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ボルツマン輸送方程式による 金属内の電気・熱輸送の数値解析. 九州大学大学院 工学研究院 伊藤衡平 kohei@mech.kyushu-u.ac.jp. コンテンツ. 1 はじめに バックグランド 2 大きな目標、小さな目標、、、着想の経緯 3 ボルツマン輸送方程式 (BTE) の定式化. 7 電流の計算 8 計算結果 9 まとめ. 4 熱流の計算 5 計算結果 6 まとめ. 1 はじめに バックグランド. 材料の開発 ( 超格子 ) 加工技術の発展. 電子素子の微細化 、高速化. IC. 微細な素子が組み込まれた電子機器の性能予測が必要.
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ボルツマン輸送方程式による金属内の電気・熱輸送の数値解析ボルツマン輸送方程式による金属内の電気・熱輸送の数値解析 九州大学大学院 工学研究院 伊藤衡平 kohei@mech.kyushu-u.ac.jp
コンテンツ 1 はじめに バックグランド 2 大きな目標、小さな目標、、、着想の経緯 3 ボルツマン輸送方程式(BTE)の定式化 7 電流の計算 8 計算結果 9 まとめ 4 熱流の計算 5 計算結果 6 まとめ
1 はじめに バックグランド 材料の開発(超格子) 加工技術の発展 電子素子の微細化、高速化 IC 微細な素子が組み込まれた電子機器の性能予測が必要
1 はじめに 間隙に対するツールは? マルチなスケールの問題 分散関係 界面の状態 ミクロ 分子動力学(MD)など 微細な素子が 組み込まれた 電子機器の 性能予測 電流,熱流 (電子,フォノン) 輸送現象 素子の特性 ボルツマン 輸送方程式(BTE) メゾ 回路の動特性 環境との接続 マクロな 方程式群 (輸送方程式) マクロ
1 ボルツマン輸送方程式の位置付け なぜメゾスケールでBTE? 分子動力学にとっては 系が大きすぎる 微細化(高速化)した素子内の輸送現象 輸送キャリアー(電子・フォノン) が平衡分布関数からずれる ΔX~LMFP, Δt~tRELAX Large flux! 準平衡を仮定する マクロ輸送式群の 適用は難しい ボルツマン輸送方程式により キャリアーの非平衡分布関数を求める 熱流や,電流などの輸送量 性能予測へ ゼーベック係数など
2 目標 ○金属点接触の半理論解析、 ○定常でのBTE → 非定常 ○波数の大きさに対する分布形を仮定した、、、 ○高精度計算 小さな目標 定式化、離散化を済ませたBTEが、マクロの領域で、 マクロの輸送現象(線形輸送理論)を、正しく表現できているか、検証。 ○散乱項の改良、○自由電子モデルから、、、 ○フォノンBTEとの練成 大きな目標 微細構造を有する素子の性能予測ツールの確立 (BTEを基礎にしたメゾスケール数値シミュレータの確立)
2付 なぜ多倍(4倍)長計算 □一般に、非平衡分布関数と平衡分布関数の値の差は、小さい。 □これまでの方法:非平衡分布関数と平衡分布関数の差を評価。 □汎用性は?。 差で評価する場合、代表的な(平均的な)平衡分布関数を与える必要がる。 しかし、難しい。 ・電位差、温度差を同時に印加。大きな流速 ・微細な複雑形状 ・短い時間 →直接、非平衡分布関数を扱う。・・・・4倍精度必要 分布関数 とは? □熱流、電流の計算には, f の高い精度が必要
2付 本研究の着想に至った経緯 ○金属点接触の半理論解析、 ○定常でのBTE → 非定常 ○波数の大きさに対する分布形を仮定した、、、 ○高精度計算
2付 同一金属で構成した点接触の熱起電力 回路を白金で構成 金属点接触における非平衡効果及び電子トンネル効果による熱起電力 土方邦夫, 伊藤衡平, 鳥越邦和、日本機械学会論文集B, Vol. 61, pp.1863-1868(1995)
2付 半理論解析的な取り組み 金属点接触の熱起電力2付 半理論解析的な取り組み 金属点接触の熱起電力
