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真空悪化問題 経過. KEK 坪山 透. 2002年10月30日11時40分. 通常のランの最後にビームライフ・ Belle バックグラウンドが悪化。その後改善はあるも、完全には復帰しなかった。 後の調査で以下の事実が判明 ( 手島のスライドより ) Base pressure は、さらに2フィルほど前から、真空悪化は始まっている。 KEKB IR 付近の真空が悪化 QCS L 側変位計の水平方向2 μm (?)のジャンプ。 R 側も、多少見える。 OCTOPOS の水平位置に50 μm ほどの変位。 R 側にも L 側にも見える。
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真空悪化問題 経過 KEK 坪山 透
2002年10月30日11時40分 • 通常のランの最後にビームライフ・Belle バックグラウンドが悪化。その後改善はあるも、完全には復帰しなかった。 • 後の調査で以下の事実が判明(手島のスライドより) • Base pressure は、さらに2フィルほど前から、真空悪化は始まっている。 • KEKB IR 付近の真空が悪化 • QCSL側変位計の水平方向2μm(?)のジャンプ。R側も、多少見える。 • OCTOPOS の水平位置に50μmほどの変位。 R側にもL側にも見える。 • その時間に、SVDの温度モニターには特別な構造はない。 • ただし、当時「ライフタイムフィードバック」がかかっていた。真空悪化でライフが急減した結果、フィードバックによりビームが影響を受けて、温度・OCTOPOS等が振れたと、考えられる。
バックグラウンド増加 • F10373の最後にBelle バックグラウンドが増加し、10375ではずっと高いままだった。
OCTPOS-R-e OCTPOS-L-e OCTPOS-R
11月30日LER大電流スタディ • 3フィル • 正調4バケット(通常:変則4バケット) • このスタディ中に真空の状況が変化した徴候はない。 • Belle IP チェンバーは正調4バケットのほうがHOM熱が多い。 • SVDモニタでは異常発熱などの徴候がなかった • 常に通常ランのLER+HERの時の温度以下だった。 • スタディ後も物理ランが行われた。 • 大電流スタディは今回の事故の原因ではないだろう。
10月31日 重故障発生 • 2時40分にLER続いてHERがアボートされ、以後ビーム入射ができなくなった。 • 最初は加速器調整を疑ったが、KCGミーティングまでにはIR付近の真空悪化が判明 • 3時30分頃にHERを蓄積した。よく見るとHER電流に応じて、真空が悪化していることに注意。
リング全体の真空には見えないが、IRの局所的な真空は2:30以降十倍以上悪くなった。リング全体の真空には見えないが、IRの局所的な真空は2:30以降十倍以上悪くなった。 • 9:00-17:00 リーク探し。 • ガスの主成分がH2やCOだった。 • ガスが内部で発生している可能性がある。 • 主なベローズ・溶接継ぎ目にヘリウムをかけたが、リーク検出器では、検出できなかった。 • SVD(Belle 中央)をヘリウムガスで満たした。ヘリウムガスの発生の徴候があったが消えた。再現性がなかった。 • リークの決定的な徴候は全く見つからなかった。 • IR (L 側)イオンポンプの放電電流が高い→異常の可能性。
その他の真空に関する議論 • LER大電流スタディのとき真空ゲージはあまり振れなかった。 • この頃はHERからの影響が少なかった可能性がある。 • そのゲージはHER側にあったから感度がなかったともいえる。 • 31日2時40分以降は、LER/HERともに真空悪化へ寄与している。
10月31日18:00〜 :加速器運転再開 • リークが見つからなかったためoptics correction 後、焼き出しを兼ねて物理ラン再開 • バックグラウンドが高く、データ収集はほとんど無意味。 • ビームライフを保つため、チューンを調整してルミノシティを下げざるを得ない。 • IR-L側イオンポンプ停止 • 主にCH4を除去するために用いられるので、必須ではない。 • 停止したが真空の改善はなかった 真空度
