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恐怖を越えて : 血液で感染する病原体と医療従事者. National HIV/AIDS Clinicians’ Consultation Center National Clinicians’ Post-Exposure Prophylaxis Hotline 翻訳:広島大学医学部小児科 西村 裕、畝井和彦 監訳:広島大学病院エイズ医療対策室 高田 昇. 問題点の範囲. 血液から感染する病原体( BBP) の最近の疫学 職業 で感染する病原体の最近の疫学 いかに血液暴露後の管理が実際の治療の実施に影響できるか. 最近のアメリカでの疫学. HIV
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恐怖を越えて: 血液で感染する病原体と医療従事者 National HIV/AIDS Clinicians’ Consultation Center National Clinicians’ Post-Exposure Prophylaxis Hotline 翻訳:広島大学医学部小児科 西村 裕、畝井和彦 監訳:広島大学病院エイズ医療対策室 高田 昇
問題点の範囲 • 血液から感染する病原体(BBP)の最近の疫学 • 職業で感染する病原体の最近の疫学 • いかに血液暴露後の管理が実際の治療の実施に影響できるか
最近のアメリカでの疫学 • HIV • 約80~90万人が感染していて、毎年新たに4万人が感染していると推測される • C型肝炎 • 390万人が感染していると推測される(アメリカ全人口の1.8%) • B型肝炎 • 75~100万人がキャリア
職業上での感染について最近の疫学 • HIV • 医療従事者で職業中に感染した例は57件報告されており、その他恐らく職業上で感染したと推定される例が138件ある • C型肝炎 • 1~2%の医療従事者が感染している(全人口の感染率と差はない) • B型肝炎 • 1983年には年間1600人が感染していたが、1995年には年間400人になった
血液暴露に対する管理が重要 • 医療従事者は職業上で感染する危険性を持っている • 暴露を予防することが最も重要である • 暴露後の予防などの適切な治療が危険性を減少させる • 暴露後の処置のオプションを知っていれば感染者のケアに対する恐れを和らげるかもしれない
暴露後の治療の内容 • 危機管理 • 危険度の評価 • 暴露源の検査データの評価 • 暴露後の予防治療 • 継続的な経過観察
症例提示 • 27歳の看護師が、静脈注射後に血液の付着した針で深い針刺し事故を起こした。 • 発端の患者はHIV陽性で、 AZT/3TC/nelfinavir で治療を受けていた。ウイルス量は数週間前で 122,000 であり、細菌性肺炎の治療のため入院していた。
危機管理 • 血液介在性病原体への暴露は医療従事者にとって、その後の人生を変えるかもしれない。 • 極度の不安に直面する可能性がある。 • 感情を否定することなく安心感を持たせる。 • 主観的な評価と客観的な評価の隔たりをうめる。 • 医療者擁護の信念を基本とすること。
症例提示 • この暴露は危険度が高いので、直ちにその看護師は感染症の専門家の診察を受けた。専門家は自分の客観性を確保するため何人かの同僚と話し合って、血液暴露後の予防治療法を選択した。
危険度の決定 暴露の評価 暴露源の評価
公衆衛生局による暴露の定義 • 「経皮的な損傷、あるいは粘膜との接触、あるいは正常でない皮膚に、感染を起こしうる血液や組織や体液が接触すること」 Updated Public Health Service Guidelines for the management of Occupational Exposures to HBV, HCV and HIV and Recommendations for PEP. June 29, 2001.
暴露の定義 一般的原則 • HIV、 HBV 、 HCV が正常な皮膚を貫通することはない • これらのウイルスは空気感染しない • Beltrami他. ClinMicroRev July 2000.
暴露の定義:体液の感染力 • 明らかに感染力があるもの: • 血液 • 精液 • 膣分泌物 • 血性体液の総て
暴露の定義:体液の感染力 • 感染力のある可能性があるもの • 髄液 • 滑液 • 胸水 • 腹水 • 心嚢水 • 羊水 • 膿
暴露の定義:体液の感染力 • 血性でない限り感染力のないもの • 便、尿 • 鼻汁、痰 • 唾液 • 汗 • 涙 • 吐物
危険度の定義暴露1回あたりの感染率 • HIV • 経皮的0.3% • 経粘膜 0.09% • HCV • 経皮的 1.8% • HBV • 経皮的 • e抗原陽性 40% • e抗原陰性 1.5-10%
危険度の定義公衆衛生局のガイドライン • 針刺し事故 • 危険性が低いもの (例:中空でない針で表面だけの外傷) • 危険性が高いもの (例:大きな中空針、深い穿刺、表面に血液が付着している、針が患者の静脈内や動脈内に使用された) • 粘膜と正常でない皮膚 • 少量(すなわち数滴) • 多量(すなわち血液の飛散)
危険度の層別化インビトロでの研究 • インビトロでの研究 • より大きな針でより深く刺すほど血液の移行量は多くなる Mast et al. JID 1992 168:1589-92 • 手袋は血液の移行する量を減じる • Bennett, Howard. J.Am.Coll.Surg. 1994 178:107-110 • 注射で使用した針のほうが採血で使用した針よりも危険性が少ない
危険度の層別化 • 粘膜や正常でない皮膚への飛沫 • 暴露量が多く、暴露時間が長いほど危険である • 噛みつかれること • 噛みつかれても唾液中に血液がない限り安全である • 噛んだ方は粘膜で血液の暴露を受け続ける
危険度の層別化:暴露源の評価 • HIV陽性の場合 • ウイルス量と疾患の進行度は? • HIV の進行度が不明な場合 • リスクがある病歴はあるか? • HIV急性感染の徴候があるか? • 検査歴はあるか? • もし暴露源が不明であれば • 暴露が発生した場所の有病率はどうか? • どのくらいの時間、鋭利なものに暴露されていたか?