2付 半理論解析的な取り組み モデル モデル 白金内の自由電子の平均自由行程 組み込み
2小さな目標 ここでの発表 無限平板に温度差を与えたときの,熱流,熱起電力の計算に適用! BTEを定式化 無限平板に電位差を与えたときの,電流の計算に適用 マクロな大きさの系で計算 計算結果と理論値を比較してBTEの定式化の精度を確認
3ボルツマン輸送方程式(BTE)の定式化 τ、f0を、 どう与えるか! 金属内自由電子に対するBTE 電子の移流による項 電界による加速の項 緩和時間近似を利用した散乱項 平衡分布関数(F.D.分布関数)
対称条件 3座標系の選択,BTEの簡単化 実空間:円筒座標系(r, q, z) 波数空間:極座標系(k, y, j) 簡単化したBTE
3 BTEの無次元化 無次元数 無次元化したBTE
3 BTEの差分 陽解法を用いて差分。z方向には、 特に風上差分を用いた。 陰解法 でも. 但し、iは風上を示すindex。
3波数方向への計算領域の範囲 fの分布の特徴、 ε(k) < εF 、 f~1 ε(k) > εF 、 f~0 を考慮して、波数の計算領域に制限を設ける。 0 0
コンテンツ 1 はじめに バックグランド 2 大きな目標、小さな目標、、、着想の経緯 3 ボルツマン輸送方程式(BTE)の定式化 7 電流の計算 8 計算結果 9 まとめ 4 熱流の計算 5 計算結果 6 まとめ 熱流の計算
4熱流と熱起電力の計算 • 金属内自由電子に対するBTE • 電流ゼロの付帯条件 求めた電界からゼーベック係数を換算.実験値と比較。 この二つの式から、二つの未知数の分布関数 f と電界Ezを求める。 求めた分布関数から、熱流を導出。フーリエの法則から予測される熱流と比較。
4 計算条件 代入される物性値は、 これらフェルミエネルギーと、緩和時間のみ。 • 金属の種類:金 • FermiエネルギーεF:5.51[eV] • 緩和時間τ:10-14[s]← 動力学関係と抵抗率から与えた。 • 金属平板の厚さ:Lz=10-6[m] • 境界の温度: T1=300-10-3[K] T2=300+10-3[K]
初期条件 T=300K Ez=0 4 境界条件と初期条件 境界条件 T(t=0)
4 フローチャート 電界を 微修正
5 分布関数のレーダーチャート ① ② ③ f>f0 f<f0 熱流 f<f0 f>f0 ○ k<kF, 熱流と同じ方向のfが減少 ○ k>kF, 熱流と同じ方向のfが増加 →正味の電荷の流量が零。 ⇒熱伝導下の分布関数を表現できた。 Ref. J.M. Ziman, Principles of the theory of solid, Cambridge University Press, 1972
5 fの考察 平衡分布f0からの 展開を使って求めた、 f-f0から考察。
5 熱流の計算結果 • 熱流の収束値は,-6.08×105W/m2 フーリエの法則から予測される値は,-6.34×105W/m2 ほぼ,一致 • 定常に達するまでの時間は不一致 収束に達するまでの時間:10-12sec 103倍異なる 熱伝導方程式から見積もった代表時間:10-9sec 原因:電流ゼロの付帯条件が,|Jz|<10-1A/m2と条件が緩めであったためと考察される。
5 ゼーベック係数の計算結果と測定値の比較 • 求めた電界から熱電能を換算すると,-1.2μV/K • 金の熱電能のデータ(1)は1.94μV/K • 他の金属の結果: (1)R.D.Barnard,Thermoelectricity in Metal and Alloys Pt以外は,符号さえ一致しなかった 原因:計算が電子の拡散輸送のみを考慮しているから 一般に,ゼーベック係数は,電子拡散のみならず,フォノンドラッグなど,いくつかの要素から成っている. 本計算プログラムは,電子拡散のみを考慮しているので,ゼーベック係数を一致させるのは難しい.
