230 likes | 387 Views
NPOによる公益事業経営の可能性と課題. 下村 仁士(株式会社キューヘン) 堀内 重人 (トラジャル旅行ホテル専門学校). 本論の構成. はじめに NPO (民間の非営利組織)の定義と形態 公益事業の供給における NPO の関与 -公共交通を中心に NPO の具体的関与事例 -自主運行バスを例に 公益事業経営と NPO の関係. 1.はじめに. NPO ( Non Profit Organization :民間の非営利組織)の存在感の高まり ・ヨーロッパやアメリカでは積極的な位置づけ
E N D
NPOによる公益事業経営の可能性と課題 下村 仁士(株式会社キューヘン) 堀内 重人(トラジャル旅行ホテル専門学校)
本論の構成 • はじめに • NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 • 公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に • NPOの具体的関与事例-自主運行バスを例に • 公益事業経営とNPOの関係
1.はじめに • NPO(Non Profit Organization:民間の非営利組織)の存在感の高まり ・ヨーロッパやアメリカでは積極的な位置づけ ・日本:1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立・施行 ・・・阪神淡路大震災の救援・復興における市民活動や その後のボランティア活動が影響 • NPOの目的意識 ・市民の自発性を基にした公的部門への関与 (これまでは政府や地方自治体が中心に展開されてきた役割) ・公的部門の役割を政府や地方自治体よりも柔軟かつ効率的に 実現 ・市民の視点を積極的に導入
1.はじめに • 公益事業と公的部門の関係 ・公的部門が直接経営 ・民間部門の経営に公的部門が関与 ※公益事業に要求される多様な社会的要請を反映するには 公的部門の関与が必要 ・・・規制緩和や民営化を背景にそのあり方が変化 • NPOが指向するもの ・多様な社会的要請の実現 NPOと公益事業との関与のあり方に注目できる。 • 本報告の目的 ・公益事業分野として交通分野を中心に着目し、NPOが公益事業に参画する可能性と課題について議論する。
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 • NPOの定義 ・日本ではNPO法に基づく認証を受けた組織を指すことが多い。 →それ以外の形態の民間の非営利組織も多い。 組織形態でNPOを定義することは困難 【Salamon and Anheierの定義 】 ① 組織であること(organized) ② 民間であること(private) ③ 利益の非分配(non-profit-distributing) ④ 自己統治(self-governing) ⑤ ボランタリー制(voluntary) 【林の定義】 「社会的使命を軸とした自発的連帯(voluntary association)」を中核的要素とした「営利の追求よりも社会的使命の追求を優先する組織」
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 【Ichinoseの指摘 】 ・公的部門と民間部門の混合部門(サードセクター)として位置づけ ・サードセクターへの期待:民間部門のもつ利点を導入しつつ、公的部門の目指す目的意識を達成。 ・NPOは個人の軸を重視したもの 【Amenomoriの分類 】 ・日本におけるNPOを法的側面から9種類に分類。 ・特定非営利活動法人を追加すると10種類。 【高橋の整理】 ・NPOの法人形態を、輸送サービス供給の可能性から整理。 本論では任意団体、公益法人、NPO法人の3つに絞って、NPOの組織形態を検討する。
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 表1 民間の非営利団体の形態
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 • 任意団体 ・従来から、市民活動やボランティア活動などで実績。 会員の目的意識が共通の方向性を持ちやすい。 町内会のような地域単位の任意団体 :会員の共益と地域における公益が一致 ・問題点:法人格がない 法的には団体の代表者や幹事などが個人として対応。 公益事業の経営に関与する規模になると障害が出る可能性。
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 • 既存の公益団体(財団法人、社団法人など) ・日本では伝統的なNPOの形態。 ・活動には主務官庁の認可や監督が伴い、現実には行政の補完的な役割を持つ側面。 ・財政面では補助金の占める部分が無視できない。 ・一部の活動では税金の無駄遣いや行政からの天下り、官僚的で硬直化した運営や業界の利益団体的な体質も。 ・会員のメリットを重視した共益事業の立場が重視されがち。 ・組織規模があれば、公益事業の経営に関与する能力はある。 交通分野:財団法人が鉄道事業免許を取得 電気事業:協同組合による運営 (例:屋久島の特定供給)
2.NPO(民間の非営利組織)の定義と形態 • NPO法人(特定非営利活動法人) ・日本では法律上限定的な定義。 ・現在のところ小規模な活動が多い。 主な活動資金源:助成金や補助金 主な人的資源:無報酬のボランティアに依存 ・自立した活動への期待 専門性、企画力、マネジメント能力、自己評価能力など ・問題点:活動目的の拘束、不十分な税制面での優遇 ・公益事業への関与:能力を身につけつつある。 電気事業:「市民共同発電所」 自然エネルギーを利用した発電設備を整備し、発電技術への関与を通じた公益事業への関与。 交通分野:移送サービスや自主運行バスへの取り組み。
