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平成 23 年度税制改正について. 平成 23 年 9 月 23 日 公認会計士・税理士 鈴木 一正 (日本公認会計士協会近畿会 近畿税理士会 所属). 平成 23 年度税制改正の経緯. 「所得税等の一部を改正する法律案」(平成 23 年 1 月 25 日国会提出) 3 月 11 日の発生した東日本大震災による混乱から、国会審議進まず、「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法」(ブリッジ法)で 6 月末まで単純延長、及び「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)が 4 月 27 日に成立、公布.
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平成23年度税制改正について 平成23年9月23日 公認会計士・税理士 鈴木 一正(日本公認会計士協会近畿会 近畿税理士会 所属)
平成23年度税制改正の経緯 • 「所得税等の一部を改正する法律案」(平成23年1月25日国会提出) • 3月11日の発生した東日本大震災による混乱から、国会審議進まず、「国民生活等の混乱を回避するための租税特別措置法」(ブリッジ法)で6月末まで単純延長、及び「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)が4月27日に成立、公布 • 「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」(平成23年6月10日修正) • 「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」(平成23年6月10日国会提出) • 後者が実質的な平成23年度税制改正法の確定版として、6月30日に成立、公布 • 平成23年度税制改正の主内容を扱う前者は、継続審議中(平成23年8月末現在:本年度中に成立するのか未定)
平成23年度税制改正大綱の主な改正案1 (単位:億円)
平成23年度税制改正大綱の主な改正案2 (単位:億円)
平成23年度税制改正大綱の主な改正案3 (単位:億円)
1.法人税 法人税率の引き下げ ※カッコ内は、租税特別措置法による時限措置としての軽減税率です。 なお、中小法人等で平成23年4月1日前に開始し、かつ、同日以後に終了 する事業年度については、経過措置として現行の税率を適用します。 • (実効税率の計算例) • 法人税25.5%、法人住民税20.7%、法人事業税7.5%として • 法人税率+(法人税率×法人住民税)+事業税 • 1+事業税 • 25.5%+(25.5%×20.7%)+7.5% • 1+7.5% = 35.6%(現行は40.7%) • ちなみに中小法人等の場合、利益800万円までは23.8%(現行は27.1%)
2.法人税 減価償却制度の見直し 現行:定率法の償却率=定額法の償却率(1/耐用年数)×2.5 改正:定率法の償却率=定額法の償却率(1/耐用年数)×2 【償却率表】 (経過措置) 平成23年4月1日前開始事業年度については、当該事業年度中に取得した資産については、250%定率法(現行の率)による償却ができます。
3.法人税 欠損金の繰越控除の見直し (改正内容) (1)控除額の制限 繰越控除をする事業年度の控除前所得の80%となります。但し、中小法人は、現行通り、この所得制限はありません。 (2)控除期間の延長 繰越控除期間が現行の7年から9年に延長されます。(適用対象)平成20年4月1日以後終了事業年度で生じた欠損金 中小法人には、デメリットはありません! ※中小法人等:資本金の額が1億円以下である会社等
4.法人税 貸倒引当金制度の改正 (改正内容) (1)適用対象の制限貸倒引当金制度について、適用法人を銀行、保険会社その他これらに 類する法人及び中小法人等に限定します。中小法人は、現行通りです。 (2)経過措置適用対象法人の平成23年度から平成25年度までの間に開始する各事業年度については、現行法による損金算入限度額に対し、平成23年度は4分の3、平成24年度は4分の2、平成25年度は4分の1の引当が認められます。 中小法人には、デメリットはありません! ※中小法人等:資本金の額が1億円以下である会社等
