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医学の発展に果した動物実験の役割と動物実験における倫理 医学研究科 附属動物実験施設 塩見 雅志

医学の発展に果した動物実験の役割と動物実験における倫理 医学研究科 附属動物実験施設 塩見 雅志. 講義内容 1.動物実験の歴史と近年の成果 2.不適切な動物実験と動物実験に反対するグループの主張 3.難病患者の声と動物実験の必要性 4.動物の権利 5.動物福祉と適正な動物実験. 1.動物実験の歴史と近年の成果. 医学史にみる医学の発展と動物実験 BC.6 Pytagorus 各種動物を解剖して動物体の構造を研究 Archimedes BC.4 Aristorle 動物の解剖所見と外科症例の観察に基づいた医療 Hippokrates

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医学の発展に果した動物実験の役割と動物実験における倫理 医学研究科 附属動物実験施設 塩見 雅志

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  1. 医学の発展に果した動物実験の役割と動物実験における倫理医学の発展に果した動物実験の役割と動物実験における倫理 医学研究科 附属動物実験施設 塩見 雅志

  2. 講義内容 1.動物実験の歴史と近年の成果 2.不適切な動物実験と動物実験に反対するグループの主張 3.難病患者の声と動物実験の必要性 4.動物の権利 5.動物福祉と適正な動物実験

  3. 1.動物実験の歴史と近年の成果

  4. 医学史にみる医学の発展と動物実験 BC.6 Pytagorus 各種動物を解剖して動物体の構造を研究 Archimedes BC.4 Aristorle 動物の解剖所見と外科症例の観察に基づいた医療 Hippokrates AD.2 Galenosギリシャ医療に実験的証明という手法を導入 (キリスト教の影響下,ヒトと動物の解剖が禁止され,医学の発展が乏しかった) 16 Vesaliusヒトと動物の解剖所見の比較. 17 Harvey動物実験の結果から「血液循環論」を発表 18 Haller 動物実験の結果から「刺激感応説」を発表 19 Bernard動物実験の結果から「実験医学序説」を発表 医学研究における方法論とし動物実験の必要性を提唱 Pollender死亡動物の血液中に炭疽菌を発見 Davaine血液を介して感染が成立することを実証 Pastour生命の自然発生説を否定,狂犬病や炭疽などのワクチンを開発 (ノーベル賞-生理学医学部門-受賞研究の約75%が動物実験を実施) 19世紀半ばに麻酔薬が開発され,臨床で使用されると同時に動物実験でも使用されるようになった.

  5. 近年の医学の発展における動物実験の貢献 感染症: ワクチンの開発,抗生物質,抗菌剤の開発,原因抗原の究明など. 循環器疾患: 降圧剤の開発,脂質低下剤の開発,心電図の開発,心臓バイパス手術手技の開発,人工心臓の開発,冠動脈カテーテル技術の開発,冠動脈血管造影法の開発,心臓ペースメーカの開発,抗凝固剤の開発,動脈硬化発症メカニズムの部分的解明,急性冠症候群のメカニズムの部分的解明,高血圧と塩分摂取の関連の解明など. 糖尿病: 血糖降下剤の開発,インスリン抵抗性改善薬の開発など. 臓器移植: 心臓移植,肺移植,腎臓移植,肝移植,角膜移植,骨髄移植,免疫抑制剤の開発など. その他: 腎臓透析技術の開発,悪性腫瘍の発生機序の部分的解明および治療法の開発など.

  6. 2.不適切な動物実験と 動物実験に反対するグループの主張

  7. 「大学における研究は自己規範に基づいて実施されるべきであり,独立性を保ち,国家をはじめとする何人からの圧力も受けてはならない」「大学における研究は自己規範に基づいて実施されるべきであり,独立性を保ち,国家をはじめとする何人からの圧力も受けてはならない」 大学や研究機関の社会的信頼が低下 (自己規制では不十分) 科学万能主義への疑問 (自然調和主義への移行)

  8. 動物実験に反対する運動の思想的背景 動物愛護-------動物は可愛がる存在 動物福祉-------動物の立場に立って動物に接する 動物権-------動物には他の生物に侵されずに生きる権利がある Speciesm-------動物種による差別 動物の開放------すべての動物を人の手から開放せよ ・手段を選ばず動物を解放する過激な活動.     研究機関へ侵入し,放火,破壊,爆破,動物の連れ出しを行い,     研究者個人や家族にたいして脅迫やイヤガラセを行う. ・法律改正運動および一般市民,動物愛護団体,動物福祉団体,文化人,マスコミ等への働きかけ. ・ 学術の動向 1,997年月号48-51( 日本学術会議の提言)   ・ Scientific American , February 1997 63-77(和訳 日経サイエンス 1997年5月号)

