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全身疾患患者の診察法. 森實敏夫. 重症度と緊急度. 意識、血圧、呼吸?. 重症度 生命危機の程度 臓器機能不全の程度 緊急度 救急処置を要する時間. 心血管系、脳神経、肝臓、腎臓?. 何らかの治療を、すぐにしないといけないのか?. 救急患者の診療手順. 緊急度(急性危険状態)の瞬時把握 一次救命処置 / 患者情報の聴取 全身診察 / 神経学的診察 / 専門的診察 補助診断法の選択 / 検体採取・提出 病態の把握 治療方針決定 治療の開始. 即座に評価すべき項目. 気道 呼吸状態 脈拍 血圧 心拍動 意識状態.
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全身疾患患者の診察法 森實敏夫
重症度と緊急度 意識、血圧、呼吸? • 重症度 • 生命危機の程度 • 臓器機能不全の程度 • 緊急度 • 救急処置を要する時間 心血管系、脳神経、肝臓、腎臓? 何らかの治療を、すぐにしないといけないのか?
救急患者の診療手順 • 緊急度(急性危険状態)の瞬時把握 • 一次救命処置/患者情報の聴取 • 全身診察/神経学的診察/専門的診察 • 補助診断法の選択/検体採取・提出 • 病態の把握 • 治療方針決定 • 治療の開始
即座に評価すべき項目 • 気道 • 呼吸状態 • 脈拍 • 血圧 • 心拍動 • 意識状態
Japan Coma Scale Grade I 覚醒している 1 大体清明だが、今一つはっきりしない。 2 時、場所、人の見当識障害がある。 3 名前、生年月日がいえない。 Grade II 刺激で覚醒する (R:不穏、I:糞尿失禁) 10 ふつうの呼びかけで容易に開眼する。 20 大きな声または体をゆさぶることによって開眼する。 30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する。 Grade III 刺激しても覚醒しない 100 痛み刺激を払いのける動作をする。 200 痛み刺激で手足を少し動かしたり、顔をしかめる。 300 痛み刺激にまったく反応しない。
全身状態の視診 • 皮膚の色調・温度 • 皮疹 • 出血斑 • 腫脹 • 変形 • 着色 • 創傷
胸部の診察 • 胸郭の呼吸性運動 • 呼吸音 • 呼吸型 • 心拍動 • 心音
腹部の診察 • 腸雑音 • 圧痛 • デファンス(筋性防御) • 肝腫大
ミニ神経学的検査 • 意識レベル • 眼の所見 • 眼球の位置 • 眼球運動 • 瞳孔の大きさ、左右差、対光反射 • 運動障害 • 命令に応じた四肢の運動 • 疼痛刺激に対する反応
緊急検査 • 動脈血ガス分析 • 末梢血、血液型 • 血清生化学 • 血清電解質 • 血糖 • 血液凝固 • 尿一般
動脈血ガス分析 • pH (7.35-7.45) • PaCO2 (35-45 mmHg) • HCO3-(23-28 mEq/L) • PaO2 (95, 100-0.3×年齢) • SPO2 パルスオキシメータを人差し指の先に装着し、簡単に測定ができる。正常値は安静時で93%以上。90%以下になるとチアノーゼを呈しはじめ、50%以下になると組織損傷を起こす。
末梢血 • ヘモグロビン Hb • 男性 13.5-17.5 g/dl • 女性 12-15 • ヘマトクリット Ht • 男性 40-50% • 女性 35-45 • 白血球数 WBC
AST ALT LDH CK Amylase NH3 CRP BUN Na, K, Cl, Ca 血糖 血清生化学ほか
血小板数 プロトロンビン時間(PT) 活性化部分トロンボプラスチン時間(A-PTT) フィブリノーゲン フィブリン分解産物(FDP) Dダイマー(D-dimer) 血液凝固
尿量 比重 潜血反応 糖 蛋白 ケトン体 ビリルビン ウロビリノーゲン 尿検査
補助診断法 • 心電図 • 胸部X線撮影 • CTスキャン • 超音波検査(エコー、US) • 内視鏡検査 • 血管造影 • MRI • RI検査 • 脳波検査
内科的疾患と全身管理1 森實敏夫
ショック 血圧低下により末梢循環が著しく障害され、その結果、末梢組織の代謝が 損われた状態。 • 神経原性ショック(neurogenic shock) • 循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock) • アナフィラキシーショック(anaphylaxy shock) • 敗血症性ショック(septic shock) • 心原性ショック(cardiogenic shock) • その他のショック
ショックの状態では、 • 収縮期圧<90mmHg、 または通常の血圧より30mmHg以上低下 • 臓器循環障害 • 尿量<20ml/時間 • 意識障害 • 末梢血管収縮
