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会計学総論B. 第11回、第12回 戦略的意思決定. 戦略的意思決定とは. Strategic decision 企業環境にかかわらせた経営の基本構造の変革を伴う随時的な意思決定 多角化戦略、拡張戦略,M&A、財務戦略、国際戦略など. 戦略的意思決定の必要性. 企業の生産(ないしサービス)能力の変革を伴う 諸資源の投資が必要で、意思決定の効果が長期で、変更が困難 投資から得られる利益が実現するまでに長期を要するのが普通 資本コストが考慮されなければならない. 戦略的意思決定における基礎概念. キャッシュ・フロー(現金流出入額) 原投資額 年々の増分利益
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会計学総論B 第11回、第12回 戦略的意思決定
戦略的意思決定とは • Strategic decision • 企業環境にかかわらせた経営の基本構造の変革を伴う随時的な意思決定 • 多角化戦略、拡張戦略,M&A、財務戦略、国際戦略など 会計学総論B
戦略的意思決定の必要性 • 企業の生産(ないしサービス)能力の変革を伴う • 諸資源の投資が必要で、意思決定の効果が長期で、変更が困難 • 投資から得られる利益が実現するまでに長期を要するのが普通 • 資本コストが考慮されなければならない 会計学総論B
戦略的意思決定における基礎概念 • キャッシュ・フロー(現金流出入額) • 原投資額 • 年々の増分利益 • 処分時の正味増分キャッシュ・フロー • 経済命数と減価償却費 • 現在価値概念 • 資本コスト 会計学総論B
キャッシュ・フロー • 未来増分原価、未来増分収益 • 原投資額 • キャッシュ・アウトフロー 通常初年度一括投資 • 年々の増分利益 • キャッシュ・インフロー • キャッシュ・インフロー=税引後利益+減価償却費 • 処分時の正味増分キャッシュ・フロー • キャッシュ・インフロー 残存資産の処分から 会計学総論B
経済命数と減価償却費 • キャッシュ・フローには、減価償却費は含めない • 税金の計算には、減価償却費を含める • 耐用年数は法定耐用年数ではなく、経済命数を用いる • 経済命数は、投資案がキャッシュ・フローを生み出す期間 会計学総論B
現在価値概念 • 将来の100万円は現在の100万円に比べて、利子分だけ少なくなる 利子が年1%だとすると 現在の100万円は、1年後101万円になる 1年後の100万円は、現在99万円である 100万円×(1+0.01)=101万円 逆に 100万円÷(1+0.01)≒99万円 会計学総論B
将来の貨幣価値 現在価値= (1+利子率) 年数 現在価値の求め方 10,000円の現在価値(利子率1%) 0年 1年 2年 3年 4年 5年 10,000 9,901 9,803 9,706 9,610 9,515 10,000円の現在価値(利子率10%) 0年 1年 2年 3年 4年 5年 10,000 9,091 8,264 7,513 6,830 6,209 会計学総論B
1 (1+r) n 複利現価係数表 会計学総論B
n -n (1+r) -1 r(1+r) 1-(1+r) r n 年金現価係数表 会計学総論B
資本コスト • cost of capital,capitalcost • 資本の利用から生じる価値犠牲のこと • 現在価値に割り引くための割引率 • 投資案の採否を決定するための切捨率 • 銀行からの借入 → 利息 • 社債の発行 → 利息 • 新株の発行 → 配当金 • 利益の留保 → 他に投資した場合の利益 会計学総論B
平均資本コストの求め方 • 加重平均コスト • 調達源泉ごとの資本コストを、その構成比率によってウエイトづけして平均を求める 会計学総論B
金 額 70億円 50億円 60億円 20億円 200億円 資本コストの計算例 借入金 70億円(6%) 資本金 60億円(10%) 社債 50億円(8%) 内部留保 20億円(12%) 資本構成 35% 25% 30% 10% 100% × × × × = = = = 平均資本コスト 2.1% 2.0% 3.0% 1.2% 8.3% 資本源泉 借 入 金 社 債 資 本 金 内部留保 合 計 コスト率 6% 8% 10% 12% 会計学総論B
