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日本の情報技術社会の現状

日本の情報技術社会の現状. 岡田 直之 九州工業大学・名誉教授       平成 15 年 8 月 27 日 於ワルシャワ大学                  . 目 次. 1.  はじめに 2. I T 政策 3. I T 産業の動向 4.  日常社会の I T 化 5. I T の将来 6 .  おわりに. 第 1 章 はじめに. I T の歴史 成育期 : ’ 40 年代後半 – ’80 年代末  コンピュータ技術の誕生と成長 ハードウエア: 大型コンピュータ   ソフトウエア: 集中管理プログラム( OS)

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日本の情報技術社会の現状

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  1. 日本の情報技術社会の現状 岡田 直之 九州工業大学・名誉教授       平成15年8月27日 於ワルシャワ大学                  

  2. 目 次 1. はじめに 2.I T 政策 3.I T 産業の動向 4. 日常社会のI T 化 5.I T の将来 6. おわりに

  3. 第1章 はじめに • I T の歴史 成育期: ’40 年代後半 – ’80年代末  コンピュータ技術の誕生と成長 ハードウエア: 大型コンピュータ   ソフトウエア: 集中管理プログラム(OS)   データベース: 大規模ファイル

  4.  応用 - コンピュータが優先 - なによりも作業の効率化が大切

  5. 成熟期:’90年代以降  人間とコンピュータが互いに協調しつつ,   情報システムを構成   人間: 臨機応変の処理,総合的判断,人に      優しい応対   コンピュータ: 速くて正確な処理,狭くて深い      判断,単調で大規模な繰り返し

  6. 応用 - 人が中心にいる情報システム - 必要があればコンピュータを導入し,作業を支援させる.

  7. 日本の果たした役割 成育期 - 大型コンピュータやワードプロセッサの設計,  製作 - 語彙,概念体系など大規模電子辞書の開発 成熟期 - ネットワーク方式の開発 - 携帯電話など,インターネット接続の“モバイル”(mobile)機器の開発

  8. 日本の現状  混沌(chaos),模索の時代 - 国としてどのようなIT政策を打ち出すか? - IT産業を復活,活性化できるか? - 日常生活でIT化はどこまで必要か? - IT関連の学問はどのように寄与するか? これらに立ち向かう,原理原則が欠けている.

  9. 第2章 I T 政策 • 2.1 e-Japan戦略 ’01年1月,政府は’05年に世界最先端のIT国家となることを目指して“e-Japan戦略”構想を打ち出した. 四つのキーワード (1) 超高速ネットワーク (2) 電子商取引 (3) 電子政府 (4) 人材育成

  10. e-Japan戦略の目指す社会像 教育: 地理的,身体的,経済的制約等に関わらず,誰   もが高い教育を享受 芸術・科学: 美術作品,文学作品などをどこにいても鑑賞,利用.またデジタルコンテンツの流通を促進. 医療・介護: 在宅患者の緊急対応,遠隔地でも高い医療・介護サービス 生活: いつどこにいても,最新の映画の鑑賞,人気のTVゲーム,離れた家族・友人とコミュニケーションを. 産業: 企業規模に関わらず,世界中の顧客と商取引 行政: 自宅にいての証明書取得,納税申告など --------

  11. 2.2 具体的方策 (1) 超高速ネットワーク - 電気通信事業に関する各種の規制の見直し,光ファイバー等の敷設,無線周波数帯の割当ての見直しなど - 情報格差(digital divide)の是正 (2)電子商取引 - 独占禁止法など既存法規の整備,個人情報保護など新法案の制定

  12. (3)電子政府 - 国・地方公共団体における文書の電子ファイル化,窓口業務のオンライン化,職員の情報リテラシ教育など - 行政情報のインターネット公開, 公共事業発注や資材調達のインターネット利用 (4) 人材育成 - すべての国民の情報リテラシの向上,IT指導者の育成 - IT技術者・研究者の育成,世界最高水準のコンテンツ創作者の育成

  13. 2.3 中間結果 政府は,計画中間点の’02年6月に達成状況を報告した. (1) 超高速ネットワーク - 常時接続可能な超高速ネットワーク 目標:30M(百万)世帯 結果:34M世帯 - 高速常時接続料 2,500円/月(世界で最も安価)

  14. (2) 電子商取引 - 電子商取引の市場規模 事業者-事業者の場合 目標: 7 T(兆)円   結果: 3.4 - 関連法規の整備   知的財産権など基幹的制度は完了

  15. (3)電子政府 - 国・地方の行政手続のオンライン化法案を国会に提出 - 一部の公共事業の電子入札を開始 (4)人材育成 - すべての国民の情報リテラシの向上 約5.5M人対象の技能講習 - すべての公立小・中・高等学校等(約40K校)のインターネット接続   目標 100%    結果 100%

  16. 2.4 評価 - 国としての努力は認められる. - しかし世界も進歩している. インターネット普及率    スウェーデン 65%,日本 44%(世界16位) 電子商取引市場(事業者同士) USA 40%, 日本 18%(世界2位) I T 促進計画 USA IT-21C, EU eEUROPE-2000,   韓国 CYBER-KOREA-21

  17. 第3章 IT産業の動向 • 3.1 主要経営者の意識調査 日本の経済は,深刻なデフレーションに悩まされている.‘03年1月,日本の主要30社の社長の意識調査が行われた. 日本の経済は,当面,足踏み状態が   続く.