11月1日焼きだし運転 • 上図 1:00-9:00の焼きだし運転。 • 下図 10月27日から11月1日9時までの真空履歴。10月31日2時30分の状態からは多少改善している。
11月1日18:00〜24:00ビームによるアパーチャー診断11月1日18:00〜24:00ビームによるアパーチャー診断 • OCTOPOS(ビーム位置モニタ)が正常に動作している事を確認。 • LERに1mm程度のバンプをたてるだけでライフがなくなる。KCG報告参照 • ローカルバンプをL側下・R側上にたてた時(平行なバンプはたてていない)のライフ悪化が顕著 • IR付近のマスク脱落の可能性 • どこかのベローズのフィンガーが損傷している可能性 • ただし、通常運転でこのバンプをたてた場合にライフがあったかどうかは未確認。
11月2/3日:工業用内視鏡による検査(1) • 2日9:00 IR付近の真空をやぶり、ファイバスコープで観察を開始。 • 3日には分解能の高い内視鏡が使用可能になった。 • 真空チェンバ・ベローズの観察 • 放射光が当たった形跡があるが、致命的には見えない。 • ベローズ部分のHOM防止用電極は健全 • NEG/イオンポンプなどへの窓も健全に見える。 • 宇野マスクに相当する部分に光が当たった形跡があるが、変形などの致命的な損傷は見当たらない。
典型的な写真:ベローズ/ビームモニター電極/焦げ目/L側IP チェンバ内のマスクと異物(1mm程度)
健全に見える部分の写真:L側IPチェンバ内の鋸形マスク/ポンプへの窓/イオンポンプ内の電極の筒とチタン板/宇野マスク内側健全に見える部分の写真:L側IPチェンバ内の鋸形マスク/ポンプへの窓/イオンポンプ内の電極の筒とチタン板/宇野マスク内側
ファイバースコープによる観察:要注意点 • ゴミの付着が散見。 • 金属光沢の付着物がL側・R側に観測された。周囲に温度上昇を示唆する変色はない。最初のインストール時にはなかったと思われる。この程度のゴミは通常問題ない。しかし要注意。 • イオンポンプ • 運転時に問題があったのでメカニカルに切り離した。 • スコープの観察では異常が見つからない(変色があるが、それはどこにでもある) • Belle 衝突点チェンバー • 中央ベリリウムチャンバ/光マスク:健全。 • L側アルミ部分:タングステンマスク、金メッキは健全。 • R側アルミ部分:200μm厚金メッキ上に多数の斑点がある。 • 立体的な構造は不明瞭だが、凹凸はそれほど大きくない。 • L側に比べて、金の粒子が粗いようにも見える。
衝突点チェンバの金メッキ • 日光側 • 放射光は「鋸型」マスクで吸収する。反射した光も直接はベリリウム部分に入らない。 • 大穂側 • 放射光はアルミ内面に施した200-300μm厚の金メッキで吸収する。この直管部分の金メッキ表面にシミが発見された。
IP チェンバR側光マスク直前のアルミ部分の金メッキの変色。左上は全体像。各斑点の大きさは1ー2mm程度と思われる。
11月4日影山の所見 • 原因が真空リークでない可能性 • 10月30日の変化は、ビームフィル直後ではなく、電流が減少する時におこった。 • 以後ビームがない時も圧力上昇が起こっている。 • IP チェンバ内金メッキ上の斑点について • 金メッキ部分のアルミ管は溶接の継ぎ目がない。従って「不完全な溶接部分に溜まった電解液が漏れ出る」事故である可能性は少ないであろう。 • このメッキはアルミ地に亜鉛-銅-金の順で行われているが、亜鉛は暴露により真空悪化の原因となるから真空中では普通は使わない。 • 銅メッキに引っぱり応力が働く場合、そこが熱サイクルによる疲労(あるいは放電?)で割れれば、亜鉛部分が露出する可能性がある。 • 放電によって、上記問題が引き起こされる可能性もある。 • 拡大写真の微細な斑点が割れ目を示しているようにも見える。 • ターボ分子ポンプだけで真空引きすれば、アウトガスの成分が忠実に正確に測定できる。時間依存性を計り「ヒビからの噴出」を調べたらどうか?
