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中国語を母語とする日本語学習者の接続詞の習得 ― 並列の接続詞の使用について ―

中国語を母語とする日本語学習者の接続詞の習得 ― 並列の接続詞の使用について ―. 日本語教育学講座M1  蔡筱柔. 接続詞の習得の難しさ. 名 詞 、動詞に比べ、接続詞は 実質的な意味を持っておらず 、その用法を理解するのは容易ではない 。 俵山 (2004) では、接続詞の指導と習得の難しさ は 、 「 そして、それから、それに 、 そのうえ 」 のような 類義表現の 使い分け で あると指摘されている 。. 接続詞の習得の難しさ. 以下 のような誤用が見られ る : ①  * 窓を開けましょう。 それから 新鮮な空 気 を 入れましょう。(→そして)

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中国語を母語とする日本語学習者の接続詞の習得 ― 並列の接続詞の使用について ―

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  1. 中国語を母語とする日本語学習者の接続詞の習得―並列の接続詞の使用について―中国語を母語とする日本語学習者の接続詞の習得―並列の接続詞の使用について― 日本語教育学講座M1 蔡筱柔

  2. 接続詞の習得の難しさ • 名詞、動詞に比べ、接続詞は実質的な意味を持っておらず、その用法を理解するのは容易ではない。 • 俵山(2004)では、接続詞の指導と習得の難しさは、「そして、それから、それに、そのうえ」のような類義表現の使い分けであると指摘されている。

  3. 接続詞の習得の難しさ 以下のような誤用が見られる: ① *窓を開けましょう。それから新鮮な空気 を入れましょう。(→そして) ② *コーヒー2つ。そして、チーズケーキを1 つ下さい。(→それから) ③ *上司に出張の報告書を出すように言わ れた。それに明日までだ。(→しかも) ④ *昨日は、ホストファミリーの家でごちそう になった。さらに、帰りには、アパート まで送っていただいた。(→そのうえ)                           (守屋2000、庵・三枝2013より)

  4. 接続詞の習得の難しさ • 楊・馬場(2004)も、中国語話者にとっては、並列の接続詞「そして、それから、それに、そのうえ」に対応する中国語訳が多ければ多いほど、それらの意味と使い分けも把握しにくくなると述べている。 • そこで、本研究では、中国語話者の並列の接続詞(「それから」「そして」「また」「さらに」「しかも」「それに」「そのうえ」)の習得状況を調査し、母語話者と比べ、その使用にどのような差があるか、また母語の知識が並列の接続詞の習得にどのような影響を及ぼすかを検討する。

  5. 並列の接続詞の機能に関する研究 これまでの接続詞の研究は A.広範囲の接続詞についてグループ分 けを行ったもの B.個々の接続詞について記述を行った もの に大きく二分できる。

  6. 並列の接続詞の機能に関する研究 A.の研究には市川(1978)、伊藤・阿部(1991)、石黒 (2008)などがある。しかし、同じグループに入れら れた類似性を持つ接続詞の使い分けに焦点を当てて  はいない。 B.の研究には「そして」「それから」を扱ったひけ (1989)、「それに」「そのうえ」「しかも」を扱っ た伊豆原(2004)、「そして」「それから」「それに」 「そのうえ」を扱った楊・馬場(2004)などに各形 式について知見を与えているが、研究者によって用 語が不統一であり、まだ問題は残る。

  7. 並列の接続詞の機能に関する研究  そこで、ここでは並列の接続詞の体系的分析による中俣(2010)と庵・三枝(2013)の並列の接続詞の機能を表1と表2のようにまとめる。

  8. 表1中俣(2010)の並列の接続詞の機能

  9. 表2 庵・三枝(2013)の並列の接続詞の機能

  10. 並列の接続詞の習得に関する研究 • 安藤(2002) • 被験者:中級から上級の5人の日本語学習者 • タスク:作文に使用した接続詞と母語話者の文系論文に使われた接続詞とを比較した。 • 結果:初級レベルから導入した接続詞は比較的定着しやすいので、定着した接続詞をほかの接続詞の代用として用いられる傾向が見られる。そのため、誤用が生じ、またほかの接続詞の不使用というマイナスな結果があることを指摘している。

  11. 並列の接続詞の習得に関する研究 これらの代用には、以下の例文⑤と⑥のように、中国語話者が意味のまったく異なる接続詞を用いる誤用は見られる。 ⑤ *先生は私の家を訪ねたいそうだ。それから、 うちまでの行き方を先生に説明する。 →(それで) ⑥ *中国の留学生として、物価の高いの日本に住 んでいて、生活費の來源は問題のひとりだ。 そして、アルバイトをするのは当たり前のも のだ(ママ) 。→(したがって)          (安藤2002より)

  12. 並列の接続詞の習得に関する研究 • 倉持・鈴木(2007) • 被験者:中級の8人の日本語学習者 • タスク:接続詞の穴埋めテストとフォロー アップインタビューで調査が行われた。 • 結果:これまで初級のものとされてきた 「そして」「それから」に誤用が多いと指 摘された。フォローアップインタビューを 通して、「そして」に関する学習者の理解 と実際の意味との間に差があること、また 「それから」との違いがよくわからないと いうことが分かった。

  13. 並列の接続詞の習得に関する研究 以下の例文⑦は、中国語話者による「そして」の誤用例である。 ⑦*図書館で勉強しようとしたんだけど込んで いてね。うちはうるさいし。そして、 喫茶店へ行って勉強することにしたんだ。 →(それで、だから) (倉持・鈴木2007より) • 中級の日本語学習者の接続詞の使用傾向を記述しているが、習熟度別での考察はされていない。さらに、実験項目に並列の接続詞は2個しか使われていないので、ほかの並列の接続詞の使用状況を調査されていない。

