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目次 Ⅰ . 頭痛一般 Ⅱ. 片頭痛 1. 診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後 2 .急性期治療 3 .予防療法 Ⅲ . 緊張型頭痛 Ⅳ . 群発頭痛 Ⅴ. その他の一次性頭痛 Ⅵ. 薬物乱用頭痛 Ⅶ. 小児の頭痛 Ⅷ. 遺伝子. 慢性頭痛診療ガイドライン要約. 厚生労働科学研究こころの科学研究事業 2005 年 日本頭痛学会編集 . 慢性頭痛の診療ガイドライン . 東京 : 医学書院 ; 2006. 慢性頭痛診療ガイドライン 2005 の概要. ガイドラインの項目 一次性頭痛全般 について 診断、治療、予防法 を網羅
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目次 Ⅰ.頭痛一般 Ⅱ. 片頭痛 1. 診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後 2.急性期治療 3.予防療法 Ⅲ.緊張型頭痛 Ⅳ.群発頭痛 Ⅴ. その他の一次性頭痛 Ⅵ. 薬物乱用頭痛 Ⅶ. 小児の頭痛 Ⅷ. 遺伝子 JHS(2010.6.17, V1.0)
慢性頭痛診療ガイドライン要約 • 厚生労働科学研究こころの科学研究事業2005年 • 日本頭痛学会編集. 慢性頭痛の診療ガイドライン. 東京: 医学書院; 2006. JHS(2010.6.17, V1.0)
慢性頭痛診療ガイドライン2005の概要 ガイドラインの項目 一次性頭痛全般について診断、治療、予防法を網羅 治療に関して: 国内外の慢性頭痛治療に関するエビデンスが一覧 国内での治療効果のエビデンスや、治療法選択の基礎となる病態研究も理解できる 本ガイドラインは、 日本での頭痛医療の推進に役立つことが期待される JHS(2010.6.17, V1.0)
推奨のグレード(強さ) JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ.頭痛一般 • 13. 一次性頭痛の入院治療の対象と治療法は • 14. 市販薬による薬物療法をどのように計画するか • 15. 漢方薬は有効か • 16. 薬物療法以外にどのような治療法があるか • 17. 認知行動療法は一次性頭痛の治療に有効か • 18. 一次性頭痛は不安 / 抑うつを随伴するか • 19. 特発性低髄液圧性頭痛はどのように診断し,治療するか • 20. 産業医,脳ドック医は頭痛にどう対処すれば良いか • 21. 校医は頭痛にどう対処すれば良いか • 22. 患者教育,医師-患者関係で留意すべき点は • 23. 片頭痛による経済的損失はどのように評価するか • 1. 頭痛はどのように分類し診断するか • 2. 一次性頭痛と二次性頭痛はどう鑑別するか • 3. くも膜下出血はどう診断するか • 4. 救命救急室( ER )での頭痛診療の手順はいかにあるべきか • 5. 一般医は頭痛医療にどう取り組むべきか • 6. 頭痛外来,頭痛専門医は必要か • 7. 病診連携は一次性頭痛診療に有用か • 8. アルゴリズムをどう使用するか • 9. 頭痛による個人へのインパクトを知るにはどうするか • 10. 問診票,スクリーナーをどう使用するか • 11. 頭痛ダイアリーをどう使用するか • 12. どのような一次性頭痛を治療すべきか JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-1頭痛はどのように分類し診断するか • 推奨頭痛の分類と診断は,国際頭痛分類第2版International Classification of Headache Disorders 2nd Edition (ICHD-Ⅱ)に準拠して診断する • 推奨のグレードA JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-2 一次性頭痛と二次性頭痛はどう鑑別するか • 二次性頭痛を疑うのは • 1. 突然の頭痛, • 2. 今まで経験したことがない頭痛, • 3. いつもと様子の異なる頭痛, • 4. 頻度と程度が増していく頭痛, • 5. 50歳以降に初発の頭痛, • 6. 神経脱落症状を有する頭痛, • 7. 癌や免疫不全の病態を有する患者の頭痛, • 8. 精神症状を有する患者の頭痛, • 9. 発熱・項部硬直・髄膜刺激症状を有する頭痛である • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-3 くも膜下出血はどう診断するか • 1) 典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」である.