5.法人税 寄附金の損金算入限度額の引下げ 5.法人税 寄附金の損金算入限度額の引下げ (改正内容) (1)引下げ内容一般の寄附金の損金算入限度額について、資本金等の額の1000分の2.5相当額と所得の金額の100分の2.5相当額との合計の4分の1(現行2分の1)に、資本等を有しない法人の場合には、所得の金額の100分の1.25(現行100分の2.5)相当額に、それぞれ引き下げられます。 (2)特例特定公益増進法人等に対する寄附金の別枠の損金算入限度額について、一般の寄附金の損金算入限度額の縮減額と同額の拡充を行います。 特定公益増進法人への寄附では、損金算入額はかわりません。 ※特定公益増進法人等:独立行政法人、日本赤十字社、公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人等
6.法人税 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する制度への対応 6.法人税 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する制度への対応 (改正内容) 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の導入に伴い、次の措置を講じます。 (1)陳腐化償却制度を廃止します。 (2)耐用年数の短縮特例について、国税局長の承認を受けた未経過使用可能期間をもって耐用年数とみなすことにより、その承認後は未経過使用可能期間で償却できる制度とします。 (3)確定申告書等の添付書類に過年度事項の修正の内容を記載した書類を追加します。 過年度事項に誤謬があった場合、単純に前期損益修正とするだけではなく、修正の内容を記載した書類作成が必要となり、事務処理が煩雑になります。 平成23年度改正済みです。
7.法人税 100%グループ内の法人に係る税制見直し 7.法人税 100%グループ内の法人に係る税制見直し (改正内容) 平成22年度に導入されたグループ法人税制の円滑な遂行に向けての見直し (1)100%グループ内の子法人が清算中もしくは解散予定の場合、あるいは適格合併により解散予定の場合、その子法人の株式の評価損は認められません。 (2)解散の場合に期限切れ欠損金の損金算入制度において、マイナスの資本金等の額を期限切れ欠損金と同様に扱います。 (3)適格合併等の場合の欠損金の制限措置について、適格現物分配資産が被現物分配法人の自己株式の場合には、制限の適用対象から除外されます。 (4)外国法人が行う現物出資に関する税制適格要件が緩和されました。 (5)複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人に限って、中小法人の特例を適用できなくなりました。 平成23年度改正済みです。
8.法人税 棚卸資産の切放し低価法の廃止 8.法人税 棚卸資産の切放し低価法の廃止 (改正内容) 棚卸資産の期末評価方法のうち、低価法については、時価が回復しても戻入益を計上しない「切放し低価法」を廃止し、翌期首に戻入益を計上する「洗替え低価法」のみとなります。 (経過措置) 平成23年4月1日以後に開始する各事業年度においては、同日以後最初に開始する事業年度の前事業年度末の評価額をもって取得価額とする経過措置が講じられます。 平成23年度改正済みです。
9.法人税 中間納付制度の改正 (改正内容) 法人税の中間納付制度について、仮決算による中間税額が全事業年度の確定法人税額の12分の6を超える場合には、仮決算による中間申告書を提出できないこととします。 仮決算による中間申告書を提出し、予定以上の法人税を支払うことにより、本決算時に還付加算金を受けようとすることを防止するための制度改正と考えられます。 平成23年度改正済みです。
10.法人税 雇用促進税制(税額控除制度)10.法人税 雇用促進税制(税額控除制度) ※ハローワークにより確認を受け交付される雇用促進計画等の書類を、法人税確定申告書に添付する必要があります。 平成23年度改正済みです。
