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高分子レオロジーの基礎と その制御. 山形大学 工学部 機能高分子工学科 滝本淳一. Outline. レオロジーの基礎 いくつかの数学的復習 一本鎖の粗視化と Rouse モデル 希薄溶液 : Zimm モデル ( もどき ) 濃厚溶液・溶融体 絡み合いと管モデル PASTA. レオロジーの基礎. ひずみ (strain). ずり変形 (shear deformation). x. h. h. 高さ h を一定にして変形する。体積も変化しない。. ずりひずみ. shear strain. ひずみには単位は無い(無次元量). x 1.
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高分子レオロジーの基礎とその制御 山形大学 工学部 機能高分子工学科 滝本淳一
Outline • レオロジーの基礎 • いくつかの数学的復習 • 一本鎖の粗視化とRouseモデル • 希薄溶液: Zimmモデル(もどき) • 濃厚溶液・溶融体 • 絡み合いと管モデル • PASTA
ずり変形 (shear deformation) x h h 高さ hを一定にして変形する。体積も変化しない。 ずりひずみ shear strain ひずみには単位は無い(無次元量)
x1 h1 なぜ x/hを使うと便利なのか 形・大きさの異なる試料でも、 x/hが同じなら同じ変形 x1 なら h1 同じ変形 x2 h2
一軸伸長変形 (uniaxial elongation) コーシーひずみ Cauchy strain L0 DL これも無次元量 伸び L 変形前の長さ 多くの場合、伸長した方向と垂直には縮む(細くなる)。 体積は増加する。
コーシーひずみの利点と… 形・大きさの異なる試料でも、 DL/Lが同じなら同じ変形 L0 L0’ DL DL’ L L’
L0 DL L 2L0 2DL 2L L0 DL L
同じ変形を1回で行うと DL1+2=3L0 L0 3L0 = 1 DL1=L0 = 3 L0 L0 2L0 = 1 2L0 DL2=2L0 コーシーひずみの問題点 2倍の長さに伸ばす変形を2回繰り返す L0 1回目 2L0 2回目 4L0
変形後の長さ 変形前の長さ ヘンキーひずみ ヘンキーひずみ L0 Hencky strain L ln は自然対数 logeを表す natural logarithm 公式
同じ変形を1回で行うと 2L0 = ln 2 4L0 L0 = ln 4 L0 4L0 = ln 2 2L0 ヘンキーひずみの利点 2倍の長さに伸ばす変形を2回繰り返す L0 1回目 = 2 ln 2 2L0 2回目 4L0
2回の変形を続けて行ったときのひずみ = 1回目のひずみ + 2回目のひずみ 同じ変形を1回で行うと L0 1回目 L1 2回目 L2 ヘンキーひずみの加法性
よって 公式 により よって コーシーひずみとヘンキーひずみの関係 コーシーひずみ ヘンキーひずみ
微小ひずみの場合 指数関数の Taylor 展開: なら で近似出来る。 よって なら 微小ひずみなら、Cauchy と Hencky を区別する必要は無い。
ポアッソン比 (Poisson’s ratio) (ほとんどすべての物質は) z-方向に引き伸ばすと、x,y-方向には縮む D0 L0 垂直方向のひずみ D L ほとんど全ての物質で ポアッソン比
ポアッソン比と体積変化 伸長変形により体積が変化しない場合 よって 全ての物質で 体積変化しない場合 ゴムのポアッソン比は 0.5 に近い。
補足 一軸伸長変形で、変形後の長さ Lを、変形前の長さ L0とひずみで表すと 伸長前後の長さの比は伸長比と呼ばれ、 lで表されることが多い 対数関数の公式
ひずみ速度strain rate ひずみ速度 = ひずみの時間微分 単位は [1/s]
ずり速度 ずり速度 単位は [1/s] shear rate x 上面の移動距離 x h 上面の移動速度 だったから とも表せる
一定のひずみ速度で変形を続けると t = 5 秒後のひずみは h 例 高さ 1cm の試料の上面を、下面に平行に 1mm/s で移動する。 h = 1 [cm]
高さ yでの流速は yに比例: (aは比例係数) 上面での流速は よって だったから ひずみ速度 = 速度勾配 ひずみ速度と速度勾配 試料内部の流れ y h x 0 下面は固定
だったから が時間によらない定数の場合(一定ひずみ速度) 指数関数的に長くなる 例えば、1秒後に元の2倍の長さになるなら、2秒後は4倍、 3秒後は8倍、4秒後は18倍、…. となる。 伸長速度 伸長速度