暴露源の評価:検査室での管理 • 暴露源患者の検査結果が判明するまで予防治療を待つべきでない。予防治療開始の決定は臨床的な危険度の評価に基づくべきである。 • 検査法の考慮 • HIV抗体の迅速検査法と標準検査法 • 抗体検査と直接のウイルス検査 • 廃棄する針の検査法はない
暴露源の評価:検査室での管理 • 迅速EIA法使用について • 陰性の結果は心配を和らげ過剰な予防治療を軽減する。 • 偽陽性率が標準EIAより高い。これは背景の感染率が低いところでは、特に注意が必要である。 • 陽性という結果がでたら、必ずウエスタンブロット法か蛍光抗体法で確認する必要がある。
暴露源の評価:検査室での管理 • 24~48時間以内に結果が判明する場合なら、標準EIA法の方が優れている。 • 直接のウイルス検査(p24抗原やウイルス量)は、ウインドウ期間であると疑われる場合でない限り薦められない 診断の標準法でない 偽陽性率が高い(2~5%)
暴露の評価:ウインドウ期の扱い方 • 抗体が陽性化するまでの中央値は4週間とされている。 • 暴露源が HIV陰性で、最近3ヶ月に危険のある行為がなく、HIV急性感染症の徴候がなければ、HIVは除外できたと考える。
HIV予防治療:一般的原則 • ほとんどの暴露で感染は起こらない。そのため効果と不利益をよく考慮しなければならない。 • 暴露の危険と暴露源について考慮する。 • 医療従事者側の様々な因子を考慮する。 • いま病気を持っているか、薬を飲んでいるか。 • 妊娠しているか、母乳を与えているか。
有用性と副作用のバランス • 予防治療が有用だろう • 危険度の高い暴露 • 陽性患者からの暴露 • 危険性が高い暴露源 • 治療開始の遅れがない • 毒性が最小限の薬剤 • 選択 • 副作用が上回るかもしれない • 危険度の低い暴露 • 危険度の低い暴露源 • 落ちていた針 • 治療開始の遅れ(72時間以上) • 他の病気で服薬中の場合の • 薬物相互作用 • 妊娠???
SIVに対するPEP : 確からしさ • アカゲザルのモデル: • SIV (サル免疫不全ウイルス)の膣内暴露 • 24 時間、SIV は膣内の樹状細胞に見られた。 • 48 時間、SIV は局所リンパ節に見られた。 • 5日後、SIV は末梢血に見られた。 • 全身性の感染にいたるまでの時間が介入の期間である。
SIV 対するPEP:有効性 • マカクサルのモデル:SIV を静注で接種 • PMPA 予防治療が48時間前、4時間後、24時間後にそれぞれ開始され、28日間継続された。対照群は未治療とした。 • 治療を受けた動物は感染しなかったが、 対照群はすべて感染した。 Tsai CC et al. Science270:1197-1199.
HIVに対するPEP: 有効性 • ACTG 076: ヒトの周産期感染をAZTが減らすことができるか評価するための無作為対照試験であった。 • 垂直感染の危険性は偽薬群の22.6%から7.6%に低下した(AZT単独)。 • ウイルス量の減少だけでは感染の減少を説明しきれない。
HIVに対するPEP: 有効性ニューヨーク公衆衛生局による周産期感染研究
PEPのタイミング:マカクサルにSIV • マカクサルにSIVを静注で接種。 • PMPAを伴うPEP を28日間、接種後24, 48 そして 72 時間で開始。対照も治療。 • すべてのコントロールは感染。 • 24 時間で治療した全例が防御できた。 • 他の治療群の半数は持続的なウイルス血症を示した。 • Tsai CC et al. J Virology 1998
PEPのタイミング:アカゲザルにSIV • アカゲザルにSIVを静注で接種。 • AZTによるPEPを、接種後1, 8, 24 そして 72 時間後に開始。対照も治療。 • 1時間と8時間のグループの5分の1が感染防御できた。 • 感染したサルでも、すべてウイルス血症が遅延し、かつ減少した。 • Martin LN et al. JID 1993
PEPのタイミング:SCID-huマウスにHIV • SCID-hu マウスにHIVを静注で接種。 • AZT によるPEP をそれぞれ 0.5、1、2、4、8、 24、36、そして48 時間後に開始。 • 0.5, 1,2 時間後に開始したマウスはすべて防御。 • 8時間後に開始したマウスの80% は防御。 • 24時間後に開始したマウスの40% は防御。 • 48時間後の開始では効果なし。 Shih CC et al. JID 1991
PEPのタイミング:HIV陽性の輸血 • 13 歳の女児が1単位の輸血をうけたが、供血者がウインドウ期であった。 • 感染の可能性は100%と推測。 • 3剤によるPEP が輸血後50 時間で開始され、9 ヶ月継続された。 • 15 ヶ月経過で感染は証明されていない。 Ann Int Med 2000;133:31-4
PEPの服用期間:マカクサルにSIV • マカクサルにSIVを静注で接種。 • PMPAによるPEPを 暴露後24時間で開始し, 3日, 10日 そして 28 日継続した。 • 28日間の治療例はすべて予防できた。 • 10日間の治療例の4分の1は持続感染となり、4分の3では抗体が陽性化した。 • 3日間の治療例の4分の2が持続感染となり、4分の4で抗体が陽性化した。
HIVに対するPEP:治療法の選択 • 標準的な基礎療法は? • 代わりになる基礎療法は? • 拡大療法は? • プロテアーゼ阻害剤 • 非核酸系逆転写酵素阻害剤 • アバカビル • 薬剤使用に専門家への相談が必要か?