  9. 3.難病患者の声と動物実験の必要性

  10. 治療法の確立が必要な疾患 感染症: エイズ,SARS, BSE,マラリア,西ナイル熱,その他の 新興感染症 生活習慣病: 急性冠症候群,動脈硬化,脳梗塞,糖尿病など 脳神経系疾患: アルツハイマー,痴呆など 悪性腫瘍: 遺伝性疾患: 約120の難病 臓器移植: 拒絶反応の克服,移植臓器の保存法の改善 各種薬剤の開発: 再生医療: 組織幹細胞,胚性幹細胞の特定細胞への誘導 遺伝子治療:

  11. 動物実験に反対する運動の思想的背景 動物愛護-------動物は可愛がる存在 動物福祉-------動物の立場に立って動物に接する 動物権-------動物には他の生物に侵されずに 生きる権利 がある Speciesm-------動物種による差別 動物の開放------すべての動物を人の手から開放せよ ・手段を選ばず動物を解放する過激な活動.     研究機関へ侵入し,放火,破壊,爆破,動物の連れ出しを行い,     研究者個人や家族にたいして脅迫やイヤガラセを行う. ・法律改正運動および一般市民,動物愛護団体,動物福祉団体,文化人,マスコミ等への働きかけ.

  12. 4.動物の権利

  13. 「動物の権利」の概念 ○ 1892年ヘンリー・ソルト (イギリス) が提唱 「動物は人間と同じく,適当な食物と棲み処を得,不当な苦痛を受けない権利をもっている」 ○ 1978年 ピーター・シンガー (オーストラリア) ヒトは動物の一種で,ヒトだけが特別であるという考え方は種差別であり,ヒトに施してはならない実験処置は動物に対しても施してはならない.動物がもっている権利は平等な思い遣りを受ける権利であり,人間の権利と同じような配慮がなされなければならない(動物の解放) ○ 1978年 動物の権利の世界宣言 (ユネスコ) 動物の生存権,尊敬される権利,虐待されない権利,野生動物が固有の環境の下に生きる権利,家畜などが固有の生命・自由のリズムと条件に従って生きる権利,コンパニオンアニマルが天寿をまっとうする権利,労役動物の食餌・休息権 動物権団体がユネスコ本部前で宣言書を読み上げたもので,ユネスコの見解ではない 動物には 生きる,生を享受する,苦痛を与えられない 権利がある.

  14. 生存権の概念を動物に適用することは妥当か.生存権の概念を動物に適用することは妥当か. 1)権利は人類社会の契約 権利とは人類社会における利害関係を調整するために,相互に権利を認めあうことによって成立している一種のルールである.しかし,動物は他の動物の権利を認めることはない. 2)権利と義務,責任 健全な人類社会においては,権利を主張する場合には義務が伴い,その結果についても責任を負わなければならない.しかし,動物は義務を果たすことも責任をとることもしない. 3)自然界に 生存権 は 適用できるか ・恐竜の絶滅 ・動物種の違いによる種差別 ・自然界のルールは食物連鎖.

  15. 食物連鎖 (自然界の大原則) 大型 肉食動物 小 型 肉 食 動 物 草 食 動 物 植 物

  16. 動物に権利はあるか? • 権利は相互の権利を認め合うことによって成立する. • 権利の行使には義務/責任が伴う. • 動物が個々に生存権を主張した場合,生態系を維持することができない. • 動物権を認めるならば,ペット動物と野生動物は平等ではなくなる. 動物に権利の概念を当てはめることは不適切? 権利概念を当てはめることができないとしても, 動物の生命は尊重すべきである.