10(2).法人税 雇用促進税制(割増償却制度) 10(2).法人税 雇用促進税制(割増償却制度) (創設内容) 次世代育成支援対策推進法の認定を受けた一定の青色申告法人は、その有する建物等のうち一定のものについて普通償却限度額の32%の割増償却ができる制度が新設されました。 (適用対象) 当該認定の日を含む事業年度及び当該認定に係る一般事業主行動計画の期間内に新築をし、または増築もしくは改築をしたもの 自生代育成支援対策推進法とは、急速な少子化の流れを変えるため、地方公共団体が地域行動計画を策定・公表するとともに、企業においても、従業員数に応じて、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための一般事業主計画を策定し、都道府県労働局にその旨を届け出ることを義務付けるものです。 行動計画を策定実施し、一定の要件を満たすと、厚生労働大臣の認可を受けることができ、企業のイメージアップや優秀な人材の確保が期待できるとされています。 平成23年度改正済みです。
11.法人税 グリーン投資促進税制 (創設内容) 高効率な省エネ・低炭素設備や、再生可能エネルギーの設備投資を重点的に支援する、グリーン投資税制が創設されました。 平成23年4月1日から平成26年3月31日までの間に、エネルギー起源CO2排出削減または再生可能エネルギー導入拡大に相当程度の効果が見込まれる設備等を取得し、1年以内に国内事業に供した場合、特別償却または税額控除が認められます。
12.法人税 特別控除制度の廃止 (廃止内容) (1)試験研究を行った場合の特別控除制度 (2)エネルギー需給構造改革推進投資促進税制の廃止 (3)中小企業等基盤強化税制の廃止
13.消費税 地球温暖化対策のための課税 (制度の創設) 地球温暖化対策のため、石油石炭税に上乗せ税率が創設されます。 (経緯) 平成22年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、地球温暖化対策等を強力かつ十分に推進することにより、エネルギー期限CO2を平成42年までに30%削減もしくはそれ以上の削減を目指しています。その実現に向けて、税制においても対策を強化すべく、上乗せ税率特例が創設されます。 具体的には、石油石炭税に、「地球温暖化のための課税の特例」を設け、CO2排出量に応じた税率が上乗せされます。税率引き上げは、平成23年10月から3段階で実施されます。
当期 当期 翌期 翌期 前期 前期 前々期 前々期 売上900万 売上900万 売上3000万 売上3000万 売上3000万 売上3000万 ← 免税 → ← 免税 → ← 免税 → ← 課税 → ← 課税 → ← 課税 → 14.消費税 免税事業者の要件見直し ■適用時期:平成24年10月1日以降開始する 事業年度から適用。(改正済み) 課税売上が、上半期で1,000万円を超える場合には、翌期から課税事業者とする。
14(2).消費税 95%ルールの見直し (現行)法人の規模を問わず、課税売上割合が95%以上の場合に、課税仕入 に係る消費税額の全額仕入税額控除が可能であった。 (改正)その課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者に限り適用。 課税売上高が5億円を超える事業者は、非課税売上に係る課税仕入 については、仕入税額控除ができない。 ■適用時期:平成24年4月1日以降開始する課税期間から適用される(改正済み)。 (個人事業者の場合、25年12月期から) (対策)課税売上高を5億円以下に抑える。超えそうな場合には、分割を図る。
15.所得税 給与所得控除の見直し① • 給与所得控除の上限設定年収1,500万円超 → 給与所得控除245万円を上限<現行> • 役員給与に係る給与所得控除の見直し年収2,000万円超の役員 → 給与所得控除を減額<改正> 245万円で打ち止め
16.所得税 給与所得控除の見直し② ■給与所得者(一般従業員)の増税額 ■役員給与所得者の増税額