項部硬直は発症早期には認められないことがあり注意が必要である • 2) くも膜下出血患者には少量の出血による警告症状を呈することが少なくなく,突然の頭痛に悪心・嘔吐,意識消失,めまいを伴う場合には注意を要する • 3) 脳血管攣縮による脳虚血症状や動脈瘤による圧迫で動眼神経麻痺を呈することもある • 4) CT ,腰椎穿刺, MRI の fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR) が有用な検査である • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-4 救命救急室( ER )での頭痛診療の手順はいかにあるべきか • 頭痛を主訴として来院した患者については一次性頭痛と二次性頭痛の鑑別が最重要である. • まず生命に危険な頭痛をスクリーニングする. • すなわちくも膜下出血による頭痛には特に注意を払う. • 頭痛の診断には,問診,身体・神経学的診察,画像診断 (CT/MR) が重要である. • 画像が正常に見えても,くも膜下出血が否定できないときには,腰椎穿刺がさらに必要である. • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-5 一般医は頭痛医療にどう取り組むべきか • 一般医は一次性頭痛と二次性頭痛との鑑別を念頭に置く. • 診断に苦慮する場合は,速やかに専門医に紹介する. • 一次性頭痛については,とくに片頭痛、緊張型頭痛について,適正な診断と治療ができることが要求される • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-6 頭痛外来,頭痛専門医は必要か • 慢性頭痛患者に頭痛診療の場を推奨するために頭痛外来が必要である. • また,慢性頭痛患者の日常生活支障度を改善するために専門的知識を有する専門医による診断と治療が必要である. • とくに一般医が頭痛診療に苦慮する場合,頭痛専門医への紹介またはコンサルテーションが勧められる. • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-7 病診連携は一次性頭痛診療に有用か • 一般医と頭痛専門医による一次性頭痛の病診連携は,頭痛患者の満足度と QOL (quality of life) を高める. • 一次性頭痛診療の場の病診連携をさらに進めなければならない • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-8 アルゴリズムをどう使用するか • 頭痛を主訴として来院した患者についての鑑別診断で重要な点は,まず二次性頭痛のなかでも危険な(致命的な)頭痛を除外することである. • 次に片頭痛をはじめとする一次性頭痛を診断する. • この時,簡易診断アルゴリズムは,実地診療で頭痛診断の手がかりになる有力な手段の一つである • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
図1.危険な頭痛の簡易診断アルゴリズム JHS(2010.6.17, V1.0)
図2.慢性頭痛の簡易診断アルゴリズム JHS(2010.6.17, V1.0)
慢性頭痛アルゴリズム JHS(2010.6.17, V1.0)
図3.片頭痛の簡易診断アルゴリズム JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-9 頭痛による個人へのインパクトを知るにはどうするか • 頭痛による個人へのインパクトを知るために信頼性,妥当性が評価された質問票を利用することが推奨される • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-10 問診票,スクリーナーをどう利用するか • 頭痛の問診票には, • 生活支障度・ QOL ・治療効果・満足度を問うもの • 片頭痛の診断スクリーナー • 問診票,スクリーナーの利用は日常診療の一助となる • 患者 - 医師間のコミュニケーションの向上 • 簡便で迅速な診断 • 治療効果を客観的に評価するため • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-11 頭痛ダイアリーをどう使うか • 頭痛ダイアリーは問診に加えて,より多くの情報が含まれ,服薬指導の有用な手段にもなる. • 患者-医師コミュニケーションを進めるためにも有用で,問診と組み合わせて使用することが勧められる • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-12 どのような一次性頭痛を治療すべきか • 一次性頭痛は患者の苦痛があれば重症度にかかわらず治療の対象となる. • 頭痛が日常生活に支障をきたしていると判断した場合には積極的に治療すべきである • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-13 一次性頭痛の入院治療の対象と治療法は • 一次性頭痛の入院治療の対象としては, • ①生命の危険がある二次性頭痛を否定すること, • ②稀な頭痛の診断と治療, • ③特殊な治療の有効性確認, • ④片頭痛重積発作,難治性または慢性群発頭痛, • ⑤薬物乱用頭痛加療目的などがあげられる • 推奨のグレード B~C JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-14 市販薬による薬物療法をどのように計画するか • 薬物療法の選択は頭痛の重症度,頭痛の頻度,生活支障度に依存する. • 軽症の頭痛であれば市販薬 でも対処可能である. • 頭痛が中等度~重度の場合,あるいは OTC を月 10 日以上服用する場合は,医師の指導のもとに薬物治療を行うことが望ましい. • 