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臨床倫理の教育 -日常臨床における倫理的問題の対応法-

臨床倫理の教育 -日常臨床における倫理的問題の対応法-. 佐賀市立国民健康保険三瀬診療所所長 佐賀大学医学部臨床教授 白浜雅司 E-mail:HQC00330@nifty.ne.jp http://square.umin.ac.jp/masashi. 臨床倫理教育で大事な姿勢. 倫理原則、倫理的モデルケースを最初に学んでどう当てはめるかではなくもやもやとした事例の中でどう対応するかを学ぶ 悩むことは大事だ、しかし一人で背負い込まないように

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臨床倫理の教育 -日常臨床における倫理的問題の対応法-

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  1. 臨床倫理の教育-日常臨床における倫理的問題の対応法-臨床倫理の教育-日常臨床における倫理的問題の対応法- 佐賀市立国民健康保険三瀬診療所所長 佐賀大学医学部臨床教授 白浜雅司 E-mail:HQC00330@nifty.ne.jp http://square.umin.ac.jp/masashi

  2. 臨床倫理教育で大事な姿勢 • 倫理原則、倫理的モデルケースを最初に学んでどう当てはめるかではなくもやもやとした事例の中でどう対応するかを学ぶ • 悩むことは大事だ、しかし一人で背負い込まないように • 自分の価値観は大事だが、それを患者(若手医師)に押し付けることなく、かといって患者(若手医師)の意見を鵜呑みにするのでもなく、患者(若手医師)との意見交換を通して患者の真の最善の利益を見出せる能力を育てていく。

  3. 事例検討の目的 • 何かもやもやとしたことが残る、対応に苦慮する(なぜか感情的になってしまうような)事例が、倫理的な問題を含んでいることを知ってほしい。 • 臨床倫理の問題は、特別な事例ではなく、日常身の回りで起きていることを知ってほしい。 • 日常臨床において、何とか対処している倫理的問題を含む事例を、論理的に見直すことで、将来出会う新たな問題への気付き、対応がしやすくなるように。次につながる検討を! • 患者だけでなく医療者のケアを目的に!

  4. 事例提示のやり方 • できるだけ、簡潔に困っている事例を提示する。 • 医学的な背景はもちろん大事だが、それ以上に関係者の考え、価値観が大事。 • 最初は、何が問題なのか、ジレンマなのかはっきりしないことも多い。もやもやとしたままの提示して、一緒に考えながら、問題点や足りない情報を明らかにすればよい。

  5. 事例 • 34歳女性。最近体がだるいと診療所を受診された。肺炎(WBC15000、CRP10.8)と空腹時320の高血糖があった。入院も勧めたが、入院はしたくないという。外来での抗生物質点滴をスタートして肺炎は徐々におちついてきた。一方空腹時血糖はSU剤で、1週間で250までは低下してきたが、食後のインシュリン分泌が悪く、抗GAD抗体も陽性で「インシュリンが不足しているのでインシュリン注射をした方がいいですね」と勧めたが、「注射はいやです」と拒否されてしまった。

  6. プライマリケアと臨床倫理の共通性(伴信太郎)プライマリケアと臨床倫理の共通性(伴信太郎) 1、 多くの同様な疾患を有する患者の一人としてではなく、それぞれを固有な存在として尊重し、対応を心がける。 2、 良好なコミュニケーションが必須である。 3、 医師からの一方的な“指示”ではなく、話し合いと教育を重視する。 4、 「病気を治すことが究極の目的ではなく、良い人生を送れることが大事なのである」という価値観。

  7. 家庭医療の現場と病院でおきる臨床倫理問題の違い(H.Brodyの来日講演より)家庭医療の現場と病院でおきる臨床倫理問題の違い(H.Brodyの来日講演より) 1)日常的に起きる問題の違い(臓器移植や脳死の判定をすることはないなど) 2)患者の特徴の違い(軽症で、意識もしっかりして、緊急性のあることは少ない) 3)場と人間関係の違い(患者は自立しており、話し合いや自己決定が可能、継続的で良く知ってい る人間関係) 4)家族、医療スタッフ、文化、地域の影響が大きい

  8. 臨床倫理の位置付け

  9. 臨床倫理の考え方 • 問題の認識 • 問題の分析 • 情報収集 •  対応 • 評価と修正

  10. Jonsenらの4分割法 医学的適応      患者の意向(選好) Medical IndicationPatientPreferences QOL          周囲の状況   Quality of LifeContexual Features 4つの枠に何か入れること。2つ以上の枠に入れても可。わからなければ周囲の状況の「その他」に。

  11. 臨床倫理とは  日常診療の場において、医療を受ける患者、患者の関係者、医療者間の立場や考えの違いから生じる様々な問題に気付き、分析して、それぞれの価値観を尊重しながら、関係する者が納得できる最善の解決策を模索していくこと。 (白浜雅司)

  12. 事例検討 • この事例で、何が問題でしょう。 • この事例に対応するために、さらにどのような情報がほしいですか。 • あなたがこの患者の関係者(医師、看護師、保健師、栄養士、家族、その他(     ))であったらどのような対応をしたいですか考えてください。

  13. Balance Personal Professional 自分自身 配偶者 子供 両親 患者診療 教育 研究 Social Responsibility 地域社会 学校 教会 • Life StageによってこのBalance(いい加減は異なる • 周囲からのサポートがなければ、バランスは保てない (配偶者・友人・同僚・上司・横のつながり・・・)

