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実践的英語科教育法 ( 仮 ). 第 4 章 コミュニケーション能力: 育成するべき資質・能力. 今日の授業概要. コミュニケーションのプロセスやそれを支える能力とはどのようなものか? - コミュニケーションのプロセス - 異文化間コミュニケーションの特徴 - コミュニケーション能力の構成要素 - 目的・場面・状況に応じたコミュニケーション を行う力. コミュニケーション とは どの ようなプロセスか?. コミュニケーションのプロセス. 外国語活動・外国語科の目標は,コミュニケーションを図る資質・能力を育成することである。
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実践的英語科教育法 (仮) 第4章 コミュニケーション能力: 育成するべき資質・能力
今日の授業概要 • コミュニケーションのプロセスやそれを支える能力とはどのようなものか? - コミュニケーションのプロセス - 異文化間コミュニケーションの特徴 - コミュニケーション能力の構成要素 - 目的・場面・状況に応じたコミュニケーション を行う力
コミュニケーションとは どのようなプロセスか?
コミュニケーションのプロセス • 外国語活動・外国語科の目標は,コミュニケーションを図る資質・能力を育成することである。 • 授業では実際に外国語を用いてコミュニケーションを行い,その中でコミュニケーション能力を育成することが求められている。 →コミュニケーションとは何かについて理解しておくことは極めて重要である
コミュニケーションのプロセス • Activity 1 コミュニケーションというプロセス - コミュニケーションとはどのようなプロセス だと思いますか?ノートに書き出しまわりの人と話し合ってみましょう。
コミュニケーションのプロセス • 大学生のAさんとBさん • 英語科教育法の授業を履修 • Bさんは昨日の授業を欠席 • 大学の廊下 • Aさんが昨日の授業で出されたレポートの内容をBさんに伝えている
コミュニケーションを構成する要素 • Aさん:情報の「送り手」 • Bさん:情報の「受け手」 メッセージ(message): 相手に伝えられる考えや情報 (意味・内容) 意味や内容のやりとりが送り手と受け手の間で行われる →コミュニケーションが成立する条件
コミュニケーションを構成する要素 • AさんはBさんに言語を用いてメッセージが伝えられている シンボル(symbol): メッセージを伝える時に用いられる記号 • 送り手の考えや感情が記号化され、メッセージとして受けてに向けて伝えられる • シンボルには、言語だけでなく非言語も含まれる(例:姿勢、視線、声の大きさ・高さ・速さ、服装など)
コミュニケーションを構成する要素 • Aさん:シンボルである言語を「話している」。 • Bさん:それを「聞いている」。 チャンネル(channel):伝達する手段 • 話しことばだけでなく、書きことばもコミュニケーション • 「話すこと」「書くこと」という表現すること(production)だけでなく,「聞くこと」「読むこと」といった理解すること(comprehension)もコミュニケーション • 非言語の手段により 伝えられる場合もある (肩に触れる、顔の表情や目の動き、声の調子など)
コミュニケーションを構成する要素 • 廊下を大きな声でおしゃべりしながら歩いている学生がいてうまく聞き取れない ノイズ(noise):コミュニケーションを妨げる要素 • 物理的ノイズ:騒音など • 心理的ノイズ:話を聞きながら、別のことを考えている • コミュニケーションにおいては、必ずしも送り手が意図したとおりに受け手にメッセージが伝わるとは限らない。
コミュニケーションを構成する要素 • Aさん:「いっしょにレポートをやろう。」 • Bさん:「いいよ。家でやるよ。」 • Aさん:「いつ行ったらいい?」 • 聞き手であるAさんが「いいよ」という記号をBさんの意図とは異なる解釈をし、意味づけを行っている。 →コミュニケーションにおいては意味づけを行う受け手の役割が非常に重要
コミュニケーションを構成する要素 コンテクスト(context):コミュニケーションが行われる目的や場面・状況、相手との関係性など • コンテクストは対人、社会、文化などいくつかのレベルに分けられる(宮原, 2006) • コンテクストはメッセージの内容やコミュニケーションの仕方などに影響を及ぼす。 • 「どのような内容を伝えるのか」「どのような方法でコミュニケーションを図るか」「どのようにメッセージを解釈し意味づけを行うか」などに枠組みを与える。
コミュニケーションのプロセス ノイズ ノイズ 送り手/受け手 受け手/送り手 メッセージ チャンネル コンテクスト
言語コミュニケーションにおける文化の影響 • Activity 2 -あなたは最近いっしょに食事をしていない留学生の友達に「今夜一緒に食事に行こうよ」と言って,誘いました。そうしたら以下の返事が返ってきました。それぞれ,どのように感じますか。 (1)「いいね。最近いっしょに食事に行ってないよね。とにかく勉強が忙しくて。実は,あさっても試験があって,今日もこれから勉強しないと。どれだけ時間がかかるかわからないよ。」 (2)「私は行けません。あさって試験があります。準備に時間がかかるので,今夜勉強しないと間に合いません。」
言語コミュニケーションにおける文化の影響 発言について (1)自分の主張や意見を明確に言わず,状況や理由を伝えながら,相手に結論を察してもらうことを期待し,最後まで結論を言わないスタイル (2)まず結論を述べ,その理由や説明を加えるスタイル • 同じ断るという目的の発言であっても,身に付けてきた価値観や思考様式に影響を受けながら記号化が行われていることになる。 • 言語・非言語の記号の使用方法や,コンテクストの捉え方などにも文化の違いが表れる。
