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10[ 再 ] ・文化財保護のシステム. 2012.11.28. 成蹊・文化人類学 Ⅱ. 文化財の性格. それは「誰か」によって選ばれている それ は「何らかの基準」によって選ばれている それ は「遺すため、なくさないため、守り伝えるため」に選ばれている それ は「遺すこと、なくさないこと、守り伝えること」が求められている それ は「誰か」が遺し、なくさないように、守り伝える必要がある. 文化財はどうやって決められるのか. 市町村のレベルでは、各自治体の教育委員会が管轄する 行政の部門としては「社会教育」が相当する
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10[再]・文化財保護のシステム 2012.11.28. 成蹊・文化人類学Ⅱ
10[再]・文化財保護のシステム 文化財の性格 • それは「誰か」によって選ばれている • それは「何らかの基準」によって選ばれている • それは「遺すため、なくさないため、守り伝えるため」に選ばれている • それは「遺すこと、なくさないこと、守り伝えること」が求められている • それは「誰か」が遺し、なくさないように、守り伝える必要がある
10[再]・文化財保護のシステム 文化財はどうやって決められるのか • 市町村のレベルでは、各自治体の教育委員会が管轄する • 行政の部門としては「社会教育」が相当する • 具体的にどれを文化財に選ぶか・選ばないかの判断は、教育委員会のもとに設置される文化財保護委員会が担当する • 文化財保護委員会の委員は、通常教育委員会から委嘱された「学識経験者」あるいは「文化財有識者」 • より具体的には、たとえば高校の歴史の先生とか、小学校の校長先生とか、地元の郷土史家とかが候補となる • 都道府県あるいは国レベルでも基本的には同様 • 国の場合は、文化庁に専門の調査官がおり、外郭団体として有識者による文化審議会および文化財専門調査会が設置されている
10[再]・文化財保護のシステム 文化財の所有者は? • 通常、文化財指定と同時に即座に国有財産あるいは公有財産になるわけではなく、それまでの所有者が継続して所有権を有する • ただし、所有者はその文化財を「管理する義務」を負うことになり、私有財産として勝手に処分することはできなくなる • さらに、管理のためにかかる経費は原則として「自己負担」である • 経費が過大な場合は、公費による補助金支出も認められるが、通例全額補助されることはない • また、多くの文化財は一定の「公開」が求められる
10[再]・文化財保護のシステム 文化財保護制度史(1) – 前史 • 「古器旧物保存方」1871年太政官布達で、とりあえず古いものは何でもピックアップ • 祭器、古玉宝石、石弩雷斧、古鏡古鈴、銅器、古瓦、武器、古書画、古書籍並びに古経文、扁額、楽器、鐘鈷碑銘墨、印章、文房諸具、農具、工匠器械、車輿、屋内諸具、布帛、衣服装飾、皮革、貨幣、諸金属造器、陶磁器、漆器、度量権衡、茶器香具花器、遊戯具、雛幟等偶人並びに児玩、古仏像並びに仏具、化石の31部類 • 1888年設置の宮内省臨時全国宝物取調局でふるい分け • 古社寺の建造物・宝物を「古社寺保存法」で国宝/特別保護建造物に指定(1897年)→のち国宝保存法(1929年)へ • 風景や動植物を「史蹟名勝天然紀念物保存法」(1919年) • 今後国宝になりそうなものについて「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」で指定(1933年) • 上3点に加え、民俗資料、無形文化財及び埋蔵文化財について「文化財保護法」で指定(1950年)
10[再]・文化財保護のシステム 文化財保護制度史(2) – 拡大 • 民俗文化財、伝統的建造物群、文化財の保存技術について、1975年の文化財保護法大改正で追加(②) • 近代以降の土木建造物、科学技術分野の歴史資料も指定できるよう文化財指定基準を見直し(1995/1996年)……近代遺産①(③) • 文化財になりそうな建造物について、1996年の文化財登録制度導入によって追加……近代遺産②(③) • 農業に関連した景勝地として、千枚田を「名勝」に指定(1999年・2001年)……産業遺産 • 2004年の文化財保護法大改正で、文化的景観・登録有形民俗文化財・登録記念物のカテゴリ新設……生業に関わる風景自体を保存+網掛けの拡大(④)
10[再]・文化財保護のシステム 破壊と保存:文化財保護のシステム • 明治初年の廃仏毀釈や西洋風近代化への志向によって破壊される古社寺の古物……古社寺保存法(1897年) • 日清日露戦争後の国土開発・工業化によって破壊される自然や古来の風景……史蹟名勝天然紀念物保存法(1919年) • 大正デモクラシー後の社会変化に伴って流出が懸念される個人所蔵の古美術品……国宝保存法(1929年)+重要美術品等ノ保存ニ関スル法律(1933年) • 戦後の民主化・社会変動で衰頽が懸念される芸能や工芸技術、消滅が懸念される生活文化・埋蔵物……文化財保護法(1950年) • その後、伝統的な建造物が形成する景観や、明治以降の建造物、生業等により形成された文化的景観などが「失われゆくもの」として保護の対象になる
10[再]・文化財保護のシステム 文化財拡大のゆくえ • 身のまわりのさまざまなものが「文化財」化してゆくという現象……それは、あらゆるもの(文化)が経時的に見れば変化し消滅していくことを考えれば、不可避 • では、それは誰が選び、誰が守るのか? • どれを文化財に選ぶか・選ばないかの判断は、教育委員会のもとに設置される文化財保護委員会 • 所有者はその文化財を管理する「義務」を負う • つまり、「選ぶひと」と「守るひと」の間には、ずれがあって同一ではない……「誰かが誰かに守らせる」という構図になることが不可避
10[再]・文化財保護のシステム 文化財のジレンマ • 文化に優劣はつけるべきではない • ←→文化を文化財として保護しようとすれば順位付けせざるを得ない • 文化財はできるだけ保護するのが望ましい • ←→保護するのには費用や人的資源が必要である • 有識者が密室で文化財を決定するのは民主的ではない • ←→文化財の価値をランキングするには一定の知識が必要である • 文化を保護することと観光に利用することは別である • ←→観光で稼ぎでもしなければ保護するための金銭支援も人的支援も得られない