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e ラーニングと大学図書館. 2003 年 7 月 24 日(木) 平成 15 年度大学図書館職員長期研修 常磐大学人間科学部 栗山 正光. 2002 年は e ラーニング・ブームだった?. シンポジウム「迫り来る e-Learning の時代~ 大学教育におけるプラットフォームと教材開発の現状と課題~」 名古屋大学 (3/15) 情報メディア学会研究大会「 e-Learning の現状と将来、その情報メディア研究との関わり」 日本科学未来館 (5/11) e-Learning World 2002 東京ビッグサイト (7/24-26)
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eラーニングと大学図書館 2003年7月24日(木) 平成15年度大学図書館職員長期研修 常磐大学人間科学部 栗山 正光
2002年はeラーニング・ブームだった? • シンポジウム「迫り来る e-Learning の時代~ 大学教育におけるプラットフォームと教材開発の現状と課題~」 名古屋大学 (3/15) • 情報メディア学会研究大会「e-Learningの現状と将来、その情報メディア研究との関わり」 日本科学未来館 (5/11) • e-Learning World 2002 東京ビッグサイト (7/24-26) • 全国図書館大会第14分科会(図書館利用教育)「eラーニング時代の個人学習支援-ホームページを活用した指導サービスの可能性-」(10/24) • メディア教育開発センター 国際シンポジウム2002「多文化、多言語共生社会に向けてのE-learning」 (10/30-31) • 国際シンポジウム「デジタルメディアが教育を変える」 NHK教育TV放映(11/9) • 第4回図書館総合展フォーラム • 「図書館員のためのe-ラーニング―ディジタル・ライブラリアン研究会のめざすもの―」 (11/21) • 「eラーニングビジネスの近未来―拡大する生涯学習マーケット―」(11/22) • 2002年度日本図書館協会教育部会第二回研究集会「e-Learningと図書館学教育」 (12/14)
eラーニングの定義(1) 『現代用語の基礎知識』 2002年版(自由国民社) ◆WBT(ウェブ・ベースト・トレーニング)(Web Based Training)〔経営〕 電子ネットワークなどを利用したウェブをベースにした教育、研修のこと。パソコンを使い、いつでも、どこでも、学ぶことができる。双方向性をいかし、講師との質疑応答もできる。eラーニングやディスタンスラーニング(遠隔教育 distance learning)ともよばれる。 受講者が一定の場所に集まる従来型の研修に比べ、交通費や講師の費用などが大幅に節減できる。 ネット研修が集合研修などにとってかわるわけではない。教育、研修の方法は、教育の内容やニーズによる。 ◆Eラーニング(e-learning)〔略語年鑑2002年〕 ネットを利用した社員の教育システム。
eラーニングの定義(2) 『情報学事典』(弘文堂, 2002) • コンピュータ・ネットワークを利用し、電子的に配信される教材を使って学ぶ学習形態。1990年代後半からアメリカ合衆国を中心に急速に盛んになる。情報技術者を広く教育する手段として、企業がそれまで培ってきた電子教材とネットワーク上での教育支援技術を一般の社会人対象に放出したことが契機となった。 • 大学など研究機関で開発されていた広域電子配信型教育支援のための情報技術がインフラストラクチャとして提供され、WebCT、Blackboardなどの名前で商用化
eラーニングの定義(3) 『eラーニング白書』2002/2003年版(オーム社) eラーニングとは、情報技術によるコミュニケーション・ネットワーク等を使った主体的な学習である。ここではコンテンツが学習目的に従い編集されており、学習者とコンテンツ提供者の間にインタラクティブ性が提供されていることが必要である。ここでいうインタラクティブ性とは、学習者が自らの意志で参加する機会が与えられ、人またはコンピュータから学習を進めていく上での適切なインストラクションが適時与えられることである • インタラクティブ性のあるものがeラーニングに含まれるとしている • IT利用教室、ディジタルTV、CATV、同期型遠隔講義、テレビ会議(以上は学習時間の自由度低い)、WBT、CD-ROM教材など • 一般のTV、ラジオ、衛星放送、通信教育(郵送)、ビデオなどは含まれない(遠隔教育ではある)
eラーニングの定義(4) • ERICシソーラスでは? • e-learning というディスクリプタはない • e-learningをキーワードにERICデータベースを検索すると大量にヒット。そのレコードに付されているディスクリプタは例えば … • Web Based Instruction • Scope Note: Instruction delivered either in whole or in part on the World Wide Web • Broader Terms: Computer Uses in Education; Teaching Methods; • Related Terms: Computer Assisted Instruction; Computer Mediated Communication; Distance Education; Educational Media; Educational Technology; Multimedia Instruction; Online Courses; Virtual Classrooms; World Wide Web; • Used For: Web Based Training • Add Date: 06/04/2002
