330 likes | 474 Views
直観主義フレーム上の古典論理. 東京工業大学 数理計算科学専攻 岩波 克 iwanami.s.aa@m.titech.ac.jp. 目次. 直観主義フレーム 直観 主義フレーム上の古典論理 補足・ 今後の課題. 直観主義論理. 古典論理から排中律を抜いた論理 A ∨¬ A 、 ¬¬ A → A 、 ( A → B) ∨( B → A) は真にならないことがある プログラムの型理論と相性がいい カリー・ ハワード対応 クリプキモデルやハイティング代数の意味論が知られる. 論理式. 命題論理を考える 命題変数:可算個 p,q,r , ……
E N D
直観主義フレーム上の古典論理 東京工業大学数理計算科学専攻 岩波克 iwanami.s.aa@m.titech.ac.jp
目次 • 直観主義フレーム • 直観主義フレーム上の古典論理 • 補足・今後の課題
直観主義論理 • 古典論理から排中律を抜いた論理 • A∨¬A、¬¬A→A、(A→B)∨(B→A)は真にならないことがある • プログラムの型理論と相性がいい • カリー・ハワード対応 • クリプキモデルやハイティング代数の意味論が知られる
論理式 • 命題論理を考える • 命題変数:可算個p,q,r,…… • A,Bが論理式なら、A∧B、A∨B、¬A、A→Bも論理式
クリプキフレーム • 反射推移性を持つ順序集合(W,R)
付値 • 直観主義のクリプキモデルは、クリプキフレーム(W,R)と付値Vの組(W,R,V) • 各命題変数に対して、真となる世界の集合を遺伝性 w∈V(p)⇒(∀w’ wRw’⇒w’∈V(p)) を持つように定める。
付値の拡張(∧、∨) • V(A∧B)=V(A)∩V(B) • V(A∨B)=V(A)∪V(B)
付値の拡張(→) • V(A→B)={a∈W;∀b aRb⇒(b∈V(A)⇒b∈V(B))}
付値の拡張(¬) • V(¬A)={a∈W;∀b aRb⇒b∉V(A)}
付値の拡張 • V(A∧B)=V(A)∩V(B) • V(A∨B)=V(A)∪V(B) • V(A→B)={a∈W;∀b aRb⇒(b∈V(A)⇒b∈V(B)))} • V(¬A)={a∈W;∀b aRb⇒b∉V(A)} • このように定義すると、論理式に関する遺伝性 w∈V(A)⇒∀w’ (wRw’⇒w’∈V(A)) が成り立つ。 • (∀(W,R,V) V(A)=W)⇔論理式Aは直観主義で真 と定義する。
モデルの解釈の一例 • クリプキモデル(W,R,V)の世界w∈Wで論理式Aが真ということを、「wで得ている知識(=命題変数)でAが判明する」と解釈する。 • ¬Aは、「これ以後どのように知識が増えても、Aとは分からない」と解釈する。 • 「時間が経てば知識は増える」というのが、命題変数の遺伝性。「知識が増えれば分かることも増えていく」というのが論理式の遺伝性。 • 特に、一点からなるクリプキモデル(=古典論理のモデル)は知識が増えないモデルになる。
直観主義フレーム上の古典論理 • では、直観主義クリプキフレームの立場から、古典論理を見るとどのように見えるだろうか? • 直観主義フレームと命題変数に対する付値は同じにして、 「 (∀(W,R,V) V(A)=W) ⇔Aは古典論理で真」 が成り立つようにVの解釈を定めたい。
極大点を見る • 極大点では、これ以上知識が増えることはないので、古典論理のモデルと変わらない。 • よって、w∈Wの真偽を極大点(無限遠点)での真偽と一致するようにすれば、古典論理のモデルになる。 • 直観主義の付値Vを用いて、 V’(A)={a∈W;∀b aRb⇒∃c (bRc∧c∈V(A))} とすればよい。
V’(p∨¬p)=W V’(A)={a∈W;∀b aRb⇒∃c (bRc∧c∈V(A))}
V’(p∨¬p)=W V’(A)={a∈W;∀b aRb⇒∃c (bRc∧c∈V(A))}
V’(p∨¬p)=W V’(A)={a∈W;∀b aRb⇒∃c (bRc∧c∈V(A))}
V’(p∨¬p)=W V’(A)={a∈W;∀b aRb⇒∃c (bRc∧c∈V(A))}
V’の意味 • 極大元で成り立つ論理式の共通部分が全体で成り立つ。
V’の意味 • 極大元で成り立つ論理式の共通部分が全体で成り立つ。
V’の意味 • V’(A)=V(¬¬A)なので、 「(∀(W,R,V) V’(A)=W)⇔Aが古典論理で真」 は、グリベンコの定理 「 ¬¬Aが直観主義で真⇔ Aが古典論理で真」 を意味している。
直観主義フレーム上の古典論理2 • 次のように(W,R)上の付値V’’を定める。 • 命題変数については、Vと同様、遺伝性を持つように定める。 • 次のように論理式全体へ拡張する。 • V’’(A∧B)=V’’(A)∩V’’(B) • V’’(¬A)={a∈W;∀b aRb⇒b∉V’’(A)} • V’’(A∨B)={a∈W;∀b aRb⇒(∃c bRc∧(c∈V’’(A)またはc∈V’’(B)))} • V’’(A→B)=V’’(¬A∨B)
補題 V(A)⊂V’’(A)⊂V’(A) • 任意の、フレーム(W,R)と命題変数の割り当てVに対して、V(A)⊂V’’(A)⊂V’(A)が成り立つ。 • Aの構成に関する帰納法で示せる。 • V(B)⊂V’’(B)⊂V’(B)、V(C)⊂V’’(C)⊂V’(C)のとき、V’’(A)は以下の通り。
V’’は古典論理 • (∀(W,R,V) V’’(A)=W)⇔Aは古典論理で真 を示す。 • ⇒は一点からなるクリプキモデルを考えれば成立。⇐を示す。Aが古典論理で真のとき、 • ∀(W,R,V) (V’’(A)=W ⇐V’(A)=W) を言えば良い。 • Aの構成に関する帰納法 • Aが変数のときは条件を満たすものはない。 • A=B∨C、¬Bのときは補題の証明より成立
A=B∧Cのとき ∀(W,R,V) V’(B∧C)=W ⇔ ∀(W,R,V) (V’(B)=WかつV’(C)=W) ⇔ ∀(W,R,V) (V’’(B)=WかつV’’(C)=W)(IHより) ⇔ ∀(W,R,V) (V’’(B∧C)=W) 以上より示せた。
動機 • ∧と¬の断片では直観主義論理と古典論理が一致することが、このモデルを使うと一目で分かる。 • V゜(A∨B)={a∈W;∃b aRb∧(b∈V’’(A)またはb∈V’’(B))} では論理式の遺伝性が成り立たず、古典論理にならない。
MP • (W,R,V’’)では意味論よりMPが成り立つことがすぐには分からない。
今後の課題 • この性質を利用して面白い論理は作れないか? • 例えば、 V’’’(A∨B)=V(A∨B) V’’’(A→B)=V’’(A→B) とすると、MPが成り立たないが、公理化できるか? (この例ではできない模様) • 他の論理への拡張(直観主義二階命題論理など)