  14. プロフェッショナリズム教育 • あなたは一人診療所の医師です。今日は日曜日の休診日で娘の結婚式ででかけようとしたところ、診療所の急患対応の電話がなりました。うつ病で長年治療していて、最近はおちつていた患者さんから、「先生、もう死にたい。みんなに迷惑ばかりかけていて。」という電話でした。さああなたならどう対応しますか。 • この対応は倫理、コミュニケーション、問題把握、解決能力など広範な対応能力がためされる。

  15. 日本と欧米の違い(自己決定を実現する土壌が違う)(中島弘先生の図を変更)日本と欧米の違い(自己決定を実現する土壌が違う)(中島弘先生の図を変更) 社会 家族 世間 家族 個人 個人 家族主義、集団主義を 大切にする相互依存的 日本社会 個人主義を是とするまたは 前提とする欧米社会

  16. 倫理的問題を含む事例の考え方(1) 1)何かもやもやした問題事例に気付く。 2)患者さんの置かれている医学的状況(QOLを含む)を明らかにする。 3)患者さんの判断能力の有無を確認した上で患者さんの希望を把握する。 4)患者さんが判断能力を失っている場合には、事前指示があるかを確認し、ない場合は代理人を特定する。

  17. 倫理的問題を含む事例の考え方(2) 5)家族の希望、周囲の状況(経済的問題、医療資源の問題、法律など)を把握する。 6)何が倫理的問題(ジレンマ)で、誰が問題にしているかを明確にする。 7)話し合いにより、誰もが納得できる方法を模索し、問題となっている倫理的ジレンマの解決を目指す。

  18. 事例 • 34歳女性。最近体がだるいと診療所を受診された。肺炎(WBC15000、CRP10.8)と空腹時320の高血糖があった。入院も勧めたが、入院はしたくないという。外来での抗生物質点滴をスタートして肺炎は徐々におちついてきた。一方空腹時血糖はSU剤で、1週間で250までは低下してきたが、食後のインシュリン分泌が悪く、抗GAD抗体も陽性で「インシュリンが不足しているのでインシュリン注射をした方がいいですね」と勧めたが、「注射はいやです」と拒否されてしまった。

  19. 4分割表の使い方 1)4つの枠に何か 入れること 2)2つ以上の枠に 関わるものは大事 3)問題と同時に不 十分な情報確認? 4)全体を見渡し、 急ぐところ、実行 できるところから 対応を考える MI PP QOL CF

  20. 事例の4分割表による分析 PP MI 糖尿病、肺炎の合併 I型糖尿病で、インシュリン適応 インシュリンしたくない  なぜ?  ・親がDMで低血糖入院  ・DMを認めたくない  ・仕事中できず  ・結婚を控えている CF QOL 仕事に価値観 最後の結婚にかけている 家族の思い 婚約者の思い 医療施設の融通性

  21. 自己決定と患者の最善の利益の関係 自己決定 → 「患者の真の自己決定」=最善の利益         ↑ 対話・議論・再考・熟慮 浅井篤・福原俊一編 重症疾患の診療倫理指針、医療文化社、2006年より

  22. 臨床倫理を日常化するには • 臨床倫理的な問題点への気付きを促す機会を • 気付いた倫理的問題を自分なりに考えてみる機会を • 他の人と一緒に話し合うことで、新たな対応方法が見えてくる経験を • 一度に解決できずとも、一緒に考えた上での対応は、状況を少しでも好転させ、次も考えてみようという力になる

  23. チーム医療に携わる専門家へHIV感染者大石敏寛さんの言葉チーム医療に携わる専門家へHIV感染者大石敏寛さんの言葉 • 自分の仕事を理解してほしい。       どのような影響を患者に与えるかを理解してほしい。 • 相手の仕事を理解してほしい。           互いの連携のために。 • 自分の仕事に傲慢にならないでほしい。 自分の仕事が一番だと思わないでほしい。 • 自分の仕事に誇りをもってほしい。 • 是非患者と一緒に希望を持ってほしい。

  24. 高等教育での倫理教育の 目標(D. Callahan. et al:Teaching ethics in Higher Educaiotn, Hasting Centerより) 1)道徳的想像力を刺激すること 2)倫理的問題を認識すること 3)問題を解析する技術を発展させる 4)道徳的義務と個人の責任の感性をひきだすこと 5)意見の不一致や曖昧さに寛容であり耐えられること

  25. 二ーバー牧師の祈り 主よ、 変えられないものを   受け入れる心の静けさと、 変えられるものを   変える勇気と、 その両者を見分ける   英知を与えたまえ。           アーメン

  26. 後継者の育成(卒後臨床研修必修化「地域医療・保健」研修)後継者の育成(卒後臨床研修必修化「地域医療・保健」研修)

  27. 今後の学習のために 1)「臨床倫理の討論」(白浜雅司のHPの中から) http://square.umin.ac.jp/masashi/discussion.html 事例検討、全論文、今後のセミナー案内、 2)臨床研修指導医のための倫理教育WS 2007月2月11(日)-12日(月)東京大学 3)家庭医療学会倫理委員会のメール相談(まだなし) 4)臨床倫理SWATチームの支援 浅井篤熊本大学大学院生命倫理教授中心の17名 5)来年の家庭医療学会6月23日(土)午前DNARのWS 本村先生(+稲葉一人(法律家)、浅井篤(生命倫理)

  28. 御清聴ありがとうございました

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