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1. GC/TOFMS を用いた環境、廃棄物中の 有害化学物質の分析に関する基礎的検討. 大山 浩司 (大阪府環境農林水産総合研究所). 2010 年 12 月 11 日 第 10 回 e- シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」. 飛行時間型質量分析計( TOFMS )の特徴. 2. 極めて短時間で全域の質量スペクトルが得られる イオンの透過性が高く、分析計に導入されたイオンの大部分が検出器へ到達するので高感度である 質量と飛行時間との関係が単純であり、質量校正における系統誤差が少ない 原理上質量測定範囲に上限がない. 以上の特徴から TOFMS では ‥‥.
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1 GC/TOFMSを用いた環境、廃棄物中の 有害化学物質の分析に関する基礎的検討 大山 浩司 (大阪府環境農林水産総合研究所) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
飛行時間型質量分析計(TOFMS)の特徴 2 • 極めて短時間で全域の質量スペクトルが得られる • イオンの透過性が高く、分析計に導入されたイオンの大部分が検出器へ到達するので高感度である • 質量と飛行時間との関係が単純であり、質量校正における系統誤差が少ない • 原理上質量測定範囲に上限がない 以上の特徴からTOFMSでは‥‥ • 精密質量測定 • FastGC測定 • スキャンモードでの高感度測定 が可能である。 JMS-T100GC 取扱説明書より 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
装置写真 3 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
事例① 水中農薬の迅速分析 4 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
残留農薬分析の現状 食品衛生法、水道水質基準の改正 農薬のポジティブリスト制度の導入 農薬が原因であると思われる魚の大量死の報告 食品中の残留農薬による健康被害の報告 5 多成分の農薬の一斉迅速分析への需要の増加 現在広く用いられている四重極GC/MSを用いた方法は • 測定時間が長い • 妨害物質の影響を受けやすい • 追加物質の測定メソッド作成が煩雑である 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
農薬分析にGC/TOFMSを用いると‥‥ 6 • 高速でのスペクトル記録が可能である。 (最速25scan/sec、四重極MSでは1scan/sec程度) ⇒短時間で多くの成分を溶出させるfastGCを 行っても精度が落ちない • 高分解能(5000以上)での測定が可能である。 ⇒妨害物質の影響を低減できる。 • 一度に高感度に高質量範囲のスペクトル記録が可 能である。 ⇒追加物質でも煩雑な測定メソッドの作成を 行うことなく分析が可能である。 ‥‥と考えられる。 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
GC/MS測定条件 7 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
分析方法① 標準溶液は水質分析用68種農薬混合標準液、内標準物質としてanthracene-d10,fluoranthene-d10,chrysene-d12(和光純薬製)を使用 検量線は5~1000ng/mlの濃度範囲内の5点の濃度で各濃度3回測定を行い、内標準法で作成 装置検出下限(IDL)はn=7、測定方法の検出下限(MDL)と添加回収試験はn=5で算出 MDL、添加回収試験に使用した試料は河川水に農薬混合標準液を添加したものを使用 8 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
分析方法② 9 検体(500 ml) 抽出(ジクロロメタン50 ml×2回) 抽出液 脱水・濃縮・ヘキサン転溶 濃縮液(1 ml) 内部標準添加(各50 ng) GC/TOFMS測定 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
①測定時間 結果と考察 10 Etfenprox 約8.5分で溶出 Fast GC 分析時間が約1/4に! Normal GC Etfenprox 約34分で溶出 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 11 ②ピーク形状 5 scan/sec 1 scan/sec Propiconazole(window幅:0.05 Da)のマスクロマトグラム TOFMSの高速スペクトル記録により、FastGCにより1つのピークの幅が2~3秒になってもきれいなクロマトグラムが得られる。このことは、FastGCにおいて定量精度を確保する点で重要である。 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 12 ③質量電荷比(m/z)選択性(1) m/z:194.5~195.5(1 Da) m/z:194.91~194.96(0.05 Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 13 ③質量電荷比(m/z)選択性(2) m/z:194.5~195.5(1 Da) m/z:194.91~194.96(0.05 Da) SN:49.4 SN:208.7 Window幅の違いによるSN比の変化 TOFMSの高分解能(半値幅5000以上)により、クロマトグラムの選択性が上昇する。また高分解能により、ノイズを軽減でき、それによってSN比が向上する。 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 14 ④定量精度(1.IDL) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 15 ④定量精度(2.添加回収試験) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 16 ④定量精度(3.MDL) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
