1 / 12

徳島で「医療訴訟ゼロ」を目指す     -学長裁量経費企画の背景・実践・反省-( HP 用)

徳島で「医療訴訟ゼロ」を目指す     -学長裁量経費企画の背景・実践・反省-( HP 用). 樫田美雄(徳島大学・総合科学部・医療社会学) kashida@ias.tokushima-u.ac.jp http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/social/2_anzenkanri/program.html TEL&FAX.088-656-9308 (内2384:研究室). 背景1:ミスはゼロにできない. 徳島新聞( 2006年4月21日付) 85 %が医療ミスなど経験 県内の看護師、多忙・慢性疲労訴え

murray
Download Presentation

徳島で「医療訴訟ゼロ」を目指す     -学長裁量経費企画の背景・実践・反省-( HP 用)

An Image/Link below is provided (as is) to download presentation Download Policy: Content on the Website is provided to you AS IS for your information and personal use and may not be sold / licensed / shared on other websites without getting consent from its author. Content is provided to you AS IS for your information and personal use only. Download presentation by click this link. While downloading, if for some reason you are not able to download a presentation, the publisher may have deleted the file from their server. During download, if you can't get a presentation, the file might be deleted by the publisher.

E N D

Presentation Transcript


  1. 徳島で「医療訴訟ゼロ」を目指す    -学長裁量経費企画の背景・実践・反省-(HP用)徳島で「医療訴訟ゼロ」を目指す    -学長裁量経費企画の背景・実践・反省-(HP用) 樫田美雄(徳島大学・総合科学部・医療社会学) kashida@ias.tokushima-u.ac.jp http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/social/2_anzenkanri/program.html TEL&FAX.088-656-9308(内2384:研究室)

  2. 背景1:ミスはゼロにできない 徳島新聞(2006年4月21日付) • 85%が医療ミスなど経験 県内の看護師、多忙・慢性疲労訴え • 徳島県医療労働組合連合会(見田治委員長、千六百人)は二十日、県内の看護師らを対象に行った「看護職員の労働実態調査」の集計結果を公表した。過去三年間に85%が注射薬の入れ間違いなどの医療ミスか、ニアミスを経験したことがあるとしたほか、   80%が最近半年間で「仕事をやめたい」と思ったことがあると回答した。(以下略)

  3. 背景2:訴訟は(実質)ゼロにできる • 前田正一氏(東京大学医療安全学助教授)からの示唆   at2005年11月11日、職域横断研修会(徳島県医師会・徳島県医師会医療安全対策委員会)等 • 意志決定ができれば「示談」が可能。 • 早期対応(with知識・技術)で無駄な訴訟をなくすことができる。 • 金銭賠償より、真相究明・説明・謝罪・再発防止を、患者は求めているからだ。

  4. 背景3:医療の進歩はリスクの存在基盤 • 「リスク社会論」(社会学)からの逆説的示唆 • リスク(人間がコントロール可能な損害) vs.   デインジャー(人間がコントロール不可能な損害) • 例えば、老衰は諦められても、交通事故は諦められない。「医療の進歩」は「諦められないもの」を増大させる。進歩は欲望を強める。欲望は不満を高める。

  5. 背景4:リスク再配分によって過重責任から医療者を解放する必要性がある背景4:リスク再配分によって過重責任から医療者を解放する必要性がある • 「リスク社会論」からの示唆2(前田‘s主張への樫田的理解) • 人為領域の拡大(例:手術時に当たり前に安全が期待できる) • →人々の「安心・安全」への欲望の“肥大化“ • →医療関係者への期待の増大(≒批判の増大) • →重すぎる責任。応えきれない期待。(×安全策の強化)          ↓ • 「リスクの再配分」「責任の再配分」を進める方向でリスクマネージメントをしなければならない。それが「金銭賠償より、真相究明・説明・謝罪・再発防止を患者は求めている」ことへの対応策になる。具体的には、選んでもらうこと、参加してもらうこと、考えてもらうこと、納得してもらうこと。そのためには、代理人を提供してでも有能になってもらうこと。(例:インフォームド・コンセント。医療コーディネーター。コンプレイント・マネージメント。等々のシステムづくり)           

  6. 実践1:学長裁量経費の申請と採択 • 「医療訴訟ゼロを目指す病院内システムの構築とその地域社会への普及にむけた予備的調査」(平成18年度 学長裁量経費) • K大の実践を学ぶ(医療安全××委員会コアメンバー会議等)                中立的委員会が即座に対応することで被害者の感情を緩和している? • T大の実践を学ぶ(組織整備。病院長のリーダーシップ等)   各診療科の自律性と、病院全体としてのリスクマネージメントをどのように両立させているか? • 徳大病院の組織改編を展望する(医療事故即時対応委員会?)                       • 地域貢献として展開する(関連病院は徳大卒業生の研修先でもあるので、総合的に底上げしなければ医療安全は達成できない)        

