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10 ヵ月間以上症状 が 持続している 慢性蕁麻疹の一例. 立川綜合病院 小児科 小柳貴人 山中崇之 小林代喜夫 平成 26年1月23日 中越小児臨床研究会. 症例 3歳1カ月女児 主訴 四肢を中心とした発疹、腫脹、掻痒感 現病歴 平成 25 年 3 月 16 日夜から全身に膨疹が出現。翌 17 日には膨疹は減少したが、両側手首および足首に軽度の腫脹・発赤が出現した。経過観察により 18 日に症状はほとんど消失した。
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10ヵ月間以上症状が持続している慢性蕁麻疹の一例10ヵ月間以上症状が持続している慢性蕁麻疹の一例 立川綜合病院 小児科 小柳貴人 山中崇之 小林代喜夫 平成26年1月23日 中越小児臨床研究会
症例3歳1カ月女児 主訴四肢を中心とした発疹、腫脹、掻痒感 現病歴 平成25年3月16日夜から全身に膨疹が出現。翌17日には膨疹は減少したが、両側手首および足首に軽度の腫脹・発赤が出現した。経過観察により18日に症状はほとんど消失した。 3月21日より再び両側手首および足首の腫脹・発赤・疼痛が出現した。自宅にあったテルギンGを数日内服したが症状が増悪し、3月25日に当科に入院した。
既往歴 • 1歳頃、卵白を使用したドーナッツを食べて全身に蕁麻疹が出現、経過観察で数時間で消退 • その後、1歳半頃まで半熟卵など加熱不十分の鶏卵を摂取すると軽度の蕁麻疹が出現するエピソードが2~3回あった 家族歴 • 父 小児期に気管支喘息 • 母 花粉症、エビアレルギー • 同胞はいない
入院時現症 体重 12.4㎏、身長 86.5㎝ 体温 36.6℃、心拍数 100/min、SpO297% 胸部聴診上異常所見なし 肝臓:肋骨弓下にわずかに下縁を触知、脾臓:触知せず 咽頭:発赤や白苔なし リンパ節:頸部・鎖骨上・腋窩・鼠径部にリンパ節腫脹認めず 皮疹: 両側手首および足首に熱感を伴う血管性浮腫様の腫脹、発赤、疼痛あり 両側肘関節および膝関節の屈側に膨疹を数個認める
入院時検査所見 • 血算 • 生化学 • 検尿 明らかな異常なし
経過 疼痛を伴う血管性浮腫&全身膨疹 疼痛を伴わない血管性浮腫&全身膨疹 散在性膨疹 9月 3月 12月 6月 入院 鶏卵・乳製品完全除去 DIV (PSL, chlorpheniramine, 強ミノ) DIV DIV DIV Loratadine Epinastine olopatadine PSL Tranexamic acid Pranlukast famostagine glycyrrhizin glycyrrhizin
追加検査結果 • 3/25 • 7/19
蕁麻疹の病態に関与する因子 • 背景因子(主として内因性、持続性) • 感作(特異的IgE) • 感染 • 疲労・ストレス • 食物 • 薬剤 アスピリン、NSAIDs、ACE阻害剤など • IgEまたはFcεRIに対する自己抗体 • 基礎疾患 膠原病および類縁疾患(SLE,シェーグレン症候群)、 造血系疾患、遺伝子欠損(C1-INH欠損)など、 血清病、その他の内臓病変など、日内変動 • 直接的誘因(主として外因性、一過性) • 外来抗原 • 物理的刺激 • 発汗刺激 • 食物 食物抗原、食品中のヒスタミン、仮性アレルゲン、添加物、サリチル酸など • 薬剤 抗原、造影剤、NSAIDs、防腐剤、コハク酸エステル、バンコマイシンなど • 運動 蕁麻疹診療ガイドライン 日皮会誌 2011より引用
蕁麻疹の主たる病態 I.特発性の蕁麻疹 1.急性蕁麻疹 2.慢性蕁麻疹 II.刺激誘発型の蕁麻疹(特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹) 3.アレルギー性の蕁麻疹 4.食物依存性運動誘発アナフィラキシー 5.非アレルギー性の蕁麻疹 6.アスピリン蕁麻疹(不耐症による蕁麻疹) 7.物理性蕁麻疹(機械性蕁麻疹,寒冷蕁麻疹,日光蕁麻疹,温熱蕁麻疹,遅延性圧蕁麻疹,水蕁麻疹,振動蕁麻疹(振動血管性浮腫)) 8.コリン性蕁麻疹 9.接触蕁麻疹 III.血管性浮腫 10.特発性の血管性浮腫 11.外来物質起因性の血管性浮腫 12.C1 エステラーゼ阻害因子(C1-esterase inhibitor;C1-INH)の低下による血管性浮腫(遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema;HAE),自己免疫性血管性浮腫など) IV.蕁麻疹関連疾患 13.蕁麻疹様血管炎 14.色素性蕁麻疹 15.Schnitzler 症候群 16.クリオピリン関連周期熱(CAPS:cryopyrin-associated periodic syndrome) 蕁麻疹診療ガイドライン 日皮会誌 2011より引用
蕁麻疹の病型と検査 蕁麻疹診療ガイドライン 日皮会誌 2011より引用
特発性の蕁麻疹に対する薬物治療手順 蕁麻疹診療ガイドライン 日皮会誌 2011より引用
抗ヒスタミン薬の併用と増量の効果比較 多剤併用よりも増量のほうが効果的である Schlz S et al: Hautarzt 60: 564-568, 2009
遅延型食物アレルギー:概要 • Ⅲ型アレルギー(主にIgGが作用)が関与する食物アレルギーで、原因食物を摂取後12~48時間程度経過してから症状が現れる • 頭痛、めまい、うつ、などの精神神経症状、肩こり、慢性疲労や、便秘・下痢などの腹部症状、肌荒れ、慢性蕁麻疹、にきび、アトピーなどの皮膚症状など、現れる症状は多彩 • 抗原特異的IgG抗体価を測定することにより、原因食物を推定する • 国内ではこの検査を行っている機関はなく、米国のambrosiaという検査会社から検査キットを輸入し、ろ紙に血液を染み込ませて郵送、2週間程度で結果が返送される
遅延型食物アレルギー:検査結果 2013.7月 3歳5ヵ月時測定 鶏卵、乳製品でclassⅤ~Ⅵの強陽性
遅延型食物アレルギー:結論 特異的IgG検査結果を受けて鶏卵と乳製品の完全除去を開始した ↓ 相変わらず連日軽度の蕁麻疹が出現しているが、血管性浮腫を伴うような重症蕁麻疹は出なくなった 原因食品除去によって症状が改善・・・した気がする • 2011年2月、英国NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)が小児および若年者の食物アレルギーガイドラインを公表した • その中で、近年食物アレルギーの試験法としてインターネット等で普及して いる代替試験法(Vega試験(Vega testing)、毛髪分析、運動機能分析、IgG検査など)は • 科学的な根拠が明確ではないため利用しないように勧告
まとめ • 10ヵ月以上の期間、症状が持続している慢性蕁麻疹症例を治療中である。 • 普段は数時間~1日で消失する膨疹が散在する蕁麻疹だが、症状増悪時には疼痛のある血管性浮腫伴い、色素沈着を残しながら改善していく。 • 普段は抗ヒスタミン薬内服、増悪時にはPSL点滴などを行うことにより、日常生活にほとんど支障がない程度に症状コントロールはできている。 • 発症因子は不明だが、発熱を伴うことがなく、膠原病やCAPSなどの全身性自己免疫疾患は否定的である。