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中間的まとめとこれからの話し. 言葉による注釈や文脈の提示なしの、純粋な視覚記号のみの表現はかなり限られたもので、実際的には存在しない。 以下の、視覚表現の修辞法、視覚表現のスタイルでは、言葉による注釈や文脈の提示を前提にして、視覚表現を扱う。 最後のマンガ表現では、視覚表現と言語表現の融合を扱う。. 修辞法は三水準に分類できる. 形態的水準 : 表現形態と意味との対応。例:継起的音喩「でかいどお。北海道。」 概念的水準 : 言葉が指し示す概念水準での意味の組み替え。例:隠喩 : 「腹を割って話そうや。」
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中間的まとめとこれからの話し • 言葉による注釈や文脈の提示なしの、純粋な視覚記号のみの表現はかなり限られたもので、実際的には存在しない。 • 以下の、視覚表現の修辞法、視覚表現のスタイルでは、言葉による注釈や文脈の提示を前提にして、視覚表現を扱う。 • 最後のマンガ表現では、視覚表現と言語表現の融合を扱う。
修辞法は三水準に分類できる • 形態的水準:表現形態と意味との対応。例:継起的音喩「でかいどお。北海道。」 • 概念的水準:言葉が指し示す概念水準での意味の組み替え。例:隠喩:「腹を割って話そうや。」 • 語用論的水準:メッセージへの態度や伝達に関わる修辞。皮肉法:「さすがに精密な分類ですなあ。」
形態的修辞法(1)表現面の感性的印象 • 表現面の感性的印象:言葉=>声喩(onomatopoeia)「ほろほろと山吹ちるか滝の音」(松尾芭蕉)。視覚表現=>絵の形や色調などによる印象効果。 malma takete (ケーラー)
形態的修辞法(2)表現要素の多義性 • 表現要素の多義性:言葉=>字喩(anagram)。駄洒落・地口(pun)「疲労宴」。視覚表現=>だまし絵。多義図形。図地反転図形。
形態的修辞法(3)配置と内容の対照 • 配置と内容の対照:言葉=>対照法(antithesis)「聞いて極楽見て地獄」。視覚表現=>対照的な位置に対照的な内容の絵を配置させる。
形態的修辞法(4)配置と内容の列挙 • 配置と内容の列挙:言葉=>列叙法(accumulation)。視覚表現=>関連した対象を一定の順序の配置で示す。 (3)と(4)は表現形式と内容のパラレリズムである。絵では、パラレリズムは、対照や列挙だけでなく、行列配置なども可能になる。
形態的修辞法(5)表現順序の修辞法 • 言葉=>倒置法(inversion)、追加法(hyperbaton )。絵では表現要素が並置されているので、表現順序の倒置や追加の修辞はない。交差配語法(chiasmus)や漸層法(climax)も表現順序が重要なので対応する表現を見いだすのは困難である。
転義法(直喩・隠喩、換喩、提喩)の仕組み 記号が内容を指し示すが、その内容が異なった意味に 変換される。
概念的修辞法(1)換喩 • 換喩(metonymy):出来事のスクリプトの時空的隣接性に基づく転義。言葉=>「赤シャツ」、「のれんをつぐ」、「お手洗い」、「ホワイトハウスの決定」、「春雨やものがたり行く簑と笠」(蕪村)視覚表現=>部分の描写で全体や、時間的に関係した出来事で他の出来事を示すのは、時空からあるシーンや面を切り取る視覚表現ではごく一般的。
概念的修辞法(1)換喩の視覚表現例 ソース:口紅のついたタバコ 時空的隣接性 ターゲット:女性の来訪
概念的修辞法(2)提喩 • 提喩(synecdoche):概念の包含関係に基づき種で類を、類で種を表す。言葉=> 「親子丼」、「飲む・打つ・買う」、「空から白いものがふってくる」、「人はパンのみにて生きるにあらず」。視覚表現=>絵は概念のレベルが固定的で階層性を欠くので、言葉の裏打ちがあって、初めて異なるレベルの内容を意図したことが分かる。
概念的修辞法(2)提喩の視覚表現例 ソース:ネコ カテゴリーの包含関係 ターゲット:動物 換喩、隠喩も使われた複雑な例。手はネコや人の意思的行為を換喩的に表す。ネコは動物を提喩的に表す。聖書の上の、動物と人の手は、動物の権利に関する誓約を隠喩的に表す。ここでこれが、動物の権利の誓約である事は言語的に解説されている。これが、もしネコ 権利の誓約なら、提喩にはならない。提喩は 文脈的に概念のレベルが固定されている場合 にのみありうる。