慢性頭痛の場合は薬物乱用頭痛に陥らないように急性期治療薬の投与回数の制限 ( 月 10 回以内 ) を設ける • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-15 漢方薬は有効か推奨のグレード B • 漢方薬は予防薬あるいは急性期治療薬として長期にわたり使用されており, • 経験的あるいは伝統的には効果・安全性の両面から有用であると評価されている. • これらを裏付ける科学的エビデンスも近年集積されつつあり,予防薬として推奨可能である • 呉茱萸湯 • 桂枝人参湯 • 釣藤散 • 葛根湯 JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-16 薬物療法以外にどのような治療法があるか • 一次性頭痛の薬物療法以外の治療法には • 行動療法, • 理学療法, • サプリメント療法がある. • これらの治療法には健康保険の適用外のものや副作用の報告もあるため,使用にあたっては個人の特性を考慮に入れる. • 片頭痛および緊張型頭痛に対する非薬物療法の詳細は別項( Ⅱ-3- 10, Ⅲ- 8 )を参照のこと • 推奨のグレード B~C JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-17 認知行動療法は一次性頭痛の治療に有効か • 一次性頭痛の非薬物療法として,行動療法は治療効果が確かめられつつある治療法である. • 行動療法により,頭痛を 30 ~ 50% 改善させることが可能とされており,薬物療法と同等の治療効果が期待できる場合がある. • 行動療法は薬物療法との併用でさらに治療効果が高まる • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-18 一次性頭痛は不安 / 抑うつを随伴するか • 片頭痛や緊張型頭痛では不安や抑うつなどの心理状態に陥りやすい. • また,精神疾患として不安障害(パニック障害など)や感情障害(大うつ病)を伴うことも多い. • これらの精神状態に注意することは臨床的に重要である • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-19 特発性低髄液圧性頭痛はどのように診断し,治療するか • 1. 診断 • 特発性低髄液圧性頭痛は国際頭痛分類第 2 版( ICHD- Ⅱ)のに準拠して診断する. • 2. 治療 • 治療はまず安静臥床・輸液などの保存的療法を 行う . 改善が認められない場合に画像診断で髄液漏出部位を 確認できれば , 硬膜外血液パッチ( epidural blood patch : EBP) などの侵襲的な治療 の適応を考える . • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
■7.2.3 「特発性低髄液圧性頭痛」の診断基準 (ICHD- Ⅱ ) • A. 頭部全体 および・または 鈍い頭痛座位または立位をとると 15 分以内に増悪以下のうち少なくとも 1 項目を満たし,かつ D を満たす • 1. 項部硬直 • 2. 耳鳴 • 3. 聴力低下 • 4. 光過敏 • 5. 悪心 • B. 少なくとも以下の 1 項目を満たす • 1. 低髄液圧の証拠を MRI で認める ( 硬膜の増強など ) • 2. 髄液漏出の証拠を通常の脊髄造影, CT 脊髄造影,または脳槽造影で認める • 3. 座位髄液初圧は 60 ミリ水柱未満 • C. 硬膜穿刺その他髄液瘻の原因となる既往がない • D. 硬膜外血液パッチ後, 72 時間以内に頭痛が消失する JHS(2010.6.17, V1.0)
表 1. 脳脊髄液減少症の症状 ( 日本脳脊髄液減少症研究会 ) • 1 )痛 み: * 頭痛, * 頸部痛, * 背部痛,腰痛,四肢痛 • 2 )脳神経症状: * 嗅覚障害, * 視力障害, * 複視,顔面違和感 * 聴力障害,耳鳴,眩暈, * 味覚障害,咽頭違和感 • 3 )自律神経症状 : * 微熱, * 動悸,胃腸障害(腹痛・便秘・下痢),手足冷感, * 発汗異常 • 4 )高次大脳機能,精神症状: 記憶力低下,思考力低下, * 集中力低下, * 睡眠障害,うつ状態 • 5 )その他: 内分泌障害,全身倦怠感 JHS(2010.6.17, V1.0)
表 2 脳脊髄液減少症の画像診断 • 1 )低髄液圧の所見(関接所見) MRl (単純 + ガドリニウム (Gd) 造影,矢状断 + 冠状断) • a )脳偏位の所見 • 硬膜下腔拡大,小脳扁桃下垂,鞍上槽の消失, 脳幹(橋)の扁平化 • b )うっ血の所見 • びまん性硬膜増強効果,脳表静脈の拡張,脳下垂体の腫大 • 2 )脳脊髄液漏出の診断(直接所見) RI cisternography , CT/MR myelography • a )脳脊髄液漏出像 • b ) RI 膀胱内早期集積像 JHS(2010.6.17, V1.0)
