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X 線観測による銀河団の 質量分布の研究. X-ray Study of Mass Distribution in Clusters of Galaxies. 東京都立大学大学院 理学研究科 物理学専攻 宇宙物理実験研究室. 早川 彰. 銀河:高温ガス =1 : 5. 質量比. 銀河団の構成. 銀河:高温ガス: ダークマター. :. :. 1. 5. 30. 銀河団の大部分はダークマター. 銀河団とは?. Abell 1060 銀河団:距離~ 46Mpc. 可視光 :. (~ 1.5 億光年). 数十~数千個 の銀河の集まり. X 線 :.
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X線観測による銀河団の質量分布の研究 X-ray Study of Mass Distribution in Clusters of Galaxies 東京都立大学大学院 理学研究科 物理学専攻 宇宙物理実験研究室 早川 彰
銀河:高温ガス=1:5 質量比 銀河団の構成 銀河:高温ガス:ダークマター : : 1 5 30 銀河団の大部分はダークマター 銀河団とは? Abell 1060 銀河団:距離~46Mpc 可視光 : (~1.5億光年) 数十~数千個の銀河の集まり X線 : 2千万~1億度の高温ガスで 満たされている。 未知のダークマター 400kpc (~130万光年)
ダークマター • 未知の物質 ⇒ 重力相互作用しかしない • 銀河団質量の大部分はダークマター ⇒ (力学)進化を支配 • 銀河団の進化はN体数値シミュレーションを用いて研究 z=0.58 z=0 6.67Mpc 6.67Mpc Fukushige, Kawai, Makino (2004)
cD銀河 銀河団の中心にある巨大な楕円銀河。 • 可視光:1/4乗則から外れた輝度分布 • 我々の銀河よりも~10倍明るい光度 • X線 :銀河団ガスと連続的に分布 cD銀河 通常 楕円銀河 cD銀河 X線輝度 50万光年 0 80 160 半径[kpc]1/4 半径[kpc]
銀河団の質量分布に着目 Centaurus銀河団 Klemola44銀河団 cD銀河 200kpc (64万光年) 500kpc (160万光年) 研究目的 銀河団には中心にcD銀河が存在する銀河団(cD銀河団)と 存在ない銀河団(non-cD銀河団)がある。 • cD銀河はどのようにして作られるのか? • 銀河団の性質に、どのような違いがあるか?
講演の内容 • XMM-Newton衛星について • サンプル銀河団の選定 • データ処理 • 銀河団の重力質量分布 • 再帰法 • SSM-Modelを用いたモデルフィット • 議論 • まとめ (銀河団の全質量=重力質量)
現在運用中 有効面積[cm2] X線による銀河団ガス分布を 用いる方法が最適。 空間分解能[秒角] XMM-Newton衛星が最適。 観測条件 • なぜXMM-Newtonか? • なぜX線か? 重力質量の空間分布が知りたい! cD銀河周辺を詳細に観測したい! 大有効面積と高分解能の両方が必要
3台のCCD検出器 3台のX線望遠鏡 XMM-Newton衛星 広範囲のイメージング&分光が高精度で可能!!