eラーニングの定義(5) • 基本的にe-LearningとはITを利用した教育、学習といった意味合いで使われることが多い。 しかし、e-Learningの定義は人によって異なり、決まったものはない。 伊藤健二「e-Learningとは何か」, 情報処理, 43(4), pp.394-400 (2002.4)
eラーニングへの期待(1) • ビジネスチャンス • WBT市場規模の予測2005年に約3,200 (1,100) 億円2007年に約4,200(1,500) 億円 • カッコ内はそのうち高等教育市場の数字 (『eラーニング白書』 2002/2003年版より) • e-Learning WORLD 2003
eラーニングへの期待(2) • 時間的制約からの解放(いつでも) • 空間的制約からの解放(どこでも) • 教室に行く必要がない(機器は必要) • 学習者のレベル(理解度)、ペースに合わせた進行 • 落ちこぼれ対策、英才教育 • 必要に応じてカスタマイズも可能 • 教材・コースの選択の幅が拡大 • インタラクティブ性 • コンピュータによる擬似的な応答 • ネットの向こうの教師との対話 • 工夫次第で効果的な演出が可能
eラーニングへの期待(3) • 経済性 • 場所代、交通費、人件費といった費用が不要 • 一度作成した教材が広く使える • 教材開発自体は高コスト • 速報性・柔軟性 • 瞬時に最新の情報を提供することが可能 • 情報の地域格差是正 • 人間関係のわずらわしさからの解放(?) • 逆に新しい出会いへの期待 *あくまでも期待であって実現するとは限らない
eラーニングの二つのタイプ(1) • 独習型 • 仮想教室 池田秀人「eラーニングとサイバースペース技術:仮想大学参加と遠隔講義の実践教本 [第2回]2つのタイプのeラーニングシステムとその使い方~始めてみよう仮想教室~」, Computer Today 111, pp. 72-79 (2002.9)
eラーニングの二つのタイプ(2) • 独習型 • 教師の代わりをコンピュータが果たす (長所) いつでもどこでも学習ができる 安くつく 自分のペースで学習ができる (短所)「孤独感」に襲われ脱落する 他人と比べた客観的評価が困難 *自信過剰や過小評価に陥りやすい 教材準備が大きな負担
eラーニングの二つのタイプ(3) • 仮想教室 • 実際の講義にネットワーク経由で参加 • CGによる教室の風景、挙手の視覚化など (長所)独習型の欠点を克服 (短所)独習型の長所が制限される • 両者を組み合わせた Blended System が主流になる方向
eラーニング・システムの機能(1) • WWWにはCGIという仕組みがあるが… • プログラミング言語の知識が必要 • 機能や見栄えを追及すると時間も労力もかかる • 教材の使い方は作成者ごとにバラバラになる • 統合的な支援ソフトウェアのメリット • 教材の内容作成に集中できる環境(教師側) • 統一的な学習インターフェース(学生側) • カリキュラム、登録者情報などの一元的管理(事務局側)
eラーニング・システムの機能(2) • 教材データベース • 学習者情報データベース • 学習管理システム (LMS: Learning Management System) *教材、学習者情報データベースと教師、学習者との橋渡し役 • 教材作成支援 • 教材、シラバス配信 • カリキュラム、スケジュール管理 • 学習者登録 • 学習進捗状況管理 • レポート提出・返却 • 試験(自動採点)、成績管理 • コミュニケーション(掲示板、チャット、FAQなど) • 授業評価・アンケート
eラーニング・システム製品の例 • WebCT (Web Course Tools) • カナダのブリティッシュコロンビア大学(UBC)で開発 • 日本では名大発のベンチャー企業エミットジャパンが販売 • 非公式の情報ページもあり • Blackboard • 140ヶ国以上,1,000万人以上が利用。アメリカの高等教育機関で42%のマーケットシェア。アイビーリーグ,スタンフォード,ノースウェスタン大学などで導入 • TopClass • イー・ステージ • ラーニングスペース(ロータス) • Internet Navigware(富士通) • イーキューブ・ラーニング (NTT-X) など
フリーソフトウェアも • exCampus • メディア教育開発センター(NIME)で開発 • NIMEはeラーニングに関するさまざまな研修も実施 • 学習者管理、コンテンツ登録、電子掲示板運用などの機能 • ソースコードを公開 • 活用事例としてiii online (東大大学院学際情報学府) • 単位を取得できる • 公開されている講義あり • 他にもたとえば四国職業能力開発大学校の学生が簡易な教材作製ソフト開発