設備投資意思決定 • 設備資産に関する資本支出の計画 • 資本予算として実施される 会計学総論B
設備投資意思決定の特徴 • 経済性計算は、投資プロジェクトを会計実体として実施する • 発生主義会計の収益・費用ではなく、未来の予想キャッシュ・フローで評価する • 計算期間は、投資の開始からその効果がなくなるまでの間 • 投資金額が比較的大きく、投資を行う前に十分な検討が必要 会計学総論B
設備投資の経済性計算 • 設備投資意思決定において、投資案の優劣を決めるための方法 • 原価比較法 • 投資利益率法 • 回収期間法 • 現在価値法 • 内部利益率法 会計学総論B
原価比較法 • 2つ以上の投資案があるとき、その原価の低い方を優位な投資案として採用する方法 • 年額原価法 年額原価=資本回収費+操業費 • 資本回収費 • 利子率を考慮しないで、減価償却費のみで計算する方法 • 投下資本に資本回収係数(年金現価係数の逆数)を乗じた値として求める方法 • 操業費 労務費、動力費、維持費など機械・設備を運転するのに必要な原価 会計学総論B
例題1 • 現状維持 操業費=\10,000,000 • 新機械導入 資本回収費+操業費 =\10,000,000÷3.7908+\8,000,000 =\10,637,966 • 現状維持が有利である 会計学総論B
年々の税引後利益 総投資利益率= ×100 総投資額 年々の税引後利益 平均投資利益率= ×100 平均投資額 投資利益率法(return on investment method) • 投資案の年々の平均利益の原投資額に対する割合を求め、その大小によって投資案を評価する方法 ①総投資額を用いる方法(総投資利益率法) ②平均投資額を用いる方法(平均投資利益率法) 会計学総論B
投資利益率法の長所・短所 • 長所 ①収益性を考慮していること ②会計上の利益と整合性があること ③計算が簡単であること • 短所 ①時間的要素を考慮していないこと ②会計(発生主義会計)上の利益を用いているので、減価償却費などの埋没原価を計算に含めていること ③支出額の決定(資本的支出か収益的支出か)に恣意性が入ること 会計学総論B
例題2 • A機械減価償却費:(800万円-0円)÷5年=160万円税引前利益:500万円-160万円=340万円税引後利益:340万円×(1-0.5)=170万円平均投資利益率:170万円÷(800万円÷2)=42.5% • B機械減価償却費:(600万円-0円)÷5年=120万円税引前利益:400万円-120万円=280万円税引後利益:280万円×(1-0.5)=140万円平均投資利益率:140万円÷(600万円÷2)≒46.7% • B機械が有利である 会計学総論B
原投資額 回収期間= 年々のキャッシュ・インフロー 回収期間法(payback method) • 原投資額を回収するのに必要な期間を計算し、それが短いものを有利と判断する方法 • 原投資額の回収にはキャッシュ・フローが用いられる • 収益性よりも財務流動性あるいは安全性に重点をおいた方法 会計学総論B
回収期間法の長所・短所 • 長所 ①キャッシュ・フローによって計算を行うので、計算の恣意性が除かれる ②安全性を重視している ③計算が簡単でわかりやすい • 短所 ①キャッシュ・フローの時間的要素を考慮していない ②投資額回収以後の収益性を無視している 会計学総論B
例題3 • A機械年々のCF:170万円+160万円=330万円回収期間:800万円÷330万円≒2.42年 • B機械年々のCF:140万円+120万円=260万円回収期間:600万円÷260万円≒2.31年 • B機械が有利である 会計学総論B
現在価値法(present value method) • キャッシュフローを現在価値に割り引いて投資案の評価を行う方法 • 資本コストによってキャッシュ・フローの現在価値を求め、インフローとアウトフローの現在価値の大きさによって、投資の採否を決定する • 正味現在価値法と現在価値指数法がある 会計学総論B
