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法学部 1 年生 配当科目 民法 入門. 第 14 講 親族法 . 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教 授 大久保 邦彦. 親族法総則. 民法典はパンデクテン体系を採っている. 民法典の構造. 第 1 編 総 則 第 2 編 物 権 第 3 編 債 権 第 4 編 親 族 第 5 編 相 続. 財産法. 家族法. 親族編の構造. 第 1 章 総 則 第 2 章 婚 姻 第 3 章 親 子 第 4 章 親 権 第 5 章 後 見 第 6 章 保佐及び補助 第 7 章 扶 養. 親族の効果. 親 族. 扶 養. 相 続.
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法学部 1年生配当科目 民法入門 第14講 親族法 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教 授 大久保 邦彦
民法典はパンデクテン体系を採っている 民法典の構造 第1編 総 則 第2編 物 権 第3編 債 権 第4編 親 族 第5編 相 続 財産法 家族法
親族編の構造 第1章 総 則 第2章 婚 姻 第3章 親 子 第4章 親 権 第5章 後 見 第6章 保佐及び補助 第7章 扶 養
親族の効果 親 族 扶養 相 続
明治維新 1868 旧民法公布 フランス法 1890 ボワソナード 改正 民法出でて、 忠孝亡ぶ (穂積八束) 法典論争 1896 -1898 新民法公布 ドイツ法 穂積陳重・富井政章・梅謙次郎
明治民法 「家」制度を採用 • 戸主権を「家」の中心とする。 • 「家」の基礎に戸籍がおかれる。 • 戸主の地位は長男により単独相続される。 • 婚姻関係は親子関係の従属する。 • 婚姻・離婚には、父母の同意が必要。 • 妻は夫の「家」の氏を名乗らなければならない。 • 妻は婚姻により行為無能力となる。
日本国憲法 13条(個人の尊厳) すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 24条1項(両性の本質的平等) 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
解釈の基準(民2) この法律は、 個人の尊厳と 両性の本質的平等を旨として、 解釈しなければならない。
新民法 • 「家」制度の廃止 • 平等相続 • 婚姻は男女の合意による。 • 夫婦の平等
戸 籍 • 戸籍法に基づいて作成される国民各個人の身分関係を公証する公文書。 • 原則として、その市町村の区域内に本籍を定める夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに編製される。 出典: 『法律用語辞典〔第3版〕』(有斐閣)
戸籍編成上の基本的な考え方 • 1夫婦1戸籍(戸6・16) • 親子同一戸籍(戸18) • 3代同一戸籍の禁止(戸16・17) • 同氏同籍(戸6・16・17・18) • 成年者分籍自由(戸21) • 復氏復籍(戸19)
戸籍法18条 • 父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。 • 前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。 • 養子は、養親の戸籍に入る。
戸籍の届出 • 創設的届出 -婚姻・協議離婚・養子縁組・ 協議離縁・任意認知・氏の変更 • 報告的届出 -出生・死亡・裁判離婚・裁判離縁・ 強制認知・遺言による認知
家系図 V W P Q R S J Z X Y K C A B D
親族の範囲(民725) • 6親等内の血族 • 配偶者 • 3親等内の姻族
親等の計算(民726) • 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。 • 傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下るまでの世代数による。
血族と姻族 • 血族 • 自然血族=血縁のある者 • 法定血族(民727) • 姻族 • 配偶者の血族 • 血族の配偶者
血族・配偶者・姻族 V W P Q R S J Z X Y K C A B D
血族・配偶者・姻族 V W P Q R S J Z X Y K C A B D
姻族関係の終了(民728) • 姻族関係は、離婚によって終了する。 • 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
直系・傍系 V W P Q R S J Z X Y K C A B D
(直系)血族についてのみ問題となる 尊属・卑属 V W P Q R S J Z X Y K C A B D
婚 姻 • 両性の全人格的・性的結合 • 夫婦という共同体を形成することによって、法律で婚姻に与えられた効果を得ることを目的とする男女間の契約 出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007)418頁
契約の種類 契 約 債権・債務 債権契約 物権契約 物権変動 身分契約 身分の変動
婚姻予約(婚約) • 将来の婚姻を約束する男女間の諾成、不要式の契約。 • その不履行は損害賠償責任を生ずるが、当事者の意に反してその履行を強制することはできない。 出典: 『法律用語辞典〔第3版〕』(有斐閣)
債権者の救済方法 債務不履行 の事実 ①強制履行 ② 損害賠償 債務不履行 の事実 + 帰責事由 ③ 契約解除