  17. 5.動物福祉と適正な動物実験

  18. 世界獣医学協会(WVA)の動物福祉の基本概念,5 freedoms 1.飢えや渇きからの解放 2.肉体的不快感および苦痛からの解放 3.傷害および疾病からの解放 4.恐怖および精神的苦痛からの解放 5.本来の行動様式や習性に従う自由 5 freedoms は 動物権 の概念に通ずる (家畜・コンパニオンアニマルを想定)

  19. 動物の福祉は,普遍的な概念か. 野生動物: 伴侶動物: 展示動物: 家 畜: 実験動物: 食物連鎖の法則を尊重し,生息域を含めて人が介入しない.(動物権は適用できない) 飼い主の責任で終生適正に飼育する(WVAの5 freedoms,動物権の適用,飼い主が動物に変わって社会に対する義務と責任を果たす). 生息環境に類似した適正な飼育環境を維持し,終生飼育する(WVAの5 freedoms,動物権の適用) . より適正な飼育環境を確保する場合には,社会(消費者)の価格の上昇と国内畜産農家に対する保障についての同意が必要.(英国では WVAの5 freedomsを適用) ?

  20. 動物実験を必要とする理由 1)克服しなければならない疾患が数多く残されている. 2)動物を使用することによってしか解明できない学問的課題が数多く残されている. 3)動物実験に代替できる研究手法が確立されていない.

  21. 国際医学団体協議会 (CIOMS : Council for International Organizations of Medical Sciences)の「医学生物学領域の動物実験に関する国際原則」(1985) 動物実験は,ヒトの生命現象を解明するだけでなく,ヒトと動物の疾病の予防,診断,治療を向上させる医学生物学の研究にとって不可欠である. 医学生物学者は,用いる動物に対して人道的な敬意を払うという道義上の義務を見失ってはならない.

  22. 医学研究において 動物実験が目指すもの ・ 医学・医療の発展 ・ 生命現象の解明 人類の健康と福祉に貢献 動物愛護が目指すもの ・ 動物の生命の尊重 ・ 快適な生存の保障 それぞれを独立に議論する場合は いずれも正しい

  23. 動物実験の是非を問うことは, 医学の進歩(治療法の開発,患者の救命)を優先するか, 動物権を認める(動物の命を尊重する)か を 問うことになる.

  24. 欧州では3“R”は動物実験を実施するための条件になっている欧州では3“R”は動物実験を実施するための条件になっている Research involving animals (Blakemore C, Boyd K, Ward L. Nature 1995; 374:670) SIR -The strength of opinion on both sides of the debate about the use of animals in research has generated mutual suspicion and discouraged rational discussion. In an attempt to break through the distrust, a group of antivivisectionists, members of animal welfare, research support and medical organizations, veterinarians, scientists using animals, members of bodies funding or directly engaged in research, moral philosophers and others, has been meeting over the past two years to exchange views. … Many of us were surprised by the extent agreement on important issues, including commitment to thereduction, refinement, and replacementof animals in research wherever possible,and unanimous condemnation of violence and intimidation against individuals and institutions. … 英国では,動物実験の是非について,生体解剖反対団体,動物福祉団体,研究支援関係機関,獣医師,動物を使用する研究者,倫理学者などからなる委員会が組織され,2年以上にわたる討論が行われた.….. 動物を用いる研究における“3Rs”の誓約と,研究者個人や研究組織に対する暴力や脅迫に対して非難することに合意した.

  25. 動物実験における人道的な配慮,(Alternatives,3つの“R”)動物実験における人道的な配慮,(Alternatives,3つの“R”) Replacement: 動物を使用しない実験 あるいはより下等な動物を用いた実験への変更 Reduction: 実験に使用する動物の数の削減 Refinement: 実験方法や実験手技の洗練(飼育環境を含め,動物が受ける苦痛をより少なくする) (Russell WMS, Burch RL. The principles of humane experimental Technique, Methuen (1959) 脊椎動物を使用しなければ研究が成立しない理由 必要動物数の算出根拠を明示 飼育環境の改善と苦痛軽減処置

  26. ヘルシンキ宣言 (世界医師会総会) ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則 1964年6月、フィンランド、ヘルシンキの第18回WMA総会で採択 1975年10月、東京の第29回WMA総会で修正 1983年10月、イタリア、ベニスの第35回WMA総会で修正 1989年9月、香港、九龍の第41回WMA総会で修正 1996年10月、南アフリカ共和国、サマーセットウエストの第48回WMA総会で修正 2000年10月、英国、エジンバラの第52回WMA総会で修正 B. すべての医学研究のための基本原則 11. ヒトを対象とする医学研究は、一般的に受け入れられた科学的原則に従い、科学的文献の十分な知識、他の関連した情報源及び十分な実験並びに適切な場合には動物実験に基づかなければならない。 12. 環境に影響を及ぼすおそれのある研究を実施する際の取扱いには十分な配慮が必要であり、また研究に使用される動物の生活環境も配慮されなければならない。

  27. 国際医学団体協議会 (CIOMS : Council for International Organizations of Medical Sciences)の「医学生物学領域の動物実験に関する国際原則」(1985) 動物実験は,ヒトの生命現象を解明するだけでなく,ヒトと動物の疾病の予防,診断,治療を向上させる医学生物学の研究にとって不可欠である. 医学生物学者は,用いる動物に対して人道的な敬意を払うという道義上の義務を見失ってはならない.