アナフィラキシーショック • I型アレルギーによる • 薬剤が原因のものが最も多い:キシロカイン、抗生物質、造影剤 • 抗原暴露後1-30分後に起きる • 症状 • 蕁麻疹様皮疹 • 気管支喘息様症状 • 血圧低下 • 痙攣 • 重症の場合:ボスミン(エピネフリン)0.2-0.5mgSC,症状に応じて15分から20分間隔で再投与 • 気道確保、人工呼吸、心マッサージなど必要に応じて • クロルトリメトン1AゆっくりIV、ハイドロコルチゾン200-500mgIV
神経原性ショック • 疼痛などが引き金になりVaso-vagal reflexを起こし、除脈・心収縮力低下が起きる • 末梢血管拡張で四肢の温感あり • 多くの場合、頭を低くして衣服をゆるめ、しばらく観察するのみで改善する。改善が見られないときは、ラクテックにて血管確保を行い、硫酸アトロピン1A(0.5mg)静注。 更に改善が見られないときは、エホチ-ル1A/生食20mlを1/5ずつ繰り返し静注する。
循環血液量減少性ショック • 出血や脱水によるもの • 輸液・輸血の指標 • 収縮期血圧100mmHg以上 • 脈圧30mmHg以上 • 中心静脈圧(CVP)3-10cm水柱 • 尿量30ml/時間以上
高血圧の定義 • 140/90 mmHg以上 • 治療目標 140/90未満 • 糖尿病、慢性腎疾患などがある場合は130/80未満 • 高血圧前症 120-139/80-89 mmHg • 正常 120/80 mmHg 未満 *2003年JNC-VII
高血圧 • 成人の30%、虚血性心疾患患者の60%が高血圧 • 待機的手術後の心血管系の疾患による死亡オッズ比4 • 全身麻酔中の血圧が不安定 • 周術期の心不全、腎障害、脳血栓・塞栓、心筋梗塞のリスクが高くなる
高度の高血圧 • 無治療の高血圧患者(平均211/105mmHg)では麻酔時の血圧低下が著しく、さまざまな刺激による昇圧が起きやすい • 術前の血圧の半分以下まで低下すると、心筋虚血が起きやすい • 術前の拡張期血圧が110mmHg以上の場合、不整脈、心筋虚血、心筋梗塞、脳卒中、腎不全のリスクが高い • 170/110mmHg以上の場合は治療して140/90mmHg未満までコントロールするのが望ましいが、緊急手術が必要な場合は、カルシウム拮抗薬を点滴静注して徐々に低下させる
高血圧性緊急症 • 定義:血圧の著しい上昇により、脳・心・腎などの臓器障害をきたすか、それが 進行しつつある状態。高血圧性脳症、脳出血、進行性腎障害、急性肺水腫を伴う 急性左心不全、眼底出血などがみられる。多くの場合、220/130mmHg 以上のことが多く、緊急かつ適正な降圧を必要とする。
診断基準 1)拡張期血圧が130mmHg以上 2)眼底うっ血乳頭 3)腎機能が進行性に悪化 4)意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、局所神経症状
治療 • ニフェジピンの舌下のように急速に血圧を下げると、脳卒中や心筋梗塞が誘発されるリスクが高い。 • 点滴静注 • Nitroprusside— 0.25 to 0.5 µg/kg per min; maximum dose: 8 to 10 µg/kg per min. • Nicardipine— 5 mg/h; maximum dose: 15 mg/h • 2-6時間で拡張期圧を100-105mmHg間で下げる。最初の降下が25%を越えないように徐々に下げる。
服薬中の高血圧患者 • 原則として手術日当日も服薬させる • 利尿薬は48時間前から中止、ただし水電解質の管理が十分できる場合は続けさせる • ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬は周術期のリスクを高めるが続けさせる方が無難 • βブロッカーは中止させてはいけない
血糖のコントロール • 200mg/dl以下にコントロールする • 食事療法のみの2型糖尿病→特に治療必要なし。術前と術後すぐに血糖を測定。200mg/dlを超えていた場合、少量の短時間作用型インスリン投与。 • 経口糖尿病薬投与の2型糖尿病→前日まで服用させ、当日は服用しない。>200mg/dlは同上。 • インスリン投与2型および1型糖尿病→当日は量を調整してインスリン投与。(中間型に変更する場合もある)。 • ICU入院急性心筋梗塞患者では80-110mg/dlの厳重なコントロールの方がアウトカムが優れている
インスリン投与2型および1型糖尿病 • 早朝の手術・処置で朝食が遅れるだけの場合はインスリン投与をその分遅らせる。 • 朝食が取れない場合 • 1日1回投与の場合は3分の2に減量 • 1日2回投与の場合は半分に減量 • 朝食・昼食ともに取れない場合 • 1日1回投与の場合は半分に減量 • 1日2回投与の場合は3分の1に減量 • 午後に手術・処置が行われる場合 • 半分に減量 + 5%ブドウ糖100ml/時間
インスリン投与2型および1型糖尿病 • 複雑・長時間の手術 • インスリンの静脈投与 • 固定レート • 血糖 201-250mg/dl 1単位/時間 • 血糖 251-300mg/dl 2単位/時間