ずり応力 面積 S 力 F ずり応力 shear stress 応力 = 単位面積あたりに働く力 応力の単位: パスカル [Pa] = [N/m2]
横に2個並べる 縦に2個積む 面積:合計 2S F 力:合計 2F 2F F 面を通して働く力 面積 S 力 F S F 応力
伸長変形により断面積 Sは変化する。 正式な伸長応力は伸長後の断面積Sを用いて計算する。 「真応力」 “true stress” などとも呼ばれる。 変形前の断面積S0を用いて計算したものは、 「見かけの応力」「公称応力」“engineering stress” などと呼ばれる。 伸長応力 面積 S 伸長応力 F Hencky ひずみを「真ひずみ」 “true strain” Cauchy ひずみを「公称ひずみ」 “engineering strain” などと呼ぶこともある。
y軸に垂直な面の単位面積あたり に働く力の x成分 Sy つまりずり応力のこと などもずり応力 Fx y の関係がある。 x 単純なずり変形下では ずり応力としては だけが 0 でない などの法線応力は 0 ではない。 応力テンソル 応力は「テンソル」と呼ばれる量のひとつ。
も同様 試料には大気圧 pが全ての方向から加わっている: F F さらに x方向に力 Fを加えると y となる。 x 伸長応力と呼んでいるのは 法線応力と圧力 x軸に垂直な面の単位面積に x方向に働く力 これらは法線応力と呼ばれる
n = ポアッソン比 特に n = 1/2 (体積変化しない場合)なら 理想弾性体(フック弾性体) 理想弾性体では、ひずみが時間変化していても、 時刻 tでの応力 s(t) は同じ時刻におけるひずみ g(t) だけに比例し、ひずみ速度や過去のひずみには依存しない。 G: ずり弾性率 ずり shear modulus E: ヤング率 伸長 Young’s modulus 弾性率 G, Eの単位は応力と同じで [Pa]
液体は通常体積変化しないので 理想粘性体(ニュートン流体) ニュートン流体では、ひずみ速度が時間変化していても、 或る時刻 tでの応力 s(t) は同じ時刻でのひずみ速度 だけに比例し、ひずみや過去のひずみ速度には依存しない。 h: ずり粘度 shear viscosity hE: 伸長粘度 粘度(viscosity)の単位は [Pa s]
水の粘度 ~ 10-3 Pa s = 1 mPa s 例 典型的な固体のヤング率(およその値) 鉄 ~200 GPa ガラス ~80 GPa ポリスチレン ~3 GPa 輪ゴム ~1 MPa
時刻 t=0 に瞬間変形によりひずみ g0を与え、そのひずみを維持する(一定の変形に保つ)。 変形直後は強い復元力が発生するが、時間とともに応力は減少する。 g0 が十分小さければ、 入力 g0 を2倍にすると、 出力 s(t) も2倍になる。 応力緩和 g(t) g0 t 0 s(t) t 0
緩和弾性率 g0 が十分小さければ、 入力 g0 を2倍にすると、出力 s(t) も2倍になる。 はg0 に依存しない時間の関数になる。 緩和弾性率 relaxation modulus
「固体」と「液体」 G(t) 粘弾性液体 t 0 G(t) 粘弾性固体 t 0
T = 周期 g0 = ひずみ振幅 理想固体 粘弾性体 理想粘性体 動的粘弾性測定 g(t) 周期的に振動するひずみを与え、応力を測定: g0 t 0 T s(t) t 0
s0 応力 2p wt [radian] d 位相差 d 入力ひずみ g(t) or s(t) 0 T t [s] 固体: d = 0 液体: d = p/2 粘弾性体:0 < d < p/2
貯蔵弾性率 storage modulus “固体” 成分 損失弾性率 loss modulus “液体” 成分 ともに単位は [Pa] は g0に依存しない(wには依存する)。 貯蔵弾性率・損失弾性率 g0が十分小さい場合、 入力の振幅 g0を2倍にすると、出力の振幅 s0も2倍になる。
これを と比較 理想弾性体 理想粘性体 損失正接 (loss tangent) 固体的 液体的 理想固体・理想粘性体では? 理想弾性体 理想粘性体
周波数依存性 一つの角周波数 wに対し G’(w), G”(w) が求める。 通常、これを w を変えながら繰り返す。 測定例(模式図) log G(w) tan d = 1 log w tan d > 1 tan d < 1 “液体的” “固体的”
虚部 i sin q q cos q -1 0 1 この定義から 実部 -i が成り立つことが簡単に示せる。 Euler公式 eiq
複素数へ拡張 ここで よって 複素弾性率 複素弾性率 実数
Maxwellモデル 理想弾性体 “バネ” G G h 理想粘性体 “ダッシュポット” h
両辺に Gを掛けて、左辺と右辺を入れ替えると 緩和時間