5 ゼーベック係数を発生する機構 現状の計算では、 この効果のみ考慮。 Ex(x) V(x) T(x) x
6 まとめ(熱流計算) 金属平板に温度差を与えて,熱流,ゼーベック係数を計算をした。その結果、 ○熱伝導下での確からしい分布関数形状を得た。 ○熱流の値は,熱伝導率から予測される値とほぼ一致した. ○収束に達するまでの時間は,10-12secで,熱伝導方程式から予測される値10-9secと103倍異なった。電流ゼロの付帯条件の適用が、不十分であったと考察される。 ○ゼーベック係数は,白金以外の金属は,符号さえ合わなかった。本計算が電子拡散の効果のみ、考慮できないため、このような結果となった。 フォノンドラックの組み込み・・・九工大 宮崎先生のフォノンBTE
コンテンツ 1 はじめに バックグランド 2 大きな目標、小さな目標、、、着想の経緯 3 ボルツマン輸送方程式(BTE)の定式化 7 電流の計算 8 計算結果 9 まとめ 4 熱流の計算 5 計算結果 6 まとめ 電流の計算
7 計算に用いる基礎式 BTEとポアソン方程式を連立して計算 BTE ポアソン方程式 f ρ 電荷密度 ポアソン BTE 電界 E V
7 電流の計算 金属内自由電子に対するBTE ポアソン方程式 BTEとポアソン方程式を連立して計算 • 電流密度を求める計算式 • 与えた電位差と流れた電流から電気伝導率を計算 • 実測データと比較 分布関数から電流密度を計算
7計算条件 Lz=1μm V=6.0×10-12V 計算対象はAg,Au,Cu,Pt これらの金属の緩和時間と、 フェルミエネルギーを代入する。 =3.0×10-12V 1μm 初期条件 =-3.0×10-12V 境界条件 ? 境界条件は,考えうる4種の条件によってそれぞれ計算を行い,比較検討した
7 境界条件A,B V/2 境界条件 • 上下境界ともにF.D.平衡分布関数 A -V/2 0 境界条件 • F.D.平衡分布関数に電位の影響を入れたもの • 境界の電位は上面:0,下面:-V(電位差は他条件と同じ) B -V
V/2 -V/2 7 境界条件C,D V/2 境界条件 • 定常状態における分布関数の予測値 • 式中の電界は電位差と板厚から求める C -V/2 境界条件 • 境界の分布関数を固定せず,時間発展させる • 境界では移流項を除いたBTEを解く • (境界より外側は任意の時間・場所で一様と仮定) D
7 計算手法 • 電荷が境界付近の極めて狭い範囲に集中する。 • 不等間隔メッシュを用いて境界付近のメッシュを細かくした。
8 予想される解 電荷分布 ΔV/2 z ΔV/2 -ΔV/2 -ΔV/2 ΔV/2 電位分布 電子の 流れ 電流 -ΔV/2
8 電荷密度分布 ■境界条件A,すなわち単なる平衡分布を与えた場合には,大きな過不足. ・下面では電子の不足, ・上面では電子の過剰, を生じ,電荷分布が逆になる. ■境界条件B,すなわち電位を境界の分布関数に反映させた場合にも, エネルギー0近傍の電子の移動が遅く,この場合も,大きな過不足を生じる. ■境界条件C,すなわち電位差に相当する電界による分布関数の変異を初めから設定した場合には,確からしい分布となった. 電荷の正負が合致.小さな電荷. ■境界条件D.境界の分布関数を,時間発展させた場合には,大きさは確からしいが,符号は逆となった. 原因は,不明.
8 電位分布 ■電荷分布を反映した,電位分布となった. ■境界面近傍の電荷密度が小さかった,境界条件A,C,Dの場合には,確からしい電位分布となった. ■境界条件B,すなわち,境界の分布関数に電位を与えた条件の場合には,境界面近傍の電荷が異常に大きかった.このことを反映して,電位分布も異常な形となった.
8 電流の時系列変化 • 境界条件B以外は,正しい,値となった.電気伝導度からの予想と5%のズレ. • 収束までの時間は10-13secのオーダー.緩和時間からの見積もりと,同等. • 異なる温度,異なる平板厚さに対しても,確からしい値を得た.
(a) (b) 8 熱流と電流計算における分布関数の違い 波数の大きさ(エネルギー) によって、 ひずむ方向が異なる。 電流=0を満足する。 温度勾配 条件下 T(z) Q 電位勾配 条件下 電界と逆方向に、 どの波数においても、 一様に歪む。 電荷が電子であることに、 注意 V(z) I
8 ヴィーデマン―フランツ則 • ローレンツ数 T=300Kとして,熱流と電流の計算結果からローレンツ数を計算 ○ 3%以内で、一致 (3)Ashcroft,N.W.,and Mermin,N.D.,Solid State Physics
9 まとめ(電流計算) 金属の上下面間に電位差を与えた系により、BTEを直接差分化したシミュレーションを、複数の境界条件とともに、検証した。その結果、 □境界条件として、上下面間の電位差に相当する電界により変位する分布関数を、 はじめから与える場合に限って、物理的に確からしい解を得ることができた。すなわち、 ・電位分布と整合するように、上下面にそれぞれ、正、負の微小な電荷が生じた。 ・得られた電流は、実測値(電気伝導率と、オームの法則から得られる値)と 2%以内で一致した。 ・分布関数形自体も、全エネルギー領域に渡って、電界方向にシフトした形となり、 電位差(電場)条件下の特徴が正しく現れた。 □先の、熱流の計算と、今回の電流の計算をあわせて、得られた解は、 ウィーダマンフィランツの法則と、3%以内で、整合した。