16(2).所得税 給与所得控除の見直し③ 16(2).所得税 給与所得控除の見直し③ いわゆる、個人事業主との課税の不均衡を是正し、二重控除を解消するための抜本的措置として労入されました。給与所得控除については、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整のための特別控除」の二つの性格を有しています。しかし、給与所得者が就業者に占める割合が9割となり、他の所得との調整が求められる必要性は薄れています。また、現在の給与所得では、概括して、給与収入総額の3割程度が控除されている一方で、給与所得者の必要経費は給与収入の6%程度との試算もあり、主要国比較でも高い水準となっています。このため、格差是正・所得再配分機能回復の観点から、過大となっている控除を適正化するための見直しが行われました。 具体的には、給与所得控除について、給与所得者の必要経費が収入の増加に応じて増加するとは考えられないことから、給与収入1500万円超の場合には、上限額を設けました。法人役員については、勤務態様が必ずしも従属的ではなく、給与の自己決定程度も高いことから、高額な役員給与については、他の所得との調整部分が課題と考えられることから、4000万円超という給与収入の場合には、勤務費用の概算部分である、給与所得控除額の二分の一が上限とされました。 (節税の対策ポイント!) ①1500万円以上の給与水準の場合、同じ給与額であっても、従業員と役員では、役員のほうが給与所得控除額が少なく設定されています。(増税幅が大きく設定されています。) ②特定支出控除の範囲の拡大が行われたので、その部分を活用します。通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費に加え、図書費、衣服費、交際費及び職業上の団体の経費(勤務必要経費)も、特定支出の範囲に追加されました。勤務必要経費は65万円の上限がありますが、特定支出の適用判定基準が、給与所得控除額の二分の一となります。 ①従業員成りをすることで、給与所得控除額を増やすことが可能です。 ②特定支出控除額を活用し、控除額全体を増やすことが可能です。 ③会社を2つ以上、作ります。
17.所得税 退職所得課税の見直し ■現行の退職所得の概要(収入金額-退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額※退職所得控除額 勤続30年の場合 40万円×20年+70万円×10年=1,500万円 ※最高税率25% ■改正案勤続期間5年以下の役員退職手当等は2分の1課税を廃止
17(2).所得税 退職所得課税の見直し② 17(2).所得税 退職所得課税の見直し② 退職給与所得は、長期間にわたる勤務の対価が一時的に纏めて後払いされるものであり、退職後の生活保障的な所得であることから、退職所得控除額を控除した残額の二分の一を所得金額とする累進緩和措置が取られています。しかし、勤労者の就労形態は多様化し、二分の一課税を前提に、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取を繰延べて高額な退職金を受取ることにより、税負担等を回避する事例が指摘されていました。そこで、改正が行われました。 (節税の対策ポイント!) ①退職所得課税が見直されたのは、役員等に係る退職所得です。ここでいう役員等とは、法人税法第2条15号に規定する役員、国会議員及び地方議会議員、国家公務員及び地方公務員です。 ②役員等に対し、在任5年以内に支払われる退職金には2分の1課税が適用されません。 ③死亡退職金の形式を取ることにより、みなし相続財産の枠の中で、退職所得と扱わないことができます。 ①役員から外れることで、退職所得に対し2分の1課税適用を免れます。 ②在任期間を5年超にするよう、早めに役員に就任します。 ③死亡退職金の形式をとります。
18.所得税 成年扶養控除の見直し (現行)扶養親族のうち、年齢23歳以上70歳未満の1人につ き一律38万円の所得控除 ・合計所得金額400万円超の居住者が有する成年扶養親族(特定成年扶養親族以外)は原則、控除対象外<負担調整措置>38万円-(合計所得金額-400万円)×38% ・特定成年扶養親族は控除対象 年齢65歳以上70歳未満の者 心身の障害等の事情のある者 勤労学生
