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LC/MS/MS を用いた環境試料中の農薬分析. サーモクエスト株式会社 ○吉仲 希葉子 兵庫県立公害研究所 山本 匡利、中野 武. はじめに. 環境庁の内分泌撹乱物質分析マニュアルに指定された 方法を、実際の水質や底質に適用すると、環境濃度レベル 測定には不十分な検出感度と夾雑物による妨害のため、 モニタリング調査自体の限界性を感じる場合がある。
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LC/MS/MSを用いた環境試料中の農薬分析 サーモクエスト株式会社 ○吉仲 希葉子 兵庫県立公害研究所 山本 匡利、中野 武
はじめに 環境庁の内分泌撹乱物質分析マニュアルに指定された 方法を、実際の水質や底質に適用すると、環境濃度レベル 測定には不十分な検出感度と夾雑物による妨害のため、 モニタリング調査自体の限界性を感じる場合がある。 そこで今回は、河川水質、底質のモニタリングを目的 として、ベノミルの分解物であるカーベンダジム(MBC)に 関して、環境濃度レベルが把握できる検出感度と妨害物質に影響されない選択性を実現するために、ESI法によるLC/MS/MS法を用いたng/Lレベルでの分析法を 検討したので報告する。
MS/MSの有用性 環境分析における二つの必要条件 感度(感度の向上) ・四重極型- SIM技術 ・イオントラップ型-Full Scan感度の向上 選択性(複雑なマトリックスの除去) ・クロマトグラフィーの分離技術の最適化 ・高分解能質量分析計(磁場型) ・タンデムマススペクトロメトリー(MS/MS)による 化学的バックグランドから分析対象物のシグナルを 確認する能力(S/Nの向上)、確実性の向上(プロダクトイオンによるスペクトル)
MS/MSの原理 Single Stage Mass Spectrum MS/MS Mass Spectrum Isolation Event Collisional Activation Event
イオントラップによるMS/MS 1. Inject 3. Fragment 2. Isolate 4. Detect
Collision Energyの検討 MBC Standard 2ppm 0.18ppm 0.017ppm
O O H N H N N 100 NL: 1.96E7 Full Scan m/z 192 80 192.1 60 100 40 90 80 20 70 0 Relative Abundance 100 NL:3.71E6 MS/MS m/z 192→160 60 80 Relative Abundance 58.8 50 60 40 O 40 30 H N 20 20 H N 99.5 193.1 N 10 0 74.1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 0 Time (min) 60 80 100 120 140 160 180 200 m/z 160.3 100 90 80 70 60 Relative Abundance 50 40 30 + 20 192.1 10 0 60 80 100 120 140 160 180 200 m/z MBC標品(2ppm)の分析結果 [M+H]+ Full Scan Mass Spectra MS/MS Spectra
192.1 100 90 100 80 70 80 60 50 60 40 30 40 20 193.1 10 99.5 20 58.8 113.8 0 60 80 100 120 140 160 180 200 0 100 160.3 100 90 80 80 70 60 60 40 50 40 20 30 20 192.2 0 10 12 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 161.6 0 60 80 100 120 140 160 180 200 河川水中における分析例 Full Scan m/z192 Relative Abundance m/z MS/MS m/z160 Relative Abundance Relative Abundance Time (min) m/z
160.3 100 100 74.1 192.1 90 100 80 80 90 80 70 138.2 60 70 60 60 50 40 57.9 178.5 50 40 192.2 40 30 20 104.6 97.1 123.9 30 20 20 10 0 100 10 0 60 80 100 120 140 160 180 200 0 60 80 100 120 140 160 180 200 80 60 40 20 0 12 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 底質中における分析例 Full Scan m/z192 Relative Abundance Relative Abundance m/z MS/MS m/z160 Relative Abundance Time (min) m/z
Y = -176525+3.36667e+007*X R^2 = 1.0000 70000000 60000000 50000000 40000000 Area 30000000 20000000 10000000 0 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 検量線 濃度(ppm)
O O H N H N N O H N H N N 160.3 100 90 80 70 60 Relative Abundance 50 40 30 + 20 192.1 10 0 60 80 100 120 140 160 180 200 m/z MBCのMS/MSによる開裂パターンの推測-計算化学へのアプローチー
まとめ MS/MSの効果 マトリックスの影響を抑えたクロマトグラムによるS/Nの向上、 プロダクトイオンによるスペクトルから正確性の向上を図ることができた。 より確実性が高く、高感度の定性、定量が可能。 さらに複雑なマトリックス(食品中など)のサンプルへの 適用が期待できる。 計算化学への期待 今回、ベノミルからMBCへの反応経路については、すでに報告された 反応経路1)を追跡する形になったが、今後、実際の環境水中での 反応についても何らかの知見が得られることが期待できる。
参考文献 1) T.A.Roberts et al, Metabolic Pathways of Agrochemicals,1113-1137 謝辞 本報告に際し、計算化学の分野については 奈良女子大学 理学部 化学科 竹内 孝江先生に ご教授を頂きました。