影山からの11月6日付メイル • 今回の真空事故に関する坪山さん作成のサマリーに『11月4日影山の所見』というスライドがありますが、必ずしも小生の真意が正しく反映されていない箇所がいくつか見受けられます。現時点までの情報に基づく小生の所見(一部にトンデモナイ仮説もあり)を以下にまとめておきます。 • 11月4日 影山の所見(11月6日一部改) • 真空度悪化の原因について: • 10月30日午前11時39分の真空悪化はフィル終盤、10月31日午前2時30分の真空悪化はアボート後数分経過して発生している。即ち、いずれも温度が下降傾向にあるときに真空度が悪化している。小生の経験上、特に後者のパターンは、ガスケット部での隙間発生によるリーク、または、チェンバー内壁表面に発生した欠陥(割れ等)からのリークかガス放出の典型と考えてよい。 • ただし、ヘリウムリーク試験の結果、大気側からのリークの可能性は小さいとの情報あり。また、ビームがないときの真空度ベースは正常時に比べて一桁程度悪化しており、主に水素分圧の上昇で説明可能とのこと。よって、チェンバー内壁の欠陥深部からの放出ガスによる真空悪化の可能性がある。 • さらに、ビーム電流に対する圧力応答が正常時に比べて一桁以上大きい。よって、不幸にも上記欠陥がビームによる電磁場、放射光に曝される箇所に発生した可能性も否定できない。 • IPチェンバー内面金めっき上の斑点について: • めっき液が噴出した可能性は小さい。ARES空洞で遭遇しためっき液噴出による真空悪化の事例は、いずれも溶接欠陥(クレーター、割れ)が源である。一方、IPチェンバーの斑点が発生している箇所は単なる切削加工面である。また、平静なときの圧力にハネが観測されていないので欠陥深部から液体が噴出している可能性は小さい。 • 斑点が特定の箇所に帯状に分布していることについては、さらなる調査検討を要す。旋盤切削加工、その後のめっき工程のいずれかに不手際があった可能性も除外できない。HOMによる放電痕とも考えられるが、当該箇所での異常発熱は観測されていない。 • 金めっき工程は、アルミ表面を亜鉛置換 → 銅めっき(5μ) → 金めっき(200~300μ)とのこと。アルミ表面の亜鉛置換法は一般的とのことであるが、超高真空用チェンバーとしての実績については、現時点では不明。 • 金めっき層が200~300μと厚いので内部の残留応力についても要調査。残留応力が引張の場合、めっきの割れや剥離に到る可能性もある。しかし、金は通常延性に優れているので、変形による応力緩和が期待できる? • 亜鉛は低融点金属で蒸気圧が高いので真空用途には不向きであるというのが一般常識。一例として、銅・亜鉛合金の黄銅部品を真空装置内に持ち込むことは非常に危険であると言われている。黄銅部品が加熱され、亜鉛が飛び散って真空装置を汚損した事例は多々あり。 • 欠陥の発生機構として、HOMによる放電で局所的(直径1ミリ程度)に温度が上昇(外部の温度計では観測不可という前提)、亜鉛が深部で融解、突沸したということも考えられる。この場合、斑点の分布も同時に説明可能である。とにかく、何らかの原因で金めっき層に割れ等の欠陥が発生し、深部からの放出ガスで真空悪化したというトンデモナイ可能性を現時点では完全に除外することはできない。 • その他 • NEGの活性化を我慢、イオンポンプもオフのまま、ターボ分子のみで長時間排気。その間の圧力変化、ガス分圧等のデータから何か有益な情報が得られるかも知れない。急がばまわれ。 以上
光延 信二(加速器)からの情報(11月12日)(真空ハンドブックによる亜鉛の物性) • 融点 • 692.5K • 蒸気圧(Pa) • 453K 1.33x 10-4 (M) • 300K 2.38x 10-12 (C) • 485K 1.33x 10-3 (C) • 523K 1.33x 10-2 (C) • M—測定値 • C —公式からの計算値
11月4日会議の結論 • Alメッキ • 業者と相談(応力の符号、その他) • 有識者を集めてレビュー(取りまとめ;幅) • Scopeでチェック:より良いスコープを探す! • 真空の枯れを待つ(運転) • IP pump • 外して運転: • その他 • Leak test • Beam pipe 交換のスケジュールをつめる • 取りまとめ(土屋) • SVD交換のスケジュールをつめる(幅) • Aperture問題
11月5日9:00作業報告(金沢) • 真空復帰作業は終わった。 • リークは見つから無かった。 • 質量分析計ではやはりH2、CO、OHに相当するピークが観測された。 • L側(要確認)のひとつのベローズのフィンガーの一枚が破損していた。 • 破損部分が(温度で?)融けていたようにも見える。 • 取り外しのときに壊れたか、それ以前に壊れたか不明。 • しかし、これが真空悪化の原因という気はしない。 • 破損したフィンガーの一部(数mm)が行方不明。