18(2).所得税 成年扶養控除の見直し② 18(2).所得税 成年扶養控除の見直し② 扶養控除については、平成22年改正により、以下の二つについては既に廃止されています。 ①扶養親族のうち、16歳未満の年少扶養親族に係る所得税38万円と住民税33万円の年少扶養控除 ②特定扶養親族のうち、16歳以上19歳未満の者に係る扶養控除の所得税25万円、住民税12万円の上乗せ部分 扶養親族とは、その年の12月31日現在で、以下の要件のすべてに当てはまる人です。23歳から69歳までの成年扶養親族も、この要件を満たせば、扶養控除の対象となります。 (要件)配偶者以外の親族等から用語を委託された老人である。納税者と生計を一にしている。年間の合計所得金額が38万円以下である。青色申告者または白色申告者の事業専従者として、給与支払い受けていないこと。 居住者が次に掲げる成年扶養親族(扶養親族中、23歳以上70歳未満の者)を有する場合には、居住者のその年の総所得から、成年扶養親族一人につき、所得税38万円、住民税33万円を控除します。 (要件)特定成年扶養親族、特定成年扶養親族以外の成年扶養親族 特定成年扶養親族とは、成年扶養親族中、次に掲げる者を言います。 (要件)年齢65歳上70歳未満の者、心身の障害等の事情を抱える者、勤労学生控除の対象となる学校等の学生、生徒等 (節税の対策ポイント!) ①居住者が抱える成年扶養親族を有する場合、居住者の所得が400万円以下の場合には、被扶養者に係る成年扶養控除が受け続けられます。
19(2).所得税 金融証券税制 上場株式 19(2).所得税 金融証券税制 上場株式 (背景) 金融証券税制については、個人金融資産を有効に活用し、我が国経済を活性化させるためにも、金融所得間の課税方式の均衡化と損益通算の範囲拡大を柱とする金融所得課税の一本化に向けた取り組みを進めるとされています。 しかし、景気回復に万全を期すため上場株式等の配当・譲渡所得に係る10%軽減税率の適用期限が2年間延長されました。 (節税のポイント!) 平成26年度からの本則課税までは、上場株式の配当等の10%軽減税率が利用できます。この場合、所得税率との兼ね合いで、総合課税で配当控除を申告する場合と、申告分離課税のままで配当を別途申告しない場合とでは、損得が分かれます。 課税総所得の合計が、330万円以上であれば、申告しない方が得です。
19(3).所得税 金融証券税制 日本版ISA 19(3).所得税 金融証券税制 日本版ISA (背景) 当初、平成24年度から実施予定の上場株式等に係る税率の20%本則課税にあわせ、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当・譲渡所得等に非課税措置が導入されるはずでした。 ①配当所得等の非課税措置、②譲渡所得等の非課税措置、③非課税口座開設届出書の提出、④非課税口座年間取引報告書の提出 ところが、上場株式の配当・譲渡等所得に係る税率の本則課税の延期に合わせ、日本版ISAの導入も延期されました。 (節税のポイント!) 導入までは、上場株式の軽減税率を活用しましょう。 日本版ISAは非課税投資額の上限が、口座開設年に新規投資額で100万円で、最大3年間で300万円です。
19(4).所得税 金融証券税制 先物取引 19(4).所得税 金融証券税制 先物取引 (背景) 市場デリバティブ取引は、申告分離課税であるのに対し、店頭デリバティブ取引等は総合課税となっていることから、同一の経済的性質の取引には、同一の課税が行われるべきという考え方により、店頭デリバティブ取引に係る所得にも20%申告分離課税としたうえで、通算及び損失額の3年間繰越控除を認めました。 ①従来からの先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の対象に、②商品先物取引法に規定する店頭デリバティブ取引の差金等決済、金融商品取引法に規定する店頭デリバティブ取引の差金等決済、等が追加されました。 (節税のポイント!) 先物だけではなく、いわゆるOTC物のデリバティブによる取引についても、申告分離課税と損失の繰越控除が認められましたので、従来に比べ、課税所得の算出に与える裁量の余地が大きくなっています。
19(4).所得税 金融証券税制 大口株主 19(4).所得税 金融証券税制 大口株主 (背景) 上場株式による配当については、会社法の少数株主権の制度との整合性及び所得再配分機能の回復の観点から、会社経営に参画する持分としての事業参加的側面が強いことを勘案し、金融所得として分離課税することは必ずしも適当ではなく、事業所得とのバランスを踏まえ、総合課税の上、配当税額控除により法人税との負担調整を行うこととしました。 その結果、上場株式等に係る配当所得の分離課税の対象とならない大口株主等の要件が、持株比率5%以上から3%以上へと引き下げられることになりました。 (節税のポイント!) 従来の分離課税(20%)から総合課税(最高税率50%)へ変更されることに伴い、高額配当所得者の税負担が増加します。これを抑えるためには、個人持株比率の減少か、発行済株式総数の増加を図ることが考えられます。