概念的修辞法(3)隠喩 • 隠喩(metaphor):隠喩は修辞法の王様である。隠喩は、異なったカテゴリーの概念間の類似性を発見し置き換えて表現する。言葉=>「月見うどん」、「白雪姫」、「甘い生活」、「堅物」、「熱い議論」、「壁につきあたる」、「社会の歯車」。直喩(simile)、擬人法、擬物法なども仕組みは同じである。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:鮫 凶暴性、噛みつく ターゲット:男 ソースとターゲットが絵として並んで示されている。 「男は鮫のようである」という直喩に近い絵の例。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:手 かゆいところに手がとどく ターゲット:シャンプー 擬人化の例である。ターゲットがソースの形で重ねて表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:コニシキ 親しみやすい?安心? ターゲット:サントリーオールド ソースにターゲットのラベルが重ねて表現されている。 擬物化の例だが、特性の転移が明確でないので、形態の類似性に よる視覚的地口(Visual Pun)ととらえた方が良いかもしれない。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:ろうそく 有限で燃え尽きる ターゲット:地球 ターゲットにソースの形態が重ねて表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:クッション 足を楽にする ターゲット:クリームのチューブ ソースにターゲットの形態が重ねて表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:麻薬・覚醒剤-->花 取り消しがつかないダメージを与える ターゲット:麻薬・覚醒剤-->命 ソースが絵でターゲットは言葉で表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:絞りきったレモン かすかすになっている ターゲット:骨粗鬆症の骨 ソースが絵でターゲットは言葉で表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:玉葱の皮をむき 涙が出る ターゲット:読書 ソースが絵でターゲットは絵と言葉で表現されている。
概念的修辞法(3)隠喩の視覚表現例 ソース:ネクタイ フォーマルな儀礼に必用 ターゲット:靴 ターゲットが絵でソースは文脈(ネクタイの位置)で表現されている。
概念的修辞法(4)撞着語法 • 撞着語法(oxymoron):撞着語法は直接あるいは間接に矛盾する語彙が、修飾-非修飾の関係に置かれる表現である。「ゆっくり急げ」(副詞-動詞:直接矛盾)、「幸福な不幸」(形容詞-名詞:直接矛盾)、「冷たい炎」(形容詞-名詞:間接矛盾、炎の属性の熱いが冷たいと矛盾する)など。形容詞や副詞、抽象名詞の絵的な表現が難しいので視覚的表現で、撞着語法を見いだすのは困難。形容詞や副詞を言葉で表現する必用がある。
概念的修辞法(4)視覚表現における撞着語法の例?概念的修辞法(4)視覚表現における撞着語法の例? 牧師と修道女の 性的キス。 聖なる性的キス 絵からは形容詞の 解釈が困難。
概念的修辞法(5)同語反復法 • 同語反復法(tautology):AはAであるとの自明な命題を通じて、 Aの特定の属性を強調する。「子どもは子どもだ」、「約束は約束だ」など。絵では、命題が表現できないので、視覚的な表現における同語反復法は存在しない。
概念的修辞法(6)表現と内容の混同 • レベルの混同:記号表現と内容のレベルをとりちがえること。言葉=>「小百合がなんだ。単なる固有名詞ではないか。」視覚表現=>絵と絵の指し示す対象の混同。 「これはパイプの絵である」 「これはパイプではない」 「これは絵である」
概念的修辞法(6)視覚表現における表現と内容の混同の例概念的修辞法(6)視覚表現における表現と内容の混同の例 「魚の絵」の絵 「水を求める 魚(の絵)」の絵
語用論的修辞法(1)誇張法 • 誇張法(hyperbole):言葉=>「千枚通し」、「一日千秋」、「猫の額」、「死にそうに疲れている」、「支配人は総金歯をにゅっとむいて笑ったので、あたりが黄金色に目映く輝いた。」視覚表現=>特徴や効果を過大に描いた表現、個体の平均からのズレを実際以上に大きく描いた表現(カリカチュア)