11月5日ステレオ写真の観察 • 内視鏡のオプションのレンズでステレオ写真がとれた。それを見ると、以下のように見える。 • 金の粒子はアスペクト比1以上の長い「すりこぎ」のような形状をしている。大きさは不明。 • 黒化した部分は「へこんでいる」のではなく、「すりこ木状の金」の表面が黒くなっているように見える。
11月5日影山他:メッキに関する追加情報(野村メッキとのインタビューなどより)11月5日影山他:メッキに関する追加情報(野村メッキとのインタビューなどより) • アルミに最初に亜鉛層を作るのは標準的な方法。 • 5000番台のアルミ合金に20μm程度の金をつけた経験はある。 • 200μmは通常行うメッキの範囲を越えている。 • BelleのIPチェンバは3000番台なので、なんともいえない。 • メッキ内の応力が引張の場合、メッキ面が割れる可能性がある • 引張か圧縮かはメッキの種類やプロセスに依存する。 • ある程度確立した応力の推定方法がある。 • 亜鉛部分が露出すると真空悪化が起こる。 • 亜鉛の性質 • 蒸気圧が高い(常温での蒸気圧のデータはみつからない) • 水素等のガスの吸着性(真空中なら放出)がある。 • ガス放出率はバイトンなどに匹敵し、銅表面のおよそ1000倍
11月6日朝のシフト報告(KCG) • 5日18時NEG活性化終了。 • 5日19時加速器運転再開 • LERは焼きだしの結果電流1300mAでライフ40 分まで回復。 • Belle バックグラウンドが電流を制限している。 • HERは電流が少ない。 • 調整をほとんどしていない • 9時以降の調整で電流は大幅に増えた • ビームにバンプを数mm立ててもライフは減らない。 • 11月1日に観測されたアパーチャ問題は心配しなくて良くなった。
11月6日朝のシフト報告(続き) • その他 • ベローズの温度モニターの温度が高い。 • 金沢 • これまで温度モニタをしていなかったベローズ(LER側)の温度が高いので、ブロアを取り付けたい(9時以降に実施) • 質疑 • Belle がデータを取れるようになるのは最も早くて明朝、真空悪化が回復したかどうか判断できるのは1週間後であろう。
11月7日KCG報告 • 焼き出しにより、真空は順調に向上している。 • CCG23(LER上流)、CCG02(LER下流) • CCG02A(HER上流),CCGH23(HER下流) • H02,H01A(衝突点付近) • QMAS(質量分析計)に亜鉛(Zn)のピークがあったと言われているが、それはソフトのバグだった。 • 明日、NEGの活性化を行う。さらに真空が良くなるだろう。低いルミノシティでもよいからデータを取りたいとBelleが判断すれば、物理実験をする可能性も出てくる。 • 金メッキ上の斑点に関するレビューを土曜日午後におこなう。
11月7日10時ごろ:真空の急激な悪化 • KGC打ち合わせ後QMAS(質量分析真空計)がヘリウムの巨大なピークを示した。 • SVDヘリウム循環システムを停止させるとピークはさらに大きくなった。 • ベリリウム2重管内のヘリウムを窒素に置換すると、窒素のピークが観測された。 • さらに窒素ガスをアルゴンガスに置換したところ、アルゴンガスの巨大ピークが観測された。 • IPチェンバのヘリウムガス系のリークだと判断された。 • 応急処置 • アルゴンガスは真空ポンプでの排気が遅いため、再びヘリウムガスで置換。 • 冷却水系のリークを心配して、水配管のパージを行った。
11月7日14時からの対策会議 • Vac sealでリークを止める方法が長時間検討された。しかしリークレートを計算するとVac sealできちんと止まる量を越えていた。 • そこで、「2重管内部を真空にして加速器チェンバへのリークを止める」ことが提案された。 • 具体的には、前方/後方のマニホールドからそれぞれ4本の3/8インチシンフレックスチューブを取り外し、プラグを取り付ける。1本だけはターボ分子ポンプにつなぎ排気する。 • 明朝、再度真空の状況を確認した後、作業を行う。
11月8日KCGミーティング • 真空状態報告(金澤) • リーク量はおよそ半分になったが、依然高いことは変わりない。 • IPチェンバーの強度(山田) • ヘリウムガス循環なしで運転する場合、内側ベリリウムチェンバーは高温になる。内側の管の温度の直接測定はできない。許容されるビーム電流は現在の1/2-1/3であろう。(したがって、ルミノシティもかなり低くなる。) • Belleグループの観点(山内) • 夏までに蓄積できるデータ量を考慮すると、低ルミノシティで長期間走るメリットは少ないと考えられる。代替案は • 現行SVDを旧IPチェンバにのせて走る • SVD2完成を待ってインストールする • SVD2ビームパイプを直ちに入れて加速器スタディ、SVD2完成後に再びインストール • どれも一長一短があり、Belle の合意を得るまで最大1週間かかる。 • 参加者による議論: • Belle 側にメリットがないなら、拙速な対症療法で時間を浪費し、最悪取り返しのつかない状態になるような方策は避けるべきだ。 • 事故調査を行い、事故を繰り返さないための方策をとれるようにすべきだ。
11月8日18時ー • 再びIPチェンバ内面を内視鏡で観察した。