  18. Q.3 - 5年後の日本の先導的産業 は? A. 第1位 I T 産業(13人)     第2位 自動車産業(10人)     第3位 バイオ(bio-)産業(9人) --------- 読売新聞2003年1月3日版より

  19. 3.2  IT産業全体の動向  構成分野: (1)郵便          (2)電気通信 (3)放送         (4)情報ソフト (5)情報関連サービス (6)情報通信機器製造 (7)情報通信機器賃貸(8)電気通信施設建設 (9)研究

  20. T(兆)円 図1IT産業と他産業との,生産額の比較 総務省2001年情報通信白書より

  21. 3.3 いくつかの分野の動向 (1) 通信分野 “iモード”: 携帯電話をインターネットに接続する技術 - 1992年に日本が世界に先駆けて開発 - 現在の加入者数    日本 約36M人 EU(オランダ, ドイツ,ベルギー,スペイ ンなど) 約200K人

  22. メニュー - 天気/ニュース/情報 - モバイルバンキング - 証券/カード/保険 - 交通/地図/旅行 - ショッピング/チケット - グルメ情報 - くらしの情報 - 働く/住む/学ぶ - 着信メロデイ/カラオケ - 待受け画面/アプリ情報/フレーム -----------

  23. (2) 郵便分野 • 2003年,政府機関としての「郵政事業庁」が半官半民の「郵政公社」に  移行 - 事業: 郵便,貯金,保険 • 郵便のうち小包はすでに民間の宅配業者に解放 • どこまで解放するか?

  24. (3)放送分野 デジタル放送の普及 - 人工衛星利用の放送: 1996年から - ケーブルTV: 1998年から - 地上放送: 2006年末までに デジタル化により,高品質な画像や受信したコンテンツの受信側での処理が可能になる.

  25. (4) 情報関連産業----ロボット産業 - ロボットの制御は,高度なITを必要とする. • 日本での産業用ロボットの稼動台数は約360K台で,世界での稼動台数の約48%を占める. - 産業用ロボットだけでなく,家庭用,福祉用などその他の分野のロボットの実用化,開発が盛んである.

  26. 例---ホンダの ASIMO http//www.hond.co.jp/ASIMO/ より

  27. 第4章 日常社会のIT化  日常社会におけるいくつかの側面 4.1 通信---電話 (1) 携帯電話  “iモード”については先に触れた.  “写メール”: デジタルカメラの機能が付加 され,eメールで送信が可能 - 最近では,“ムービー写メール”も発売され, 音声付の動画も送信可能

  28. (2) IP電話 話し手と聞き手の間の通信回線をインターネットの“IPプロトコル“と呼ばれる形式で接続する電話 - 通常の電話のように大規模な電子交換機が不要なため効率的 - IP電話機同士なら,通話料0のプロバイダも出現

  29. 4.2 交通---”カーナビ”  GPS(Global Positioning System): 人工衛星の電波を利用して自分の位置を測定する,全地球測位システム - 日本では、1990年頃からカーナビ車,   即ちGPSを搭載する自動車が販売

  30. 機能 - 通常の地図表示から俯瞰図形式へ - 音声によるメッセージ交換 - 現在地から目的地までのルート探索 - 特定の交通基地と結んで交通渋滞の情報を提示 - ルートに沿った観光情報など提示 - インターネット接続によるeメールなど

  31. 4.3 放送---デジタルハイビジョン 赤道上空の人工衛星を用いてデジタル電波を送受信するTV放送 - “ハイビジョン“と呼ばれるように、従来 512本の走査線を1,125本に増やし た,精細な画面 - 縦:横が9:16の幅広で,32インチ 前後の大きな画面

  32. - 前後左右に5つのスピーカを配置した5.1chサラウンド音声による,劇場のような立体音 - 番組と関連するデータを同時放送し, 局と利用者の双方向通信も可能

