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ミクロ経済学 ミシュラン・ガイド v.3. ここでは受講者のために、ミクロ経済学でのミシュラン クラスの重要概念のまとめを行います。 Ⓒ高橋青天. 経済問題と消費者行動理論. 第1部. J. R. Hicks 1904-1989. 序:経済問題とは?. ミクロ経済学:希少な資源がどのように 配分 され、与えられた技術のもとでどのように 生産 に使われ、その生産されたものがどのように 分配 されるか、という問題が、いかにして解決されているのかを分析する学問。 (資源<欲望 選択 機会費用) 問題を解くための経済システム
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ミクロ経済学 ミシュラン・ガイド v.3 ここでは受講者のために、ミクロ経済学でのミシュラン クラスの重要概念のまとめを行います。 Ⓒ高橋青天
経済問題と消費者行動理論 第1部 J. R. Hicks 1904-1989
序:経済問題とは? • ミクロ経済学:希少な資源がどのように配分され、与えられた技術のもとでどのように生産に使われ、その生産されたものがどのように分配されるか、という問題が、いかにして解決されているのかを分析する学問。 (資源<欲望 選択 機会費用) • 問題を解くための経済システム 民間部門(企業、家計):市場を使って解決 公共部門(国、地方政府、公的企業):市場以外の政治的 プロセスで解決
ミクロ経済学のお勧めテキスト • てっとり早く理解したい人 『図解雑学 ミクロ経済学』(ナツメ社) • じっくりと勉強したい人 『入門 ミクロ経済学』(新世社) 『ミクロ経済学入門 第2版』(岩波書店) • 数学を使い深く勉強したい人 『ミクロ経済学 第2版』(東洋経済新報社)
消費者行動理論 例:明学生T君がこずかい 200円でミカン(一個10円)と リンゴ(一個20円)を買うとき。 • 財空間 (第一象限の点:0.001台の車という 財の無限分割可能性の仮定) • 予算線 • 消費可能集合 (予算線と軸で囲まれた領域) ミカン B:(15,20) A:(5,10) C:(5,5) リンゴ 財空間
合理的消費者 • 合理性の仮定 (i) より多い財ペアを好む 例:(1,2)と(4,6)では、(4,6)のペアを必ず選好する。 (ii) ある二組の財ペアA,Bについての選好(好み)を聞かれたとき、必ず、次のいずれかの返事をする。 (1) AよりもBを好む(A ≺ B) (2) BよりもAをこのむ(A ≻ B) (3) AとBは無差別(A ≈ B) (iii) ある三組(A,B,C) について、もし(A ≻B) かつ(B ≻C) ならば(A ≻C) が成立。 以上の仮定(1)~(iii) のもとで、右下がりの無差別曲線が導出される。 (iv) 選好の凸性:無差別曲線上の二点A,Bを結ぶ直線上の点で表わされる財ペアは、その両端を除いて、A,B よりも好まれる。 以上の仮定の下で、原点に膨らんだ無差別曲線が導出される。
無差別曲線の導出 以下の質問をT君に繰り返し行う! 1)任意の財ペアF を財空間上から選ぶ。 2)F とは異なる財ペアGを財空間上から選ぶ。 3)FとGのどちらを選ぶか質問をする。 4)FとGが無差別なら、Gを記入する。 5)もし、FよりもGが好まれるか、GがFよりも好まれる場合、G とは異なる財空間上の点を選ぶ。 6)手順1)から5)を繰り返す。 無差別曲線 F 選好の凸性より、このような出っ張りがなくなる! H A C B 点Fを通る、右下がりの曲線を描くことができる。 さらに、Fとは異なる点Hから同様の質問を繰り返すことにより、Hを通る、右下がりの曲線を得る。 同様の手順を繰り返すことにより、このような曲線を無数に描くことができる。
無差別曲線の性質 選好がより高い 20 10 3) 交わる 1)通常の無差別曲線 2) 右上がり 注意:選好水準20の無差別曲線上の点 は選好水準10の無差別曲線上の点 に較べて、2倍の満足度 であることを意味しない。単に、 の方が に較べて満足が高いことしか意味しない。