⑤GC/TOFMSの安定性 結果と考察 17 2.1% 2.8% 1.5% 1.3% 1.6% 3.0% 2.0% 5.1% Injection number 100回連続測定時の相対感度の変動 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
まとめ GC/TOFMSの高速スペクトル記録を使用することで、分析時間を約1/4に短縮することが可能である。 GC/TOFMSでの測定は四重極MSのSIMモードでの測定と同程度の感度で定量分析できる。 TOFMSの高分解能により妨害物質の影響が減少し、高感度で分析できる。 スキャンモードでの測定なので追加対象物質の測定も容易に可能である。 相対感度の変動が小さいので、長時間連続測定も十分可能である。 18 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
事例② 河川、海域底質中のPCBの迅速分析 19 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
PCB分析の現状 20 • PCB特別措置法の施行によりPCB廃棄物の広域処理が全国で開始されている • 一方で、数百万台ともいわれているPCB汚染の疑いのある機器等の汚染の有無を迅速に判定するための分析法への要求が高まっている。 しかし現在の公定法では分析時間、費用の点で問題がある そこで今回、GC/TOFMSを用いて、PCB分析の迅速化の検討を行った。 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
方法①(GC/MS測定条件) 21 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
方法② 標準物質はWellington社製PCB Window混合液BP-WD、内標準物質としてWellington社製13C標識PCB混合液MBP-MXCを使用、各塩素化体ごとに定量。 検量線は1~250ng/mlの濃度範囲内の8点の濃度で各濃度3回測定を行い、内標準法で作成 装置検出下限(IDL)はn=7で算出 測定方法の検出下限(MDL)はブランクが検出されない底質約10gに、標準物質に含まれる各PCB異性体を300pg添加、通常の前処理を行ったものを測定し算出、n=5。 回収率はブランクが検出されない底質約10gに、標準物質に含まれる各PCB異性体を10ng添加、通常の前処理を行ったものを測定し算出、n=5。 22 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
方法③前処理方法 23 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
①クロマトグラム 結果と考察 24 HeptaCBs HexaCBs PentaCBs TetraCBs TriCBs Kanechlor混合液の3~7PCBsのマスクロマトグラム(Window幅:0.05Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
①クロマトグラム 結果と考察 25 HRMS Column:HT-8PCB 60m×0.25mm Oven:120℃(2min)-20℃/min- 160℃-5℃/min-320℃(9min) TOFMS (FastGC) HRMSとTOFMS(FastGC)のクロマトグラムの比較(Kanechlor mixture,5CBs) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
①クロマトグラム 結果と考察 26 1scan/sec 5scan/sec スペクトル記録速度の違いによるクロマト形状の変化(Kanechlor mixture,5CBs) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
②GC/TOFMSの定量精度 結果と考察 27 標準物質のPCBの定量に関する各種データ 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
②GC/TOFMSの定量精度 結果と考察 28 TOFMSとHRMSの底質中のPCBの定量結果の比較(全PCBs) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
②GC/TOFMSの定量精度 結果と考察 29 TOFMSとHRMSの底質中のPCBの定量結果の比較(1~4PCBs) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
②GC/TOFMSの定量精度 結果と考察 30 TOFMSとHRMSの底質中のPCBの定量結果の比較(5~8PCBs) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
③前処理の簡略化の可能性 結果と考察 31 Mass Window:255.5~256.5 Mass Window:255.94~255.99 簡易前処理を行った河川底質検体のマスクロマトグラム (3CBs、Mass window 上:1Da,下:0.05Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
③前処理の簡略化の可能性 結果と考察 32 Mass Window:255.5~256.5 夾雑物の影響で、PCBのピークが確認できない Mass Window:255.94~255.99 簡易前処理を行った河川底質検体のマスクロマトグラム (拡大、3CBs、Mass window 上:1Da,下:0.05Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
③前処理の簡略化の可能性 結果と考察 33 TriCBsのマスクロマトグラム (Mass Window: 255.94~255.99) このピークのマススペクトル 夾雑物由来のピーク PCB由来のピーク 簡易前処理を行った河川底質検体のマススペクトル 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