cD & non-cD銀河団の両方のサンプルが必要。 • 距離が近い銀河団。 • 球対称性が良くmergingの痕跡がない。 条件: non-cD銀河団は少ない ⇒初めに条件に合うnon-cD銀河団を選ぶ cD & non-cD銀河団の質量分布(特に中心部分)を詳細に調べる。 • 本研究の目標 • 具体的な手順 (XMM-Newton衛星の公開データを使う) • non-cD銀河団を選ぶ。 • 近傍の銀河団(赤方偏移<0.2)を選ぶ。 • Mergingの痕跡(温度構造、異形形状)があるものを除く。 • 球対称性の良い天体を選ぶ。 • 選んだnon-cD銀河団と条件(温度、距離)が近いcD銀河団を選ぶ。
球対称性の評価 〇 × × 0度 ±factor 2 Ratio 中心は輝度ピーク S/N比が2倍となる半径
遠方銀河団 選択した銀河団 cD 9 + non-cD 11 : 全20天体 cD銀河団 non-cD銀河団
宇宙背景放射(CXB) • 検出器起源 バックグランド除去 バックグランド: • フレアイベント • 宇宙背景放射(CXB) • 検出器起源 • フレアイベント • ブランクスカイデータ E>10keVの時間変動を用い除去 平均カウントレート(E>10keV) MOS:0.3 cnt/sec pn :0.8 cnt/sec 天体のない空を観測したデータ を除去
S/N比~1 ガス成分の抜き出し • 点源の除去 • S/N比の悪い領域の除去 銀河団中のガスのみに興味 星や銀河を取り除く S/N比~2(Routと定義)となる領域のみ使う。 (イメージ) 半径分布 中心は輝度ピーク 赤 : バックグランド 黒 : 観測データ 緑 : 引き算した結果
イメージング解析 ⇒ 銀河団ガスの空間分布 • スペクトル解析 ⇒ 温度・重元素量 光学的に薄いプラズマからの熱的放射モデルで再現可能 Abell 3827 (cD銀河団) Abell 1060 (non-cD銀河団) MOS1+2 MOS1+2 pn pn 温度 :6.90±0.16 keV 元素比 :0.30±0.04 solar c2/d.o.f.:1.341 温度 :3.25±0.03 keV 元素比 :0.41±0.01 solar c2/d.o.f.:1.436 (E:0.8-8.0keV) 解析 r<Routの領域を使い解析を行う
スペクトル解析 温度・重元素量はスペクトル解析から求める。 • 熱制動放射 ⇒ 温度 • 輝線(強度) ⇒ 重元素量(太陽組成を仮定) (anders & Grevesse 1989) 温度依存性 アバンダンス依存性 S-K Fe-K Ca-K Fe-L Si-K Ar-K
Rout以内の温度・重元素量 cD銀河団 non-cD銀河団 cD銀河団 non-cD銀河団 温度 [keV] 重元素量 [solar] • cD or non-cD銀河団の違いはない。 • 温度は重力質量を求める際に用いる。
のみの関数 { ガスの状態方程式 : 重力ポテンシャル : ガス分布⇒重力質量分布 P : 圧力 f : ポテンシャル m:平均分子量 mH:水素分子の質量 k :ボルツマン定数 n :数密度 仮定: • 静水圧平衡 : • 球対称 : ⇒密度&温度分布がわかれば重力質量分布を求めることが可能。
b-モデル 銀河団の密度分布を表すモデルとして一般的なモデル 仮定: • 静水圧平衡、球対称 • 等温 • ガスも星(銀河)も同じポテンシャル構造に従う • 密度分布(3次元分布) : 視線方向に積分 • 表面輝度分布(2次元分布) : (rcとbの関数) 近年の高精度観測 ⇒単一b-モデルでは輝度分布を再現が困難!