言語コミュニケーションにおける文化の影響 発言の受け止め方・感じ方 (1)身につけてきたコミュニケーション・スタイルが異なる婆いには、相手の意図がきちんと理解できない可能性が考えられる (2)異なる文化で身につけた思考様式や価値観を枠組みとして解釈を行おうとすると、場合によっては相手を攻撃的、あるいはわがままであるかのように感じるかもしれない • メッセージを解釈したり意味づけを行ったりする際にも、自らが属する文化の影響を受けることになる
言語コミュニケーションにおける文化の影響 • 私たちが意識するとしないとに関わらず,文化がコミュニケーションの取り方に影響している(久米・長谷川, 2007) • その結果,異なる文化的背景をもった二人の間でコミュニケーションが行われる場合,その影響によりコミュニケーションが困難になることがある。
非言語コミュニケーションにおける文化の影響非言語コミュニケーションにおける文化の影響 • 日本でよく用いられる非言語コミュニケーションの仕方には,異なる文化では意図しない意味に解釈されるものもあるので注意が必要 (例) • OKという意味を伝えるために親指と人差し指で輪をつくって見せること →相手を侮辱する意味で理解されてしまう • No という答えをするために首を横にふること →Yesという意味に理解されてしまう • 人と話すときに相手の目を見る「アイコンタクト」をしないこと →自信がない,うそをついていると理解されてしまう
非言語コミュニケーションにおける文化の影響非言語コミュニケーションにおける文化の影響 • 文化の違いによるコミュニケーションへの影響は一般化できるものではない • 家庭や学校,年齢,職業,地域社会などさまざまな集団が持つ文化からも影響を受けることがある • 個人内においてもコミュニケーションを行う相手や場面などコンテクストの影響によって異なるコミュニケーション・スタイルや解釈の枠組みを用いることがある • 文化の影響をステレオタイプ的に捉えることは不適切であり,多様で動的なものであると考えられる
コミュニケーション能力 の構成要素
カナールとスウェインのモデル • Activity 3 -英語を用いて,コミュニケーションを行うためにはどんな知識や能力が必要だと思いますか?周りの人と話し合ってみましょう。
カナールとスウェインのモデル • 発話の意味を文字どおり正確に理解したり、表現したりするために、文法、語彙、音韻、綴り方などの知識技能が必要である。 • 一文レベルの発話の理解や表出に必要な、言語という記号に直接関係する能力 →文法能力(grammatical competence)
カナールとスウェインのモデル • Activity 4 -あなたは,ウェイターあるいはウェイトレスとして,レストランで働いています。ある晩,一人のお客さんがやって来て出迎えたあなたにこう言いました。 “I have a reservation.” しかし,あなたはそのお客さんに会うのが初めてなので,名前を知りません。名前を聞きたいあなたは英語で何と尋ねますか。周りの人と共有してみましょう。
カナールとスウェインのモデル • あなたの答えは次のどちらの答え方に近いであろうか。 (1)Who are you? (2)May I have your name, please? (1)の文は文法的には正しい文であるが,この場面で使われる表現としては適切ではない。(2)がより適切な表現である。
カナールとスウェインのモデル • 私たちがコミュニケーションを行う場合,使う表現が文法的に正しいということだけでなく,その場面や状況に適しているかどうかを理解して表現を選んで使用する必要がある。 • 場面や状況、目的、自分や相手の立場、規範や慣習などのコンテクストに応じて適切に言語を使用できる、言語の社会文化的な言語使用の規則に関わる能力 → 社会言語能力(sociolinguistic competence)
カナールとスウェインのモデル • 談話:複数の発話や文から成るひとまとまりの会話や文章のこと A: What are the police doing? B: They are arresting the demonstrators. (Widdowson, 1978, p. 27) • Bの発話では,前方照応の代名詞they が文法的にAの発話と結びついている。 • 代名詞,接続詞などによる明示的な文相互の結びつきを結束性(cohesion)と言う。
カナールとスウェインのモデル A: What are the police doing? B: I have just arrived. (Widdowson, 1978, p. 28) • それぞれの発話間に結束性は見られないが,意味的には対話は成り立っている。このような場合,意味的一貫性(coherence)を有しているといえる。
カナールとスウェインのモデル • 適切に文法や意味を結びつけ、談話を構成したり、理解したりする能力 • 談話が適切に機能するためには、結束性や意味的一貫性が必要である。 →談話能力(discourse competence)
カナールとスウェインのモデル • 次のような場合、あなたはどのように対処するであろうか。 (1)適切な表現が思い浮かばず、相手にうまく伝えられない場合 (2)相手の話していることがよく理解できない場合
カナールとスウェインのモデル (1)適切な表現が思い浮かばず、相手にうまく伝えられない場合 ・別の表現を使う ・ことばの代わりに身振りを用いる (2)相手の話していることがよく理解できない場合 ・Excuse me? Pardon? と言ってもう一度聞き返す このような方略を使用する能力 →方略能力(strategic competence)
バックマンとパーマーのモデル • テスティングの立場から、カナールとスウェインのモデルを発展させ、communicative language activity のモデルを提唱した • 方略能力の役割を拡大し,さまざまな下位能力からなる言語能力(language competence)を実際のコミュニケーションで活用し,実行に移すためのものとして独立させた
