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再生医療学分野の研究概要 生体が正常な機能を十分に発揮するためには、体内の臓器・組織に血液が継続的かつ十分に循環される必要がありますが、その循環維持に関わる諸臓器をまとめて循環器と呼びます。循環器は主に心臓、動脈、毛細管、静脈、リンパ管から構成されています。循環器にかかわる疾患を循環器病と呼びます。現代社会においては、大幅な生活様式の変化と急速な高齢化に伴い、心臓病・高血圧症・脳血管障害などに代表される循環器病にかかる患者さんが急増し、これらの疾患による死亡率は国民死亡原因の約30%を越えるに至り、これらの疾患対策が国家的課題となっています。この要請に応えるため、私たち再生医療学分野では次の基本方針で循環器病治療のための再生医療の研究を行っています。 1)心臓・血管の再生メカニズムを解明し、これを基に新しい医療技術を開発することで循環器疾患の根治治療法を確立する。 2)循環器病に対する細胞治療をトランスレーションすることで21世紀に必要な新しい心臓・血管再生医療体制を提供する。 3)細胞の機能再生を応用した広範囲組織型心臓・血管再生医療を開発する。 これらの基本方針を具体的に実現していくために次のような研究テーマが策定されています。 1)心臓の発生分化の分子機構の解明と新しい心筋再生医療の開発に関する研究 2)体性幹細胞を用いた新たな血管再生医療法の開発と医療へのトランスレーション 3)遺伝子医学を用いた病因の解明とその治療応用 4)心・血管細胞イオン代謝を制御する膜輸送ナノマシーンの細胞生理、病態における役割の解明と病態治療薬の開発 5)心・血管細胞エネルギー代謝を制御する酵素群の細胞生理、病態における役割の解明と病態治療薬の開発 6)新しいリスク要因、環境要因の究明
Mission: 得られた実験結果がヒトの疾患の原因究明や治療に応用実現が可能な研究を目指しています。 Regeneration of cells and/or tissues using embryonic stem cells Our scope is broad and includes the following areas: 1. Cell cycle 2. Signal transduction 3. Proteolysis 4. Apoptosis 5. Developmental biology 6. Cellular mechanisms of human disease 7. Cell-based gene therapy
ES-derived cardiac cells Pacemaker activity 3.ウィルスベクターを用いたES細胞由来臓器の作成 1. バイオロジカルペースメーカーの開発 2. Cellular mechanism of Down syndrome 我々はNature 2002に機械にとって代わる生物学的ペースメーカの作成という概念を世界で初めて紹介しました。ES細胞を用いてヒトに応用可能なファインチューニングされたバイオペースメーカの作成を目指すとともに心筋イオンチャンネルの発生における役割を研究しています。 遺伝子異常を原因とする疾患にアプローチしています。例えば、先天性心奇形を生じる染色体異常の中で頻度の高いダウン症候群(21番染色体異常)の心筋の発生を研究しています。 ウイルスベクターを使いES細胞由来の組織を作成し選別します。 Control LacZ ヒト21番染色体(赤) LacZ遺伝子をウイルスベクターで導入した胚葉体です。 左:コントロール 右:LacZ ESから作られたボール状の胚葉体(写真)は収縮し始めますが、ダウン症モデルのESから作られたものは収縮時期が遅れます。それには中胚葉分化に必要な分子の発現が遅れが関与することが分かってきました。
薬剤による 輸送の促進 Ion channel の分布 心血管の機能性蛋白発現を制御し広範囲組織型再生医療を開発する。 2. 心血管細胞エネルギー代謝を制御する酵素群の細胞生理、病態における役割の解明と病態治療薬の開発 AMP deaminaseはAMP異化酵素で細胞内のAMP量の調節に重要です。私たちはAMPが細胞内から全く新しい経路を介して心臓保護に働く事を見出しています。そこでAMP deaminase遺伝子改変マウスを用いる事でこの酵素の生理学的意義を探査しこの知見を基に障害心筋の保護を目指した治療に応用しようとしています。 1. 心血管細胞イオン代謝を制御する膜輸送ナノマシーンのプロセッシングと病態における役割の解明及び病態治療薬の開発 心血管系のイオン代謝は膜輸送ナノマシーンであるトランスポーター・チャンネル・ポンプの共同作業によって制御されますが、循環器病ではイオン代謝が心臓全体で障害されます。そこで構造の面から膜輸送蛋白のプロセッシングの仕組みを理解し、これを制御する新規分子および薬剤を探索することで心臓全体のイオン代謝の正常化を目指しています。
ES-derived cardiac cells 再生医療学分野(機能再生医科学専攻) 私たちの教室ではfrom bench to bedside を目指した機能再生の研究を行っています。 Bench!! Virus vector 翻訳 Bedside!! 指導教官:星川淑子先生 山本康孝先生 三明潤一朗先生 Molecular cloning 2004年度は下記のテーマに関心を持っている卒業研究の 学生さんを2名募集いたします。 詳しくは各指導教官にお話を聞いてください(総合研究棟2F)。 教授 久留一郎
末梢血幹細胞 (PBSC) 末梢血幹細胞 (PBSC) アフェレーシスによる 末梢血幹細胞採取 患者 採取 HCU ES-derived cardiac cells 患者 虚血肢筋肉内注入 pilsicainide 20S proteasome Pacemaker activity 機能再生科学専攻 遺伝子再生医療学講座 再生医療学分野 久留一郎(ひさとめいちろう) 3.自己単核球細胞移植を用いた血管再生医療 1. バイオロジカルペースメーカーの開発 2. 蛋白安定化治療ための新規化合物の開発 細胞の機能に重要な蛋白の喪失が病気の発症(突然死・アルツハイマー病など)に関わっており、蛋白を安定化することにより病気の治療が可能です。構造プロテオミクスを用いた手法により蛋白の安定化を図る創薬を目指しています。 我々はNature 2002に機械にとって代わる生物学的ペースメーカの作成という概念を世界で初めて紹介しました。ES細胞を用いてヒトに応用可能なファインチューニングされたバイオペースメーカの作成を目指すとともに心筋イオンチャンネルの発生における役割を研究しています。 動脈硬化の為に足の血管が詰まる病気の患者さんに再生医療が威力を発揮します。自分の骨髄(図上段)や血液中(図下段)にある幹細胞を足に移植して血管の再生を実際に患者さんに行い良好な成績を上げています。 プロテオソーム阻害 対照 分子軌道を修飾したプロテオソーム阻害薬(写真上段)が蛋白(写真下段はチャネル蛋白)を安定化し正常な細胞内輸送を促進します。