問題 輝度分布 視線方向に投影 表面輝度分布⇒重力質量分布 • 観測された輝度分布 視線方向に投影された2次元分布 銀河団 • 球対称を仮定 ↑球対称な銀河団を選出 • 密度分布を仮定(b-モデル) 視線方向 ↑ 単一b-モデルでは再現できない ⇒再帰法を用いる 輝度分布は密度、温度、重元素に依存 • 温度・重元素一定を仮定 • 3次元密度分布 • 静水圧平衡を仮定 (温度、密度) • 重力質量分布
0.8-8.0keV 0.8-3.0keVを使用 温度・重元素変化の影響 • 温度2keV以上で温度依存性ない! • 重元素変化に対しても~5%。 ⇒0.8-3.0keVの帯域を使えば温度・重元素変化を無視できる。
輝度分布は密度分布にのみに依存。 (3)密度分布 Lx~密度2 再帰法 • 単一b-モデルでは輝度分布を再現できない!! ⇒ b-モデルより中心が鋭い(中心に輝度超過)。 ⇒ 中心を除けばb-モデルで表せる。 • 球対称、かつ、温度・アバンダンス分布の影響はない。 (1)モデルフィット 輝度分布 (2次元) b-model (R=5’-13’) (2)輝度分布 密度分布 (3次元) (4)輝度分布
静水圧平衡を仮定: 重力質量分布 温度変化を無視 質量密度分布:rtot(r) 積分型重力質量分布:M(<r) 重力質量分布 重力質量分布 ガス分布 ガス分布 b-モデルのみ
(イメージ) 中心は輝度ピーク Rout 2割程度 温度分布 • 輝度ピークを中心 • Rout以内 • 円環の領域に分割 (円環のカウント一定) • 円環ごとにスペクトル解析 ⇒温度・(重元素)の半径分布
静水圧平衡を仮定: 質量密度分布:rtot(r) 積分型重力質量分布:M(<r) 温度分布を考慮 重力質量分布 重力質量分布 ガス分布 ガス分布 b-モデルのみ 重力質量分布 密度変化に比べて微小 ⇒温度分布は考慮しない
再帰法 SSM-モデルフィット 導出の流れ 輝度分布(2次元) 密度分布(3次元) 重力質量分布 重力質量分布 密度分布(3次元) 輝度分布(2次元) 再帰法 静水圧平衡 静水圧平衡 特徴 モデルによらない。 ⇒質量分布同士を比較 NFWが予測する 質量分布と直接比較。 • N体数値シミュレーションから予測されるダークマター分布 (NFWモデル) DM • NFW的なダークマター分布を仮定したときにえられる輝度分布 SSM-モデル (Suto, Sasaki & Makino 1998) 再帰法のまとめ・SSM-モデルの導入
Fukushige, Kawai, Makino (2004) • Navarro, Frenk, White (1996) (NFWモデル) DM • Moore et al. (1998) DM • Fukushige, Kawai, Makino (2004) DM ( ) ⇒ • 中心のベキは-1.3~1.4ぐらい • r<10kpcでベキが緩やかになる NFWモデル 数値計算からもとまるダークマター分布
DM 一般化したNFWモデル ( ) まずはa =1.0 or 1.5に 固定してフィットする SSM-モデル ⇒NFWモデルで与えられるダークマター分布を仮定したとに 得られる輝度分布 • SSM-model (Suto, Sasaki & Makino 1998) • a = 1.0 ⇒ NFWモデル • a = 1.5 ⇒ Moore et alのモデル
c2/d.o.f. : 2.147→1.150 c2/d.o.f. : 3.909→1.679 • c2/d.o.f. が明らかに改善。 • 特に中心部分で違いが顕著に現れる。 フィット結果 AWM 4 (cD) Abell 1060 (non-cD) z=0.0318 z=0.0114 a = 1.5 a = 1.5 a = 1.0 a = 1.0
a=1.5でcD or non-cDによらずc2/d.o.f. が明らかに改善! c2/d.o.f.の比較 20天体すべてをフィットしc2/d.o.f. を比較する。 a=1.0 bーモデル a=1.5 a=1.5
AWM 4 Abell 1060 比較 z=0.0318 z=0.0114 再帰法 SSM(α=1.0) SSM(α=1.5) SSM(α=1.5) 近傍銀河団 RXJ2129+0005 Abell 1689 中心:良く合う 外側:合わない z=0.2350 z=0.1832 遠方銀河団 中心:良く合う 外側:良く合う