症例提示 • 暴露された医療従事者は健康で、治療は受けておらず、妊娠や授乳はない。 • 綿密なカウンセリングと話し合いのあと、ddI/d4T/nevirapine の治療が開始された。
PEP の選択肢 標準的な基礎療法 • 危険度が低いHIV暴露の場合、 • 暴露源となった患者が抗HIV薬未治療の場合、 • あるいは暴露源がHIV陽性か不明の場合、 • AZT 300 mg 2回 + 3TC 150mg 2回 • 副作用:吐気、頭痛、全身倦怠感、まれにAZTによる貧血
PEP の選択肢代替的な基礎療法 • 暴露源のウイルスが耐性化している可能性がある場合、 • 受傷者が基礎療法に耐えられない場合、 • ddI 200mg 2回+d4T 40 mg 2回 • d4T 40 mg 2回+3TC 150mg 2回 • AZT 300mg 2回+ddI 200mg 2回(または400mg 1回) • 副作用: ddI – 吐気, 下痢, 膵炎, 神経障害. d4T – 神経障害
PEP の選択肢拡大療法 • HIV陽性の暴露源に、危険度の高い暴露を受けた場合、あるいはウイルスが耐性化している時、 • 標準的な治療法に以下の一つを加える。 • プロテアーゼ阻害剤 • デュアルプロテアーゼ阻害剤 • 非核酸系逆転写酵素阻害剤 • 3番目のヌクレオシド系薬剤 (アバカビル)
PEP 療法拡大療法を勧めない理由は? • 感染は稀である。 • 3剤が2剤よりよいというエビデンスはない。 (あるいは1剤より2剤が) • 3剤療法は毒性も強く、アドヒアランスも低下する。
PEP 記録: 中止の理由* (48%) (50%) (31%) (13%) (2%) (5%) *重複するものあり
ネルフィナビル 750mg 3回 または1250mg 2回 またはインジナビル 800mgを8時間毎 ネルフィナビル 下痢, 吐気, 嘔吐, 肝機能障害 インジナビル 嘔気, 嘔吐, 肝機能障害, 腎結石, アドヒアランスの低下 拡大療法:プロテアーゼ阻害剤
サキナビル+リトナビル インジナビル+リトナビル アンプレナビル+リトナビル ロピナビル+リトナビル デュアルプロテアーゼ阻害剤は効果が高まる可能性がある。 1日2回内服の便利さ。 毒性も増す可能性があり、薬物相互作用も複雑である。 拡大療法: デュアルプロテアーゼ阻害剤
エファビレンツ600 mg ネビラピンは推奨されない。 治療薬としても効果あり。 50%以上の患者で中枢神経系の副作用あり。 サルで催奇性あり。 拡大療法: 非核酸系逆転写酵素阻害剤
症例呈示 • 彼女は治療にもよく耐え14日間が経過したが、101 F(38.3度)の発熱と咽頭痛、びまん性のリンパ節腫大(おもに頚部に著明)、躯幹の鮮明な紅斑そして関節痛を呈した。 • 彼女はすぐに感染症専門医の診察を受けたが、鵞口蒼や口腔・陰部の潰瘍はなかった。
PEP中の症状の管理: 急性感染症か薬の副作用か • 急性HIV感染症や肝炎の症状は薬剤の副作用と類似することがある。 (発熱,発疹, 肝機能異常) • 短期間に繰り返し再診させ、完全な身体所見をとり、薬物の調整と的確な検査による評価が必要。
基本的事項はPEP中は2週間に1回の検査 CBC 腎機能評価 肝機能検査 IDV使用中は尿酸 PI 使用中は血糖も 基本的な血清検査 血清学的評価は 暴露後6週間、3ヶ月、6ヶ月後とする 1年後に再検査 同時にHCVにも感染していれば、さらに重要である PEP 中の検査モニタリング