19(5).所得税 金融証券税制 特定口座 19(5).所得税 金融証券税制 特定口座 特定口座は、個人投資家の納税手続の負担を軽減するために設けられた制度ですが、一部の上場株式等については、特定口座へ受け入れることが出来ないため、個人投資家は自ら確定申告をする必要がありました。今般の改正で、特定口座内保管上場株式等について、 株式で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買登録銘柄株式、店頭転換社債型新株予約権付社債、外国金融商品市場において売買されている株式等、のほかに、以下が追加されました。 ①相互会社の株式化に伴い発生した上場株式 ②株式無償割当により取得した上場株式 ③新株予約権無償割当により取得した上場新株予約権 ④特定口座内保管上場株式等である新株予約権の行使による取得した上場株式 ⑤非適格ストックオプションの権利行使により取得した上場株式 ⑥被相続人等の持株会口座から相続等により取得した状況株式等 (節税のポイント!) 確定申告の事務負担が減少しますので、特定口座の利用が増えやすくなるでしょう。
20.所得税 既存住宅の改修工事に係る所得税額の控除等の見直し 20.所得税 既存住宅の改修工事に係る所得税額の控除等の見直し (改正内容) 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除等については、バイアフリー改修工事の証明のある工事費用が30万円を超える等の一定の要件を満たす工事の場合、または省エネ改修工事の証明のある工事費用が30万円を超える等の一定の要件を満たす工事の場合、バイアフリー改修工事費用額と標準的工事費用額のいずれか少ない額(200万円が限度)の10%相当額、または省エネ改修工事と標準的工事費用のいずれか少ない額(200万円が限度、太陽光発電装置の設置の場合、300万円が限度)の10%相当額の税額控除が受けられますが、この控除額について見直しが行われたうえで、適用期限が2年延長されます。 (1)バイアフリー改修工事税額控除額の上限額(現行20万円)について、平成23年は20万円とし、平成24年は15万円とされます。 (2)省エネ改修工事・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等 税額控除額の計算の基礎となる省エネ改修費用の額について、補助金等の交付がある場合は、当該補助金等の額を控除した後の額とされます。 (3)既存住宅の耐震改修工事 対象となる地域の要件を廃止するとともに、補助金の交付がある場合は、当該補助金等の額と控除した後の金額とされます。 平成23年改正済み。ポイントは、合計所得金額が3000万円を超える年の分、及び前年度の所得税についてこの控除を適用している場合については、税額控除が受けられない点です。
21.所得税 e-Tax所得税額控除の見直し (改正内容) 電子証明書を有する個人の電子情報処理組織による申告に係る所得税額の特別控除について、税額控除額(現行:5,000円)を、平成23年分は4,000円、平成24年分は、3,000円に引き下げた上で、その適用が2年間延長されます。 e-Taxを利用し、税額控除の適用を受けるためには、事前に以下の作業が必要となります。 ・電子証明書の取得、ICカードリーダーライターの取得、電子申告・納税等開始届出書の提出、e-Taxソフトのインストール 平成23年改正済み。
22.所得税 日本版プランド・ギビング信託の創設 22.所得税 日本版プランド・ギビング信託の創設 (創設内容) 個人の寄附者と学校法人、公益社団・財団法人等の非営利団体との間を繋ぐ寄附仲介機能を強化する観点から、これらの非営利団体に対しての寄附を目的とする、一定の要件を満たした信託(特定寄附信託)について、信託財産から生じる利子所得を非課税とする制度が創設されました。 特定寄附信託契約とは、居住者等が信託業務を営む金融機関等と締結した、当該居住者等を受益者とする信託契約で、特定寄附金の対象となる公益社団法人、公益財団法人又は認定NPO法人等(公益法人等)への寄附を行うことを主たる目的とするものをいいます。 所定の適用要件及び非課税申告書の提出、信託契約書の提出が必要です。 平成23年改正済み。