最適消費量の決定 ミカンの消費量 限界代替率(MRS):無差別曲線上の任意の点での接線の傾きの絶対値 A MRSは逓減する! (同じ選好水準に保つために必要なリンゴの増分) B E MRS= 20 (一単位のミカンの減少分) C -(リンゴの価格÷ミカンの価格) 10 リンゴの消費量 <最適消費量の決定> E点:MRS=価格比
需要曲線の導出 A C:代替効果 ミカンの消費量 リンゴの価格 総変化: AB C B:所得効果 リンゴに対するT君の需要曲線 C B 20 リンゴ価格=10円の予算線 A 10 3 10 リンゴの消費量 3 10 リンゴの消費量 リンゴ価格=20円の予算線
需要理論(by J.R.Hicks) *代替効果:新しい価格で、この個人が以前と同じ満足を得られるように所得補償が行われたと想定したときの各財の消費量への効果 (“あほらし効果”) 常にマイナス効果(価格変化とは逆方向) *所得効果:実質所得の損失により各財の消費量への効果(“がんばろ効果”) マイナス効果かプラス効果かは無差別曲線の形に依存 <財の分類> ・所得効果マイナス:劣等財 ・所得効果プラス :正常財 *需要法則:一般的に、所得効果よりも代替効果が大きいと考えられるので、価格と消費量の間にはマイナスの関係が成立する。価格が上がれば消費(需要)量が減り、価格が下がれば、その消費(需要)量が増える。(例外:ギッフェン財)
需要の価格弾力性 • 需要の価格弾力性 • 弾力性の決定要因 1)奢侈品かどうか? 2)代替財が存在するかどうか? 3)所得額と比較して、その財への支出額 の割合が大きいか小さいか? E P* 点Eの接線 接線の傾き D*
収入と需要の価格弾力性 • 価格が下がる(上がる)時 弾力性=1 収入は変化しない。 弾力性>1 収入は増加(減少)。 弾力性<1 収入は減少(増加)。 注) (OCEA)= ( ODFB) 価格 E A F B O C D 消費量
これから必要な数学の準備 • 直線の方程式 1)傾き=βと切片=α: 2)点 (a , b)を通る、傾き=β の方程式: 3)点(a , b) と点 (c , d) を通る直線の方程式:
応用例(1):一括所得税 vs 個別消費税 定義 ・一括税 :所得に何円で課税 ・個別消費税 :財価格へ何%で課税(従課税方式) 問題 「福田総理が、ガソリンに個別消費税で課税するか、一括所得 税で課税するかして、同一の税収の確保を考えているとする。 どちらの税方式が、個人の負担が少ないか?」 ポイント 1)一括税:予算線を平行移動させる(所得効果のみ)。 消費税:予算線を時計廻りに回転させる (所得効果+代替効果)。 2)同じ税収が実現するためには、消費税後の均衡点は、 消費税後予算線と一括税後予算線の交点となる。 (各自、直線の方程式を使ってこのことを確認すること。) その他財の価格 その他財価格で測った税収 消費税後均衡点 一括税後均衡点 超過負担 一括税後予算線 消費税後予算線 ガソリンの消費量
類題1:個別消費税と税の還付 問題 「ガソリンに個別消費税を課税し、 その個人が支払ったガソリン の税金を還付するという政策に関して、 福田首相が、支払った税金が戻るのだから、 個人への負担はゼロだという主張に対する 賛否?」 超過負担(死重荷損失)が発生し、厚生状態 は課税前の状態に戻らない。 還付 還付後均衡点 税収 課税後均衡点 課税前均衡点 超過負担 ガソリンの消費量
類題2:一般補助金と特定補助金の政策効果 • 補助金=マイナスの税金 <特定補助金> 特定の支出に関する補助金。 例1:ガソリン価格へ何%の補助 (その分だけ価格が下がる) 例2:国庫支出金(教育、道路) <一般補助金> どのような支出にも使える補助金。 例1:所得補助 例2:地方交付税 *)同じ補助額を特定補助金で行った場合、一般補助金に較べて効果が低い。 一般補助金の均衡点 政策実施前の均衡点 特定補助金の均衡点 ガソリンの消費量
応用例(2):貯蓄の決定#1 *)家計は生涯所得(Y1)が 与えられたもとで、二期間にわたる 消費C1,C2を決める。 • 個人貯蓄決定モデル (生) 第1期 (退職) 第2期 (死) 1)1期の予算方程式: Y1(第1期所得) Y2=0(第2期所得) 2)2期の予算方程式: S(貯蓄) (1+r)S(元本+利子) 3)2期間の予算方程式: 上記2式からSを消去して、 C1(第1期の消費) C2(第2期の消費) ・現在価値:将来の10000円=現在の9500円 ・将来財の価値を割り引く:割引率(市場利子率) 第2期消費の現在価値