  33. 4.4 “いやし”(healing)---IT愛玩具 多くの現代人は,種々の緊張のため精神が疲労気味,それを“いやす”産業が繁栄 犬語翻訳機---”Bow”-lingual 犬の鳴き声を解析して,犬の気持ちを文で表現する機器 - 発売後10日足らずで30K台販売 - USA・ハーバード大学系の科学雑誌から   “イグ・ノーベル賞”を受賞

  34. http://www.shinryosyo.com/matuweb/bowlingual/maiko01.htmよりhttp://www.shinryosyo.com/matuweb/bowlingual/maiko01.htmより

  35. 4.5 流通---“コンビニ” - 今日,大都市だけでなく地方都市においても,街中で八百屋,魚屋,駄菓子屋,洋装店,金物店,など生活に密着する店舗が姿を消した. - それらに代わって,24時間オープンの“コンビニ”(Convenience store)が街のあちこちに出現

  36. コンビニ経営のIT化強力なネットワークの構築コンビニ経営のIT化強力なネットワークの構築 図2 コンビニのネットワークシステム

  37. (2) 街角の情報集配基地 - 銀行の自動預け払い機(ATM) - 郵便の受付 - 公共施設の予約など行政サービス代行 - インターネット利用の書籍、商品の販売 - 電子商取引 -----------

  38. 第5章 I T の将来 • 5.1 I Tの知能化 日本学術会議(the Science Council of Japan)は,1993年に情報工学の将来方向について作業部会に諮問した. - 作業部会では,情報システムの時代にあって情報工学は知識の解明と応用,即ち知能化に向かうと判断 - ITも然り.

  39. 5.2 心のコンピュータモデル 知能の宿る場は,心である. イ.計算技法 - 基本的には,MITのMinsky の Multi-Agent System に沿う. - “μ-エージェント”と呼ぶ,小さなコンピュータを導入

  40. ロ.処理の領域  仮説: 心は種々の機能を持つが,基本的には以下の6つの領域で処理される. 認識: 外界および内界のものごと 推考: 推論、考案、創作など  情緒: 本能、感情、気持ちなど 表出: 手足の動作,顔の表情 記憶: 記憶と学習 言語: 話し、聞く

  41. 言 語 情 緒 記 憶 推 考 認 識 表 出 心(脳 ) 知 覚 器 効 果 器 身 体 (渇き,飢え,…) 外 界 (情景,言葉,…) (行動,言葉,…) 図3 心のコンピュータモデル

  42. 行動推論 対話推論 存在性、ほか 実現可能性 危険性 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ プラン展開制御器 割り込み制御器 管理部 プランニング部 プラン生成器 認識・滑る可能性・池1 認識・人間の存在性・交差点1 推論部 模擬器 評価器 認識・人間の存在性・館1前1 認識・転ぶ可能性・池1 認識・落ちる可能性・池1 認識・人間の存在性・館1の池1 認識・溺れる可能性・池1 認識・人間の存在性・池1 認識・風邪をひく可能性・池1 認識・人間の存在性・猟師小屋1前1 認識・凍死する可能性・池1 認識・人間の存在性・館1のぶどう棚1 認識・人間の存在性・橋1の東1 認識・滑る可能性・館1の池1 言 語 情 緒 記 憶 推 考 認 識 表 出 心(脳 ) 知 覚 器 効 果 器 身 体 (渇き,飢え,…) 外 界 (情景,言葉,…) (行動,言葉,…)

  43. 5.3 イソップワールド(Aesopworld) - 心のモデルに沿って実際のシステムを構築 - イソップ物語“きつねとぶどう”などの主人公の心理的,物理的活動をシミュレーション

  44. 言語領域 のどを潤したい 推考領域 情緒領域 記憶領域 プラン 「果物を食べる」 管理部 割り込み制御器 プラン 「水を飲む」 プラン知識 自然界推論 心的状態推論 目標 「のどを潤す」 プラン展開制御器 プランニング部 渇き プラン生成器 認識領域 表出領域 模擬器 評価器 推論部 池に人間は いないだろう 池に水があるだろう すみかの水瓶に水がある 知覚器 効果器 図4処理の流れ

  45. 言語領域 プラン 「館の池に水を飲みに行く」 推考領域 情緒領域 記憶領域 管理部 割り込み制御器 プラン知識 自然界推論 心的状態推論 プラン展開制御器 館の池に移動 プランニング部 プラン生成器 認識領域 表出領域 模擬器 評価器 推論部 知覚器 効果器

  46. 図5  スナップショット

  47. 図6 アニメーション

  48. 第6章 おわりに • 日本のITは,成熟期から円熟期に入ろうとしている. • 円熟期においては,人間を中心におく情報システムがさらに普及し,定着するであろう. • その際コンピュータの科学技術は,ますます知能化に向かうであろう. • 以上の思想に基いて,システムや装置のあるものは淘汰され,あるものは生き残るであろう.

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