22(2).所得税 日本版プランド・ギビング信託 22(2).所得税 日本版プランド・ギビング信託 全体図 寄附者(委託者兼受益者) 受託者(信託銀行) 寄附先(非営利団体) 金銭を信託 毎年、一定割合で金銭を交付 ⇒運用による利子は非課税 ⇒寄附金控除の対象 金銭交付(3割が限度) 活動実績を報告 個人寄附者と非営利団体との間を繋ぐ寄附仲介機能を強化する観点から、非営利団体に対する寄附を目的とする『信託』について、寄附金控除の適用をします。 (ポイント!)信託財産のみならず、財産の運用から生じる利子・配当等の果実も非課税になります。
22(3).所得税 日本版プランド・ギビング信託 22(3).所得税 日本版プランド・ギビング信託 • ①信託財産からの寄附は、公益法人等に対してのみ行うものであること。 • ②信託契約期間中の各年に信託財産から寄付される金額は、当初信託元本額を信託契約期間の年数で除した金額と当該寄附をする日までの間に生じた利子の合計額とされていること。 • ③信託契約期間中に信託財産から委託者に金銭の交付をする場合には、その交付される金銭の額は当初信託元本額の30%を限度とし、かつ、信託契約期間に渡って各年均等に交付されるものであること。 • ④信託の受託者がその信託財産として受け入れる財産は、金銭に限られるものであること。 • ⑤信託の信託財産の運用は、次に掲げられるものであること。 • 預貯金 • 国債、地方債、特別の法律により法人の発行する債券または貸付信託の受益権の取得 • 合同運用信託の信託 • ⑥信託財産を寄附する日の前日までに、信託の受託者がその寄附を受ける法人等との間で寄附に関する契約を締結していること。 • ⑦信託は、合意による終了ができないものであること。 • ⑧信託の受益権は、譲渡または担保提供ができないこと。 • ⑨委託者が死亡した場合には信託は終了し、その信託財産はすべてを公益法人等に寄附することとされていること。 • ⑩信託の計算期間は、1月1日から12月31日までとされていること。
23.所得税 年金所得者の申告手続の簡素化 23.所得税 年金所得者の申告手続の簡素化 (改正内容) 年金所得者の申告手続が次のとおり改正されます。 (1)確定申告不要制度の創設 年金収入が400万円以下で、かつ、年金以外の他の所得が20万円以下の者について、申告不要制度が創設されます。 (2)控除対象の範囲の拡充 年金所得者に係る源泉徴収税額の計算における控除対象として、人的控除の範囲に寡婦(寡夫)控除が追加されます。 高齢化社会に対処するための、申告手続の簡素化に係る課税の適正化措置。年金所得者には年末調整制度が無いことから、確定申告により税額の精算を行う必要があり、大きな事務負担となっていましたが、給与所得者とのバランスを考え、今回の改正となりました。 (ポイント!)仮に、納税額が発生したとしても、非課税になります。 平成23年改正済み。
23(2).所得税 年金所得者の申告手続の簡素化 23(2).所得税 年金所得者の申告手続の簡素化 ①年金所得者に係る源泉徴収税額の計算 源泉徴収税額=(公的年金の支給金額‐控除額)×5% ②控除額は、次の算式により計算した金額となります。 控除額=(基礎的控除額+人的控除額)×月数(その支給金額の計算の基礎となった期間の月数) 基礎控除額 人的控除額
24.所得税 還付確定申告書の提出期間の改正 24.所得税 還付確定申告書の提出期間の改正 (改正内容) 所得税の申告義務のある者の還付申告については、その提出期間の始期が翌年の1月1日とされます(現行:2月15日)。 納税者にとっては早期の還付手続が可能となり、実務家にとっては確定申告の繁忙期を避けた申告業務が可能になります。 (ポイント!)還付金そのものも、早期に入金されることが期待できます。 平成23年改正済み。
24(2).所得税 還付確定申告書の提出期間の改正 24(2).所得税 還付確定申告書の提出期間の改正