貯蓄の決定#2 応用例:利子課税の効果 (予算線が所得点Yを中心に反時計回りに回転する) • 図解 代替効果:相対的に安くなった現在財の 消費を増やす。 所得効果:実質所得減少による現在財と 将来財の消費を減らす。 消費点 (1+r)S -(1+r) 所得点 S(貯蓄)
応用例(3):労働供給の決定 • 余暇時間の導入(労働=苦痛=マイナスの効用) *)個人に与えられた一定時間(H):24時間、24×7時間、24×7×365時間 H 余暇時間(Z=H-L) 労働時間(L) *)所得(Y)=賃金率(時給:w)×労働時間(L) 行動仮説:個人は、賃金率とHが与えられたもとで、消費財の 消費量(x)と余暇時間(Z)を,選好が最大になるようにきめる。
労働供給決定#2 • 図解 予算方程式 (消費財価格=1、Z=余暇時間) x -w Z 傾き(-w),点(H,0) を通る直線。 H 余暇時間 労働時間 応用例:労働賃金課税 =>予算線が反時計回りに回転 =>代替効果+所得効果
パレート効率性とコア 第2部 Francis Ysidro Edgeworth (1845-1926) Vilfredo Pareto (1848-1923)
純粋交換経済(2財・2人) • 経済環境:A、Bの2人が財X,Yを市場で交換する経済を考える。 記号:
個人Aの最適消費量の決定(個人Bも同じ) • 無差別曲線と予算線 <最適化の条件> 無差別曲線 消費点 <予算方程式> 初期保有点 予算線 傾き
ボックス図の作成 • 契約曲線上: 契約曲線(パレート効率な点の集合) 合体 合体
ボックス図の名称に関する歴史 • Vincent Tarascio (1976)”A Correction: On the Genealogy of the So-called Edgeworth-Bowley Diagram,” Western Economic Journal “ Neither on that page nor anywhere else in mathematical Psychics nor in the three volumes of Edgeworth’s Papers Relating to Political Economy is a box diagram to be found.” “ in 1906 the box diagram appears in several placesss in Pareto’s Manuale, and for the first time in its familiar form in economic literature.”
パレート効率性 • 定義:パレート改善 いずれの経済主体の経済状態を悪化させることなく、少くなくとも1人の経済主体の経済状態を改善させることができる場合。 • 定義:パレート効率(パレート最適) どのようにしてもパレート改善が不可能な状態。
市場均衡とパレート効率性 • 価格調整メカニズム X財市場:超過供給 Y財市場:超過需要 売り 買い X財価格:下落 Y財市場:上昇 買い 売り 予算線が半時計回りに回転
厚生経済学の第一命題 • 市場均衡はパレート効率である X財市場:需要=供給 Y財市場:需要=供給 市場均衡: E 均衡点Eは契約曲線上 パレート効率
厚生経済学の第二命題 • 任意のパレート効率な状態は、初期保有量の適当な再分配のもとで、市場均衡として実現できる。 この初期保有点からは、パレート効率な点Eが実現できない。 E 初期保有量の再分配が必要となる! *)二分法:効率性基準と 平等性基準
コアの概念 • 契約曲線のEFの部分をコアと呼ぶ。初期保有点からコアで表わされる任意の配分点へ移動することにAもBも同意する(パレート改善)。 F コア E 初期保有点
4人・2財モデル • Aさんタイプの個人:A1、A2 • Bさんタイプの個人:B1、B2 • いま、2人(A1、B1)・2財経済のとき、点Eでの配分が決まっていたとする。このとき、A2とB2が再配分の協議に新たに参加したとする。 点Eの配分は、4人にとってパレート効率でなくなる!