  28. 動物実験における倫理的な配慮,(Alternatives,3つの“R”)動物実験における倫理的な配慮,(Alternatives,3つの“R”) Reduction: 実験に使用する動物の数の削減 Replacement: 動物を使用しない実験あるいはより下等な動物を用いた実験への変更 Refinement: 実験方法や実験手技の洗練(飼育環境を含め,動物が受ける苦痛をより少なくする) (Russell WMS, Burch RL. The principles of humane experimental Technique, Methuen (1959) その他の“R” Responsibility: 3つの“R”を実行する責任が実験者にはある. Review: 動物実験委員会による実験計画書の審査や実験場所の査察(許可された実験のみを実施) Record: 動物実験に関するすべての記録を保存する.結果を報告する.

  29. Replacement,動物実験に代替する実験方法の長所と短所Replacement,動物実験に代替する実験方法の長所と短所 1.In vitro (培養細胞を用いた研究) ・細胞は培養系に移すと生体内とは異なる性質を示すことがある. ・細胞は培養条件によって異なる反応を示し,生体内の条件を再現することは困難. ・細胞が有している機能や特定遺伝子の機能を調べるのに有効. 2.コンピュータ シミュレーション ・条件設定によって異なる解析結果をもたらす. ・すでに確定した条件下での解析からは有効な仮説が得られる(薬剤の化学合成等で実用 化) 3.臨床研究 ・患者の同意が必要,倫理的な問題 4.疫学研究 ・当初の条件設定の影響を受け,限られた条件下での解析となる. ・疾病発症等に関する仮説は提供できるが,メカニズムの証明は困難. ・条件設定が整えば,有効な仮説を得られる.

  30. 医学研究における代替実験法と動物実験の位置付け医学研究における代替実験法と動物実験の位置付け 臨床観察・疫学研究 臨床応用 動物実験 臨床研究 代替実験

  31. 実験処置に対する動物の反応の構成 苦痛コントロール 遺伝コントロール 実験処置に対する動物の反応 環境コントロール 遺伝子組換え動物 R = ( A + B + C ) x ( D + E ) + F 種を越えて共通する反応 実験誤差 環境の影響 種特有の反応 ( 種差 ) ストレス ( 痛み + 苦しみ ) 個体特有の反応 ( 個体差 )

  32. Refinement 苦痛管理 ストレスに対する生体の反応 ス ト レ ス 視床下部の興奮腹部交感神経の興奮       ACTHの分泌             副腎髄質を刺激      副腎皮質ホルモンの分泌          アドレナリン分泌  糖質コルチコイド     鉱質コルチコイド 胸腺の萎縮   血圧上昇 グリコーゲン新生(肝)  ナトリウムの排泄抑制         脈拍増加 筋の収縮力の維持     カリウムの排泄促進    リンパ球の減少 胃腸の活動停止 窒素代謝         生命維持                 血糖値の上昇              炎症                   血液凝固の亢進

  33. 「動物の苦痛に関する審査基準」 カテゴリーA: 動物に対してほとんど不快感を与えないと思われる実験処置 カテゴリーB: 動物に対して軽微なストレス,あるいは短時間持続する痛みを伴う実験 カテゴリーC: 避けることのできない重度のストレスや痛みを伴う実験. (本カテゴリーに属する実験を行う場合,研究者は,動物に対する苦痛を最小限にするため,あるいは苦痛を排除するために,実験計画を慎重に検討する必要がある) カテゴリーD: 麻酔していない意識のある動物を用いて動物が耐えることの できる最大に近い痛み,あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置. (本カテゴリーに属する実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても決して行ってはならない)

  34. 実験処置に対する動物の反応の構成 環境コントロール 実験処置に対する動物の反応 R = ( A + B + C ) x ( D + E ) + F 種を越えて共通する反応 実験誤差 環境の影響 種特有の反応 ( 種差 ) ストレス ( 痛み + 苦しみ ) 個体特有の反応 ( 個体差 )