バックマンとパーマーのモデル 言語使用は 「個人的特性」(personal characteristics) 「話題の知識」(topical knowledge) 「情意スキーマ」(affective schema) 「言語能力」(language competence) 相互に作用し合い構成される。
方略能力の役割を拡大 言語知識 個人的特性 話題の知識 影響を与える 方略能力 言語使用またはテスト課題・設定の特性
バックマンとパーマーのモデルメタ認知的方略使用の領域バックマンとパーマーのモデルメタ認知的方略使用の領域
外国語教育の学習過程(文部科学省, 2017) • 設定されたコミュニケーションの目的や場面、状況を理解する • 目的に応じて情報や意見などを発信するまでの方向性を決定し、コミュニケーションの見通しを立てる • 目的達成のため、具体的なコミュニケーションを行う • 言語面・内容面で自ら学習のまとめと振り返りを行う
目的・場面・状況に応じた コミュニケーションを行う力
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力 コンテクスト(context): コミュニケーションが行われる目的や場面・状況、相手との関係性など • コンテクストはメッセージの内容やコミュニケーションの仕方などに影響を及ぼす。 • 「どのような内容を伝えるのか」「どのような方法でコミュニケーションを図るか」「どのようにメッセージを解釈し意味づけを行うか」などに枠組みを与える。 • コミュニケーションが行われる際の目的や場面・状況,相手が異なれば,伝える内容や使用する言語表現,解釈の仕方なども異なってくる。
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力 中学校学習指導要領 (文部科学省, 2017) 目標 (2)コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力 中学校学習指導要領解説 (文部科学省, 2017) 「コミュケーションを行う目的や場面,状況など」とは,コミュニケーションを行うことによって達成しようとする目的や,話し手や聞き手を含む発話の場面,コミュニケーションを行う相手との関係性やコミュニケーションを行う際の環境を指す。(p.14)
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力 中学校学習指導要領解説 (文部科学省, 2017) こうした「目的や場面,状況など」は,外国語を適切に使用するために必要不可欠である。例えば,ある情報を得るために読む際には,単に一つの情報をうのみにするのではなく,他の情報と比べるなどして精査する必要がある。また,意見を述べる際には,考えを整理したり話す内容の構成を考えたり,相手に応じた表現を選択したりする。このように,「目的や場面,状況など」に応じた言語の運用を考えることで,「思考力,判断力,表現力等」が育成される(p.14)
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力 学習指導要領ではコミュニケーションにおけるコンテクストが重視され,それに適した内容,表現(言語形式),コミュニケーションを行うことができる力の育成がその目標の1つとして位置づけられている
目的・場面・状況に応じるとは • Do you have a pen? • Yes, I do. • Oh, here you are. 目的・場面・状況から、相手の発話の目的・意図を理解する必要がある → function の違い 質問/依頼
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成 • 中学校学習指導要領 具体的な課題等を設定し,コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,これらを論理的に表現することを通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成 • 中学校学習指導要領解説 言語活動を行う際は,単に繰り返し活動を行うのではなく,生徒が言語活動の目的や言語の使用の場面を意識して行うことができるよう,具体的な課題等を設定し,その目的を達成するために,必要な言語材料を取捨選択して活用できるようにすることが必要である(p.55)
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成 Activity 5 次の活動を,目的や場面・状況,相手を考慮した活動に書き換えてみましょう。 日本に来てホームステイをする予定の外国人に,アドバイスをしてあげよう。
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成 ・目的・意図(「アドバイスする」)は一定程度明確になっている。 ・目的,場面・状況,相手がすべて具体的にされているか。 例えば, ・どの国から来るか。・いつ(どの季節に)来るか。 ・年齢はいくつぐらいか。・あなたとはどのような関係か。 ・日本に来たことはあるか。・日本についての知識はあるか。 ・手紙を書くのか。直接話すのか。など。 実際にコミュニケーションが行われるときのことを考えると明確になっていないことはたくさんある。これら1つひとつの設定が異なれば,それに応じてアドバイスの内容や用いる言語形式も異なってくる。
目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成目的・場面・状況に応じたコミュニケーションを行う力の育成 活動のゴール “Next year, you will have a school trip. Choose a country which you want to visit, and write a letter to the principal to ask him to accept your idea.” China, South Korea, New Zealand, U.S.A, Italy