表 2 髄液量減少症候群の 4 タイプ (Mokri, 1999) • Ⅰ型(典型): • 頭痛あり, MRI 異常,低髄液圧 • Ⅱ型(正常圧型): • 頭痛あり, MRI 異常,髄液圧正常 • Ⅲ型(正常髄膜型): • 頭痛あり,低髄液圧,硬膜造影なし • Ⅳ型(無頭痛型): • 低髄液圧, MRI 異常,頭痛なし JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-20 産業医,脳ドック医は頭痛にどう対処すれば良いか • 推奨 産業医,脳ドック医は頭痛を有する社員や健診者の頭痛医療に積極的に関与する • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-21 校医は頭痛にどう対処すれば良いか • 学校の欠席の原因になっている頭痛は,片頭痛,片頭痛と緊張型頭痛の合併, 慢性連日性頭痛である. • 校医は,養護教諭から相談を受け,適切な指導をする立場にある. • このため,校医は,一次性頭痛と二次性頭痛の正しい知識をもち,養護教諭をいつでもサポートできる体制を整える • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-22 患者教育,医師 ‐患者関係で留意すべき点は • 効率的な頭痛診療を行なうためには良好な医師 ‐患者関係が必要である. • 患者教育に重点を置いた頭痛治療プログラムは , 慢性頭痛患者の支障度・障害度を改善し満足度を高める. • また,医師は正確な診断名を患者に告げるとともに,頭痛に対する適切な対処法・治療法を患者に説明しなければならない • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅰ-23 片頭痛による経済的損失はどのように評価するか • 経口トリプタン系薬剤は経口エルゴタミン系薬剤に比べて,医療財政に対しては許容範囲内の増分費用で高い患者の QOL が改善される. • 社会全体に対しては経口トリプタン薬により便益が還元される • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ.片頭痛 1.診断・疫学・病態・誘発因子・疾患予後 • 1. 片頭痛はどのように分類するのか • 2. 片頭痛はどのように診断するか • 3. 本邦における片頭痛の有病率はどの程度か • 4-1. 片頭痛の病態はどのように理解されているのか • 4-2. 片頭痛にセロトニンの異常はどう関与するのか • 4-3. 片頭痛発作時の脳血流はどう変化するか • 5. 片頭痛の誘発因子としてどんなものがあるか • 6-1. 本邦の片頭痛患者は今後増加するか.疾患予後はどうか • 6-2. 患者の健康寿命の阻害、 QOL の阻害はどの程度か • 7. 片頭痛の comorbid disorders (共存症)にはどんなものがあるか JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-1 片頭痛はどのように分類するのか • 片頭痛の分類は国際頭痛分類第 2 版 (ICHD- Ⅱ ) に準拠して行うように勧められる. • ICHD- Ⅱは階層的な分類( hierarchical classification )を採用しており,通常の一般診療では 1 桁(頭痛タイプ)または 2 桁(サブタイプ)のレベルの診断の使用で可能であるが,専門診療,頭痛センター等の診療では, 3 桁(サブフォーム)レベルまでの診断が勧められる • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-2 片頭痛はどのように診断するか • 片頭痛の診断は国際頭痛分類第 2 版 (ICHD- Ⅱ ) の診断基準に従って行うように勧められる. • ICHD- Ⅱ は階層的な分類( hierarchical classification )を採用 • 通常の一般診療 • 2 桁(サブタイプ)のレベルの診断基準を使用 • 専門診療,頭痛センター等 • 3 桁(サブフォーム)のレベルの診断基準により診断 • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-3 本邦における片頭痛の有病率はどの程度か • 本邦の年間片頭痛有病率は、 8.4% • 前兆のない片頭痛 5.8% • 前兆のある片頭痛 2.6% • 片頭痛の有病率は 20 歳~40歳代の女性に多い JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-4-1 片頭痛の病態はどのように理解されているのか • 三叉神経を中心とした神経血管に関する脳幹部の異常 • 神経ペプチドが重要な役割を果たしている • セロトニンやその受容体,特に脳血管に多く分布する 5-HT1B/1D受容体に関連 • 血管拡張性物質である calcitonin gene-related peptide(CGRP) が密接に関与している • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-4-2 片頭痛にセロトニンの異常はどう関与するのか • 片頭痛病態における血小板中のセロトニンの異常が明らかにされた. • その後血漿中あるいは通常の血液中などの検査所見では一定の見解を得るにはいたらず,それ以後この点に関しての報告は少ない. • それに変わり,セロトニン受容体と片頭痛の病態との関連の報告が多くなされている. • 特に5 -HT 1B/1D 受容体は脳内に多く分布 • トリプタン系薬剤(5 -HT 1B/1D 受容体作動薬)の開発によりセロトニン受容体との関連が重要視されている • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-4-3 片頭痛 発作時 の脳血流は どう変化するか • 片頭痛発作時における脳血流変化は皮質拡延性抑制( cortical spreading depression )を中心に論じられている. • 前兆のある片頭痛発作では後頭葉の脳血流低下は認められる • 前兆のない片頭痛発作に関しては意見が分かれる • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-5 片頭痛の誘発因子としてどんなものがあるか • 精神的因子:ストレス,精神的緊張,疲れ,睡眠 • 内因性因子:月経周期 • 環境因子:天候の変化,温度差,頻回の旅行 • 食事性因子:アルコールは多くの患者に共通する誘発因子の一つであるが,他の食品群は,個人によって反応が異なるため,特に摂取を制限するよう勧告する必要はない • 推奨のグレード B~C JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-6-1 本邦の片頭痛患者は今後増加するか.疾患予後はどうか • 同一の患者群を長期にわたり,観察した報告はない.経過(予後)は良好なことが多い.ただし,経過中その発作型が変容することがある • 推奨のグレード 該当せず JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-6-2 患者の健康寿命の阻害, QOL の阻害はどの程度か • 片頭痛患者の QOL は健康対照と比較して,身体面,心理面,社会的機能などにおいて有意に阻害されておいる. • 他の慢性疾患患者と比較した場合,領域によっては片頭痛患者のほうがより強く QOL が阻害されている. • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-1-7 片頭痛の comorbid disorders (共存症)にはどんなものがあるか • 片頭痛の共存症 • 高血圧, • 心疾患, • 脳血管障害, • うつ病,躁病,パニック障害,不安障害, • てんかん, • 喘息,アレルギー性疾患 • 推奨のグレード B JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ.片頭痛2.急性期治療 • 1. 片頭痛治療にはどのようなものがあるか • 2. 片頭痛の急性期治療薬にはどのような種類があり、どのように使い分けるか • 3. 片頭痛発作の急性期治療にトリプタンは有効か • 4. 複数のトリプタンをどう使い分けるか(有効性の差異, preference ,前兆期・予兆期の使用) • 5. 脳底型片頭痛および片麻痺性片頭痛におけるトリプタン使用の是非 • 6. エルゴタミン製剤はどう使うか • 7. アスピリンは片頭痛治療に有効か • 8. アセトアミノフェンは片頭痛治療に有効か • 9. NSAID sは片頭痛治療に有効か • 10. カフェイン(単独,併用)は片頭痛治療に有効か • 11. 急性期治療において制吐剤の使用は有用か • 12. その他の片頭痛急性期治療薬にはどのようなものがあるか • 13. 片頭痛発作重積の急性期治療はどのように行なうか • 14. 妊娠中,授乳中の片頭痛患者の治療はどうするか • 15. 月経時片頭痛の診断と治療 JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-2-1 片頭痛治療にはどのようなものがあるか(推奨のグレード A) • 1. 薬物療法 • 1)急性期治療:特異的治療(トリプタン,エルゴタミン)非特異的治療(鎮痛薬,制吐薬) • 2)予防療法:カルシウム拮抗薬, β 遮断薬,抗うつ薬,抗てんかん薬,ボトックス,アンギオテンシン変換酵素阻害薬,アンギオテンシン Ⅱ受容体阻害薬,漢方薬など • 2.非薬物療法:バイオフィードバック,鍼治療,頭痛体操,マッサージ,食事療法など • 3. 誘発因子の検索と除去 • 4. 患者教育 • 片頭痛に対する知識 • 片頭痛と他の頭痛の鑑別 • 治療薬の効果と副作用 • 急性期治療薬の適正使用(使用のタイミング,使用量,使用頻度) • 予防療法の必要性,効果発現までにかかる時間 • 発作中の注意(静かな暗い場所で休む,痛む箇所を冷やすなど) • 妊娠の有無の確認 • 頭痛の記録(ダイアリー ) JHS(2010.6.17, V1.0)
Ⅱ-2-2 片頭痛の急性期治療薬にはどのような種類があり,どのように使い分けるか • 片頭痛急性期治療薬には,一般的には • 1)アセトアミノフェン, • 2)非ステロイド系抗炎症薬 (NSAID s ) , • 3)エルゴタミン製剤, • 4)トリプタン系薬剤, • 5)制吐薬 • 片頭痛の重症度に応じた層別治療が推奨される • 軽度~中等度の頭痛にはアスピリン,ナプロキセンなどの NSAIDs • 中等度~重度の頭痛,または軽度~中等度の頭痛でも過去に NSAIDs の効果がなかった場合にはトリプタン系薬剤 • いずれも場合も制吐薬の併用は有用である • エルゴタミン / カフェイン製剤は,発作回数が少なく発作早期使用で満足な効果が得られている患者やトリプタン系薬剤で頭痛の再燃が多い患者では使用される • 推奨のグレード A JHS(2010.6.17, V1.0)