  35. Refinement 環境管理 低 温 末梢神経系 運動神経 中枢神経(視床下部) トリヨードサイロニン サイロキシン 下垂体前葉 甲状腺 TSH 酸素消費量 筋活動増加 骨格筋 ACTH 内 臓 副腎皮質ホルモン 酸素消費量増加 副腎皮質 副腎髄質 褐色脂肪細胞 アドレナリン ノルアドレナリン 低温時における生体の反応(発熱)

  36. シリアン ハムスターにおける飼育密度とアミロイド症の発現率 飼育密度 実験匹数 実験群数   甲状腺  肝 臓 脾 臓  副 腎  腎  臓                ♂  ♀  ♂  ♀  ♂  ♀ ♂ ♀  ♂  ♀ 1  20 20 55* 63 50 80 47 65 25 74 45 60   3 30 10 67 88 64 93 60 89 63 93 60 96 5 25 5 58 80 59 96 67 96 65 91 44 87 7 35 5 86 87 88 97 84 90 96 96 92 96 *:発現率(%)

  37. 実験処置に対する動物の反応の構成 遺伝コントロール 実験処置に対する動物の反応 R = ( A + B + C ) x ( D + E ) + F 種を越えて共通する反応 実験誤差 環境の影響 種特有の反応 ( 種差 ) ストレス ( 痛み + 苦しみ ) 個体特有の反応 ( 個体差 )

  38. 近交系マウス BALB/c の遺伝子プロファイル 染色体   1     2  3 4     5  6  7    8    9 11 17 遺伝子座 Idh-1 Pep-3 Akp-1 Hc Car-2 Mup-1 Gpd-1 Pgm-1 Ldr-1 Gpi-1 Hbb Es-1 Es-2 Thy-1 Mod-1 Trf Es-3 H2 A社  a  a  bl b  a  b  a   a   a  d  b b  b  a  b a d B社   a  -   --  b  -  b  a  a   a  d  b b  -  -  b a - C社   a  a  bl b  a  b  a  a   a  d  b  b  b  a  b a d 近交系は,兄妹交配を20世代以上続けている動物集団を意味し,遺伝子組成が 99.6% 以上同じ.

  39. 実験処置に対する動物の反応の構成 遺伝子組換え動物 実験処置に対する動物の反応 R = ( A + B + C ) x ( D + E ) + F 種を越えて共通する反応 実験誤差 環境の影響 種特有の反応 ( 種差 ) ストレス ( 痛み + 苦しみ ) 個体特有の反応 ( 個体差 )

  40. レニン TGマウス アンギオテンシノーゲン TGマウス X 血圧 正常 血圧 正常 血圧 上昇 つくば高血圧マウス レニン-アンギオテンシン系を活性化させた高血圧のモデル動物 アンギオテンシノーゲン レニン アンギオテンシ-I アンギオテンシン 変換酵素 アンギオテンシ-II 受容体に結合して血圧上昇

  41. Different phenotypes manifested in mouse and rabbits after the same gene transfer Genes transferred Mice Rabbits Lecitin:cholesterol acyltransferase Hepatic lipase apoE3 15-lipoxygenase Apolipoprotein(a) Lipoprotein lipase CRP (after modified by Koike T & Fan J, Laboratory Animal Technology and Science 2005; 17: 91-96) Pro-atherogenicAnti-atherogenic Pro-atherogenicAnti-atherogenic Anti-atherogenicPro-atherogenic Pro-atherogenicAnti-atherogenic Unboundto apoBBoundndto apoB No changesinDecreasein visceral fatvisceral fat No function Function

  42. 実験処置に対する動物の反応の構成 実験処置に対する動物の反応 R = ( A + B + C ) x ( D + E ) + F 種を越えて共通する反応 実験誤差 環境の影響 種特有の反応 ( 種差 ) ストレス ( 痛み + 苦しみ ) 個体特有の反応 ( 個体差 )