語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法 Jリーグカレーを食べたらラモスの ように大きく強くなった。
語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法 ミスタービーンのカリカチュアと反カリカチュアの線画表現
語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法 ミスタービーンのカリカチュアと反カリカチュアの写真表現
語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法語用論的修辞法(1)視覚表現における誇張法 敵の顔
語用論的修辞法(2)パロディー • パロティ−(parody):良く知られたオリジナルに似た表現形式で、対照的な内容を示し面白さをねらう。言葉=>「竹を割ったような頭脳」( 「竹を割ったような性格」 )視覚表現=>古今の名作の形をまねて、対照的な内容を示した表現。
語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例 ロダンの名作「考える人」 のパロディー
語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例 ピカソ「女官達」 シリーズ ベラスケス「女官達」
語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例語用論的修辞法(2)視覚表現におけるパロディーの例 ユトリロ風 セザンヌ風 点描風
語用論的修辞法(3)逆から言ってつたえる • 皮肉法(irony)は言葉では一般的な修辞法である。「なんていい天気だ」(雨降りの日に)。自分の考えと逆の意見や事実と異なる意見を述べる修辞法で、言及説など種々の理論が提案されている。発話を括弧のなかにいれる表現法なので、絵で表現することは困難である。反語法や修辞的否定、修辞的疑問なども同様。修辞的否定の例:「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」(藤原定家)
語用論的修辞法(4)言わずにつたえる • 暗示的看過法(「宮元君が殺人犯として服役していたということはふれずに、直接本題にはいります。」)、含意法(「月夜の晩ばかりじゃねえぞ」)など。直接の発話をうち消し、逆の方向の含意を伝える事になり、否定と引用ができない視覚表現での例を見いだすことは困難である。
語用論的修辞法(5)控えめに伝える • 緩叙法(「ちょっと期待はずれでした」)、語調緩和法(「わたしくには、彼の主張には、すこしばかり無理があるようにおもわれました。」)、婉曲語法(「お開きにする」、「帰らぬ人となる」、「用足し」)。換喩を用いた婉曲語法は、換喩として視覚表現可能。他は言葉の言い回しに関連しているので、困難。
語用論的修辞法(6)模索しつつ言ってつたえる語用論的修辞法(6)模索しつつ言ってつたえる • 同格法(「壁--独り居の夜半の伴侶/壁の表に僕は過ぎ去ったさまざまの夢を託す」)、類義語累積法(「彼女はきれいで、かわいくて、愛らしくて、魅力的で、すてきで、とてもいいんだ。」)、訂正法(「人様の芸を盗むのも修行のうちだよ。・・・・・・・盗む、というから聞こえが悪いのだよ。そうよな、模写とでもいった方がいいんじゃないかね。」)など。表現の逐次性と言葉の言い換えからなっているので、視覚表現は困難。
視覚表現と絵に共通の修辞法 • 形態的修辞法:表現面の感性的印象、表現要素の多義性、パラレリズム(対称、列挙) • 概念的修辞法:転義法(換喩、隠喩、提喩)、記号表現と内容のレベルの混同 • 語用論的修辞法:誇張法、パロティ−
言葉に特有の修辞法 • 形態的修辞法:表現順序の修辞法(倒置法、追加法など) • 概念的修辞法:撞着語法、同語反復法 • 語用論的修辞法:逆から言ってつたえる(皮肉法、反語法、修辞的否定など)、言わずにつたえる(暗示的看過法、含意法など)、控えめに言ってつたえる(緩叙法、語調緩和法など)、模索しつつ言ってつたえる(同格法など)
視覚表現に特有の修辞法 • 視点の修辞法(距離、フォーカス、アングルなど) • 空間表現の修辞法(遠近法、空間象徴など) • 色彩の修辞法(色彩象徴など)