まとめ GC/TOFMSの高速スキャンモードを使用することで、PCBのクロマト形状を大きく変えることなく分析時間を大幅に短縮することが可能である。 底質のMDLで0.7~2.7pgの範囲内にあり、簡易測定としては十分な感度がある。 HRGC/HRMSの測定値との比較ではよい相関が得られており、十分な定量精度を有している。 高分解能での測定により夾雑物の影響を低減できるので、前処理の簡略化が可能である 34 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
事例③ 環境、廃棄物中のPOPsの一斉分析 35 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
はじめに 36 • GC/HRMS法を用いたPOPsの分析は高感度、高選択性である。その一方で多成分の測定の際は・・・ • グルーピング等の測定メソッド作成が必要である。 • 1検体で複数回の測定を必要とする。 など、やや煩雑な面がある。 これまでにGC/TOFMSを用いることで、スキャンモードで農薬等の高感度一斉分析が可能であることがわかった。これらの経験から、GC/TOFMSを用いてPOPsを分析することで、GC/HRMS法より簡便にかつ短時間に分析が可能であると考え、検討を行った。 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
方法①(GC/MS測定条件) 37 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
方法②(抽出、前処理方法) 38 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察 (クロマトグラム①) 39 Total ion chromatogram of Kanecrol and chlorinated organic pesticides 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(クロマトグラム②) 40 HeptaCBs HexaCBs PentaCBs HCB TetraCBs HexaCBs TriCBs PentaCBs 3~7CBs chromatogram of Kanecrol and chlorinated organic pesticides (mass window: 0.1Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(クロマトグラム③) 41 b-HCH a-HCH g-HCH Aldrin trans- Chlordane cis- Chlordane a-HCH HCH Dieldrin Endrin Drins Chlordane 4,4’-DDD DDD,DDT 2,4’-DDD 2,4’-DDT 4,4’-DDT Mass chromatogram of chlorinated organic pesticides (mass window: 0.1Da) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(検量線の評価①) 42 Calibration curve of HCB [Internal standard(13C-HCB) monitor ion: 289.8303] 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(検量線の評価②) 43 JMS-700D JMS-T100GC 13C635Cl537Cl C635Cl237Cl4と13C635Cl537Cl が分離されずに、1つの合成されたピークとなる。 C635Cl237Cl4 Mass spectrum of 1000ppb HCB(C635Cl237Cl4) and 100ppb 13C-HCB(13C635Cl537Cl) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(検量線の評価③) 44 Calibration curve of HCB [Internal standard(13C-HCB) monitor ion: 293.8244] 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(検出下限値) 45 Retension time and IDL of POPs 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(実試料測定①) 46 Mass window: 255.91~256.01 3CBsのピーク Mass window: 255.7~256.7 夾雑物(油分?)の影響 3CBs chromatogram of river sediment 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(実試料測定②) 47 Mass window: 234.95~235.05 4,4’-DDD 2,4’-DDD Mass window: 234.7~235.7 DDD chromatogram of river sediment 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
結果と考察(HRMS法との比較) 48 Relativity of TOFMS method and HRMS method (Concentrations of POPs in river sediment) 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
まとめ GC/TOFMSを用いることで、POPsを簡便かつ迅速に分析を行うことが可能である。 検量線作成時には、内部標準物質のモニターイオンの設定に注意を払う必要がある。 GC/HRMSと比較して、検出感度は劣るが同程度の前処理で分析が可能である。 実試料の定量結果は、GC/HRMSとの結果とほぼ良好な相関を示しており、信頼性のあるものであった。 49 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」
最後に‥‥ 50 TOFMSを用いることで‥‥ • 高速でのスペクトル記録による精度の高いFastGCが可能である。 • 高分解能の特徴を生かした分析(前処理の省略など) • 簡単に高分解能でのスキャン測定が行えることにより、より精度の高い定性分析が可能である。 今後のTOFMSに必要と思われるもの • ダイナミックレンジの向上 • TOFMSの性能を存分に活かせる解析ソフトの開発 2010年12月11日 第10回e-シンポ「環境及び食品の分析技術の現状」