25.所得税 事業所等の移転があった場合の源泉所得税の納税地の見直し 25.所得税 事業所等の移転があった場合の源泉所得税の納税地の見直し (改正内容) 事業所等の移転があった場合には、移転後の事務所等の所在地の所轄税務署が課税処理を行うこととなります (現行:源泉所得税の納税地は、給与等を支払った事務所等の所在地とされています。移転前に支払われた給与等に係る調査・納税告知等の課税処理は、移転前の事務所等の所在地の税務署が行うこととされていました)。 納税者の利便性や、税務署の事務迅速性が増します。 (ポイント!)わざわざ移転前の税務署に、資料を提出するなどの煩雑な手続きが不要となります。 平成23年改正済み。
26.所得税 金地金等の譲渡対価に係る支払調書制度創設 26.所得税 金地金等の譲渡対価に係る支払調書制度創設 (創設内容) 金地金及び白金地金の譲渡対価(200万円超)の支払いをする者に対し、所轄税務署長へ支払調書を提出する義務が課せられることになります。 平成24年1月以降、貴金属商及び古物商等に該当する事業者は、犯罪収益移転防止法だけでなく、税法によっても、1回の取引における譲渡対価が200万円を超えるものについては本人確認及び支払調書の提出が義務化されます。 (ポイント!)一回の取引額を200万円未満に抑えれば、税務署に把握されることはありません。 平成23年改正済み。
26(2).所得税 金地金等の譲渡対価に係る支払調書制度創設 26(2).所得税 金地金等の譲渡対価に係る支払調書制度創設 ①対象となる商品 金地金及び白金地金(金貨、白金貨を含む。) 地金とは、金属を貯蔵し易いような形で固めたもの。金属塊。インゴッド、バーともいわれています。 ②提出義務者 個人に対して金地金又は白金地金の譲渡対価の支払いをする者(貴金属商、古物商など) ③提出基準 一回の取引における金地金及び白金地金の譲渡対価が200万円を超える者 居住者または国内に恒久的設備を有する非居住者に対して、金地金等の譲渡対価の支払いをする者は、その支払金額等を記載した支払調書を、その支払いの確定した日の属する翌月末日までに、その支払をする者の所在地の税務署長に提出しなければなりません。
27.所得税 一時所得の計算上控除する保険料の明確化 27.所得税 一時所得の計算上控除する保険料の明確化 (創設内容) 満期保険金に係る一時所得の計算上、その支払を受けた金額から控除できる事業主が負担した保険料は、給与所得課税が行われたものに限られることが明確化されます。 養老保険を利用して関係法人から役員に資金移転する租税回避が行われていることを踏まえ、これを適正化するため、満期保険金に係る一時所得の計算上、その支払を受けた金額から控除できる事業主負担保険料は、給与所得課税が行われたものに限られることが明確化されました。 平成23年改正済み。
27(2).所得税 一時所得の計算上控除する保険料の明確化 27(2).所得税 一時所得の計算上控除する保険料の明確化 満期保険金の支払いを受けた場合の一時所得の計算では、その支払を受けた金額から、その保険契約に係る保険料の総額を控除することとされています。控除される保険料は、満期保険金を取得した者本人が負担したものに限られるべきですが、それ以外の者が負担していたものも含まれるのか、法令上は明らかでありませんでした。 福岡地裁・福岡高裁は、満期保険金を取得した者以外の者が負担した保険料も一時所得の計算において控除されると判断しましたが、国税不服審判所では、満期保険金を取得した者が負担した保険料に限り控除されると判断したことから、現在のところ、裁判所と審判所とでは見解が異なっています。 今回の税制改正では、個人が支払を受けた生命保険契約に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、その支払を受けた金額から控除することが出来る事業主が負担した保険料は、給与所得に係る収入金額に算入された金額に限られることが法令に規定されます。
28.相続税 基礎控除引き下げと税率構造見直し28.相続税 基礎控除引き下げと税率構造見直し • 基礎控除の引き下げ5,000万円+1,000万円×法定相続人 ⇒3,000万円+600万円×法定相続人 • 相続税の最高税率の引き上げ • 相続税の税率構造の見直し
28(2).相続税 改正前後の相続税の試算28(2).相続税 改正前後の相続税の試算 • 一次相続 (相続人は配偶者と子2人で、法定相続分により相続したものとして相続税額を計算)