  14. 並列の接続詞の習得に関する研究 • 許(2010) • 被験者:台湾人日本語学習者3名 • タスク:3年半の作文データを使用し、接続詞の発達過程を縦断的に考察している。 • 結果:並列の接続詞の使用状況は、「そして」は初級の段階に出現し、継続的に多く使われているが、「それから」は初級段階でのみ使われている。「また」、「それに」の使用は学習者によって異なっているが、「そして」、「それから」より使用頻度はかなり低い。 • ほかの並列の接続詞「しかも」「そのうえ」「さらに」は未使用ということが分かったが、これらの接続詞の習得状況はまだ明らかにされていない。

  15. 研究課題 本研究では、中国語話者を対象とし、並列の接続詞の習得について、以下の観点から調査を行う。 (1)7つの並列の接続詞について学習者の習得 を考察し、母語話者の使用とどのような違 いがあるのか。 (2)習熟度別による習得の変化があるのか。 (3)対応する中国語訳が多いほどの接続詞の用 法は習得が困難であるか。

  16. 先行研究を踏まえて並列の接続詞の機能と用法を12個に分類した(表3)。先行研究を踏まえて並列の接続詞の機能と用法を12個に分類した(表3)。

  17. 本調査 • 被験者: • 3年以上日本語を勉強していて、日本語能力試験N2以上を取得している学習者である。日本語を述べるという経験に乏しいこと、接続詞を必要とする状況をあまりないことから、初級レベルの学習者が排除する。 • 中国語話者30人 • 日本語母語話者30人

  18. 本調査 課題は二つの部分に分け、日本語習熟度 テストと選択式問題、文完成テストを行う。 まず、学習者の日本語能力を測るために 日本語能力試験2級受験対策用の問題集 (田中他1995)からランダムに選んだ 文字・語彙問題と文法問題各20問(計40 問)からなる習熟度テストを実施する。 その点数で中国語話者を中・上級学習者を 分け、日本語の習熟度は並列の接続詞にど のように関わるかを明らかにしたい。

  19. 本調査 次は接続詞テストで、テスト形式として、表3の12個の並列の接続詞の用法の選択肢問題と文完成テスト各2問(計48問)を行う。 • 選択肢問題:問題は2文からなる。質問紙の上に列挙され た接続詞7つの中から、第2文の文頭(アンダーラインの 部分)に入れることが最も適切であると思われる接続詞 を選んで記入してもらう。 例: 1.じゃ、そろそろ帰りますね。_______これお土産です。 2.彼女は朗読のボランティアをしている。 _______もう 20年だという。 • 文完成テスト:問題は2文からなる。第1文と第2文の文頭にある接続詞を提示する。被験者に第2文を完成してもらう。 例: 1.夏休みには仙台へ行く。時間があれば、さらに、 ________________。 2.彼は子どもが好きだ。それに、 ___________________。

  20. これからの課題 • 7つの並列の接続詞の機能と用法を12個に分類したが、例外の用法はまだある可能性があるので、より詳しく分類する必要がある。 • 中国語話者と日本語母語話者各10人を被験者として、予備調査を行う。

  21. 参考文献 • 安藤淑子(2002)「上級レベルの作文指導における接続詞の扱いについて--文系論文に用いられる接続詞語彙調査を通して」『日本語教育』115pp. 81-8 • 庵功雄・三枝玲子(2013)『日本語文法演習まとまりを作る表現―指示詞、接続詞、のだ・わけだ・からだ―』スリーエーネットワーク • 石黒圭(2008)『文章は接続詞で決まる』 光文社 • 伊豆原英子(2004)「添加の接続詞「それに、そのうえ、しかも」の意味分析」『愛知学院大学教養部紀要』52(1)pp.1-17 • 市川孝(1978)『国語教育のための文章論概説』 教育出版 • 伊藤俊一・阿部純一(1991)「接続詞の機能と必要性」『心理学研究』Vol.62,No.5,pp.316-323 • 許佳璇(2010)「作文における接続詞の縦断的習得研究―LARP at SCU コーパスを対象に―」 東呉大学日本語文学系碩士論文

  22. 倉持益子・鈴木秀明(2007)「日本語学習者における接続詞の習得―留学者の接続詞使用状況―」『神田大学紀要』19号 pp.211-234倉持益子・鈴木秀明(2007)「日本語学習者における接続詞の習得―留学者の接続詞使用状況―」『神田大学紀要』19号 pp.211-234 • 田中望・足立章子・梅田康子・刈谷仁美・斎藤裕美・高橋優子・野口紀子(1995)『日本語能力試験対策項目整理2級問題集』 東京:凡人社 • 俵山雄司(2004)「接続詞の指導について--「指示語を含む複合接続詞」と「談話を構造化する接続詞」」『筑波応用言語学研究』 11pp. 97-110 • 中俣尚己(2010)「並列を表す接続詞の体系的分析」『日本語文法 』10(1)pp.20-36 • 守屋 三千代(2000)「添加型の接続語について」『日本語日本文学』10pp.45-58 • ひけひろし(1989)「接続詞の記述的な研究」『ことばの科学2』 むぎ書房 • 楊 暁輝・馬場 俊臣(2004)「接続詞「そして,それから,それに,そのうえ」の用法」『北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 』54(2)pp.27-42

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