個人B1とA1,A2との結託(個人B2の排除) B1とA1、A2が結託 し、A1とA2が点Dの配分を実現 し、B1が点Gを実現。 点G、Dで,点Eより高い 無差別曲線が実現する。 F コア E D G 初期保有点 3人が結託することにより、 パレート改善となる。
個人B1の(A1,A2)への提案(個人B2の排除)個人B1の(A1,A2)への提案(個人B2の排除) B1がKGで表わされるY財をA1、A2へあげる代わりに、A1からX財IJ,A2からJKを貰う。=>B1の配分点が、点Iから点G へ移動。 F E G D 初期保有点 I K J
個人B2の(A1,A2)への逆提案(個人B1の排除)個人B2の(A1,A2)への逆提案(個人B1の排除) 初期保有点Iを通り、より傾きの急な直線上で個人B1と同様の提案を個人B2が行う。 B2の状態は変わらず、点D’で、 B1の提案よりも高い無差別曲線 が実現。 個人B2の提案 F G’ E D’ 個人B1の提案 初期保有点 K J I B2,A1,A2が結託すること により、B1の提案よりも パレート改善となる。
コアの収縮 • 個人B1の提案と個人B2による逆提案、さらに個人B1による逆提案というプロセスを通じて、結局、どちらもこれ以上再提案ができないコア内のA点に到達する。 収縮したコア これ以上再提案 ができない状態。 F B 逆に、A1とA2がそれぞれB1,B2に同様の提案することにより達成するコア内の点。 A E 初期保有点
コアの収束とその意味 • Aタイプ、Bタイプの個人をさらに増やした場合:3人、4人、・・・・、無限人 コアは一点に収束=市場均衡でも実現可能 • コア収束の意味:消費者がお互いに結託したり排除されたりしながら情報を収集するプロセス。 コア:個人の数が増えると情報収集費用が膨大となる。 市場均衡:情報コストがゼロに近い。
公共財を含む資源配分問題の図解 第3部 「コルムの三角形」入門 第3部 「コルムの三角形」入門
これまでの最適資源配分問題の解説(1) • サミュエルソン条件の導出 P. Samuelson (1915-) *)土居著『公共経済学』より
これまでの最適資源配分問題の解説(2) • リンダール均衡 *)土居著『公共経済学』より
なぜコルム三角形なのか?(1) • 利点1 コルム三角形のみで純公共財を含む資源配分問題に関する以下の議論を直感的に説明できる。 1)サミュエルソン条件の導出 2)リンダール均衡 3)自発的供給問題とナッシュ均衡 4)中立性命題
なぜコルム三角形なのか?(2) • 利点2 図のみによる直感的説明;必要なのは中学で学ぶ図形に関する知識のみ ・三角形と平行線に関する比率 ・正三角形の性質 *)中3、数A
コルム三角形の限界 • 私的財と公共財に関する線形変換の仮定 • 私的財と公共財の2財・2人モデル
「コルム三角形」関連文献(外国語) • Kolm, S.-C. (1970) La Valeur Publique (Paris, Dunod) • Laffont,J-J. (1987) Fundamentals of Public Economics (Cambridge, Mass., MIT Press). • Ley, E. (1996),”On the Private Provision of Public Goods: A DiagrammaticExposition,”Investigations Economicas, 20:1, 105-123. • Thomson, W. (1999),”Economies with Public Goods: An Elementary Treatment,”Journal of Public Economic Theory, 1, 139-176.
「コルム三角形」関連文献(日本語) • 奥野正寛・鈴村興太郎(1988) 『ミクロ経済学II』(岩波書店) • 西條辰義(2000) 『レクチャノート:厚生経済学』(非出版講義ノート) • 田平正典(2003) 『地方公共支出の最適配分』(多賀出版) *)コルム三角形を使った説明は、非常に少ない! 理由: ・原論文がフランス語 ・競合的な図の存在
コルム三角形の仮定 • 仮定1:AとBの二人から構成される経済である。 • 仮定2:私的財と、完全非排除性かつ完全非競合性を持 つ純公共財の2種類の財が存在する。 • 仮定3:各人は私的財の形で一定の初期保有量を所有しており、私的財と公共財を消費する。 • 仮定4:私的財と公共財は1対1で技術的に線形変換される(PPFが線形)。
コルム三角形とボックス図の比較 Bの無差別曲線 契約曲線 Aの無差別曲線 共通予算線 契約曲線 効率的配分点 初期保有点 コルム三角形 ボックス図
ボックス図の作成 • 契約曲線上: 契約曲線(パレート効率な点の集合) 合体 合体
Aの実行可能三角形の作図 実行可能点E コルム三角形上の点 F F’ P Q PPF G E E’ H I M J K
E’G=私的財消費量( ) • (1.1) • (1.2) • 結果: KH=