CIF1CIF2CIF3CIFn-1CIFn NPV= + + +‥‥+ + -COF 1+r(1+r)2(1+r)3(1+r)n-1 (1+r)n 正味現在価値法(net present value method) • 正味現在価値の大きさによって投資の優劣を決定する方法 • 資金効率がわからない 会計学総論B
キャッシュ・インフローの現在価値合計 キャッシュ・インフローの現在価値合計 現在価値指数= ×100 原投資額 現在価値指数法(present value index method) • キャッシュ・フローの現在価値によって投資の資金効率を計算する方法 • 現在価値指数が大きいものほど資金効率がよい 会計学総論B
現在価値法の長所・短所 • 長所 ①貨幣の時間的要素を考慮している ②内部利益率法より計算が簡単 ③相互排他的代替案の区別ができる • 短所 ①現在価値に割り引くための資本コストを決定するのに問題がある ②完全市場を前提としている 会計学総論B
330万円 330万円 330万円 A機械のNPV= + +‥‥+ -800万円 1+0.1(1+0.1)2(1+0.1)5 260万円 260万円 260万円 B機械のNPV= + +‥‥+ -600万円 1+0.1(1+0.1)2(1+0.1)5 例題4 • A機械が有利である =330万円×3.7908-800万円 ≒451万円 =260万円×3.7908-600万円 ≒386万円 会計学総論B
内部利益率(internal rate of return method) • キャッシュフローを現在価値を考慮して、投資案の内部利益率を算出し、この利益率によって投資案の評価を行う方法 • 内部利益率とは、投資案のキャッシュ・インフローの現在価値とキャッシュ・アウトフローの現在価値を等しくする割引率のこと • 内部利益率の大小によって順位づけするが、内部利益率が資本コスト(切捨率)を上回らないときは投資案は採用されない 会計学総論B
CIF1CIF2CIF3CIFn-1CIFn + + +‥‥+ + =COF 1+i(1+i)2(1+i)3(1+i)n-1 (1+i)n 内部利益率 • 以下の算式を成立させるiの値 会計学総論B
内部利益率法の長所・短所 • 長所 ①貨幣の時間的要素を考慮している • 短所 ①再投資に関して一定の仮定をおいているので、相互排他的投資の正しい順位づけが出来ない ②2つ以上の利益率が求められることがある ③マイナスの値になることがある ④投資規模を考慮に入れられない 会計学総論B
330万円 330万円 330万円 + +‥‥+ =800万円 1+i(1+i)2(1+i)5 260万円 260万円 260万円 + +‥‥+ =600万円 1+i(1+i)2(1+i)5 例題5 • 両者資本コスト以上であるが、A機械が有利である A機械 上の式が成り立つiを求めると、約15%になる または、800万円÷330万円≒2.4242を求め、 年金現価表から5年で2.4242に近い利率を求める B機械 上の式が成り立つiを求めると、約11%になる または、600万円÷260万円≒2.3077を求め、 年金現価表から5年で2.3077に近い利率を求める 会計学総論B
設備投資の経済性計算の実際 • 日本 経済性計算 22% 総合的評価 71% • 日本における経済性計算の方法 回収期間法 52.2% 投資利益率法 36.8% 内部利益率法 5.5% 現在価値法 4.9% • アメリカにおける経済性計算の方法 内部利益率法 49% 現在価値法 19% 回収期間法 8% 投資利益率法 12% • 日本では、安全性を重視し、経済命数が短い 会計学総論B
リスクの取扱い • キャッシュフロー、経済命数などの予測に不確実な側面 • 確率を利用して、期待値によってリスクを評価 • PPMなどにより、投資案を組み合わせる • 回収期間の短い投資案を採用 会計学総論B
リースの問題 • 設備資産を一定期間借り受けて使用する賃貸契約 • 短所 ①リース料が高い • 短所 ①多額の初期投資を必要としない ②B/S上固定資産として計上されない ③契約期間が税法上の耐用年数より短い ④損金算入できる 会計学総論B
期中評価・事後評価 • 設備投資意思決定は投資金額が巨額で、途中での変更が困難 ⇒ 事前管理が中心 • 期中管理・事後管理も重要 会計学総論B