インスリン投与2型および1型糖尿病 • 短時間作用型インスリン皮下注射のスライディング・スケール Sliding scale:増量する • 0 ~ 70 mg/dl – 医師にコンサルテーション • 0 ~ 200 -- no insulin • 201 ~ 250 -- 1 X (1日量/30) 単位の短時間作用型インスリン • 251 ~ 300 -- 2 X (TDI/30)単位増量 • 301 ~ 350 -- 3 X (TDI/30)単位増量 • 351 ~ 400 -- 4 X (TDI/30)単位増量 • 401 ~ 450 -- 5 X (TDI/30)単位増量 • >450 --医師にコンサルテーション
待機的手術時のインスリン投与 • 5%グルコース+KCl 20meq/Lを持続点滴(100ml/hour)し即効型インスリンを側管から持続注入する。 • 血糖は120~180mg/dlに保つ。(点滴中は血糖値は実際の値より50mg/dl以上高目にでる。) • 術前1日使用量が40U/dayでは1.0U/hで注入,40~80U/dayでは1.5U/h,80U/day以上では2.0U/hとする。 • 血糖は1~2時間おきに測定し120~180mg/dlに保つように,インスリン量を調節する。 • 血糖が180mg/dl以上では持続注入インスリン量を0.5U/h増量する。 • 120mg/dl以下では持続注入インスリン量を0.5U/h減量する。 • 血糖が下がりすぎてもインスリンは術中最低0.5U/hは必ず注入する。この場合は点滴するブドウ糖の量を増量して対処する。
糖尿病性昏睡 • 原因不明の昏睡の患者をみたら、常に低血糖と高血糖の両者を考慮する。 *Na+- HCO3-- Cl-
低血糖性昏睡 • 糖尿病の治療中の患者に見られることが多い • 血糖値と症状はあまり相関しないが一応の目安として • 70mg/dl:副交感神経優位(空腹感・悪心・あくび・徐脈) • 50 :大脳機能低下(会話減少・嗜眠) • 35 :交感神経優位(頻脈・血圧上昇・過呼吸) • 20 :昏睡、痙攣 • 高血糖よりも低血糖の方がすみやかな処置を必要とする。
低血糖の治療 • 軽症(経口摂取可能) • ペットシュガー1袋(8g)、氷砂糖、ジュースなどを摂取させる • スナック、菓子などなんでもよい。 • 重症(経口摂取不可能) • 50%ブドウ糖20ml(10g) 静注 • 多くは数分~15分で回復する。効果がなければ追加投与する。 • 経口糖尿病薬による低血糖は遷延する傾向があり、注意が必要 • 血糖は150mg/dl位になるように、5~10%ブドウ糖の点滴 静注によりコントロールする。
内科的疾患と全身管理2 森實敏夫
軽度のリスクがある患者1 • 軽度の慢性肝炎 • 無症状の軽度の慢性肝炎患者はリスクが低い:14例の34件の手術では主要な合併症はなかった • 脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH) • 待期的手術ではリスクの上昇はない • 飲酒者は禁酒させる
軽度のリスクがある患者2 • 自己免疫性肝炎 • 代償性の自己免疫性肝炎患者はリスクが低い:ステロイド服用患者はHydrocortisoneを投与する • ヘモクロマトーシス • 糖尿病、心筋症の合併をチェックすること • ウィルソン病 • 精神神経系異常がある場合、インフォームド・コンセントに注意。D-penicillamineは創傷治癒を遅延させるので、一時減量する
待期的手術の禁忌1 • 急性肝炎 • 昔の研究で開腹による肝生検を受けた例の10-13%が死亡との報告がある • 劇症肝炎 • 治療としての肝移植以外の手術はできない • アルコール性肝炎 • 開腹による肝生検による死亡率は55-100% • 可能であれば12週間待つこと
待期的手術の禁忌2 • 重度の慢性肝炎 • 慢性肝炎の手術リスクは臨床的、生化学的、組織学的な疾患重篤度と相関する • 特に、合成能、排泄能の低下、門脈圧亢進、架橋形成性壊死や多小葉性壊死の認められる者はリスクが高い
術前の介入1 • PT延長 • Vitamin Kあるいは新鮮凍結血漿の投与により改善させる(3秒以内) • 血小板 • できれば10万/mm3を保つ • 出血時間延長 • Diamino-8-D-arginine vasopressin (DDAVP)投与
術前の介入2 • 腹水 • 利尿剤投与により改善 • 電解質異常 • 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを是正→不整脈、脳症の防止。 • 肝性脳症の誘因、増悪因子 • できるだけ是正する。ただし、予防的治療が術後の脳症を抑制するエビデンスはない。
術前の介入3 • 腎機能 • 血清クレアチニン、BUNが正常であることを確認するが、肝障害があると、これらは低目になることに注意 • 胃・食道静脈瘤 • 予防的に硬化療法、結さつ療法を行う。手術が出血のリスクを上昇させるわけではないが、輸液がオーバーロードにならない様に注意する