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大阪地方裁判所第5民事部合議2 B 係. 平成19年(ワ)第4807号. 地位確認等請求事件. 原告 大槻政美. 被告 富士火災海上保険株式会社. 1. 目次. 1 問題の所在 2 被告の制度思想の不合理性 3 解雇基準の不合理性 4 増加清算金の控除制度の不合理性 5 口座振替手数料の控除制度の不合理性. 2. 1 問題の所在. 本件で問題となっている制度 解雇基準 賃金からの増加清算金の控除 賃金からの口座振替手数料の控除. 3. 1 問題の所在. 素朴な疑問・・・ 解雇基準は42倍も引き上げることができるのか?
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大阪地方裁判所第5民事部合議2B係 平成19年(ワ)第4807号 地位確認等請求事件 原告 大槻政美 被告 富士火災海上保険株式会社 1
目次 1 問題の所在 2 被告の制度思想の不合理性 3 解雇基準の不合理性 4 増加清算金の控除制度の不合理性 5 口座振替手数料の控除制度の不合理性 2
1 問題の所在 本件で問題となっている制度 • 解雇基準 • 賃金からの増加清算金の控除 • 賃金からの口座振替手数料の控除 3
1 問題の所在 素朴な疑問・・・ • 解雇基準は42倍も引き上げることができるのか? • なぜ、一度支払われたはずの賃金が「戻し入れ」(控除)しなければならないのか? • なぜ、保険者が支払うべき口座振替手数料を直販社員が負担(控除)するのか? 4
2 被告の制度思想の不合理性 • 直販社員と代理人の違いの無視 • 成績評価に保険金支払いとの連動 • 成績の右肩上がりを前提 5
2 被告の制度思想の不合理性 直販社員と代理店の違いの無視 直販社員代理店 契約関係雇用契約業務委託契約 指揮命令 あり なし 他社の保険 販売禁止 自由 労基法 適用あり なし 6
2 被告の制度思想の不合理性 保険金支払いとの連動 • 「会社に収益をもたらす為には、募集してきた保険料から、当該直販社員の募集に係る直接経費・間接経費を控除した段階で黒字であるだけでなく、当該保険に関して支払われた保険料をも考慮した段階でも、なお黒字であることが必要」 (被告第1準備書面32頁) 7
2 被告の制度思想の不合理性 保険金支払いとの連動 • 「被告における営業社員は、会社に収益をもたらすことを最大の職責とする営業専門職の社員なのであるから、・・・各人ごとの営業成績から収支を分析し、損失の発生が明らかか否かという観点から解嘱基準を設定したことには合理的根拠が存する」 (被告第1準備書面74頁) 8
2 被告の制度思想の不合理性 保険金の支払いとの連動 ↓ しかし • 保険金の支払いは直販社員に責任はない • 保険金の不払いを助長しかねない →社会的に不相当な賃金体系 9
2 被告の制度思想の不合理性 被告の主張=成績の右肩上がりを前提 成績は毎年増加していくもの(仮定) ↓ 増加しないのは、直販社員の職務怠慢 10
2 被告の制度思想の不合理性 「成績の右肩上がり」を前提にはできない • 成績は、換算係数に左右される • 成績は、景気等外部環境に左右される • 保険契約は100%更新されない • 継続年数による保険料の各種割引がある • 成績は、その他会社の政策に左右される • 直販社員の病気や不慮の事故等は想定外 11
2 被告の制度思想の不合理性 • 成績は、直販社員が責任を負えない「外部の偶然的な要因」によって、左右される 12
2 被告の制度思想の不合理性 成績=年間「換算」成績額 =保険料×換算係数 • 換算係数は商品で異なる(会社が決める) • 換算係数は変更される(会社が決める) 13
2 被告の制度思想の不合理性 景気等の外部環境の影響 • 景気等の影響 • 経営環境等の影響 ・競合他社の動き ・被告の保険商品の内容、開発時期 ・直販社員の諸手当廃止 14
2 被告の制度思想の不合理性 2500 2192億円 1914億円 2000 1633億円 1500 1000 500 0 1998年度 2002年度 2007年度 被告の正味収入保険料の推移 自動車保険 実際、被告も正味収入保険料が減少
2 被告の制度思想の不合理性 • 契約更新は100%ではない →平均92%(直近3年間) • 保険契約には無事故年数に応じた保険料の割引制度がある →100%継続しても保険料は減収する ↓ 「成績右肩上がり」の前提事実がない 16
2 被告の制度思想の不合理性 特に、自動車保険では、右肩上がりを前提にはできない • 無事故割引制度 • 年齢条件制度 ↓ 原告は自動車保険の契約比率が高かった 17
2 被告の制度思想の不合理性 40 20 0 -20 -20% -30% -40 -40% -45% -60 -50% -55% -58% -80 初年度 2年目 4年目 6年目 8年目 10年目 割増 +30% 年齢問わず新規契約 割引 無事故割引制度
