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経済政策論 月 3 木 1. 2011 年 6 月 6 日(木) 環境問題 Ⅱ. 3 環境政策の 目的. ( 1 ) 理論 効率・・・社会的純便益最大化、死重的損失最小化 公正・・・原因者(汚染者)負担 ( 2 ) 実践 「国民の健康の保護と生活環境の保全」(公害対策基本法) 「環境の保全」を通じて「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の 確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献すること」(環境基本法). 4 環境政策の原則と 手段. 原則 汚染者負担原則 ( PPP = Polluter Pays Principle )
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経済政策論月3 木1 2011年6月6日(木) 環境問題Ⅱ
3 環境政策の目的 (1) 理論 効率・・・社会的純便益最大化、死重的損失最小化 公正・・・原因者(汚染者)負担 (2) 実践 「国民の健康の保護と生活環境の保全」(公害対策基本法) 「環境の保全」を通じて「現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献すること」(環境基本法)
4環境政策の原則と手段 • 原則 • 汚染者負担原則(PPP=Polluter Pays Principle) • 「汚染防止費用は、生産・消費面での汚染の原因となる財・サービスの費用に反映されるべきであり、国際貿易・投資に歪みをもたらす補助金を伴うべきでない」(OECD、1972) • 当初、汚染者が負担すべき費用は、政府が実施する排出処理費用と考えられていた。のちにその範囲が拡大され、環境に生じた損害や被害者への補償までも含むものと解釈された。
原因者負担原則 • 原因者負担原則はPPPの日本版。 • 政府による公害防止事業や環境保全事業の費用、被害者への補償、環境の利用に対する租税・課徴金などを含む。 • PPPや原因者負担に期待される経済効果 • 私的限界費用と社会的限界費用の乖離を縮小し、非効率な資源配分を是正すること。 • 統一的な費用負担原則により、国際間での資源配分や投資決定に歪みを生じないこと。 • 自らが招いた費用を自ら負担し、第三者に費用負担を転嫁しないので、公正性が確保されること。
直接規制 • 環境基準規制 • 環境保護規制 • 環境影響評価(環境アセスメント)義務規制
現行の環境基準規制 出所: 環境省ウェブサイト(http://www.env.go.jp/kijun/taiki.html)
微小粒子状物質(PM2.5)問題 • PM2.5とは、「大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことで、・・・浮遊粒子状物質(SPM:10μm以下の粒子)よりも小さな粒子」。 • PM2.5は、髪の毛の太さの1/40程度と非常に小さく、肺の奥や血管にまで入りやすく、「濃度上昇により、ぜんそく・気管支炎、肺や心臓の疾患による受診・入院数が増加、さらには肺がん・循環器系疾患による死亡リスクが増加」する。 • PM2.5の排出源(北京の例)・・・2012年1月北京市発表 • 22%:自動車由来 • 17%:発電所、ボイラー等の石炭燃焼 • 16%:粉塵 • 16%:自動車や家具塗装等の工業噴射揮発 • 05%:農村の養殖、わらの焼却 • 25%:天津市、河北省からの越境汚染 出所: 環境省ウェブサイト(http://www.env.go.jp/air/osen/pm/info.html); 在中国日本国大使館「大気汚染に関する講演会」資料、2013年3月14日。
直接規制の効果 SMC • q2に対応した環境基準を設定し、それを企業や産業に順守させることで、環境基準の達成およびq2の経済活動水準を実現することができる。 • MB=MC1=MC2 • 直接規制は、効果が直接的、明白、確実であるとみなされる。 PMC F p E ML q MP=p-PMC ML F’ E’ q q2 q1
直接規制の問題点 • (1) 非効率の発生 • MB=MC1=MC2を達成することは不可能。 • MB=MCが達成困難な理由 • 社会的費用の減少による「限界便益」の迅速かつ正確な測定が困難である。個別企業の限界費用を把握することも困難である。 • MC1=MC2が達成困難な理由 • 個別企業の限界費用の正確な把握が困難であり、また、差別的取り扱いも困難である。
(2) 技術進歩の限界 • 一定の環境基準を最小費用で達成しようとする。→ 費用最小化を実現する技術 • 環境基準を下回る技術の導入は期待されない。→ 単なる費用の増加 • (3) 規制順守の問題 • Ci+giの負担軽減≧phである限り、企業は規制内容を順守せず、違反しようとする。 • pまたはhを高めることが不可欠。 • 監視・処罰の行政費用が大きい?