aは~1.5付近にばらつく(エラー大は無視)。aは~1.5付近にばらつく(エラー大は無視)。 • cD銀河団の方がが大きめ(エラー大も考慮) 。 aの見積もり SSM-model : aもフリーパラメータとする
表面輝度分布 ⇒ 重力質量分布 ここまでのまとめ { • 再帰法 • SSM-モデル ⇒結果はよく一致 • SSM-モデル • cD or non-cDの違いによらずa~1.5で良く合う。 ⇒ 重力質量分布はユニバーサル (cD or non-cDによらない) • エラーの決まらないものも考慮するとanon-cD<acD ⇒ 何らかの違いはありそう 議論では、、 再帰法で求めた質量分布をr180で規格化し直接比較
銀河団 銀河団がビリアル平衡に達した時の密度: 臨界密度の180倍の密度となる半径 ⇒ r180 r180=ビリアル半径 銀河団は重力相互作用のみによって進化する⇒自己相似形 r180で規格化することで直接比較が可能 時間 r180について t ハッブル定数: t 臨界密度: 重力的に収縮 銀河団へ進化
重元素分布 Markevitch et al. (1998) • r>0.05r180 : 一様な温度勾配 • r>0.1r180 : 一様な分布 • r<0.1r180 : 重元素集中(cDのみ) • r<0.05r180 : cD銀河団のみ中心に 向かって温度低下 ⇒De Grandi&Molendi (2004)と 一致 ⇒Markevitch et al. (1998)と一致 温度・重元素分布 • 温度分布
b : cD ~0.7に集中、non-cD 0.5-0.9まで広く分布 • rc : cD (0.11r180)< non-cD (0.15r180) 外側の領域 • b-モデルのパラメータ(rc、b)を使って評価 ⇒non-cD銀河団よりもcD銀河団ほうが力学的に進化している
0.01r180 0.01r180 0.1r180 0.1r180 ⇒r>0.1r180では一様な分布 ⇒r<0.1r180では分散が大きくなる 質量:cD>non-cD (1.5~2倍程度) 中心領域 積分型重力質量分布:M(<r)
困難 0.01r180 0.1r180 0.01r180 0.1r180 輻射冷却の 影響がある 冷却時間(∝n-1T1/2) 中心領域 (2) cD銀河 半径 : 20~50kpc 質量 : 0.01r180(~10kpc)で重力質量の2倍弱は悪くない。 0.1r180(~100kpc)付近まで差を生じるのは困難。 ⇒質量に差が現れる領域は冷却が効いている領域と一致。
⇒cD銀河団は中心で深い重力ポテンシャル構造⇒cD銀河団は中心で深い重力ポテンシャル構造 →クーリングが強く働く? ⇒クーリングの影響によるガスの集中(重力質量分布は同じ)? cD銀河団 vs non-cD銀河団 cD non-cD b ~0.7 0.5-0.9 外側(>0.1r180) rc 0.11r180< 0.15r180 ⇒cD銀河はより重力的に進化している (1.5-2倍) 内側(<0.1r180) McD > Mnon-cD • cD銀河ではr=0.1r180まで質量差を作れない • r=0.1r180はクーリング半径(rcool)と同程度 ⇒cD銀河団の中心領域の質量超過はクーリングが関係? • 中心のガス分布の集中の度合いはクーリング時間と相関する • (Ota & Mitsuda 2004, Akahori & Masai 2005)
8. まとめ cD銀河の有無に着目し、XMM-Newton衛星で観測された 20個の銀河団を系統的に研究。 • スペクトル解析 ⇒ 温度・重元素分布 • 表面輝度分布 ⇒ 重力質量分布 { • SSM-モデルフィット • 再帰法 • SSM-モデル • cD or non-cDの違いによらずa~1.5で良く合う。 • エラーの決まらないものも考慮すると1.3-1.4<anon-cD<acD • 再帰法 外側: cD銀河団の方が一様で中心に集中した分布を持つ ⇒重力的な進化の進んだ状態 内側: r<0.1r180でcDとnon-cDで1.5-2倍の質量差を発見。 • cD銀河ではr=0.1r180まで質量差を作れない • r=0.1r180はクーリング半径(rcool)と同程度 ⇒クーリングによるガス集中 or ダークマター分布に違い