2 被告の制度思想の不合理性 特に自動車保険では右肩上がりを前提にできないこと(無事故割引制度) 年間保険料 契約初年度 30%割増 13万円 無事故1年目 20%割引 8万円 無事故2年目 30%割引 7万円 無事故17年目 63%割引 3万7000円 19
2 被告の制度思想の不合理性 特に、自動車保険では右肩上がりを前提にできないこと(年齢条件制度) 年齢問わず 100 21歳以上 72.4 23歳以上 61.1 26歳以上 48.8 30歳以上 44.5 35歳以上 41.8 20
2 被告の制度思想の不合理性 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 収入保険料に占める自動車保険の比率 79% 原告 80% 77% 被告 75% 70% 61% 60% 55% 50%
2 被告の制度思想の不合理性 成績は会社の政策によって左右される →指定高ロス扱者制度 22
3 解雇基準の不合理性 • 量的な不利益変更 →入社時と比べると、実に、42倍 • 質的な不利益変更 →入社時には成績による解雇は想定外 →およそ予想できるものではない 23
3 解雇基準の不合理性 2500 2100万円 42倍 2000 1300万円 1500 1000 500 50万円 0 2001年2月まで 2001年3月末以降 2004年12月末以降
3 解雇基準の不合理性 原告の成績について • 原告の年間換算成績額の変遷 →2001年の解雇基準なら解雇されない • 原告の成績順位 →多くが退職する中での順位 25
3 解雇基準の不合理性 2326万円 1917万円 1691万円 2500万円 2000万円 1500万円 1000万円 500万円 2000年12月末 2001年12月末 2006年12月末
3 解雇基準の不合理性 1049名 300名 勤続14年以上 1200名 900名 600名 300名 2006年12月 1998年4月 直販社員の在籍者数(退職者)の推移
3 解雇基準の不合理性 1016位/ 966位/ 1336名 3124名 原告 順位ゾーン 1998年4月 2006年12月
3 解雇基準の不合理性 救済措置の問題点 • 保険金との収支残額を基準にしている →偶然の要素に依拠 →社会的に不相当 29
3 解雇基準の不合理性 まとめ • 成績は、偶然の外部的要因や、恣意的な会社の政策に左右され、直販社員の責任に全て帰することはできない • 原告の成績は、決して低いものではない(原告よりも下の成績者が退職しただけ) • 解雇基準を達成できなかったのは原告の努力不足ではない 30
4 賃金からの控除:増加手当清算金 • 賃金からの「控除」であること • 2年間賃金が確定しないこと • 「賃金の計算方法」ではないこと →賃金とは別個独立に発生している債権による相殺(控除)であること • 最高裁判例が許容する「調整的相殺」の事案ではないこと 31
4 賃金からの控除:増加手当清算金 給与規定第2条 →固定給には「本給」が含まれる 同第3条 →「本給」は決定された「固定給」 ↓ したがって 「決定」された給与からの「控除」 32
4 賃金からの控除:増加手当清算金 被告の主張 →本給は「概算払い」=清算が必要 ↓ しかし 2年間も賃金が確定しない賃金制度 →著しく社員の生活を脅かすもの 33
4 賃金からの控除:増加手当清算金 • 年度途中の退職者に未精算分を請求 • 私傷病欠者への補償給与からも控除 ↓ 賃金とは別個独立した債権として請求 単なる「賃金の計算方法」ではない (退職者には賃金の計算はない) 34
4 賃金からの控除:増加手当清算金 最高裁判例事案との異同 1 清算の発生原因 過誤払い・計算違い(例外的原因) VS 制度的な「概算払い」(恒常的原因) 2 清算の時期 2か月程度 VS 2年間 3 清算の金額 微調整の範囲 VS 生活を脅かす可能性 35
5 賃金からの控除:口座振替手数料 • 口座振替手数料は保険契約者が負担すべきもの • 現に被告会社は保険契約者から受領している→二重請求 • すでに全廃が決まっている制度 (2008年6月東京高裁での和解) 36
まとめ • 被告の制度思想の不合理性 • 解雇基準の不合理性・過酷さ • 労基法24条に違反する賃金からの控除 被告の制度は複雑、一見してわからない →しかし、その本質を見誤ってはならない 37
23 賃金からの控除:最高裁判例事案との異同23 賃金からの控除:最高裁判例事案との異同 (1) 清算の発生原因 過誤払い・計算払い(例外的原因) VS 制度的「概算払い」(恒常的原因) (2) 清算の時期 2箇月 VS 2年間 (3) 精算の金額 微調整の範囲 VS 生活を脅かす可能性(理論的には無制限) 38
24 賃金からの控除:口座振替手数料 (1) 口座振替手数料は保険契約者が負担すべきもの (2) 現に被告会社は保険契約者から受領している →二重請求 (3) すでに全廃が決まっている制度 2008年6月 東京高裁和解 39
25 まとめ (1) 雇用・賃金体系思想の不合理性 (2) 解雇基準の不利益変更の不合理性・過酷さ (3) 労基法24条に違反する賃金からの控除 40