婚姻の要件 • 婚姻意思の合致 • 婚姻障害の不存在 • 婚姻の届出(民739) ・受理(民740)
婚姻の無効(民742) 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。 • 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。 • 当事者が婚姻の届出をしないとき。 ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
婚姻意思 • 実質的意思説(多数説) • 社会通念上、夫婦という婚姻生活共同体を形成しようとする意思を要求する。 • 最判S44・10・31:婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があったとしても、それが単に子の嫡出化を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、婚姻は効力を生じない。 • 形式的意思説(離婚意思については、判例) • 届出意思説 • 法的効果取得意思説 出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007)419頁、428頁
婚姻意思の存在時期 婚姻届の作成時 and婚姻届の受理時 【最判S44・4・3】 事実上の夫婦共同生活関係にある者が婚姻意思を有し、その意思に基づいて婚姻の届書を作成したときは、届書の受理された当時意識を失っていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届書の受理により婚姻は有効に成立する。
不受理申出制度(戸27の2Ⅲ) 何人も、その本籍地の市町村長に対し、あらかじめ、法務省令で定める方法により、自らを届出事件の本人とする縁組等の届出がされた場合であつても、自らが市役所又は町村役場に出頭して届け出たことを第1項の規定による措置により確認することができないときは当該縁組等の届出を受理しないよう申し出ることができる。
戸籍事務担当者の権限 出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007)413頁 ◎形式的審査権限⇔×実質的審査権限 【戸籍法27の2Ⅰ】 市町村長は、届出によつて効力を生ずべき認知、縁組、離縁、婚姻又は離婚の届出が市役所又は町村役場に出頭した者によつてされる場合には、当該出頭した者に対し、法務省令で定めるところにより、当該出頭した者が届出事件の本人であるかどうかの確認をするため、当該出頭した者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を示す運転免許証その他の資料の提供又はこれらの事項についての説明を求めるものとする。
婚姻障害 • 婚姻適齢(民731) • 重婚の禁止(民732) • 再婚禁止期間(民733) • 近親婚の禁止(民734-736) • 未成年者の婚姻(民737) • 成年被後見人の婚姻(民738)
婚姻の無効(民742) 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。 • 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。 • 当事者が婚姻の届出をしないとき。 ただし、その届出が第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
心裡留保による婚姻 XとYは、婚姻するつもりがないにも かかわらず、婚姻の届出をした。 〔解決〕 当事者の真意に基づくことを絶対に 必要とする行為(身分行為)には、 民93は適用されない。 この婚姻は、民742により、常に無効。
「総則」の意義 「総則」=共通ルール • 「第1編 総則」は、形式的には、 「第2編 物権」~「第5編 相続」の共通ルール • 実際には、「第2編 物権」「第3編 債権」 のみの共通ルールが多い。 • 結局、「第1編 総則」は、 財産法の共通ルールと言える。
婚姻の取消し(民743) 婚姻は、 次条から第747条までの 規定によらなければ、 取り消すことができない。
不適法な婚姻の取消し(民744) • 第731条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。 ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。 • 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。
婚姻適齢(民731) 男は、18歳に、 女は、16歳にならなければ、 婚姻をすることができない。
再婚禁止期間(民733) • 女は、前婚の解消又は取消しの日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。 • 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。
詐欺又は強迫による婚姻の取消し(民747) • 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。 • 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。
婚姻の取消しの効力 • 身分上の効力 • 遡及効なし(民748Ⅰ) • 姻族関係の終了(民749→728Ⅰ) • 子の監護に関する事項(民749→766) • 復氏(民749→767) • 祭祀財産の承継(民749→769) • 財産関係上の効力(民748ⅡⅢ) 出典: 潮見佳男『入門民法(全)』(有斐閣・2007)422頁