  7. 実践2:K大訪問(2006/6/15) • K大学病院医療安全管理マニュアル……3b以上(影響度分類)は、救命処置後15分以内に、診療科長等から病院長へ連絡。「医療安全××委員会コアメンバー会議」召集(2時間以内理想) • 実際は……3b以上は32件(2005年度)。内、15件は転倒の骨折。コアメンバー会議は、開催数ゼロ。過去5年でも3回ぐらい。 1200床弱。夜だと報告を止ることもある。『医療安全管理ポケットマニュアル』では、「リスクマネージャー、診療科長、看護部長、病院長への口頭報告は15分以内に」と改変されていた(2006年3月)。 • 全国のモデルになる体制とは思っていない。顧問弁護士はいるが相談したいときにそばにいない。電子メールで相談し翌日返事をもらっている。 • 独法化後の損保システムに不満足。着手金ですら折りあわない。                      • 注)3b=障害の継続性は一過性だが、障害の程度は高度(人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、骨折等)。        

  8. 実践3:T大訪問(2006/4/20) • T大の困難(①規模が大きすぎて顔が見えない。1200床弱。②診療科の独立性。同じところが繰り返し問題を起こす。③累積係争案件多数) • T大の工夫①:出前研修。診療科ごとに医療安全の研修にいく。GRMの顔を売る。顔を知っているから、電話をかけてくる。質問もでる。 • T大の工夫②:病院長(NIRZ)のリーダーシップ。人材集め。診療科長人事権。研修出席率の低い診療科へのペナルティ(大型機器購入時に低い理由を聞く)。 • T大の工夫③:法人化時点で係争案件のリスト化。処理方針の策定。示談の金額決定は執行部会。顧問弁護士2名。月に2回の事例検討会。初動の早さ。24h以内に副病院長まで上がる。院長+副院長+GRMらに情報が流れ、すぐカルテチェックにGRMが入る。病歴管理室の診療情報管理士は選考方式でプロを採用。事務部内はチーム制をとっており、職位に拘束されない。GRM(医師)の半年交替制を改め、2年以上在職。ヒヤリハット事例をMLとHPで公開。まず謝って下さい(希望の結果にならなかったことについて)と指導。 • 成果:概ね訴訟の滞貨は一掃。訴訟処理能力に余力がある状態。    

  9. 実践4:前田正一氏来徳(06/9/4&5)実践4:前田正一氏来徳(06/9/4&5) • 前田正一氏(東京大学医学系研究科 医療安全管理学 助教授) • 少人数ワークショップと、講演と懇談(←以下主として懇談から)。 • トラブル時……初動が肝心。早く動けば、内部だけで解決が可能。 • トラブル時……患者側に全体像を示す。情報がどこまで上がっているか。いつまで待てば、何が期待できるのか。今なにをしているのか。〔←リスク&責任の再配分に必要なことby樫田‘s理解〕 • 知識も必要……医療事故として警察に届け出た場合には、すぐにカルテのコピーをしておく。もし、押収されたときにコピーがないと、カルテをみたい患者から民事訴訟を起こされてしまう。 • 守られない規則は作らない。組織を動かすとき作る(15分ルール) • 社会の目を医療者にも知ってもらいたい。( vs.9月4日事件) • http://www.ias.tokushima-u.ac.jp/social/2_anzenkanri/program.html

  10. 展望的結論: • K大の教訓:意欲ある人材がいなければ制度は化石化する。それでも、なんとか廻っていることは評価。 • T大の教訓:決断すれば訴訟の実質ゼロ化も可能。医師の時間も浪費しない(例:カルテの和訳)。病院長のリーダーシップ(例:人事権)が重要。                       • まとめ:人材が重要。重要なのは「医療訴訟ゼロ」を達成するかどうかではなく、その方向を向いているか。        

  11. 補論1(全国標準と徳島標準の対比): • 都会の患者 vs.徳島の患者               徳島では安全要求がまだ強くないので、リスクの再配分路線よりパターナリズム路線の方が適合的である。(cf。9月4日のフロアからの前田講演批判)        ↓ • 日常的には、おそらく、その通り。しかし、訴訟リスクから上記の理屈で逃れることはできない。                       • 短期的には、おそらく、その通り。しかし、5年~10年スパンでみれば、全国標準化が進行するであろう。        

  12. 補論2(田舎の中のリスク再配分): • 樫田の経験                                   今月、胆石発作で2週間入院した(1月4日~18日。胆嚢切除)。  沖縄協同病院の消化器内科病棟。同室者多数の様子を見聞。                       • 生活習慣病の多くは、在宅療養に移行する。Cf.疾病構造の転換。 • そこでは、本人・家族へリスクと責任の再配分が進まざるを得ない。 • 例:肝臓病患者の、糖尿病発病後の食事療法(同室の方)        ↓ • 配食業者が手を引いた。家族が土曜日に病棟にやってきて、3者会談(カロリー統制困難な病者の夫。困惑する妻。夫に理由を聞く医師) • 結論:田舎には田舎の文脈での、リスクと責任の再配分がある!患者と患者家族の医療への参加がある!この参加を保証することと、リスクマネージメントをすることは同じことだと思う。        

More Related