  43. 動物種の違いによる脂質代謝関連酵素等の差異動物種の違いによる脂質代謝関連酵素等の差異 マウス・ラット ヒ ト WHHLウサギ HDL or VLDL apoB-48 & apoB-100 小腸 & 肝 なし 血中へ遊離 困難 無変化 or 脂質値上昇 LDL apoB-100 小腸 あり 細胞膜結合 自然発症 脂質低下 LDL apoB-100 小腸 あり 細胞膜結合 自然発症 脂質低下 血中の主要リポ蛋白 VLDL中の apoB ApoB Editing 酵素 コレステロールエステル転送蛋白 肝性リパーゼ 動脈硬化の発生 スタチンの作用

  44. 適正な動物実験について 倫理的に適正な動物実験 (生命に対する処置であることを認識した動物実験)   1)動物には愛情を持って接する.      2)無秩序に動物を実験に使用しない.     ・研究目的に適合した動物を実験に使用.    ・必要最少匹数を実験に使用. 3) 不必要な苦痛やストレスを排除する.     ・麻酔処置,鎮痛剤の投与(術後も含む).      ・不必要な苦痛を軽減できず,苦痛が極めて   大きいと判断される場合には動物を安楽死. 4)適正な飼育管理を実施する.        ・健康管理,衛生管理,環境管理,飼育     5)実験終了後は所定の方法に従って動物 6)無計画な繁殖は行わない. 科学的に適正な動物実験 (信頼性の高いデータが得られる動物実験) 1)動物が受けるストレスが軽減されて実験成績の 再現性が向上. 2)研究目的に適合した動物種を選択. 研究目的に応じて遺伝統御された動物を使用. (近交系,クローズドコロニー,同腹産仔) 3)苦痛,恐怖,不安などは内分泌系に影響し,実験 成績を左右. 4)動物の健康状態を維持することによって,実験 データの信頼性が確保. (飼育環境が不適切である場合には,動物の生理状態に影響が及び実験成績を左右する)

  45. 適正な動物実験 動物に与える不必要なストレス (飼育環境,飼育密度,苦痛や恐怖の軽減など) を軽減すること(倫理的に適正な動物実験)によって, 動物実験の精度( 科学的に適正 な動物実験)が向上する.

  46. 動物実験認可の判断基準 代替法がないならば 動物の生命 期待される 動物実験の 社会的価値 3Rs に代表される 動物福祉への配慮, 適正な飼育 適正な苦痛管理 実験で動物に与えられる苦痛が正当化されるためには, その「苦痛にまさる社会的価値」が期待されなければならない.

  47. By Marcia Angell (N Engl J Med 1990; 322 (20): 1462-1464) …. The Journal has taken the position that it will not publish reports of unethical research, regardless of their scientific merit. …. And finally, refusal to publish unethical work serves notice to society at large that even scientists do not consider science is the primary measure of civilization. Knowledge, although important, may be less important to a decent society than the way it is obtained. この学術雑誌では,科学的に優れた論文であっても非倫理的な研究論文は掲載しない.…非倫理的な研究論文の掲載を拒否することは,科学者でさえ科学が文明の最高の尺度と考えていないことを一般社会に知らせることになる.知識は重要であるが,知識を得るための手段の方が良識ある社会においてはより重要である.

  48. Referee Evaluation Sheet Authors Title of Paper Recommendation □ Acceptable □ As is or minor revision □ With major revision needed to resolve the criticisms □ Unacceptable □ Reconsider de novo after major revision □ Reject To the reviewer: Please evaluate manuscript quality according to ・Importance of findings ・Adequacy of methods ・Strength of evidence supporting conclusions ・Clarity of presentation and discussion Criticisms and suggestions to the authors should be given on a separate sheet in a constructive and courteous matter, without indicating your recommendation for acceptance or rejection. On this page in the space below please write a brief, compelling argument to the editors supporting your rating and recommendations. 0791-063 SCIENTIFIC PRIORITY ( 1 = highest priority): 1 2 3 4 5 □ Do you have any concerns regarding the ethical aspects of the experimental procedures used on humans or animals? Yes No If yes, please explain below. □ Please check if you consider additional statistical review essential

  49. 動物実験における動物の福祉とは, 前提: ・人類の健康と福祉,地球全体にとって有益であると考えられる場合 ・ 実験の実施については第三者(動物実験委員会)が審査して許可 3Rs/6Rsに配慮し,研究に影響を及ぼさない範囲で動物の苦痛(飼育,実験処置,精神的ストレス,動物の取り扱い)を軽減/排除し,生存中は可能な限り well-beingに配慮する. 動物福祉に配慮(苦痛,ストレスを低減)した動物実験では, データの信頼性(再現性)が向上する

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