3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に • 交通分野への市民の関与 ・市民の自発的な勉強会活動 ・政策提言、啓発活動 • NPO法人による活動 ・交通事業者の支援 ・公共交通の改善 (交通事業者や地方自治体とのパートナーシップ) ・新たな公共交通サービスの事業化 • 交通分野においてNPOが関与する領域 ・交通サービスの機能を階層化することで、それぞれの階層が果たすべき役割を明確化。
3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に 図1 交通サービスの供給形態
3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に • サポーター組織としてのNPO NPOの役割:交通事業者層を支援 ・駅舎やバス停の清掃・整備といった、自然発生的な活動 ・経済的支援 自治会・町内会レベルで回数券のまとめ買い 交通事業者や行政と協働して専門性を生かした活動 (バス路線図の作成など) ・組織的な支援活動 例)「樽見鉄道を守る会」 鉄道車両の客室整備、枕木交換費用の募金活動
3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に • 交通事業者と利用者の仲介役としてのNPO ・NPOの役割:交通事業者層と利用者層を仲介 ① 運行計画の策定 ② 情報の提供 ③ 輸送契約の締結 NPOは①~③の全て、もしくは一部を担う。 ・NPOによるコミュニティバスや自主運行バスの運行の関与 実際のバス運行はバス事業者に委託する形態がほとんど 例)「地区協議会」が運営する自主運行バス。 近年ではNPO法人格を取得した活動も 三重県四日市市のコミュニティバス「生活バスよっかいち」 ・コミュニティバスや自主運行バス程度では高度な専門性が 要求されず、関与への障壁が低い。
3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に3.公益事業の供給におけるNPOの関与 -公共交通を中心に • 自ら交通サービスを供給するNPO ・NPOの役割:自ら交通事業者層の役割を果たす。 例)住民協議会による自主運行バスの運行。 (道路運送法80条に基づく自家用車による有償運行許可) ・問題点:交通サービス供給に必要な専門性の確保 ・運転者の免許上の制約 ・運転者の募集・選任 ・NPOによるバス運行事例 ・「深良の里たけすみの会」(静岡県裾野市) 収益事業として貸切バスと無料送迎バス(県・市の補助) を運営。 ・「直方あしすとネットワーク」(福岡県直方市) バス運行という専門性の高い分野に特化した活動。
4. NPOの具体的関与事例 -自主運行バスを例に 事例1 「生活バスよっかいち」 ・構想のきっかけ:地元バス路線の廃止 羽津いかるが町:駅から2km程度離れている 「買物や病院へのアクセス手段が無くなるのは困る」 ⇒任意団体の住民協議会を設立 ・地元企業の協賛金をもとに、貸切バスとして無賃実験運行を開始。 ・毎月80万円の資金を、 沿線スーパーや病院が負担 ・当初は自治体の負担はなし 後に実績を評価して負担
4. NPOの具体的関与事例 -自主運行バスを例に 住民協議会のNPO化 ⇒本格的な有償運行を開始 (道路運送法21条に基づく貸切バスによる乗合運行許可) ・運行の概要 無償運行時 からほとんど 変化なし • 「生活バスよっかいち」の特徴 • ・地域住民の交通の確保と事業性の両立が可能な無理のない 運行計画を立案・実行。 • ・今後の課題:資金の調達方法、新規需要の開拓
4. NPOの具体的関与事例 -自主運行バスを例に 事例2 「直方あしすとネットワーク」 ・構想のきっかけ ① 地元バス路線の廃止 現在は郊外部の末端区間のみだが、市内全域のバス路線廃止も噂されている。 ② 「足なし団地の存在」 高齢化に伴い、公共交通機関の不備を住民が問題視。 ③ 中心市街地の活性化 公共交通機関の不備が中心市街地の空洞化を進展させ、まちづくりへ負の影響を与えるという問題意識。 ・現実には便利で低廉なバスサービスの提供は困難 バス事業者への補助が1500~3000万円必要といわれる。 「NPOで低コストのバスサービスを供給したい!」
4. NPOの具体的関与事例 -自主運行バスを例に バス事業者で運転士・整備士などの経験のある市民を中心に NPOを設立 ・運行計画の概要 • 「直方あしすとネットワーク」の特徴 • ・バスの運行という自らの得意分野に特化した活動。 • ・今後の課題:不得手な分野(市民間の意見調整など)にどのように対応していくか。
5.公益事業経営とNPOの関係 • 供給技術に対する市民の関与 ・従来はブラックボックス的存在→変化の兆し 例)電気事業や交通分野など 市民が持つ目的意識を達成する上で、公益事業の 供給技術が重要に ・関与の形態 既存の公益事業者とのパートナーシップ 自ら公益事業者として活動 どちらが選択されるかは、事業分野や運営に必要な費用と資金調達方法、人的資源、技術的・制度的要素などに依存。
5.公益事業経営とNPOの関係 • 市民によるユニバーサルサービスの供給 ・内部補助の限界(規制緩和など)→外部補助への転換 公的部門の果たす役割の重要性:現実には限界が・・・ ・経営効率性の低さ ・技術力や地域社会の意見調整力の低さ ・財政難から資金負担能力の低下 民間部門への期待:競争と市場メカニズムによる効率化 ・効率化自体が限界に達する ・多様な社会的要求を反映しにくい 公的部門と民間部門が複合して起きる問題点 ・公的部門からの補助:実態は民間部門の収益保障 ・利用者や市民の視点が欠落 こうした現状を打破する上でNPOが果たす役割と期待
5.公益事業経営とNPOの関係 • NPOの可能性と課題 ・公益事業の経営 事業性の確保と多様な社会的要請の両立が必要 ・NPOの非営利性と社会的使命を追求する方向性 ユニバーサルサービスの維持で効果を発揮 より効率的に多様な社会的要求を達成する 供給技術への関与にも期待 ・NPOの活動:現状では得意分野に特化 得意分野を拡大することで、公益事業の経営に至る可能性。 →どのようにして拡大していくかが問題 ・多種多様な市民の参加 ・NPO活動の活性化と、活動相互のパートナーシップ ・活動の継続性:安易に公益事業をやめることはできない。