食の問題行動 • 偏食,異食(pica),偏執的摂食(food craving),外発的摂食,情動的摂食,きまぐれ摂食(picky eating),夜間摂食シンドローム,欠食,抑制的摂食(ダイエット),食への無関心・無感動・無気力,食の社会文化規範逸脱(調理・風味づけ・盛りつけ・摂食手段・組み合わせ・摂食順序・時刻,場所など) • 食不安,食認知の偏り・ヒューリスティクス(フードファディズム) ? 問題行動 社会的逸脱,“知育・体育・徳育”上の問題行動 ? 健康障害 肥満,痩せ,栄養障害など