大学への導入(米国) • 1990年代後半から、いわゆるバーチャル・ユニバーシティが増加 • University of Phoenix Online • Western Governors University • Electronic Campus of the Southern Regional Education Board • California Virtual Campus など • 既存の有力大学もeラーニングのコースを提供 • 営利企業の参入 • 失敗に終わる例も多い cf. 吉田文『アメリカ高等教育におけるeラーニング:日本への教訓』東京電機大学出版局, 2003
大学への導入(日本) • 1990年代末、慶応など一部大学でインターネットによる講義配信の試み • 2000年、大学設置基準改訂 • 通信制ではすべて、通学制でも60単位まで遠隔学習で単位取得可 cf. 大学設置基準等の改正について(答申)(平成11年3月9日) • 2002年、通信教育による博士課程の設置可 cf.大学設置基準の改正について • 信州大学 • 2002年4月、大学院工学研究科の情報工学専攻がインターネット大学院を開講 • 講義はすべて公開されており自由に受講できる • 2004年4月から工学部情報工学科 でも • 社会人経験のある3年次特別編入生が対象 • 入試や卒業研究の審査以外はすべてインターネットで授業
大学図書館との関わり(1) • eラーニングによる図書館利用教育、情報リテラシー教育 • 海外では既に多くのオンライン・チュートリアルが作成されている • ブリティッシュ・コロンビア大学図書館 • ハワイ大学図書館 • 日本の例 • 東大情報基盤センター「ネットでアカデミック on Web」 • 作成の負担をどうするか • 共同開発などの工夫が必要
大学図書館との関わり(2) • eラーニング授業の支援 • 従来の図書館サービス(貸出、レファレンス、ILLなど) • 電子図書館サービス • eラーニングが現実の対面教育と併用されているように、eラーニング支援の図書館サービスも現実・仮想の両面で展開される • electronic course reserve との関係(?) • 職員研修 • 現職教育 • 司書資格や学位の取得 • アメリカでは学位取得コースがあり、日本人も受講
ディジタル教材の再利用(1) • eラーニング教材を各自が一から作るのは大変 →異なるコースで教材を共有・再利用できるようにしたい • eラーニング業界で標準規格策定 • SCORM (Shareable Content Object Reference Model) • 共有可能な最小単位の教材SCO (Shareable Content Object)とコース構造を記述するメタデータを規格化 • 日本語ドキュメント:SCORM_1.2_doc_Jap.zip • 規格に従った教材を別のコースに組み込んだり、異なったLMS(学習管理システム)で実行可能
ディジタル教材の再利用(2) • LOM (Learning Object Metadata) • 学習資源(ディジタル・非ディジタルを問わない)検索のための属性記述メタデータ標準 • 日本語ドキュメント:学習オブジェクト・メタデータ解説書 • たとえば「素材」(動画、静止画、音声、テキスト等)、「形態」(グラフ、表、シミュレーション等)、「活用場面」(実験、観察、演習、鑑賞、討論等)、「権利」(見るだけ、二次利用可等)などの項目・語彙を規定 • 電子図書館の機能と重なり合う(?)
eラーニング 電子図書館 eラーニングと電子図書館の発展(楽観的シナリオ) 提供コースの増加 ディジタル資料の増加 教材作成のためのディジタル資料需要増 eラーニング支援のための資料・素材提供 教材の充実 共有・再利用可能な素材が所蔵資料に 自作素材の提供 教材作成者の利用増加 • 作成教材の提供 eラーニング教材自体が所蔵資料に 受講者の増加 予算増額 一般利用者の増加 予算増額
eラーニング 電子図書館 eラーニングと電子図書館の衰退(悲観的シナリオ) 提供コースの貧困 ディジタル資料の貧困 著作権処理の壁 (やる気がある人の)教材作成のためのディジタル資料需要 eラーニング支援のための資料・素材提供に応じられない × すべて自作でまかなわなくてはならない • (費やした時間と労力の割に)つまらない教材 電子図書館への幻滅 受講者の減少 教材作成者の減少 利用者の減少 予算削減 予算削減
まとめ • eラーニングの定義は人さまざまだが、基本的にはインターネットを利用した教育 • eラーニングにはさまざまな期待がかかり、大学への導入も始まっている • 大学図書館ではまず利用者教育と職員研修での利用が考えられる • eラーニング授業の支援も考える必要あり • 教材の共有・再利用について、eラーニングと電子図書館は密接な関わり(がありそう)
蛇足 • インターネットを通じた高等教育・専門教育の大競争時代の到来(梶田将司「日本におけるWebCTの現状と課題」) • 一部有力大学による学生の独占と競争に負けた大学の経営破綻(?) • ブランド • 教材の囲い込み • eラーニング教材の著作権所有者は教師か大学か • eラーニングそのものに対する懐疑 cf. クリフォード・ストール;倉骨彰訳『コンピュータが子供たちをダメにする』草思社, 2001