(4) 政治的抵抗 • 直接規制によるCi+giの費用負担は、生産費の増大、価格の上昇、企業の国際競争力の低下を招く。このため、軽微な規制を求める政治的動きが生じる。 • 環境政策当局の力が弱く、政府や国民の支援が弱い場合、環境基準が低めに設定されたり、運用面での配慮により基準が緩和されたりする。 • (5) 被害救済の財源 • 直接規制に伴う環境政策の費用は、一般財源から賄う必要がある。 • 被害者の補償が求められる場合には、直接規制とは別に、被害に対する損害賠償のルールを導入・実施する必要がある。
5 経済的手段 • 経済的手段とは、当事者の費用・便益構造ないし誘因に影響を及ぼすことで目的を達成しようとする手段である。 • 環境政策の分野では、租税、補助金、排出権取引などがある。大気汚染や地球温暖化問題では、租税(環境税、炭素税)と排出権取引が有力な手段とされている。
経済的手段 • ここで考えている経済的手段とは • 租税 → 汚染物質を1単位排出すると、tの税金が課される。 • 補助金 → 汚染物質を1単位削減すると、sの補助金が交付される。 • 排出権取引 → 汚染物質の排出1単位につき、1単位の排出権が必要とされる。排出権1単位の価格をpとする。
MC 費用節約 利潤増加 MC1 E a t,s,p b e e1* e1 O f1
(1) 効率性 (注) MC=汚染物質処理の限界費用。処理すればMCの費用がかかり、処理しなければ(排出すれば)節約される。
MC 費用節約 利潤増加 MC MC' 追加 当初 E F a t, s, p Y X G A e e1 O e2 e1* 排出処理 (2) 技術進歩
便益(費用節約) 直接規制 X(=費用節約) 租税 X(=費用節約)+Y(=租税負担減少-費用増加) 補 助 金 X(=費用節約)+Y(=補助金増加-費用増加) 排出権取引 X(=費用節約)+Y(=排出権売却収入-費用増加)
(3) 順守 • 排出量を増加させると、租税負担の増加、補助金の減少、排出権需要量の増加=排出権購入費用の増加という形で企業の利益減少・負担増加を招く。 • 排出量を減少させると、租税負担の減少、補助金の増加、排出権需要量の減少=排出権売却収入の増加という形で企業の利益増加・負担減少をもたらす。 • 経済的手段の下では、企業・産業には排出量を削減しようとする強い誘因が働く。
(4) 政治的側面 • 企業の選好順序は、 • 補助金>排出権取引>租税 • であり、課税に猛反対する。 • 国民・環境保護団体の選好順序は、 • 租税>排出権取引>補助金?
(5) 財源調達 • 財政収支からみると、租税>排出権取引>補助金。 • 補助金交付は、財政収支悪化につながるだけでなく、企業数増大を招いて総排出量の増大を招く。さらに汚染者負担・原因者負担の原則に反する。
6環境政策に関わる最近の動き • 「持続可能な開発」の概念 • 「将来世代自身のニーズ充足能力を危険にさらすことなく現在世代のニーズを充足する」開発という意味(国際連合「環境と開発に関する世界委員会(=ブルントラント委員会)」の1987年報告書) • 将来世代のための自然資源保全あるいは将来世代の利益を考慮した現在世代の資源利用の原則
国際的動き • 1972年、国連人間環境会議「人間環境宣言」(ストックホルム) • 1992年、国連環境・開発会議(地球サミット)「環境と開発に関するリオ宣言」(リオ・デ・ジャネイロ)・・・「共通だが差異のある責任」 • 1997年、地球温暖化防止京都会議「京都議定書」(京都) • 2002年、国連「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルク)
京都議定書(1997年12月) 共同実施・・・開発国間で、温室効果ガスの排出削減・吸収強化事業から生じる排出削減単位を移転することができる。 クリーン開発メカニズム・・・開発国は、途上国の持続可能な開発・温室効果ガス排出削減を支援した結果生じた排出削減量を獲得することができる。 排出権取引・・・開発国間で、排出権の取引を行うことができる。