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「ノーベル物理学賞(’ 08 )の業績解説」

「ノーベル物理学賞(’ 08 )の業績解説」.   物理学専攻談話会 ( Oct. 10, 2008 )   . 林 青司  (神戸大学 理学研究科・物理学専攻、素粒子理論). いずれも「対称性の破れ」に関するもの ・南部: 連続的対称性(カイラル対称性、ゲージ対称性)   ・小林・益川: 離散的対称性( CP 対称性). ( P 変換) パリティー変換をすると、右手は左手に、また右ネジは左ネジに変換される:  左手系 右手系. 1. 南部教授の業績 (複数の真にオリジナリティーのある仕事). ・ 自発的対称性の破れ のメカニズム(受賞対象) 

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Presentation Transcript


  1. 「ノーベル物理学賞(’08)の業績解説」   物理学専攻談話会 (Oct. 10, 2008)    林 青司  (神戸大学 理学研究科・物理学専攻、素粒子理論)

  2. いずれも「対称性の破れ」に関するもの ・南部: 連続的対称性(カイラル対称性、ゲージ対称性)   ・小林・益川: 離散的対称性(CP 対称性) (P 変換) パリティー変換をすると、右手は左手に、また右ネジは左ネジに変換される:  左手系右手系

  3. 1. 南部教授の業績(複数の真にオリジナリティーのある仕事) ・自発的対称性の破れのメカニズム(受賞対象)  ・クォ―クは3つのカラーを持つこと(韓・南部)  Δ++ (uuu) : s = 3/2 波動関数が完全対称 → フェルミ統計に矛盾 → urubug (ただし、整数電荷を予言) ・弦理論における「南部・後藤の作用」  (自発的対称性の破れ)  電磁気の理論には(局所的)ゲージ対称性が存在  Ψ→  Ψ’ = eiφΨ (φ: 時空点に依存) Aμ →Aμ + ∂μ φ → 光子は massless

  4. ゲージ原理  (局所的)ゲージ対称性 → ゲージ粒子 → 相互作用  問題点: 弱い相互作用は極めて短距離で作用   → そのゲージ粒子(W, Z) は重くなくてはいけない   → 何らかの意味でゲージ対称性を破る必要   → 下手に破ると理論の「くりこみ可能性」をいう望ましい性質を壊す   → “性質の良い”対称性の破れ:自発的対称性の破れ 単純化: 平面上の(自然長の無視できる調和振動子)  回転対称性、真空状態 x=y=0 は回転対称性を保持し、これを破らない

  5. 少し変形: 真空状態 V は回転対称性を破る: 自発的対称性の破れ N.B. 正確には場の理論のように無限自由度があることが大切 真空の周りの微小振動:  →Higgs 粒子 →massless のNambu-Goledstone ボゾン y x NG ボゾンの出現 ← 性質の良い破れ

  6. 例: パイ中間子が軽いのはカイラル対称性の自発的破れの為例: パイ中間子が軽いのはカイラル対称性の自発的破れの為 Nambu-Jona-Lasinio model: BCS 理論を参考にカイラル対称性の自発的破れを論じた   (ゲージ理論に適用) N-G ボゾンがゲージ粒子と結合し、ゲージ粒子の縦波成分を供給 → ゲージ粒子がmassive に :Higgs 機構  こうして 重いW, Z を実現することが出来る  (N.B.) 超伝導体でのマイスナー効果: Cooper 対が電磁気の ゲージ対称性を自発的に破り、光子がmassive に

  7. 2. 小林ー益川教授の業績(現象論のお手本) 弱い相互作用では、離散的な対称性が大きく破れている P 対称性の破れ: Lee & Yang (1956) ニュートリノには左巻き状態のみ存在(現れない): P 対称性の最大限の破れ (“左半分しかないハート型”)  C対称性も破れている:   全ての粒子には質量が同じで電荷等の量子数が逆符号の反粒子が存在。 粒子 ⇔ 反粒子のC 変換の下での不変性: C 対称性  C 変換は波動関数(場)に対する複素共役 Ψ* →  Ψ’ * = e-iφΨ * 複素平面上では複素共役は虚軸の反転: C も離散的対称性

  8. 左巻きの反ニュートリノは存在しない(現れない): C の最大限の破れ しかし、右巻き反ニュートリノは存在する → CP 対称性は良さそう 実はCP 対称性さえも僅かながら破れている: KL →ππ 小林ー益川 理論: 標準模型に基づきCP の破れを説明する為には3世代以上必要である(その他の可能性も議論しているが) まだ1.5 世代しか見つかっていない時に3世代の存在を予言 CP を破る複素パラメター(位相)の数:   世代数 ・3世代の“連携”が必要:  KL →ππでも tクォ―クが重要  ・n=3 だと一個の位相が全てのCP の破れをコントロール

  9. そこで、第3世代のb クォ―クを含むBメソンを用いた CP 非対称性(CP asymmetry) に関する実験を行い、 KL →ππ等のデータから導かれる予言値と比較する:  B ファクトリー実験 (Belle (KEK), BaBar (SLAC)) データは小林ー益川理論の予言と良い一致をみた (宇宙における物質の起源)  宇宙初期には等量あったはずの物質、反物質に何故非対称性が生じたか?  CP の破れ、バリオン数保存を破る相互作用が必要条件(サハロフ) → 大統一理論を用いる可能性(吉村、Weinberg, etc.) ただ、小林ー益川で現れるCP を破る位相が直接宇宙初期での物質生成に関与するか、はっきりしていない

  10. ・自発的対称性の破れ → Higgs 粒子  ・初期宇宙における物質生成 → TeV エネルギースケールでの新しい物理(標準模型を越える理論)が関与している可能性   LHC に期待 !

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